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2019シーズンを振り返る 佐藤優也編

 フロント、監督の振り返りも終わったので、今年も個々の選手の話に移っていきたいと思います。
 その他、大きなニュースがあれば随時取り上げていきたいとは思いますが、年末で慌ただしい状況となっているのですぐには対応できない場合もあるかもしれません。

 さて、まずはGKから。
 2018年の佐藤優也はロドリゲスが20試合、大野が9試合に出場したため、13試合にとどまっていました。
 しかし、ロドリゲスの退団もあり、今季は出場機会が増えました。

 それでも、フルシーズンを通して正守護神だったわけではなく出場は26試合となっています。
 エスナイデル監督最終戦となった3月17日の水戸戦で一度スタメンを外されますが、江尻監督が就任してからはすぐにスタメン復帰。
 しかし、江尻監督体制でも6月9日の栃木戦から9月7日の新潟戦までの間は、スタメンから外されてベンチに回っていました。


 それでも9月14日の水戸戦からは試合に復帰し、そこからはシーズン終了までゴールマウスを守り続けました。
 水戸戦で復帰できたのは、単純にそれまでのチーム状況が悪く、6試合勝ち星なしの展開となっていたため、チームの流れを変えたかったという面が大きかったのではないでしょうか。
 ベテランGKということもあって、リーダーシップなど精神面などを期待されてのことだったのかもしれません。

 ただ、どうしても、記憶に残ってしまうのが、10月6日の山形戦。
 後方で得たFKを下平が優也に繋いだところ、優也の対応が遅れて相手選手がボール奪取。
 そこで失点し、試合は1-4で大敗を喫しています。


 それ以降は目立った大きなミスはなかったと思いますが、それでもやはり優也がボールを持つと怖いところがあったし、ポジショニングも怪しいところがあったと思います。
 相手チームも優也がボールを持ったところを狙って、プレスをかけてくることが珍しくありませんでした。
 一方でビックセーブや前に飛び出してのクリアなどボールへの反応は良いタイプと言えるでしょうが、全体的に見ると安定感において不安の残るGKといった印象ではないでしょうか。

 エスナイデル監督体制が終わり、江尻監督になってからは極端なハイラインではなくなったため、無理に優也が飛び出すこともなくなりました。
 その分、ミスから失点につながることも減った部分はあったと思います。
 しかし、それでも不安定なプレーが見られたことからしても、本人にも課題はあると思います。


 クラブとしても一昨年はオヘーダ、昨年はロドリゲスと外国人GKを補強していますし、GKが補強ポイントとしてみられているのでしょう。
 そう考えると、今季GKの補強は鈴木だけだったのは、多少以外だったようにも思います。
 大野に期待したところもあったということでしょうか。

 優也も来年で34歳と、かなりのベテランになっていきます。
 また、尹監督が就任したことによって、飛び出しなどよりも安定感などを求められる可能性もあるでしょう。
 守備的な監督になりますし、GKを重要な補強ポイントとして検討するかもしれません。


 そう考えていくと、優也も立場的には厳しくなってくる可能性もあるのではないでしょうか。
 ただ、優也も2015年の大幅入れ替え時に加入した選手で、その後も入れ替えの激しいジェフの中では古株の1人と言うことになってきました。
 それも踏まえると、心情的には頑張ってほしい1人でもあると思います。

 もっともジェフのGKには、さらに古株で愛媛にレンタル中の岡本もいるわけですが。
 ただ、愛媛でも活躍していますし、現在の状況から考えると今からの復帰は期待薄でしょうか。
 いずれにせよ、レンタル加入中の鈴木も含めてGKは流動的ではないかとも思いますので、今オフに何らかの動きがあるのかもしれませんね。

2019シーズンを振り返る 江尻監督編

 エスナイデル監督に関してはこれまで何度も振り返りましたので、江尻監督に関して取り上げていきたいと思います。
 江尻監督は前回に続いてシーズン途中での就任となり、同情する面も多々あります。
 クラブの功労者でもあるわけですから、心情としては開幕前からやらせてあげてほしかった。

 ただ、プロの監督である以上、情も大事ではありますが、情だけでは判断できないところもある。
 結果はともかくとしても、チーム作りにおいて内容が伴わなかったことが大きな問題だったと思います。

■前回就任時と同じ課題に直面

 改めて、江尻監督はシーズン途中からの就任ということで、難しい部分もあったのでしょう。
 開幕前の選手構成にも注文は出せなかったし、キャンプなど事前準備もできなかった。
 さらに奇抜なサッカーを目指していたエスナイデル監督の後でしたから、選手に妙な癖がついていてもおかしくはないでしょう。

