熊本にとって震災による中断後初の試合ということで、フクアリはいつもとは違う雰囲気でした。
熊本の選手は、やはり動きが厳しそうでしたね。
1ヶ月も試合が出来ず練習試合でも45分しかプレーできていなかったということで、試合勘もそうだしスタミナ面でもいつも通りとはいかなかった。
そういった状況下での基準はわからないですが、それでも熊本の選手たちはよく走っていたと思います。
まずはそれがこの試合での大きなポイント。
そして、ジェフとしては後半に入って熊本が一気に失速したところを、しっかりと仕留めた試合でした。
正直相手が特別な状態でしたからジェフの評価は難しいところがありますが、それでもようやく勝つことができた。
熊本にとっては、1ヶ月ぶりの公式戦。
ジェフにとっては、1ヶ月ぶりの勝利。
これが希望となって、これ以降に繋がるかどうかですね。
■ジェフが攻めあぐねる前半
ジェフは吉田に代わってエウトンがスタメン出場し、右に船山、中央に町田という関係に。
怪我人が続出していたボランチには山本が復帰。
若狭と組むのかなと思っていたのですが、長澤とのコンビになりました。
井出もスタメンに復帰し北爪、若狭がベンチに回り、前節途中出場した菅嶋がベンチ外に。
また、熊本出身のGK藤嶋がベンチに復帰しました。
震災による中断もあって、怪我人の状況なども分からなかった熊本。
ここまで全7試合にスタメン出場していた左SB黒木とGK佐藤昭大がベンチ外になり、SB片山、GK畑が今季スタメン出場。
また、平繁と清武が2トップを組むことが多かったですが、この試合では巻と平繁の2トップに。
先にチャンスを作ったのは熊本。
3分、熊本が左サイドでボールを奪ったところから、右サイドへ展開。
清武が山本、船山をかわして、シュートを放つもGK佐藤の正面。
その直後にも、熊本の決定機。
中盤で左サイドから右サイドへ展開。
清武が山本をかわしてシュートを放ちますが、GK佐藤が片手ではじき出します。
8分にはジェフの攻撃。
左サイドの井出と阿部でパス交換をし、一度戻すと長澤がフリーに。
長澤がパスを出し井出が飛び出していったところは相手DFにブロックされますが、町田がこぼれ球を拾ってシュート。
しかし、GK畑の正面に終わります。
14分にもジェフの攻撃。
ロングボールの押し合いを船山が拾ったところから、中盤の井出、長澤に繋ぎます。
井出が思い切ってゴールを狙いますが、シュートはバーの外。
立ち上がりは巻へロングボールに反応する形で、熊本が積極的に前に出てきました。
しかし、ジェフも右SHに入った船山が積極的に裏を取ることで、徐々に熊本のラインが下がっていきます。
熊本の選手たちは動けている印象ではありましたが、一歩目の反応が遅い印象があり特に特に中盤の守備で先手を取りきれないところがあったように感じました。
両ボランチにパサーを置いたこともあって、ジェフがボールを持って縦にパスを出す展開が増えていきます。
ただ、チャンスメーカーの船山がサイドに回ったこともあって、中央での仕掛けが少ない状況に。
結果的に両サイドから確率の低いアーリークロスが増えていき、動きの少ない試合展開になっていきます。
30分にはアクシデント。
ロングボールの競り合いで、長澤と巻が接触。
巻は顔を腫らして出血もしていましたが、プレーを続行します。
31分、熊本の攻撃。
右サイドのロングスローから、こぼれ球を拾った岡本がシュート。
しかし、大きく枠を外してしまいます。
34分にも熊本の攻撃。
右サイドからのFKを清武が蹴って、ゴール前で合わせるボール。
中央で藏川が完全にフリーになっていましたが、そこには合わず。
それ以降はジェフがボールを持つ時間が長くなっていったものの、シュートまで持ち込めない時間帯になっていきます。
そのまま0-0で試合を折り返します。
■町田が2ゴールを上げてジェフの勝利
前半途中から攻めあぐねていたジェフは、右SH船山と左SH井出のポジションを変更。
ジェフは後半からギアを上げていった印象です。
対する熊本は、後半に入ってガクッと運動量が落ちていきました。
後半開始直後には後方からのロングボールを左サイドの船山がダイレクトで繋いで、中央の町田が受けると相手DFがファールで止めます。
