W杯壮行試合、日本代表対ガーナ戦が行われました。
その前に代表監督の交代劇について、あらかじめ私のスタンスのおさらいですが、以前にも話したように、もちろんこのタイミングでの解任はありえない。
ただ、かといってハリルホジッチ監督が良い仕事をしていて、あのままW杯に出場したら素晴らしいサッカーをしただろう…とも思ってはいないというお話でした。
オシム監督もインタビューで、協会に釘を刺しつつも監督にも問題があったのではないかというスタンスで答えています。
ヴァヒドはとても頑固な人間だ。彼は誰かに相談をしたり、助言を求めたりはしない。そのツケを彼はこれまで何度も払わされてきた。ただ……私もまた、彼同様に頑固な人間だ。そして監督たる者、そうでなければならないと思う。
しかしその場合、自分の信念を、自分のあり方を、きちんと説明することを怠ってはいけない。監督は自分の考えを明確に持ち、それをサッカー協会の人間にはっきりと伝えなければならない。
確かに外から見てても、少しわかりにくい部分のある監督だったようにも思います。
それは言葉だけでなく、サッカーの内容においても。
「縦に速いサッカー」、「相手対策の得意な監督」という言葉ばかりが先行していましたが、実際にそういった試合展開になったことは少なかった印象です。
個人的には、そこに大きな違和感や疑問を感じる部分がありました。
言葉ばかりが先行して今では監督解任もあって協会批判が先行し、過大評価されている部分もあるのでは…と思ってしまうことがあります。
とはいえ、何度も言うようにこの切羽詰ったこのタイミングで、何かしらの大きな問題がなく監督交代をするなんてことはおかしいことだと思います。
ただ、一方でこの交代は、協会幹部が決めたことであり、後任の西野監督に責任はないでしょう。
もちろん西野監督は協会スタッフであり、監督交代に関わった可能性もあり得なくはないでしょうが、決定権があったようにも思いません。
少なくとも監督としての"西野朗"に罪はないはずで、ニュートラルに新チームを見ていきたいと思っています。
このタイミングで日本人監督が指揮を執るのも、悪くないのかなとも思いますし。
もっとも、そう思う背景には私の中でハリルホジッチ監督への評価が、あまり高くなかったこともあるのでしょうが。
長い前振りが終わって、ガーナ代表戦ですが、0-2で日本代表の敗戦でした。
内容としてはスッキリとしないものでしたし、試合にも負けてしまいました。
ただ、狙いとしては、はっきりと見えてきたものがあると思います。
まず守備においては、5-4-1の状況である程度相手に持たせて、スペースを消す形を取ってきました。
これはチーム作りに時間がなかった要因もあるのかもしれませんが、ザッケローニ監督時代から長らく日本代表の守備がもう1つだったところもあるのではないでしょうか。
世界レベルになると1対1で苦戦するという要因もあるのかもしれませんが、スペースを埋めきれず、局面での甘さも目立っていたと思います。
5-4-1なら少なくとも左右のスペースは消しやすくなるし、後方に人数も多くなりカバーしやすくなる。
その効果もあって、ガーナ戦ではリトリートした状況で、守備が崩れることはほぼなかったと思います。
もちろんそこはガーナの出来の問題もあるでしょうし、やはり本気ではなかったとは思いますが、酷く状態が悪いチームでもなかったと思います。
ただ、カウンター時の守備は依然として課題で、試合でもカウンターからPKを取られてしまいました。
もう1つ気になったのは、5-4-1で前線が1枚になるので、相手を前から追い切れず全体が押し込まれがちになってしまう問題。
ただ、これに関しては試合途中から状況に応じて、本田が前に出て2トップ気味になる動きも見せていましたし、こういった変化でどこまで修正できるかが、今後の見どころの1つではないでしょうか。
攻撃においても狙いは感じられて、まずCBやボランチから縦パスを出して、シャドーが中盤で受けるのがビルドアップのスタートなのでしょう。
そこから落として中盤が仕掛けたり、前線が裏を狙ったり、WBを走らせたりというのが基本となるのではないでしょうか。
特に前半は本田へのパスが多かったですね。
