先週ブログをお休みしましたが、取り上げようとしていたのは主に右サイドの攻撃と守備に関してでした。
特に愛媛戦では守備に大きな課題を感じていただけに、大宮戦での4-1-4-1は守備の改善を図ったものなのではないかと考えました。
こうやって1つ前の試合を踏まえた上で、次の試合を見ていくべきだと思うだけに、やっぱりあまり休んでしまうと良くないですね。
大宮戦での4-1-4-1に関して、江尻監督はこのように話しています。
江尻篤彦監督「狙いは相手の良さを消すためだった。評価はセットプレーからの失点で相手にリズムを握られてしまい何とも言えないが、選手はよくやってくれたと僕は思っている。」
うまくいかなかったこともあってか、具体的な話はしていません。
「大宮の良さ」と考えると、サイドからの攻撃か、後方からの長い展開か、1トップからの落としに対しての対策でしょうか。
けれども、為田も乾も米倉もサイドの守備対応には問題があったし、前へのプレスははまり切らなかったし、1トップへの落としに対しても小島の対応は緩すぎたと思います。
相手対策どころか何もかもうまくいかなかった印象で、「選手が良くやってくれた」と話したのも、チームとして準備不足だっただけに、選手は責められないといったところではないでしょうか。
その中でも、個人的にはここ数戦の課題となっている守備の問題。
特に3バック相手に、ミスマッチな状況が生まれることに対しての対策だったのかなと思っていました。
愛媛戦後には、小島がこんな話をしていました。
小島秀仁「5枚の相手に対して4枚で守っているのでウイングバックは捨てている。逆サイドが空くのは仕方ないが、その後の対応には課題が残った。ヨネくん(米倉恒貴)がウイングバックを見てしまえば、シャドーに走られる。そこは逆サイドは捨てているので、ミスマッチは仕方ない。」
相手は1トップ2シャドーと左右WBで5枚になるので、4バックで見ると枚数が足らなくなる。
そのため、逆サイドのWBは捨てようという発想はあり得ることだと思います。
しかし、一方で逆サイドのWBを捨てるのであれば、その分どこを強化するのか。
普通に考えれば、ボールサイドにスライドしてそこでの守備を激しくいって、相手に良いボールを出させないという発想になるでしょう。
しかし、愛媛戦でも他の試合でも、ボールサイドの守備も甘く、簡単にボールを出させてしまっています。
一方で小島は米倉が出ていくとシャドーに走られるとも話しているのが、疑問を感じるところです。
それでは逆サイドを捨ててもボールサイドもフリーにしてしまうわけですが、中盤の選手が外に出ていくということでしょうか。
しかし、それならば逆サイドを捨てるという発想は、必要ないのではないかとも思ってしまいます。
米倉の守備にも問題を感じ、CB横にぴたりとくっついてポジショニングすることが多いようです。
その分、守備範囲は狭くなっている印象で、その点においてはゲリアのほうが自発的にカバーリングなどをする分、助かることもありました。
米倉はG大阪移籍後にジェフでは守備を教えてもらえなかったというような話をしていた記憶がありますが、それはあくまでもそのチームの約束事を教わっただけであり、米倉自身の守備は改善されていない印象だし、チームや環境が変われば動きも変わってくるはずです。
愛媛戦でも鹿児島戦でも相手の左サイドを右SHが見るのか、SBが見るのかはっきりしなかった印象です。
これは鹿児島戦で砂森が飛び出し失点につながった場面ですが、それまでの経緯はともかくタッチライン際で高い位置を取る選手に対して、SHが見るのかSBが見るのか約束事がはっきりしなかった印象があります。
この試合だけならともかく、愛媛戦でも同様に左サイドで高い位置に張った下川を誰が見るかはっきりせず、裏を取られたシーンがありました。
ジェフからいえば、右SHの後方、右SBの外がエアポケットのようになっている印象があります。
逆にジェフはSBが攻撃のカギとなっている印象もありましたが、対戦相手ははっきりと対応できていたと思います。
例えば鹿児島は極端に中盤がスライドして、SHが外に出ていって対応し、中盤の残り3枚でバランスを取る。
その分、逆サイドは薄くなりがちですが、この時のジェフはまだ左でためて右へ展開をしても、ゲリアがSBだったので少人数でも対応できると判断したのではないでしょうか。
愛媛はWBが外に出ていく約束事で、残りの4×4×1でボックスを維持する。
これによって中盤はスライドしなくて済むわけですが、その分シャドーは前に出ていって1トップのプレスを支援する。
それでもプレスよりリトリートを重視する守り方ですが、1トップの藤本は走れる選手なので1人でも問題なく追いまわせて、攻撃面ではその分シャドーが仕掛けるチームではないでしょうか。
長くなってしまいましたが、ここまでが愛媛戦までの話で、ジェフの守備はサイド対策が曖昧な印象でした。
特にミスマッチ対策は深刻で、大宮戦も3バックなので中盤を5枚にして、サイドに対応する選手を増やそうとしたのかもしれません。
実際、インサイドがサイドの守備に、加勢しようとする姿勢が見られる時間帯もありました。
あるいは、インサイドが前へのプレスをかけることによって、相手のロングボールの出しどころを消そうとしたのか。
確かに工藤は引いて守るよりプレッシングのほうが得意だし、インサイドによるプレスを重視したため、小島ではなく熊谷がインサイドだったのかもしれません。
あるいは、上の小島のコメントを読んでもシャドー対策も曖昧なため、そこにインサイドをあてがおうとしたのか。
しかし、そうなってくると、インサイドはサイドの守備も、前へのプレスも、シャドーへの対応もしなければいけない。
けれども、守備で2役も3役もできるインサイドはいないわけで、複数のタスクによって混乱が及んだように思います。
