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3-4-3のメリットとデメリット

 エスナイデル監督は昨年終盤こそシステムやメンバーを固定化しましたが、基本的には頻繁に動く監督といった印象で、特に負けている時はバッサリと手を加えることが多いですね。
 今年も開幕から勝ち星から遠ざかり、讃岐戦から3バックと2ボランチの3-4-3に変更しました。
 昨年も3バックでプレーした時期は長かったですが、その時は1ボランチの3-5-2だったので、3-4-3は公式戦で初めてということになるのではないでしょうか。



 讃岐戦後にも言いましたが、今のところ一番のメリットはスタートポジションで後方に選手が増えることではないでしょうか。
 4-1-2-3で前掛かりな状況になるとカウンターを受けた際に、2バックとアンカーの3枚しか残っていないことも多いジェフ。
 そこから守備へ戻る意識も薄いため、開幕直後はその展開でやられることも多かったと思います。


 現在の3-4-3なら状況次第ではありますが、カウンターを受けてもCBの3枚とボランチの2枚が間に合うことも多い。
 さらに相手の遅攻撃状態では5-2-2-1になるため、ダブルボランチと5バックで後方を固めて守ることが可能となる。
 また、守備に不安があるチームなだけに、単純に守備的な選手がスタメンに増えることも、メリットといえるのではないでしょうか。



 戦い方としては大きく変わっていないため、"システムが変わった"というよりは"後方の人数が増えた"という点で、ここまでは成功している印象もあります。
 ただ、戦い方を変えずにフォーメーションを変えれば、メリットだけでなくデメリットも生まれる可能性がある。
 単純に後方に人数が増えたということは、前方の人数が少なくなったということにも繋がります。


 そうなれば、前からのプレスの穴が生まる恐れが出てくるはずです。
 実際に讃岐戦の51分には、こんなシーンがありました。

 讃岐は後方で左右にパスを繋ぎ、右SB、右ボランチ、左ボランチと繋いでいきました。
 左ボランチがパスを受けようとした時に、最終ラインまで下がって受けることで、結果的に船山をおびき寄せる格好となります。
 それによってフリーになった左CBが開いて受けると、前方には広大なスペースが出来ていて、そこから持ち上がりジェフのDFライン裏へスルーパスを出しました。


 そこから佐々木匠がクロスをあげて、原が飛び込んでシュートを放ちますが、GKロドリゲスがセーブして失点は免れました。
 しかし、讃岐としてはジェフのプレスを綺麗に掻い潜って、決定機まで持ち込んだことになります。
 しかも、この時間帯はまだ1-0の状況で、決まっていればどうなるかわからない状況だったと思います。



 讃岐は4バック+2ボランチの6枚でパスを回していたところに、ジェフは1トップ2シャドーの3枚だけでプレスに行っているわけですから、どうしても追い切れない状況になる。
 それでもジェフの最終ラインは高いままであることが多いため、そこから一気に裏を突かれる危険性があります。
 この時、船山はまず讃岐の左SBに守備へ行き、左ボランチも追った結果、左CBを空けてしまったことになり、広範囲にプレスへ行かなければいけない状況となっていました。


 またこの場面では最終ラインも左SBアレックスがワイドに開いて前に出てきたため、ジェフの右サイドで数的不利を作られています。
 アレックスに誰がつくのかわからない状況となったため、右WB真希と右CB鳥海が右寄りに流れてしまい、佐々木匠へのスルーパスのコースが生まれたことになります。
 ゴールは決まりませんでしたが、船山が複数の選手をがむしゃらに追った結果、左CBと左SBが完全に空いてしまった展開と言えるでしょう。


 なお、讃岐戦では61分にもジェフの右サイドでボールを取られた直後に、相手ボランチがポッカリと空いてそこからピンチに陥っています。
 京都戦後半に相手にボールを持たれたのも、前からのプレスがハマり切らなかったからだと思います。
 京都が闘莉王を1つ前に上げたのも、そこを突くのが狙いだったのかもしれません。


 昨年終盤までのジェフは、4バックでも3バックでも中盤は逆三角形の3枚で固定化していました。
 そのため相手のダブルボランチを2インサイドが見る形が基本となっており、そこから前へ飛び出してプレスをかけていました。
 しかし、現在の2シャドーは攻撃時にサイドに流れることも多く、守備時にも相手ボランチだけでなくSBやCBも見ることになっているわけで、昨年の基本が崩れることとなります。



 そのためか、京都戦では茶島をボランチに入れて、2ボランチが前に出てプレスに加勢することも多かった印象ですが、チェックが遅れる場面も少なくなかった印象です。
 ボランチがチェックに行くためにも全体のラインを上げることが重要となってくるでしょうが、プレスがハマり切らなければ裏のスペースを突かれる恐れが出てくる。
 このあたりは、システムが違っても同じ悩みを抱えることになるのでしょう。


 3-4-3のシステムを採用するチームはJ2で多く見てきましたが、どこもシャドーの役割分担が重要となってくる印象です。
 多くのケースはプレスをかける時にはシャドーが前に出て行き、プレスがかけられない時は下がって5-4-1のようになる形だと思います。
 ただ、ジェフはそういった切り替えはせず、戻って守るという方針がないだけに、プレスをかけられない時にどう守るのかが課題だと思います。


 また、プレスをかける際も他チームはインサイドがSBなどへチェックに行く際に、逆サイドのインサイドが絞ってボランチを見ることが多い。
 そして、組織的にパスコースをうまく消して、サイドチェンジを遅らせる動きなどをしていますが、ジェフはまだそのあたりを詰め切れていない印象です。
 もちろんまだ変更して間もないというところもあるでしょうし、今後そういった組織守備を確立できるかが重要だと思います。



 熊谷は「前からのプレスは今の方が良い」と話しているようで、確かに4-1-2-3の方が前線でワイドに選手が構える分、一ヶ所にプレスをかけにくかったのかもしれない。
 3-4-3の方が前の3人で局所的にプレスをかけやすいのかもしれませんが、図のように横方向にずらされると、一気にスペースを突かれる不安があるように思います。
 もっとも熊谷は「船山や清武が激しくプレスに行ってくれるのが大きい」とも話しており、選手の変更やコンディションもあってプレスがかけやすくなっているところもポイントなのではないかと思いますが。


 プレスをかけるということはどのシステム、どの選手を起用するにしても個人だけでは確立できず、チームとしての意思疎通や約束事が重要なっていくはずで、前への勢いだけでは安定していかないと思います。
 そのため、今後チームとして連動したプレスが確立できるかかが、見どころなのではないでしょうか。
 昨年からシステム変更直後はうまくいくものの、相手に対策を取られると苦戦していく印象もあるので、これからが気になるところですね。