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サイド攻撃とハーフカウンターを封じられ

 開幕から2連勝となったジェフですが、やはりそう簡単には行かないですね。
 それでこそ、面白味もあるというものでしょうが。
 栃木戦は1-1の引き分けということで負けはしませんでしたが、栃木がしっかりとジェフを研究してきた結果、ジェフの思う通りにはいかない試合展開だったと言えると思います。
 一方栃木の方も守備は良かったものの、攻撃には物足りなさの見えた試合だったのではないでしょうか。
■栃木の守備ブロックを攻略できず
 ジェフは3試合連続で不動のスタメン。
 ベンチ入りメンバーから北爪が外れて、鈴木隆行が入りました。
 栃木はボランチを変えてきました。
 出場明けの本間と今季初出場の菅を起用して、ダブルボランチに。
 開幕から2試合スタメンで前節は1ボランチを務めた小野寺と、中盤の中美がベンチスタートとなりました。



 栃木は組織的な守備バランスが特徴のチーム。
 サイドにボールが入ると必ずSBとSHの2人が対応に行くだけでなく、ボランチがサイド寄りに動いて中央とサイドのスペースを埋める。
 中央でも後方の選手が前に潰しに行くと、残りの選手で守備ブロックを形成する。
 細かなポジショニングなどを含めて、組織的に守る意識付けがしっかりとされている印象でした。


 一方のジェフは、ここ2戦のような奪った直後のボール奪取が機能しない。
 また栃木がジェフのサイド攻撃に対して出所をフリーにさせないため、遅攻で攻撃が作れない状況に。
 その結果、森本をめがけた長いボールが増えたものの、森本がターゲットになりきれず潰されるシーンが増え、そこへのフォローにもいけない状況が続きました。



 試合序盤は栃木のリズムだったのではないでしょうか。
 9分には栃木MF広瀬が、右サイドで粘ってクロス。
 中央の阪野が飛び込みますが、これはオフサイド


 続いて16分、栃木の右サイドからのCK。
 パク・ヒョンジンが蹴ったボールに対し、尾本がヘディングでシュートを放ちますが、金井に当たってゴールには至らず。
 ファーから走りこんできた尾本がフリーで合わせたシーンで、大岩が完全に前を取られてしまいました。
 栃木にとっては、ビックチャンスだったのではないでしょうか。



 19分にはジェフの攻撃。
 中盤低い位置でフリーになったパウリーニョから、裏を飛び出したペチュニクに長いラストパス。
 これは通りませんでしたが、2人で攻撃を作り上げました。


 この時間帯から栃木は前からのプレスが弱まり、特にジェフのボランチ付近がフリーになるシーンが増えていきます。
 しかし、ジェフがボールを持つ時間が長くなってはいきますが、そこからチャンスを作れない。
 パスを回していっても結局ラストパスは長いものとなり確実性の薄い攻撃が続いて、シュートチャンスまで持ち込めない展開に。



 栃木はプレスに行けないながらも、4-4-2でコンパクトに守り守備ブロックを形成。
 ジェフのサイドチェンジに関しても素早くスライドして対応し、アーリークロスも簡単には蹴らせない状況になっていました。
 ジェフはそのブロックの中にボールを入れられず、相手のバランスも崩せずにいました。


 41分にはジェフ右サイドからのCK。
 中村の蹴ったボールに対し、中央で金井が相手に競り勝ち、ヘディングで合わせますが枠外。
 これが前半、ジェフ唯一のチャンスでした。
■PKで先制も直後に失点しドロー
 前半終わって総シュート数が2本ずつと固い試合展開に。
 後半に入ってから両チームともに運動量が落ち、守備面でスペースが出始めていきました。
 前半に攻撃の形が作れなかったジェフは森本、井出などがサイドに流れ、よりサイドに人数をかけていく形になっていきました。



 試合が動いたのは57分。
 井出が左サイドでボールを受けて、中村がオーバーラップ。
 ボールを受けた中村は、そのままペナルティエリア内に侵入しクロス。
 これが相手のハンドを誘ってPKに。
 このPKを森本が決めてジェフが先制します。