 ただ、先日も取り上げましたが、最終節後に江尻監督自身も話してる通り、チームを同じ方向性に向かせることが出来なかった。

江尻篤彦監督「1年間を振り返ると、1つの目標に、同じ方向にベクトルを向けられなかった。」

 もっといえば、江尻監督自身が何をしたかったのかわからなかった。
 シーズン中に就任したとはいえ、指揮を執り始めたのは3月からですので、そこから時間はあったはずです。
 やりたいことは明白だけどうまくいかなかったというのならばまだしも、やりたいことそのものが最後まではっきりしなかったことが非常に残念です。

 例えば長谷部監督代行も関塚監督の後を受けると、すぐにそれまでは全くなかった細かなポジション修正が見られるようになり、綺麗な4-4-2を構築し、ポストプレーからの攻撃も展開していきました。
 ドワイト監督後の菅澤監督代行も守備的ではありましたが、3バックで堅守速攻を狙おうという姿勢は感じられました。
 しかし、江尻監督からはそういった色が、ほとんど見えてこなかったと思います。


 そこに江尻監督の大きな課題があるのではないか。
 そう感じるのは、前回監督時も似たようなチーム状況だったからです。
 あの時も巻と米倉のハイプレスやアレックスからのサイド攻撃、倉田や矢澤の仕掛けや、工藤のパスワーク、ネットのフィジカルなどなど、局所局所では光る部分を見せていたものの、チーム全体として何をしたのかは最後まで見えてこなかった。

 あれから長い月日が経ち様々な経験を積んでいるはずではありますが、監督業というものはその人そのものが出てしまうのか、根本には変わっていなかったという印象を強く受けます。
 鈴木監督時代にはコーチとして若手を指導し「江尻塾」と言われ評価を上げていた印象でしたが、それ以外の期間では「江尻塾」という話が聞こえてこなかったことからも、コーチに自由にやらせ効果的に機能していたのは監督の力量も大きいのではないでしょうか。
 監督によってはコーチの意見を聞かない指導者も少なくないと思いますし、ミラー監督のようにコーチとしては実績があっても監督としては苦戦する例もあるわけですから、監督とコーチとしての手腕は別物と考えるべきでしょう。


 監督はコーチ以上にチームを引っ張る強い意志やカリスマ性が必要だと思いますし、細部にこだわる繊細さも必要になってくる。
 江尻監督には前者が足りなかったし、エスナイデル監督には後者が欠けていた。
 そして、それを見抜けなかったフロントも含めて、今季のジェフは大きな失敗ということになるのでしょう。

 ちなみに、細部はコーチにうまく任せてマネジメントする監督もいるとは思います。
 しかし、それが出来なかったことも含めてエスナイデル監督は繊細さが欠けていたし、総合的な手腕が足りなかったということになると思います。

■時とともにやれることが増えて曖昧に

 江尻監督が就任してからのチームをざっと振り返ると、まず就任直後は悪くない状態だったと思います。
 3バックにして守備から入り、ポストプレーからのシンプルな攻撃を狙う。
 しかし、1-0で勝利した琉球戦直後に話しましたが、この試合で寿人を1トップにしてから迷走していったように思います。 

 今考えれば、就任直後は守備の立て直しから入らざるを得ず、やれることが限定的な状況だった。
 それによって江尻監督も結果的に迷わず、チームを運営することが出来ていたのではないでしょうか。
 しかし、時間が経つにつれてやれることが増えていったため、江尻監督が何をするのか決断しなければいけなくなって、曖昧なチームになっていったのではないかと思います。


 琉球戦後から4試合勝ち星がなくなり、試合内容も乏しい状況となっていってしまいました。
 再びハイプレスを実行していきましたが、その分失点も増える状況に。
 そして、7月に入って4バックに戻すこととなりました。

 4バックにしてから、徐々に左サイドに密集する展開を狙っていきます。 
 一時はここがストロングポイントとなりましたが、左サイド以外からの攻撃が作れず、相手に研究されていきます。
 さらに為田、下平も調子が落ちていき、シーズン終盤には強みとも言い切れない状況になっていたと思います。


 守備においてもシーズン終盤は極端なプレスを諦め、セカンドトップに工藤を起用してハードワークさせて何とか持ちこたえる状況になっていきました。
 しかし、それでも全体のバランスは改善されず、相手にバイタルエリアやハーフスペースを取られることが多かった。
 さらにベテラン工藤のスタミナは90分持たず、チーム全体としても後半に失速して足が止まって失点する試合が目立っていました。

