Jリーグがクラブの経営データを、発表しました。
今年はなぜかPDFでの公開に逆戻りしていますので、閲覧時はご注意ください。
今回もジェフの経営状況は大きく傾向が変わっていないため、昨年の情報と比較してみていきたいと思います。
まず昨年公表された情報を振り返ると、チームの大幅入れ替え直後のデータでした。
そのため「移籍金収入」が増加したのではないかと考えられ、『営業収益』が約5000万円ほど増加。
一方で「チーム人件費」も減っていますが、「トップチーム運営経費」が約1億3000万円も増えた結果、『営業費用』も約4600万円増えています。
では、「トップチーム運営経費」とは何なのかと調べたところ、浦和などが公開した情報から考えるに「代理人手数料」である可能性があるのではないかいう話をしました。
高橋GMは移籍金を減らしたという話をしていましたが、外国人選手に関しては1つの代理店に頼っている印象も強く、そこへの費用が増えたのではないかとも思います。
そのため、結果的に強化に関わった費用は大きく変わっていないのかもしれません。
そのあたりを踏まえた上で、今年の情報を見てみましょう。
『営業収益』は約3700万円の増加と言うことで、大きくは変わっていません。
内訳を見てみると、「広告料収入」で約4500万円、「Jリーグ分配金」で約5300万円増加。
分配金はDAZNの恩恵ということではないでしょうか。
また、「アカデミー関連収入」でも約4700万円増えています。
しかし、後で記載する「アカデミー関連費用」も若干増加しているため、アカデミー関連で利益が大幅に増えたわけでもないようです。
今年からU-12がスタートしたことも関連しているのでしょうか。
一方で大幅に収入減となったのが「その他収入」で、ここだけで約1億2300万円減少しています。
これは「移籍金収入」が減ったことを、意味するのではないかと思われます。
大幅入れ替えの翌年で、移籍する選手が少なかったことが大きいのではないでしょうか。
続いて費用の部。
昨年に比べて、『営業費用』が約1億6200万円も増えています。
この額は過去7年の中でも、最も大きい数字ということになりますね。
もちろん費用がかさんでも利益を出せればいいわけですが、『営業収入』は昨年と変わっていないわけで、あまりよろしくない数字と言うことになるでしょう。
最も大きく費用が増加したのは「チーム人件費」で、ここだけで約2億7800万円増えています。
この金額も過去7年で、一番大きい額ということになります。
一方で先ほど話した「トップチーム運営経費」は約1億300万円も減少して平年並みとなっていますので、代理人への支払いは済んだということなのかもしれません。
先ほどお話した「アカデミー関連費用」で約2600万円ほど増えています。
しかし、額としては微増で、その他は大きく変わっていません。
それだけ「チーム人件費」の増加が目立つ結果となりました。
過去2年間1億円以上の利益を出していたジェフですが、総支出の増加によって赤字に転落したことになります。
とはいえ、赤字額は少ない上、ジェフはJR東日本と古河という大企業の子会社ですから大きな問題ではないのでしょう。
さらに以前は3期連続の赤字でクラブライセンスが交付されない規則でしたが、これがJとJ2ではなくなりました。
そのため特に短期の赤字に関しては、そこまで気にする必要もなくなったということになります。
ただ、それにしても「チーム人件費」の増加によって赤字に転落したにも関わらずチームは下降傾向といった印象で、賢いチーム運営が出来ているのかという疑問が生まれるように思います。
特に高橋GMは経営方面に強い人材だと思っていだけに、意外な結果にも見えてしまいます。
あくまで高橋GMが1年目の新体制発表会で話していた内容は、累積された移籍金をなくすことによって、より優秀な人材を獲得することだったはずです。
そのため、「チーム人件費」を減少させるというつもりではなかったのでしょう。
さらに2年目となる2017年はオナイウ、井出、長澤などが退団したとはいえ、ラリベイ、熊谷、清武、キムなどを獲得し前年より戦力が増加したように思います。