ようするに、前に出ていけば1ボランチ脇でシャドーが空き、前に出ていかなければプレスが緩くなって長いボールを出され、サイドへの対応はそれどころですらなくなっていた。
大宮戦での2失点目を振り返りましょう。
まず、大宮のビルドアップ時の動きを見ると、ボランチの石川が下がって右CB櫛引を外に押し出す動きをしていました。
それに対して、左インサイドの工藤が中盤から長い距離を走って、石川にプレスに行っていた。
そして、右インサイドの熊谷は、若干下がってバランスを取ろうとしていたように思います
しかし、クレーベはプレスをかけにいかないため工藤単独でのプレスになっていたし、長い距離を走っていく分遅れが生じて相手に交わされる展開が多発していました。
失点場面でも工藤は石川に寄せにいくもののボールを奪えず、パスコースも消しきれずに櫛引に繋がれてしまいます。
そして、櫛引が前を向くと、為田があっさりと交わされてします。
為田が交わされたため、仕方なく乾は奥井のマークを捨てて櫛引に対応しようとします。
最終的なシュートシーンだけを見れば、奥井がフリーであるため乾を責める意見も目にしましたが、乾としては為田が交わされた時点で前に出るしかなかった。
そして、櫛引は茨田にパスを出すと、茨田が少し触って近くの小島幹敏に繋ぎます。
これによって、小島秀仁が簡単にいなされてしまうわけですが、この対応を見てもアンカーとしては守備が軽すぎるように見えました。
そして、小島幹敏は奥井に展開して、シュートを決められたことになります。
結果的には工藤が前に出ていったことで、その後方で薄くなったバイタルエリアを小島幹敏を取られたともいえるでしょう。
また、熊谷やDFラインのサイドへのスライドも甘く、全体的に守備の緩さなどを感じたシーンでした。
いろいろと問題がありすぎて、どこを指摘すべきなのかも迷ってしまいます。
しかし、一番気になるのは、単独でのチェイスが多すぎること。
しかも、1人で寄せに行くにもかかわらず、毎回ボールを奪おうと相手に詰めてしまう。
けれども、単独でのチェイスということもあって、パスコースなどの選択肢を限定できていないため、相手としてはかわしやすい状況になる。
しかも、周りがフォローもできていない状況で追いに行くから、相手は1つかわせば一気にスペースが開けてくる。
このシーンでは工藤のチェイスもそうですが、為田も安易に櫛引に寄せに行って、交わされていることになります。
安易な寄せが色濃く目立ったのは、大宮がまったく逆の賢い守備を構築できていたからこそ、そう感じる部分があったのだと思います。
大宮は3-4-3のような状況で、3トップからプレスをかけていきましたが、3人の間隔が近く特にシャドーが細かくポジション修正をすることで、ジェフCBからの縦パスのコースを消していた。
そこから相手を限定していって、SBに入ったら追い込んでいく。
3人がラインディフェンスのように動いてシャドーが近くでハードワークするので、シモヴィッチは上下の狭いエリアを守るだけでよかった。
これによって本来あまり守備で貢献できないシモヴィッチが1トップでも、効果的なプレスがかかっていたのだと思います。
さすがに真夏の試合ということで90分間これを維持することはできませんでしたが、先に2点リードした上にリトリート守備もできるチームですから、大きな問題はなかったと思います。
ポイントはやはりすべてのボールを奪いには行かず、相手の選択肢を限定しながら追い込んでいくことではないでしょうか。
3トップのうち1人でも無理に深い追いしてしまえば、3人の位置関係がずれるためそこにスペースが出来て、パスを通せる状況となってしまう。
3人がお互いに位置を意識しながら少しずつ追い込んでくるからこそ、パスコースを潰せてその裏を取られるリスクも解消した上で、プレスをかけることが出来たのだと思います。
細かなところではジェフのウイングに対する大宮WBの守備に関しても、強引に寄せに行く形はとらない。
あえて距離感を取って裏を走らせないような状況から、足元にボールが入ったところで前へ出てブロックする。
あくまでも相手を前に行かせないことが大事であり、ボールを奪うのはその次となっていた印象です。
それに比べるとジェフの守備は短絡的で、前にボールが来たらともかくそのボールを奪おうとしている印象です。
奪えなかったらどうするのか、奪う前にどう選択肢を消して行こうかといった発想が感じられない。
だから、選手全員が走れている状況ならまだいいけれど、少しでも足が止まったりコンディションが悪ければプレスもはまらず、広大なスペースが生まれてしまう…。
コースを消しながら組織的に追い込むプレスをかける大宮と、単独で強引にボールを奪おうとするプレスのジェフとで、非常に対照的な戦いになってしまった印象です。
もちろん、大宮も単純にはボールを奪いにいかない分、相手にボールを持たれる時間は長くなるのかもしれません。
しかし、それでも結果的には相手を囲い込んだり、ジェフのミスを誘うことでジェフは高い位置にボールを持ち込むことすら苦労していたわけで、大宮とジェフの守備を比べると大人と子供の差のように感じてしまいました。
為田が試合後に「相手のプレッシャーがあったわけではない」と話しているのも、そもそも捉え方が違っていて、選手に寄せに行くことだけがプレッシャーだと思っているのではないでしょうか。
前半のジェフがビルドアップ時にあそこまで後方で回していたのも、自分たちの意図ではなく相手がうまくコースを消して行き場をなくしていたからこそ、じりじりと押し込まれていたのだと思います。
そういった大宮の賢いプレスをしっかりと分析しながら、プレスの掛け方に関していろいろと考えていかなければいけないのではないでしょうか。