ここで得たFKを船山が蹴って直接ゴールを狙いますが、相手の壁に当たってしまいます。
しかし、その後も船山はロングボールをダイレクトで合わせる形で、チャンスを演出していきます。
ジェフは後半から大きな展開で、相手を左右に揺さぶろうという意図を感じました。
51分にもジェフの攻撃。
中盤でこぼれ球を拾ったところから、左サイドの船山が井出とワンツーで中央へ。
そのままミドルシュートを放ちますが、ゴール左を逸れます。
53分にもジェフの決定機。
右サイドからのFKはGK畑が跳ね返しますが、船山が拾うと左サイドを駆け上がってセンタリング。
これがエウトンの頭に合いますが、ここはGK畑がファインセーブ。
足の止まった熊本がジェフの勢いを止められない展開が続くと、ゴールが生まれたのは56分。
右サイドの井出からのクロスを、ファーサイドの船山がトラップしてシュート。
これはミスキックになりますが、結果的にうまく町田の前に流れ、それに合わせた町田がゴール。
若干ラッキーな面もありましたが、ジェフが先制します。
失点した熊本は60分。
平繁に代えて齋藤を投入します。
齋藤は直後に接触プレーで頭を痛めるもプレーを続行。
熊本の選手たちは皆気持ちが入っていましたね。
先制点をあげたジェフですが、この試合でもまた得点後に勢いが落ちていってしまいます。
逆に67分には、熊本のチャンス。
ジェフの中盤での横パスを、岡本が奪ってカウンター。
そのままボールを持ちあがり、最後は中盤から飛び出してきた高柳が中央でシュートを放ちますが、惜しくもゴール左隅を逸れます。
69分、熊本の選手交代。
岡本が下がって、嶋田が入ります。
71分には、ジェフが選手交代。
井出に代わって、吉田が入ります
1点を奪ってから、シュートまで持ち込めなくなっていたジェフ。
しかし、73分にGK畑がボールを持って上がりすぎたところを、町田がボール奪取。
無人のゴールにシュートを決めて、2-0とします。
ジェフも運動量が落ちていき、中盤にスペースが出来始めた81分。
山本を下げて若狭を投入。
83分には熊本が巻を下げて、アンデルソンを投入します。
2点目が動いた後は、両チームともにシュートまで行けない展開が続いていましたが86分。
中盤でこぼれ球を拾ったジェフの吉田が、思い切ってミドルシュート。
しかし、バーの上を超えます。
89分には熊本の攻撃。
ベテランの右SB藏川がハーフウェイラインから長い距離を持ち上がっていき、阿部をかわして中央の清武へ。
清武がシュートを放ちますが、GK佐藤がセーブ。
後半アディショナルタイム、ジェフは疲れの見えた阿部に代えて比嘉を投入。
その直後にも熊本の攻撃。
右サイドで藏川が裏を取ってセンタリング。
こぼれたところを嶋田がダイレクトでシュートを放ちますが、枠の外に終わります。
試合終盤は熊本の方が攻め込んでいた印象もありましたが、そのまま試合は2-0でジェフの勝利となりました。
■大事なのは翌戦以降
ジェフはこの試合でも、がっつりと熊本対策をしてきた印象です。
ジェフの熊本対策は2つ。
1つは、両ボランチにパスを出せる選手を置いたこと。
もう1つは、船山をサイドで起用したこと。
この日のジェフはボランチの1人が下がって、CB2枚との3枚でビルドアップを作ろうとする動きが多かった。
これはニューイヤーカップでの熊本戦でも見られた対策でしたので、それを再び実施したということでしょう。
ボランチ1人が下がると当然残るボランチは1枚になってしまうので、両方にパスを出せる選手を置くことで最後方とボランチでパスを繋ぎたかったということではないでしょうか。
熊本はFW2枚で積極的にプレスをかけてくるため、ジェフは最後方を3枚にして数的優位を作る。
しかし、実際には最後方で数的優位を作ってもそこから前のパスワークが構築できていないので、効果はあまり見られなかったように思います。
結局ロングキックを蹴ることになるためロングキックの起点とはなっていましたが、それ以上のものではなかった。
また、イからのビルドアップが作れないので、熊本はイの守備を捨てる形で問題なく対応できていた印象です。
