大分戦後、矢田は「ボールを持っても崩せなかった」とコメントしています。
「開幕当初からで、残り5試合でも同じ問題を抱えているのがものすごく悔しい」とのこと。
今年の早い段階から、相手を崩せていないという意識は選手の中にあったようですね。
また、熊谷も「引いた相手をどう崩すのかが自分たちの課題」と同じように話しています。
なぜ今までこういった話があまり出てこなかったのか…という疑問もなくはありませんが、素直な感想なのでしょう。
実際には今年の開幕当初どころか昨年からの課題だと思いますが、矢田は昨年途中からの加入ですしね。
対照的にパスサッカーを展開している大分は、理論的に攻撃を展開できている印象です。
繰り返しになりますが、大分のビルドアップはWBやボランチが下がって、後方を4枚にして相手を引き付けて繋ぐ形を狙ってくる。
そこにGKやボランチなども絡んでパスワークをスタートさせていきますが、その時に後方の4枚がワイドに開いて横にパスを繋いでいくのがポイントだと思います。
これによって相手を後方に引き付けるだけでなく、左右にも相手の守備を分散することに繋がる。
さらに左右にボールを展開していくことによって、相手の守備を揺さぶることもできる。
これをするために左右のCBは開いた時にパス出しのポイントになれるようにSBもこなせる選手を配置している上、GKにも足元の技術もある高木を起用しています。
こうして相手を後方に引き付けて左右に揺さぶっておいて、スペースを作って前線やサイドへと展開する。
そして、相手の守備が薄くなった前線では少ないタッチで攻め込んでいき、相手が戻ってくる前に素早くシュートまで持ち込んでいく。
また、1トップ2シャドーにすることによって、ギャップをうまく作って、相手のマークを捉えにくくしているように思います。
さらにサイドではテクニックもあって、縦へも飛び出せる松本や星などを起用。
両WBに走り込める選手を起用することによって、1トップ2シャドーだけでなく、左右からもワイドに選手が攻め込んでくる。
後方から前線まで、ピッチ全体で攻撃をデザインできている印象です。
一方のジェフはCB2人とボランチ1枚でビルドアップを始めるのが基本で、大分とは全く逆の傾向が見られるように思います。
両SBを押し上げることが多く、1ボランチの場合はインサイドも高い位置でプレーする。
多くの選手が高い位置を取るので、相手守備陣はそれについていかざるを得なくなり相手後方をケアすることが増えます。
これによってジェフの後方は薄くなるため、ポゼッションはしやすくなる。
しかし、一方でジェフから見て前方には味方選手も相手選手もひしめき合う、スペースのない状況になりがちです。
逆の手法を取る大分は自陣後方に味方選手も相手選手も多くなり、ビルドアップの難易度は上がることになると思います。
それでも大分はそこを交わせれば、前方にはスペースがあるためチャンスが作りやすい。
しかし、ジェフは前方にスペースがないため、自陣後方では繋げても相手にボールを持たされているような状況になりがちです。
相手を崩すということは相手を揺さぶってスペースを作ったり、フリーな選手を作ることが必要ですから、そういう意味ではかなり難しい状況に立たされてしまいます。
それでも選手の密集したところで崩せるような攻撃が作れればいいわけですが、チームとしてその手法が欠けているというのが致命的だと思います。
トライアングルを作ってパスを素早く回したり、相手の間で受ける動きをしてそこに縦パスを通したりというのが王道のパターンかと思いますが、そういった展開はほとんど作れていません。
小島が入って中央でもパスを繋ごうという意識は出つつありますが、個々の判断だけでは単発でしか形が作れないと思います。
ジェフもCBがサイドに開いてウイングやSBだけでなくインサイドもサイドに流れることによって、サイドに人数をかけて攻撃を作ろうということではあるのでしょう。
とはいえ、サイドで複数人が連動した攻撃は作れていないし、狭いサイドでの攻撃だけなのでそこを警戒されてしまうと終わってしまう。
だから、結局は相手のサイドにスペースがあるか、サイドを個人で打開できるかだけで、攻撃が決まってしまうように思います。
そのためシャドーの守備が中途半端で、WBも積極的に前に出がちだった山形相手には良い攻撃が作れた。
しかし、5-4-1でプレスは無理をしてこなかったものの、サイドを埋めてきた大分には苦戦した。
そして、前半に良い形を作れなかったジェフは個人技での打開を期待して後半から為田を投入したものの、良い方たちでボールが入らずに不発に終わったのだと思います。
実際、大分戦でも1点目は町田のプレスから、ハーフカウンター気味に決まったもの。
試合終盤の2点目もクイックリスタートからようやく相手の裏を取れて、サイドからクロスを上げて決められたもの。
大分の守備も引いて守っていたとはいえ、決して隙がなかったわけではないと思いますが、結局大分の守備を崩せないまま終わってしまいました。
相手を崩せなくとも前方に人数をかけて相手を押し込んでおいて、ボールを失ってもプレスをかけて奪い返してハーフカウンターというサッカーは狙えるかもしれません。
しかし、昨日も話した通りそのプレスも人数に頼ったかけ方から一向に改善されず、安定して圧力をかけられないためかわされれて逆にカウンターを受けてしまうことが多い。
さらに大分戦の後半などにもあったように、攻撃面で焦れてくると守備意識が低下して、切り替えも遅れてしまう傾向にある。
そのため、プレスからのハーフカウンターを狙うチームにもなりきれていない印象です。
結局、プレスもポゼッションも、細部を詰め切れずに中途半端になっている。
そこが現在の順位に繋がっているのではないかと思います。