 しかし、先制点が決まった直後の59分。
 栃木が低い位置で得たFKを蹴り、一度はジェフが跳ね返すも中盤で拾われます。
 そこから大きく左サイドに展開し、ハン・ヒフンが受けてパク・ヒョンジンにつなぎセンタリング。
 ニアで潰れて流れたボールを中央に残っていた尾本がフリーで合わせて、同点ゴールを決めます。


 このシーンでは左サイドに展開しハン・ヒフンが戻したボールを、ワンタッチでパク・ヒョンジンが素早くクロスを上げたこと。
 ニアで動いていた阪野に対する勇人のマークが遅れてしまったこともあったと思うのですが、それにしても中央で完全に尾本をフリーにさせたのはいただけなかったと思います。
 尾本には大岩が付くべきだったはずで、大岩は16分にもCKで尾本に前を取られてしまっています。



 得点が動いて栃木の方も、積極的に前に出ていくようになった印象でした。
 しかし、栃木は攻撃面で雑なプレーが多かった印象です。
 前半からハーフウェイライン手前でも積極的にサイドからFWをめがけたボールを蹴っていきましたが、キムを中心にジェフ後方はロングボールに強くそこが通らない。


 そのこぼれ球を拾おうにも、パウリーニョがいるので負けてしまう。
 前節横浜FC戦ではそこを拾ってサイドで細かくつなぐ展開も作れていたのですが、この試合ではサイドでうまくパスをつなげた場面はほとんどなかったと思います。
 中盤で奪ってもミスパスが多く、チャンスを逃すシーンが非常に多かったように思います。


 栃木が攻撃でリズムを作れないこともあって、ジェフが攻め込む場面が増えていきます。
 後半から栃木の守備ブロックはスライドも遅くなり、ジェフはサイドの深い位置までボールを持ち込めるようになっていきました。
 特に後半序盤は左サイドの中村が、自由にプレーできるシーンが多かったですね。



 そこで栃木は、72分に広瀬に代えて西川を投入。
 中村の対面となる右SHを代えて、守備の改善を狙っていきました。
 続いて76分には、杉本に代えて中美を起用。


 疲れの見える中盤の選手たちを、変えてきます。
 これによって、徐々に栃木の守備ブロックが落ち着いていきました。
 88分には湯浅に代えて、河本を投入していきます。



 低い位置やサイドでは比較的自由にボールを回せるものの、中央の攻略までいけないジェフ。
 82分には井出に代えてオナイウを投入。
 パワーで押し切ろうという意図だったのかもしれませんが、状況は大きく変わらず。


 90分には、森本に代えて水野を投入。
 水野にとってはジェフ復帰後公式戦初出場。
 投入直後に右サイドで自身が得たFKを蹴り、鋭いボールをニアの金井が合わせますが、惜しくも決まらず。
 金井は前半にヘディングで合わせたシーンも含めて、セットプレーで強い選手なのでしょうね。


 その後もジェフが攻め込みますが、チャンスまでは作れず。
 得点シーン後はミドルシュートこそあったものの、確実な決定機はほとんどなく終わってしまった印象です。
 結局試合は、そのまま1-1の引き分けとなってしまいました。
パウリーニョの信頼感、安心感
 試合前にもお話しましたが、ここまでの2試合は特別なジェフ対策を取ってきたチームがおらず、守備的な戦い方をしてきたチームもなかったと思います。
 しかし、栃木は少なくとも守備面において、しっかりとジェフ戦に合わせた準備をしてきた印象でした。


 栃木はまずサイドから簡単にクロスを上げさせないこと、中央でしっかりクロスへの準備をすることが、守備のポイントだったのではないでしょうか。
 遅攻ではサイドからのクロスしかチャンスを作れていない印象のあるジェフですから、攻撃を遅らされてクロスからの攻撃を封じられると厳しい部分があるということでしょう。
 そして、栃木からすればそこを封じ切れなかった後半序盤に、失点しまったということにもなります。