しかし、そもそもとして2016年の戦力は総入れ替えの影響で、例年より厳しい戦力だったようにも思います。
経営データから見ても15-16オフの総入れ替えは、予算面以上に高橋GMがやりたい選手構成に入れ替えるための準備だったのではないかと思いますし、2016年は捨てていたのかもしれません。
それを考えると、2017年の戦力を比べるべき対象は、2015年以前ではないかと思います。
さらに言えば、お金を使えば良い選手を獲得できるのもある程度は当然だと思いますが、「チーム人件費」も増加傾向にあります。
個人的には現在の戦力も粒揃いではあるものの飛び抜けた選手は少なく、チームを引っ張りJ1に導いていく選手の補強・育成という面においては物足りなさも感じます。
もちろん短期的に見るだけでは判断の付かないところもありますが、かといって長期的な視野に立った運営が出来ているのか。
そういった説明もクラブからはないように思いますし、現状からするとどうしても厳しく見えてしまいますね。
チームの成績も、経営面でも、育成面でも結果が出ていないということになるでしょうから…。
なお、今夏の動きが少ないことも言われていますが、冬のオフに選手があまり退団していないことを考えると、総額の年俸は大きく変わっていないのことになるでしょう。
そして、「チーム人件費」における年俸の割合が大きいのであれば、予算の余裕は少ないのでしょうから、当然夏の移籍市場では動きにくくなるのではないでしょうか。
工藤、下平と補強出来たのも、単純に高木の放出分で獲得したということになるのかもしれません。
最後の資産の部ですが、こちらも大きな変動はないということになります。
ちなみに、『営業収入』の約25億9300万円、『営業費用』の約25億9700万円はともにJ2で2番目に多い数字で、J2平均の『営業収入』約14億1300万円、『営業費用』約13億7200万円を大きく上回ります。
しかし、J1の平均は『営業収入』が約40億8200万円、『営業費用』が約40億3200万円でジェフを大幅に上回っており、ジェフ以下の経営規模のJ1クラブは甲府のみということになります。
J2のトップも名古屋で、総収入、総費用ともに約40億を超えています。
ということは、ジェフはJ2でこそ予算面で優位にあるとはいえ、毎年J1からクラブが落ちてくることも考えればJ2でトップになることは少ない。
さらにJ2に長年いることで、選手獲得などの面でも弊害が起こっている部分があるでしょう。
にもかかわらず、現在のジェフは中途半端に買うクラブになって短期間の結果ばかりを求めているため、じっくりとチームを強化・育成することも出来ていない。
JリーグはDAZNマネーや外国人枠の緩和などによって、よりピラミッドを明確にする方向に進んでいるのではないかと思います。
日本サッカー全体で考えれば、日本代表よりも毎年ACLでは苦戦しているJクラブの強化の方が大きな課題となっている印象です。
それを考えればJリーグとしてビッククラブを作り上げ、そのチームがACLで活躍しJリーグも引っ張っていくという構想は正しいようにも思います。
J2を長年経験したことでJ2降格クラブがJ2を牽引できるかどうかでその年のJ2レベルが大きく変わることを体感しましたし、ビッククラブの重要性はより強く感じられる部分があります。
一方でその方向にJリーグが舵を取るのであれば、当然J1とJ2の差も広がってくるでしょうし、ジェフもますますJ1への道が遠ざかる恐れもあるでしょう。
果たしてジェフは、この波についていけるのか。
かといって、結果を急ぐだけでは成果は出ないことも十分に分かったはずですし、すでにJ1との差は広がりつつあるわけですから、予算面での優位性だけでJ1を目指すのはさらに厳しくなっていくかもしれません。
チーム強化のための明確なビジョンというものが、より一層必要になっていくのではないでしょうか。
それが結果的に効率の良いお金の使い方にも、繋がっていくのではないかと思います。