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ウタカが激しいチェイスをかけられる体制を作る京都の守備

 2-1でジェフに勝利した京都ですが、予想通り好守にアグレッシブでしたね。
 ただ、攻撃面においては、ゴール前に入っていく部分で物足りなさも感じました。
 試合を決めたのは、むしろ守備面…特にプレスの質の差だったのではないかと思います。

 試合後にも話しましたが、京都はプレス時にインサイドとウイングが高い位置まで上がっていき、ジェフのSBとボランチへのコースを消す。
 これによって、ジェフのCBは近くに出す選手を失うことになります。
 そこへウタカが積極的にプレスに行き、潰していく形を作り上げていました。


 先制点でもその流れからジェフがボールを失っていますが、それ以外でも何度もその形でプレスをかけてきました。
 例えば、38分にも同様のシーンが。

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 バイスからのロングパスを小田が跳ね返し、高橋が拾ってバックパス。
 その瞬間にウタカは、鈴木大輔に猛ダッシュをかけてプレッシング。
 大輔のキックをウタカが足を延ばしてひかっけ、三沢が拾って攻撃を展開する流れとなりました。

 失点に繋がったため新井一耀のボールロストばかり矢面に立ってしまいましたが、このシーンでは大輔がウタカのチェイスをかわせずにボールを失っています。
 その後、三沢がボールを拾った展開も含めて、展開は失点時と似ていると思います。
 それだけチームとして京都のプレスに苦しみ、それをかわすビルドアップを構築できていないと言えるのではないでしょうか。


 図の黒円で示した通り、CBがボールを持つと、京都はウイングがSBを、インサイドボランチをチェックする。
 さらに紫の矢印で示しましたが、逆サイドでもインサイドやウイングが前に出ていくので、大輔は一耀にも繋ぎにくい状況となっていました。
 これをかわすにはロングパスを展開するしかないわけですが、それは所謂「蹴らされている状況」となるわけで、確率の低いプレーとなってしまいます。

 ウタカもこのように話していて

曺(貴裁)監督からは「前でチェイスするときは後ろを気にせずにどんどん行っていい」と言われています。なので、今日も気にせずに前に向かっていこう、チェイスしようと考えていましたし、それがきっちりとハマったかなと思います。

 ウタカの守備範囲を限定して、ウタカが走りやすい状況を作ることによって、ウタカのチェイスが効果的に作用する状況が作れているのだと思います。
 全体的に高い位置を取るのでリスクが大きいし、1つかわされればピンチにもなりかねない。
 しかし、前に積極的に出ていく姿勢が京都の方向性なのですから、バランス重視ではなくプレスの圧力を高めることによって、相手の展開を封じる方向でチャレンジしているのではないでしょうか。

 ここまで積極的なものは期待していなかったものの、これに近いものをクレーベがいる時に作れたらと昨年開幕前から話していたのですが、終始そういった守り方ではなかったですね。
 むしろ4‐4‐2で2トップが誰であろうと、無理には前にプレスに行かない戦い方を選択している印象です。
 その分、京都戦の後半序盤のようにプレスに行く時間帯は行く選択で、"守備範囲"を限定するのではなく、"プレスの時間"を限定する形をとっているように思います。


 ただ、その時間も完全にプレスがハマり切って、ボール奪取からハーフカウンターを狙ているのかというと、そこまでではなく。
 あくまで時間を限定して、がむしゃらにプレスをかけているだけのようにも見えますから、プレスの量が増しただけでプレスの質が高まっているわけではないとも言えます。
 さらに、琉球戦のようにプレスに行かない時間帯の守備にも不安があるため、失点も減らないのではないでしょうか。

 京都戦はミスで敗れたと言えばそれまでですが、京都は激しいプレスをかけてジェフのミスを誘発した。
 ジェフはそこまでのプレスはかけられなかったと考えると、決して個人的なプレーの問題だけではないように思えます。

京都の圧力からミスを誘発され1‐2で敗れジェフは降格圏へ

 京都にも敗れ21位まで落ちたジェフは、ついに降格圏内に突入。
 さすがに、焦らないといけない状況になりつつあるのではないでしょうか。
 選手からは良くなっているという声も出ていますが、もう監督2年目ですしあまり悠長なことも言っていられない状況です。

 さらに、良くなっているレベルから、勝てるレベルまで持っていくには、もう一つ大きな壁があると思います。
 確かにこの日も若い選手たちの勢いは持続できたし、シュートも多かった。
 けれども、PA外からシュートが多かったですし、京都の圧力に手を焼いたシーンが目立った試合だったのではないでしょうか。

■京都が優勢で1点を先制

 ジェフは怪我なのか、前節高さで敗れた失点したためか、伊東が外れて米倉がスタメン。
 新井章太が怪我から復帰し、鈴木椋大がベンチスタート。
 ベンチからはソロモンが外れて、大槻が入りました。

 京都は白井、麻田、福岡、中野克哉がスタメンから外れて、萩原、本多、武田、三沢が先発。
 松田天馬が左ウイングにまわり、武田と三沢のインサイドになりました。
 ベンチスタートとなった中野克哉は京都橘高で岩崎の2つ先輩にあたり、2トップを組んでいた間柄です。


 1分、京都の攻撃。
 三沢の鋭い縦パスをウタカが繋いで、野田が受けてミドルシュート
 しかし、GK新井の正面。

 5分、京都のチャンス。
 左サイドで、荻原が松田とワンツーで抜け出し鋭いシュート。
 しかし、GK新井がセーブ。

 
 立ち上がりから、京都が攻め込む展開が続きます。
 京都はバイスと本多を中心に、GK若原とアンカー川崎も絡んでビルドアップ。
 9分にはGK若原が高い位置まで上がって裏へのロングパスを出し、野田が走り込んでシュートを放つシーンもありました。