ボランチにパサーが増えたことによって、相手を押し込んだ状態で縦パスを出す際にはメリットもあったように思います。
ただ、その分ボランチで相手を潰せない、スペースを消せないといった課題も出てしまった。
序盤には清武に何度もシュートを放たれていますし、後半に入ってからもカウンターで中盤中央を取られたシーンがあった。
ボランチ付近を狙われていた印象もあり、中盤中央から攻撃を作られることが多かったように思います。
もう1つの狙いである船山のサイド起用は、熊本が4-4-2で前後左右にコンパクトに戦うのが基本であるため、サイドの外を狙おうということだったのではないでしょうか。
サイドでも船山は、チャンスメーカーとして機能していました。
特に後半左サイドに入ってからは、熊本の右サイドの守備が甘かったこともあって、何度も惜しいシーンを作れていたと思います。
ただ、その分サイド攻撃が多くなって、中央でのチャンスが作れなかった。
また、船山がチャンスを作っても、誰が点を取るのかといった状況は変わらなかったと思います。
しかし、この試合では、町田が結果を残してくれた。
どちらもラッキーなゴールではあったと思いますが、町田としてはしっかり仕事をしたことになります。
サイドは裏さえ取れれば、連携などはあまり関係なく成立しやすいエリアとも言えるかもしれません。
ただ、前半はクロスを上げても得点の可能性はほとんど感じなかったように、そこから中央の強さを発揮できるかどうか。
この試合では後半に熊本の足が止まって守備に戻ることも出来なくなっていたのでサイドからでもチャンスも作れましたが、他の試合ではそうはいかないかもしれない。
相手がしっかりと戻れる状況でも、船山のサイド攻撃で決定機を作れるかどうか…に関しては未知数だと思います。
あくまでも熊本対策であり、後半に熊本の足が止まったからこそ機能した形ではないでしょうか。
今後もこれを続けるのであれば、そこからさらに中央方向への崩しなどが作れるか、あるいは中央にも強さが見いだせるかどうか…。
熊本に関しては、好調だった頃のサッカーとは程遠い印象でした。
攻守に一歩目の反応が鈍く、ボールが足に付かないミスも多かった。
良い時の熊本は4-4-2でコンパクトに戦うサッカーが特徴で、ボールを奪ってから素早く縦へ…といった印象でしたが、さすがにコンパクトには戦えなかったですね。
被カウンター時の戻りも遅く、簡単に町田にバイタルエリアを取られてしまったり。
被遅攻時にも中盤のポジション修正が少なく、絞らなければいけな状況でパスコースが空いてしまったり。
FWがプレスをかけていっても、後ろがついていかなかったり…。
そういったといったところから全体のラインが下がってしまい、カウンターも難しくなっていったように思います。
ただ、この試合ではコンパクトに戦うサッカーは諦めていたのかもしれないし、それでも局面では戦っていた。
攻撃においても状況判断の遅さが目立ちましたが、それでも鋭い仕掛けや球際の強さは見せてくれていたと思います。
ジェフとしてもあの2点目が入っていなかったら、嫌な流れで試合終盤に進んでいたかもしれません。
追加点が取れずに失速していく…という展開は、ここまでの試合でもよく見られていただけに。
熊本が注目を浴びて、ジェフも戦いにくい状況ではあった思いますが、熊本はそれ以上に大変だったと思います。
ここからチームを作り直すのは簡単ではないのかもしれませんが、選手たちの懸命の頑張りで今後の可能性は見せてくれたのではないでしょうか。
相手チームのことながら、ここからの巻き返しを祈りたいと思います。
ジェフとしては、久しぶりの勝利。
ただ、前半元気だった熊本に苦戦していたところからしても、まだまだやるべきことは多いと感じます。
船山のサイド起用もこの試合ではあたりましたが、次の試合ではどうするのか。
熟成するのか、また相手の出方を見て新たな戦い方を考えるのか。
そのあたりも含めて、大事なのは次以降ではないでしょうか。
ともかく、熊本と巻をしっかりと迎えられて良かったですね。
おかえりなさい。
そして、これは熊本復興に向けてのスタートでもありますね。