 今季のジェフはもう1つの武器として切り替え直後のハーフカウンターがあるわけですが、この日は開幕から2試合ほどの運動量や切り替えの早さを感じず機能しなかった印象があります。
 全体的なプレスが弱まった結果、パウリーニョがプレスに行く位置が低くなってしまい、相手を圧倒するまでにはいかなかった部分があるのではないでしょうか。
 水戸戦後にこのプレスを今後持続できるかどうかが重要ではないかという話をしましたが、開幕から2戦は蓄積された疲労も少なかったために、あそこまでやれた部分があったということなのでしょうか。
 アウェイで移動による疲労や、13時キックオフで気温による影響などもあったのかもしれません。


 また栃木は前著した通り、ボールを奪う場面でも他の選手が守備ブロックを形成し、全体のバランスを整えています。
 そのためジェフが中盤で奪い返した直後も大きな守備の穴がなく、ハーフカウンターに持ち込めない状況を作れていたのだと思います。
 ジェフがカウンターの起点を作ろうというところで激しく潰しに来れていたのも、後方のフォローがしっかりしているという信頼感があったからこそではないでしょうか。


 加えて栃木は後方に人数を固めコンパクトに守っていたために、ジェフが前線にボールを供給した直後の中盤での拾い合い等でも数的優位になるため、そこで奪いきれなかったという面も大きいでしょう。
 開幕から中盤の高い位置での競り合いに勝つことで試合のリズムを作ってきたジェフだっただけに、そこで優位に立ちきれなかったことは大きな痛手だったと思います。
 切り替え直後の奪い合いで勝てれば相手を押し込むことができるし、相手を押し込めばパウリーニョの位置も高くなるので、さらに高い位置で奪いそこからチャンスも作ることができる…。
 その流れが過去2試合の特に前半はうまくいったわけですが、この試合ではそこまでうまく機能しなかった印象です。



 フルシーズンを通して考えると、切り替え直後のハーフカウンターだけでは厳しい部分があるかもしれない…という部分は、ある程度想定できたところではないかと思います。
 すでに過去2試合でも90分を通してはやり通せていなかったし、夏場の不安もあります。
 前にも話した通り日本で切り替え直後のハーフカウンターというと、岡田監督が日本代表で試していたイメージが強いのですが、その際も途中であきらめてしまいましたし、あれをやり続けるのは簡単なことではないのかもしれません。


 ですから、今季のジェフとしては切り替え直後のプレスがまだ機能しているうちに、その他の部分を成長させていきたい。
 それがリトリート時の守備の安定や、ロングカウンターなどということになってくるのではないかなと私は思います。
 遅攻に関しては昨年終盤の流れからして、あまり期待すべきではないように思いますし、守備を固めてサイド攻撃やカウンター、セットプレーからチャンスを作れるようにしてきたいところではないかと。



 この試合、ジェフからすると得点もPKだけで、他のチャンスも少ない状況でした(もっとも過去2試合もチャンスは決して多くなかったですが)。
 守備面では大きな穴を作らせなかったものの、相手の攻撃面の練度の低さに救われた部分も大きいでしょう。
 やりたかった切り替え直後のハーフカウンターやサイド攻撃からもチャンスが作れず、収穫は少なかったというか課題が見えたことが収穫だったようにも思います。


 しかし、それでもパウリーニョがいれば、大崩れしないのかなと思わせる試合でもありました。
 過去2試合ほど高い位置でボールに絡めなかったパウリーニョですが、その分特に前半は後方に構えてボールを刈り取っていました。
 それによって、相手にカウンターを作らせず、ロングボールへの対応においても重要な存在になっていたのだと思います。
 パウリーニョのところでは必ず勝てると思えるほどで、そういった選手がピッチの中央にいることによって簡単にはやられないチームになっている。
 苦労した試合だったからこそ、パウリーニョの信頼感、安心感を感じる試合だったようにも思わなくもありません。



 そのパウリーニョ頼りのチームになるのではなく、パウリーニョを中心としていかにチーム全体として安定した強さを作っていくか。
 これで開幕から2勝1分と考えれば良い成績だとも思いますが、この日の栃木の出来を考えると勝たなければいけない試合だったように思います。
 「得点直後の失点」というのも勝負弱さを感じる部分とも言えなくはないですし、そういった部分を払拭して本当に強いチームになれるかどうかが今後の目標となっていきそうですね。