監督の去就に関して未だにアナウンスがないためモヤモヤするところもありますが、改めて過去2年間のエスナイデル監督に関して振り返ってみたいと思います。
まずエスナイデル体制2年目のジェフは、J2で14位となりクラブ史上最低の成績で終ってしまいました。
ジェフの成績は年々右肩下がりに落ちつつあるとはいえ、それを止められなかったという事実は大きなものでしょう。
サッカーの内容に関しても基本的には昨年から大きく変わっていない印象で、堂々巡りが続いているのではないかと思います。
ざっくりと言ってしまえば、やはりハイプレス・ハイラインを形に出来ないこと。
シンプルではありますが、これがすべてではないでしょうか。
エスナイデル監督自身、ハイプレス・ハイラインというスタイルを実施したいという思いが強いからこそ、それを実現できるノウハウがないというのは、極めて大きな問題となっているように思います。
チームとしてやりたいこと、作りたいものがあるにも関わらず、それを作り上げるための設計図を持っていなければ、当然そのチームには迷いが生じて混乱してしまうことになる。
しかも、その設計図を少しずつ修正するのではなく、作っては直し…を繰り返している印象で、完成形に近づいているようにはまったく感じない2年間だったように思います。
具体的に言えば、ハイプレスと言っても人に頼る傾向が強く、ボールサイドに人数をかけることで潰しにいく守備になっている。
少数で効率の良い組織的なプレスを構築できないため、そこを交わされると一気に脆さが出てしまう。
しかも、その先ではハイラインを敷いているわけで、プレスを交わされては広大なスペースを突かれてしまうという問題を抱えている印象です。
相手の研究も進んで昨年の夏場以降は大きく低迷し、昨年終盤にはハイプレス・ハイラインを諦めて成績を伸ばしていきました。
しかし、今年も再びハイプレス・ハイラインを実行したため苦しみ、極端なハイラインは諦めた結果、中途半端な戦い方になってしまった。
さらに前から追わない形でも中盤中央の選手が全員同サイドに寄るなど細かな約束事が作れなかった印象で、ハイプレス・ハイラインだからうまくいかなかったというよりも、細部を構築できないからどの戦い方でもうまくいかなかったのではないかと改めて感じました。
攻撃面においては、先週も色々と話しましたが、今年はJ2で2番目に多い総得点を記録しています。
ただ、総失点数も2番目に多い結果となっていますし、守備を顧みない攻撃で得点数を伸ばせた部分もあるのではないかと思います。
特に左サイドを個人技で打開するパターンが多かっただけに、そこに対策を打たれると一気に苦しくなる傾向があり、遅攻時に中央から形を作れない課題に悩まされていたように思います。
また、選手育成の面においては、熊谷のアンカー起用が成功したイメージがあります。
ただ、一方で高橋や乾、岡野など、若手選手の起用法を見ていると、粘り強く見守るといったイメージはないように思います。
欧州では跳ね返せて左右に大きく振り分けられるアンカーが好まれる印象があるので、単純に熊谷はエスナイデル監督の好みに合っていたという部分も大きかったのではないかと思います。
それでも熊谷のアンカー起用には成功したと思うのですが、一方でアランダや清武など有力選手を使いこなせなかった印象もあります。
原博実氏にもストレートに「チームとして機能していないように見える」と言われてしまいましたし、選手のやりくりもあまりうまくない印象です。
この日のサブメンバーを見ると、GK佐藤優也、DF増嶋竜也、MF茶島雄介、工藤浩平、為田大貴、FWラリベイ。そのほかにも試合前に見かけたメンバー外だった清武功暉。ほかのJ2クラブなら完全に中心になるような選手がいる。良い選手が多くいるのに、うまく活かしきれていない。チームとして機能していないように見える
さらに一時期大きく話題になった食事改革も、どれだけの効果があったのか悩ましいところではないでしょうか。
今年も夏場やアウェイでは走れなかったようにコンディションが大きく改善したようには感じませんでしたし、この2年で肉体改革が出来た選手がいたのかと考えると微妙なところだと思います。
昨年から「食事改革」というわかりやすいアプローチに対して、話題が先行し過ぎていた印象は否めないと思います。
これに関しては千葉日報も、珍しく厳しい論調で指摘されています。
着任後に実施した白米禁止の食事改革など「準備期間」が今季は短縮されたはずだが、効果が出るにはまだ時間が必要なのだろうか。
手厳しい印象も受ける記事ですが、これだけハッキリと書いてくれるのもジェフを追ってくれているからこそなのでしょうし、ありがたいことなのではないでしょうか。
総じてエスナイデル監督は、あまりサッカー感を感じない印象があります。
ハイプレス・ハイラインという比較的珍しいサッカーを目指しているという部分もあるのでしょうが、それを差し引いてもサッカーやスポーツというよりもエンターテイメントに近い印象を受けます。
それが当初はジェフサポにもハマり、他からも「見る分には楽しい」という評価を受けることもあったように思いますが、サッカーとしては当初から地に足がついていないように見えていました。
普通の監督はやりたいサッカーがあったとして、それを追及することによって試合に勝利し、強いチームを作るために努力していくものだと思います。
エスナイデル監督ももちろん勝ちたいとい気持ちはあるとは思うのですが、ハイプレス・ハイラインでどうやって勝つのかという絵がいつまでも見えてこない印象で、それに対して何らかの対応をしているようにも感じられないところがあります。
ハイプレス・ハイラインの勝てるチームを作りたいというよりも、ハイプレス・ハイラインを実行するチームが目標なのではないかと思うほど、具体的な勝利への道筋が見えてこなかったように思います。
エスナイデル監督は難しいサッカーの話などしないし、感情も素直に爆発させるタイプで、結果的に人間味のあるキャラクターで、それが一部には好かれているのかなとも思います。
見方によっては、どこか憎めないタイプということなのかもしれません。
しかも、近年のジェフのサポーターは監督の仕事以上に、監督のキャラクターを見る傾向が強いのではないかと感じるところもあります。
そのため、そういった愛すべきキャラクターを続投して来年も一緒に戦いたいという意見もあるとは思うのですが、一方でサッカーという舞台は勝負の場でもあります。
ピッチには「やるか・やれるか」といった戦いが待っているわけですから、キャラクターの好き嫌いだけでは勝負にはならないし、スポーツで勝つためには厳しい決断もしていかなければいけないはずです。
毎年言っているように思いますが、監督もクラブの関係者も含めて、今オフこそはしっかりと地に足をつけて来季以降の計画を立てていく必要があるのではないでしょうか。