 なお、前半から飛ばして後半に失速する傾向も、前回江尻監督が指揮を執ったチームに見られた課題でした。
 前回も今回も、選手の走力や個人判断に任せる部分の強い守備といった印象が残ります。
 守備の組織面構築においても、課題が見られたのではないでしょうか。

 また、若手の起用方法に関しても淡白なところがある印象で、ミスをするとすぐに試合から外される印象がありました。
 ベテランはメンバーに残しても、若手は突然外すことが多い傾向が見られたように思います。
 コーチやユース監督では若手指導に期待できたとしても、それとトップチームの監督はまた別であるということが言えるのではないでしょうか。

■色々な意味でジェフを象徴する存在に

 昔から江尻監督は優しい印象がありますが、監督に限らず人の上に立つ方は厳しさも必要だし、決断力が求められると思います。
 そういった意味で物足りなさがあり、厳しく言えば優柔不断なところもあったのかもしれません。
 ただ、これはクラブ全体にも、言えるところがあるのではないでしょうか。

 どういったサッカーをして、どういった強化ビジョンを描いているのかはっきりとしない。
 攻撃的な監督の後に守備的な監督を招聘したことからも、クラブ運営に強い意志を感じられない。
 これは江尻監督の作るチームにも似たイメージが部分がありますし、色々な意味でジェフの象徴する存在と言えるのかもしれません。


 ジェフのフロントは攻撃的なサッカーをして守備に不安を感じたから、今度は守備的な監督を招聘するのでしょうか。
 日本代表も一時は組織的なトルシエ監督を起用するも一部でロボットのようだと揶揄され、個人重視のジーコ監督を招聘するも失敗し、また組織的に戦うオシム監督を強奪。
 その間、バタバタした結果、強化は後れを取った印象でした。

 現在のジェフはそれに似た部分を感じ、振れ幅が大きい分選手構成などで課題が残る可能性もある。
 だからこそ、尹監督で何をしたいのか、尹監督に何を求めるのか、クラブが確固たる意志を持って新たな方針に向かって進まなければいけないはずですが、果たしてそれが期待できるのかどうか。
 尹監督に丸投げでは、江尻監督や長谷部監督の時と何も変わらないと思います。


 最終節後、船山は以下のような話をしています

船山貴之「一人ひとりがもっとジェフを好きにならないといけない。」

 ジェフのファン・サポーターとしては嬉しいコメントでもありますが、私は若干違うのではないかとも思います。
 江尻監督はジェフ愛に強い方だし、ジェフが好きだからと復帰する選手もやたらと多い。
 さらに今年の平均観客動員数も9,701人だったそうで、過去数年より減少しているとはいえ、現状を考えれば十分に観客も集まっています。

 必要なのはもっとジェフを好きになることではなく、もっとサッカーを好きにならなければいけないのではないでしょうか。
 江尻監督もジェフが好きだから長年貢献してきてくれたのだと思うのですが、いざ監督に就任すると前回も今回もどんなサッカーをしたいのかわからなかった。
 本当にサッカーが好きならばどんなサッカーを展開したいのか、自然と表に出てくる部分があるのではないかと思うのですが、それが感じられない。

 サポーターもエスナイデル監督のキャラクターや食事療法、優也の飛び出しなどネタ的な部分ばかりが話題になっていましたが、具体的なサッカーの中身に関してはあまり聞こえてこない印象がありました。
 選手が好きだ、クラブが好きだということも大事だとは思うのですが、サッカーというスポーツそのものに目を向けなければチームは向上していかないのではないかと思わなくもありません。
 そこが今のジェフにおいて大きな課題なのではないでしょうか。


 今後の江尻監督に関しては、ジェフ内で他の役職を用意する準備があるとのことです。
 ただ、一度はコーチから離れるべきではないかと思います。
 強化スタッフとしてどうか…とも思っていたのですが、GMなども人を引っ張る能力が必要な役職だと思いますから、簡単ではないのかもしれません。

 あるいは、指導者として大成するためにも、ジェフを離れた方がいいのかもしれませんね。
 大きく変わるためにはジェフ以外での刺激が必要ではないかと思いますし、何よりここまで都合よく起用されてきた過去を考えれば、三度同じことが起こってもおかしくはない。
 江尻監督の将来を考えても、もう一度外で経験を積んだほうが次につながるのかもしれません。

 残念な結果にはなってしまいましたが、ジェフの功労者であることには変わりありません。
 今後はジェフだけでなく、ご自身のことも考えて、良い道を選んでほしいですね。
 本当にお疲れさまでした。