金沢戦でのジェフはがっつりと相手対策の守備をして、それがうまくはまった試合だったと思います。
ここまで前からのプレスがはまった試合というのは、関塚監督就任以降初めてとも言っていいのではないでしょうか。
図も使いながら、説明していきたいと思います。
3バックとなった過去2戦の金沢は、太田を中心としたビルドアップが攻撃のポイントでした。
3バックの中央でプレーする太田からサイドへ斜め前方のパスを出して、そこからさらに斜め前方のバイタルエリアを狙った攻撃をしていく。
そのため3バックからのパス供給を止められれば、攻撃を遮断できるというのがジェフの狙いだったと思います。
ジェフは両SHが、いつも以上に中央に絞って高い位置で相手を待ち構えていました。
そこから前線の2トップがプレスをかけて行って、サイドへボールを追い込んだところでSHの片方が前に出ていく。
かなり積極的なプレスだったと思います。
ジェフのFW一枚はアンカーへのパスコースを消しながら、DFへプレスをかけていく。
金沢は1ボランチ気味の3-5-2でしたが、インサイドハーフの1人は下がって受けることが多かった。
そこに対してはボランチの1人が前に出ていくことで、対応していました。
このプレスがはまっていた時間帯は、相手に攻撃を作らせず良い展開で戦えていたと思います。
しかし、前線の選手たちへの負担は大きく、90分間プレスをかけ続けるのは無理があった。
前半25分からはプレスに行けなくなり、金沢に攻撃を作られるようになります。
ハーフタイムを挟んで再びプレスに行けるようになりますが、後半65分あたりからはまたプレスが甘くなっていきました。
前からのプレスが甘くなると、バイタルエリアを空ける不安が出てくるため、ボランチが前に行けなくなる。
FWのポジションは高いままなので、結果的にジェフのFWとボランチの間にはスペースが出来てしまう。
そこを取られて何度か攻撃を作られていました。
加えて、SHが中に絞る傾向が強かったので、SB前のスペースが空いてしまう。
プレスに行けている時はサイドへのパスコースも遮断できていましたが、いけなくなるとサイドを使われて攻め込まれる場面が増えていった。
特に後半の金沢はジェフの守備が中央を絞る傾向が強いのを見て、サイド攻撃を増やしていったのではないかと思います。
25分には前方前寄りに絞る井出の裏を取られる形で、太田から馬渡にパスがつながます。
そこからバイタルエリアにパスを出されたものの、そのパスが合わず。
その直後にも太田から縦にパスをつながれて、フリーな状況で古田にボランチ前でボールを持たれますが、バイタルエリアで受けた大槻が収めきれず。
32分にも太田から左サイドへパスを繋がれて、ワンタッチパスからバイタルエリアを取られますが、最後はオフサイド。
後半も68分に、チャンスを作られます。
やはりここでも太田の縦パスからボランチに繋がれて、ジェフのFW横のスペースで星野がうまく受けて縦パス。
そこからバイタルエリアでパスをつながれて最後は馬渡がシュートを放ちますが、多々良にあたって終わります。
試合終盤のジェフはオナイウ、町田を投入して、プレスの改善を図ります。
日刊には「オナイウ不発」と書かれていましたが、求められたのは攻撃面ではなく守備面だったと思います。
そうでなければエウトンもいたわけで、この2人を前線でチョイスする必要もなかったはずです。
一方で金沢は太田を1列上げて4バックにしましたが、これも攻撃の起点を1つ上げてジェフのプレスを回避しようという狙いだったのではないかと思います。
それ以降の金沢はビルドアップの方法が少し変わり、サイド攻撃やロングボールの拾い合いなどが増えていきました。
試合終盤には金沢得意のセットプレーからチャンスを作りますが、決めきれずに終わります。
ジェフとしては前後半ともに時間が経つにつれてプレスにいけなくなり、太田を止め切れず攻撃を作られかけていたことになります。
しかし、金沢の攻撃にイージーなミスが多く、助けられていた部分が大きかったと思います。
ただ、プレスに行けない状況での守備に関しては、甘さもあったと思います。
以前から不安があるのは、ボランチエリア前でボールを持たれた時の対応が曖昧だということ。
FWがプレスバックするのか、ボランチが前に出ていくのか。
あるいは、そもそもボランチ前で持たれないようにうまくスペースを消す守備をするのか。
また、ボールサイドに密集する傾向も変わらず。
特にサイドでためられて、中央方向に展開される場面が多かったように思います。
サイドを攻め込まれた場面における、全体の守備バランスに課題があるのではないでしょうか。
しかし、それでもこの試合は無失点で終らせました。
今年のCBは引いて守る守備に強さがあるように思います。
近藤はセットプレー時のポジションに不安が合ったり、イも豊川に振り切られるなどスピードには不安があると思います。
けれども、引いて守ってゴール前を取られないという点に置いては、この2人は強さを感じます。
ただし、その分DFラインを積極的に上げる守備は計算できないかもしれない。
そうなってくると、FWなどの守備範囲が非常に広くなるし、プレスバックも厳しくなる。
この試合では特に積極的にプレスをかけていったわけで、その結果として2トップがともに90分間もたない事態になってしまったのではないでしょうか。
金沢戦で見せたSHも含めた積極的なプレスは、あくまで金沢対策だったと思います。
金沢がバイタルエリアを狙うことを第一に考え、あまりサイドに人数をかける攻撃ではないからSHが中に絞っても問題がなかったこと。
また、3バックからグラウンダーのパスをつなぐサッカーだったため、プレスがうまくはまったようにも思います。
それだけに次の試合では、また違った対策を取る必要が出てくるのかもしれません。
今後も相手対策を念頭に置いた守備を目指していくのか。
そして、何よりも堅守のチームで戦っていくのであれば、プレスがはまらない状況での守備のバランスといったものが、重要になってくるのではないかと思います。