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船山による0トップとそれまでの経緯

 シーズン終盤の岐阜戦から、船山が前線に入る形で戦っていたジェフ。
 西部謙司氏のブロマガによると、船山本人は「1トップというよりもゼロトップ」と話しているようです。
 確かに前線に張るのではなく動き回る形で、いわゆるセンターフォワードではなかったように思います。


 試合にも勝利した徳島戦、京都戦では、船山の0トップも機能していたと思います。
 特にカウンターから船山が受けて、サイドに素早く展開して攻撃を作る流れが目立っていた印象でした。
 セットプレーからではありますが、京都戦では船山自身もゴールを決めています。



 ただ、一方で岐阜戦と栃木戦では、0トップを封じられてしまった印象です。
 1つには単純に徳島戦、京都戦では相手が前に出てきたため、前方にスペースがあったことが大きかったのではないでしょうか。
 素早く攻めきる分には、スピードのある船山の0トップも活きるのでしょう。


 しかし、相手がセットして守る状況になると、サイドからクロスを上げても高さがなく苦戦してしまう。
 かといって、細かく繋いでパスワークで崩し切るというサッカーは出来ないチームですので、デメリットも目立ってしまうのではないでしょうか。
 もともと遅攻を作れないチームではありますが、0トップにして高さもなくなったことによって、より明確に課題が浮き彫りになってしまったのが、岐阜戦と栃木戦だったと言えるのかもしれません。



 さらに栃木戦では、0トップによるカウンターにも対策を取られてしまった印象です。
 徳島戦、京都戦ではカウンターになると、船山が少し下がってボールを受けて、そこが起点とする形が成立していたように思います。
 しかし、栃木は船山が下がって受ける動きをしっかりと分析して、CBがついていきボランチと共に潰すことによって、カウンターの起点を作らせない守り方をしてきました。


 また、過去2試合は船山が受けて左サイドへ展開というパターンが多かったですが、左サイドのスペースも確実に消してきました。
 シンプルな対策だったと思いますが、これだけでもジェフは徳島戦、京都戦のようなカウンターを作れず、苦戦していったように思います。
 結局、遅攻においてはマイナス面も多く、カウンターも封じられたということで、0トップのメリットはかなり薄れた最終戦だったのではないでしょうか。



 船山の0トップ起用は意外な印象も受けましたが、それまでにも予兆はあったように思います。
 今年のジェフは、8月18日の水戸戦から指宿が1トップでプレーしていました。
 しかし、ブログでも書きましたが、1トップに入った指宿はサイドに流れることが多く、前線中央で張ることの少ない印象でした。


 いわば指宿も0トップに近いような動きをしていたとも言えるわけですが、0トップならより中盤的な仕事ができる船山でも良いという判断だったのかもしれません。
 そもそもエスナイデル監督体制のスタートとなった昨年序盤は清武と船山の2トップだったわけですし、そこまで前線に高さにこだわるタイプではないようにも思います。
 さらに船山をトップ下から0トップに移せば、エスナイデル監督が好む4-1-2-3に戻せるというメリットも生まれてきます。



 しかし、そもそもとしてなぜ指宿が流れてボールを受けていたのかを考えると、指宿の能力にも課題はあったのでしょうが、チームとして前線中央にくさびのパスを入れて、そこへうまくサポートする形が作れていないから…というのが根本的な問題なのではないでしょうか。
 ラリベイなら複数人に囲まれてもうまく体を使って落とすことが出来るものの、今年のラリベイはコンディションが上がって来ない印象でした。
 だから、指宿の1トップになったのではないかと思いますが、ラリベイの個人技に頼ったポストプレーがなくなったため、0トップに近い形に移行せざるを得なかったのかもしれません。


 しかし、巻がロシアに移籍したこともあって、0トップの生みの親であるスパレッティ監督が率いたゼニトをチェックしていたこともありましたが、0トップの狙いはカウンターの起点になることだけではないはずです。
 守備ではいわゆる偽9番のところにCFより動けるアタッカーを置くことで、よりスピード感のあるプレスを実施できることがメリットの1つ。
 けれども、ジェフは船山の0トップにした試合から、むしろプレスは諦めて引いて守る形を取っています。



 さらに遅攻時には偽9番が中盤などに下がることによって、中盤を厚くすることだけでなく、あえて前線中央に選手がいない状況を作り出す。
 それによって前線中央にスペースを作り出し、そこへ中盤からどんどん飛び込んでいくことで、相手を混乱させる攻撃を狙っていました。
 しかし、それをうまく使うには中盤からのパスワークが必要ですし、ジェフは前線中央への攻撃は作れていないわけですから、遅攻時に前線をあえて空にするメリットもあまりないように感じます。


 むしろ遅攻時にも強引なサイド攻撃がメインとなっているだけに、クロスに対する高さ不足の方が目立ってしまった。
 それだけに、常時カウンターを狙えるのであればともかく、0トップのデメリットも感じられる部分があったように思います。
 そして、栃木のようにもともと堅守速攻を相手にするチームだと、どうしてもジェフがボールを持つことになるし、相手の方が守備が堅い分、常時カウンター狙いというのも難しいのだろうなと感じてしまいました。


 そうなってくると、やはり遅攻の質といったものも求められて来るのではないでしょうか。
 それに関しては0トップか1トップかといった部分ではなく、チームとしていかに細部の質を高められるかが問題となってくると思います。
 やはり最終的には、そこに行きつくのかなといった印象ですね…。