 16分、京都は本多が負傷交代で麻田が入りました。
 20分にはジェフの攻撃。
 左サイドを岩崎が抜け出し中央へ繋ぐも、ボールがこぼれてブワニカが粘り、福満、米倉と連続で連続でシュートを放ちますが、相手DFにあたります。


 その後も京都が持ち込む展開が続き、32分に京都が先制。
 高い位置で松田がボールを奪って、ウタカが前進。
 グラウンダーのパスを中央に送ると、松田が飛び込びゴール。

 43分、ジェフの攻撃。
 米倉のクロスはバイスが跳ね返しますが、こぼれたところを岩崎が拾ってシュート。
 しかし、GK若原の正面し、0‐1で折り返します。

■後半からジェフがギアを上げるも1-2で敗戦

 キックオフオフ直後、ジェフが決定機。
 小島からの横パスを受けた高橋がミドルシュートを放つと、相手DFにあたります。
 こぼれたところから見木がミドルで狙いますが、ポスト直撃。

 後半から京都は運動量が落ち、ジェフが前への姿勢を高めていきました。
 55分、京都は野田を下げて福岡を投入。
 福岡がインサイドに入って、三沢がウイングに。

 57分にもジェフのチャンス。
 右サイドから高橋がクロスを上げると、ファーで岩崎が落とします。
 オナイウが受けて足元でシュートを放ちますが、GK若原がセーブ。


 その後は、ジェフの勢いが落ちていきますが、67分にはジェフの攻撃。
 ブワニカのキープから、落としたところを岩崎がダイレクトでクロス。
 これを小島がニアで合わせますが、シュートは力なく相手が拾います。

 しかし、その後のクリアを、ウタカが猛ダッシュで拾います。
 米倉がブロックして新井一耀が受けるも、ウタカが再び奪って前進。
 最後は福岡が決めて0‐2。


 その後はジェフがボールを持つも、シュートまで持ち込めない展開に。
 82分、ジェフは福満、岩崎を下げて、チャン、大槻を投入し、大槻、ブワニカの2トップによる3‐5‐2に。
 京都も松田、荻原を下げて、宮吉、長井を投入。

 その直後、京都の攻撃。
 左サイド奥からのスローイン
 ウタカが反転してシュートを放ちますが、サイドネット。


 89分、ジェフが1点を返しました。
 ゴール前中央でえた良い位置のFK。
 見木が裏を突いてグラウンダーのシュートを放つと、米倉にあたって最後は新井一耀が押し込み1‐2。

 92分にもジェフのチャンス。
 後方からのロングキック、こぼれたところを見木がボレーで狙いますが、枠の外。
 1‐2でジェフの敗戦となりました。

■ウタカのプレッシングから失点

 京都はこれまで同様にアグレッシブでしたが、印象的だったのが守備面。
 ジェフのビルドアップ時、京都は同サイドのインサイドとウイングが積極的に前に出てきて、ジェフのSBとボランチをロックする。

 それによって、ウタカは守備範囲が限定され、CBだけを追えばいい状況になります。
 ウタカはパワーもスピードもある選手ですから、限定された状況でチェイスを仕掛ければ、迫力のあるプレスがかけられる。
 これによってボール奪取の確立も高まり、守備へのモチベーションも高まっている印象で、先制点もウタカが守備で足を延ばしたところからでした。


 これはオルンガを活かした柏にも、近い守備システムといえると思います。
 柏もインサイドとウイングが積極的に上下動することでオルンガの守備範囲を限定し、守備の負担も軽くして攻撃面で持ち味を出していた。
 ただ、京都の方が全体的に積極的でしたね。

 しかし、ウイングとインサイドが攻守に高い位置を取るため、ジェフがその裏を取ると中盤に大きなスペースがあった。
 特に中盤のサイドはぽっかりと開いていることが多く、そこを一気に持ち上がることができた。
 攻撃的な姿勢によって、相手チームも活性化する…という傾向は、オシム監督のジェフも同じものがありました。


 さらに、京都は前半から飛ばしていたためか、後半に失速。
 京都は積極的に前に出ていき運動量を求められるわりには、スタミナに不安があり90分持たない印象もあります。
 そこが現状での課題の1つなのかもしれません。

 一方のジェフは、1点ビハインドになったこともあって、後半開始と同時にスパートをかけていった印象です。
 京都は両SBを押し上げて、2バック気味にビルドアップを開始するため後方の人数が薄く、ジェフはそこを狙っていつも以上のハイプレスをかけて行きました。
 さらに、京都はリトリート時の守備バランスに課題が感じられる状況だったと思います。


 しかし、ジェフの攻撃は、中盤では前へ持ち上れるものの、崩しきるには至らず。
 ハイテンションで戦えたのも、後半開始から20分程度でした。
 逆に京都は劣勢でもウタカ1人でカウンターを作れるため、防戦一方とはならない強みがありました。

 失点はミス絡みだったとはいえ、ジェフの得点も崩せたわけではない。
 しかも、京都は前からのプレスからのボール奪取とカウンターからの展開ということで、どちらも狙い通りのゴールだったともいえるでしょう。
 京都はうまくジェフのミスを誘発したとも言えますが、逆にジェフは京都の決定的なミスを作り出せなかった。

 それだけ京都に圧力やストレスをかけられなかったともいえるでしょうし、そこが差となって表れてしまったのではないでしょうか。
 ただ、後半は巻き返した時間もあったし、岩崎や見木、ブワニカ、高橋などは頑張っている。
 若い選手たちが頑張っているうちに、勝てる形を作り出したいところですね。