これをやるためには、中盤の密集エリアでキープできなければいけない。
そのため、本田が重要となりそうですし、本田もこの仕事の方が活きるように思います。
そして、宇佐美もサイドに開くこともありましたが、中盤でのキープ役の1人としてスタメンで起用されたのかもしれません。
また、中盤であえて密集を作って数的優位になり、空いた選手を使うというのも狙いだったのではないでしょうか。
テレ朝解説の中田浩二などは選手が集まりすぎ…という話もしていましたし、それも1つの考え方ではあると思いますが、西野監督の狙いや考え方は違ったということではないかと思います。
実際そこから前を向く形も作れていましたし、最終的に「中盤で前を向く選手を作る」というのが、攻撃のベースとなるのかもしれません。
ただ、宇佐美、本田を2シャドーに置いてしまうと、前に走り出す選手が少なくなってしまう。
1トップの大迫は前にも飛び出せる選手ですが、ポストなどもこなしていたし、ターゲットが1枚では薄い。
そこでWBに攻撃的な原口を起用して、縦に飛び出してもらおうということだったのではないかと思います。
ただ、それ以上に機能したのが、宇佐美に代えて香川を投入した後半序盤だったのかもしれません。
香川は狭いエリアで受けられるだけでなく、前に仕掛けることも出来る。
本田がキープして香川が前に飛び出すという形が、ハマりかけていた印象もありました。
しかし、失点して14分に本田を下げて2トップにすると、それまでの後方からシャドーが引き出してキープする形がなくなってしまった。
そこから攻撃の形がチグハグになってしまっていった印象でした。
西野監督としては2点ビハインドになったこともあって、2トップにして攻撃のオプションを作りたかったのかもしれません。
ただ、単純に2トップにしたのではなく、大島・柴崎と二人のパサーをダブルボランチに起用した。
相手は後半から運動量が落ちていたためシャドーがポイントを作らなくとも、ボランチの2枚が前を向いて攻撃に絡めると判断したのかもしれません。
しかし、2人の同時起用には可能性も感じたものの、前に起点が作れず選手の距離感ももう1つで、試合終盤は苦戦していた印象でした。
チーム全体としてはやはりチーム設立からの間もないということもあって、細かな連携が出来ていない印象でした。
パスを表で受けるのか、裏で受けるのか。
サイドのサポートのタイミングや思い切って前に飛び出していいのか…という点で、迷いの多い試合だったように思います。
これが本番までに間に合うのかが大きな悩みではありますが、チームとして狙いが明確に出来ていたことは1つの収穫でしょう。
特に短期間でチームを作り上げるためには、はっきりとした指標が欲しいはずですが、それはある程度見えた試合だったと思います。
時間がなかったことを考えれば十分かった作れた印象ですが、これをどこまで追求できるのかが問題なのかもしれません。
ここまで短期間で作れたのは、日本人の監督で日本人らしいサッカーを始めたことも大きかったのかもしれませんね。
森保コーチも入閣しているので、ペトロヴィッチ監督風のサッカーになるのでは…とも言われていましたが、イメージとしては西野監督時代のG大阪でしたね。
前線には万能型の大黒(大迫)が入って、アラウージョ(宇佐美)やフェルナンジーニョ(本田)が2シャドーで変化を作り、遠藤(大島)がボランチでパスを散らして、宮本(長谷部)がリベロの位置に入る。
そして、WBの二川(原口)も攻撃でのアクセント作りで、意外と重要だった印象です。
サッカーが古いという意見も出るのかもしれませんが、監督というのは出来るものが限られている印象で、背伸びをしても逆効果だと思います。
そういった意味では、個人的には悪くない印象を受けた試合でした。
監督交代というカンフル剤の結果か、守備面では概ね集中力の高い試合だったように思いますしね。
ただ、一方で攻撃面では監督交代をしたことによる、焦りも感じた試合だったのかなと思います。
そのどちらが本番で出るのか。
その前に選手選考の話もありますが、選手選考ばかりに注目するのもどうなのかと思いますので、個人的にはピッチ上でどういった変化が生まれていくのかに注目していきたいと思います。