当ブログはプロモーションを含みます

長谷部監督を続投できなかったジェフの根深い問題

 前節山口戦の結果をもって、J2最下位にまで落ちてしまったジェフ。
 今週末はアウェイで水戸と対戦します。
 水戸はここまで3戦全勝で、第2節終了時点で首位に立ちましたが、琉球が総得点で上回り2位となっています。

 現時点での順位は大きな意味を持たないとはいえ、琉球と水戸は小規模なクラブであることを考えれば誇るべき結果だと思います。
 ちなみに水戸は昨年公表された経営データではJ2最下位の予算で、琉球はさらにそれを下回ります。
 改めて大事なのは予算の額ではなく、いかにその予算を効果的に活用できるかだと言えるのではないでしょうか。


 今季もスタートダッシュに失敗したジェフは、エスナイデル監督解任を望む声も増えてきています。
 しかし、開幕前に一度この体制で行くと決めたからには、出来る限りエスナイデル監督で粘るべきではないかと私は思います。
 個人的にはどの監督が指揮を執るにしても、なるべくシーズン中の解任は避けるべきだと思っていますし、監督を交代するのであればオフにすべきだったと思います。

 ただ、そもそも現フロントはよほどのことがなければ、エスナイデル監督を解任する気はないのかもしれません。
 オフの社長やGMのインタビューを読んでもなぜエスナイデル監督を続投したのか、エスナイデル監督を具体的にどう評価しているのかという点に関しては有耶無耶な印象で、監督選択を重要視していないのかなとすら感じる時があります。
 監督を強く支持したり擁護したりという姿勢もあまり見せていないように思いますし、無関心なようにも見えてしまいます。


 しかし、一方で2016年途中に関塚監督が解任され、火中の栗を拾う形となった長谷部監督代行には「プレーオフが目標」、「27ポイントが最低基準」、「来期は結果次第」と高橋GMから明確でかなり厳しい評価基準を提示していました
 もちろん人材の評価というものは実績や環境などによってもノルマが異なるのでしょうが、それにしても180度に近い対応の違いにはさすがに違和感を覚えます。
 昨年は水戸は10位、ジェフが14位とエスナイデル監督体制ではかなり苦戦したわけで、長谷部監督代行に厳しい評価基準を設けたのであれば、なぜエスナイデル監督にここまで甘いのかと思ってしまいます。

 2017年にジェフのコーチを経て、昨年から水戸を指揮している長谷部監督は水戸でも堅実な仕事をしている印象です。
 守備はジェフ時代と同様に、4-4-2でコンパクトに戦うシンプルな方法を採用。
 その分押し込まれると弱い印象もありますが、細かなポジション修正を重視することで、全体のバランスを取りながら距離感の良いディフェンスを形成している印象です。


 攻撃面においてはジェフ時代は楔のパスをエウトンに当てて、船山や町田が拾って仕掛ける展開を狙っていました。
 そこからの発展をどこまで期待できるのかは未知数でしたが、水戸では昨年から相手の間を取るパスワークを展開。
 昨年の時点で、攻撃面での引き出しを感じさせていました。

 さらに今年はSHが少し引くことで、前のスペースを開けて、そこに他の選手を飛び出させたり。
 サイドでパスワークを形成しておいて、逆サイドのSHやFWが走り込む形も作っています。
 守備の基礎的な構築に関してはジェフ時代から期待できる監督だったと思いますが、攻撃面での積み重ねも作れているのではないかと思います。


 加えて、昨年は小島、黒川、伊藤涼太郎、岸本、ジエゴ、元ジェフの伊藤槙人など、若手を中心にこれまで出場機会の少なかった選手たちを積極起用。
 今年も残った選手たちに加えて志知、ンガト、平野、茂木など、若い選手たちの活躍が目立っています。
 もちろん水戸の戦力を考えると「使わざるを得ない」ところも大きいでしょうが、うまくその若手選手たちを活用できている印象です。

 長谷部監督の特徴として、選手の長所をうまく引き出し、短所を隠す起用法ができているように思います。
 ンガトやジエゴのようにパワーのある選手にはフィジカルを打ち出せるように戦わせて、志知や木村など技術のある選手に対してはそこでパスワークを構築させる。
 小規模クラブの日本人監督にありがちな、ただ全員を懸命に走らせてチームで守ってカウンターという方法論だけでなく、選手の強みを発揮させることが出来ている。


 だから、ジェフェルソン・バイアーノやジエゴ、ンドカといった多少癖のありそうな選手たちも、うまくチームに組み込ませることが出来ているのではないでしょうか。
 今年もDFラインにンドカや志知といった経験の浅い選手たちを起用して活躍していることからも、岡野や乾をジェフで見出した手腕は偶然ではなかったことが証明できていると思います。
 さらに昨年から在籍しているものの出場機会のなかった茂木、平野、ンドカなどが今季活躍していることからも、しっかりサブ組も成長させており補強に頼らない強化が出来ているとも言えるのでしょう。

 じっくりとチームを作り上げる監督といった印象で、タイプ的には小規模クラブの方が良いのかもしれません。
 そう考えると、ジェフには合わないとも言えるのでしょうか。
 ただ、守備の基礎を構築でき、攻撃面での積み重ねも期待できる上、選手の長所を引き出して若手を育てられるという特徴は、今のジェフに不足している必要な要素なのではないかと個人的には思います。


 しかし、「長谷部監督を続投しておけばよかったのでは」という意見も出ていますが、一方で当時のサポにはあまり評価が高くなかったようにも思います。
 前後の関塚監督、エスナイデル監督時代を思い返しても、現在のジェフサポはどちらかと言えば「粘って僅差で負ける」くらいなら「当たって砕けろ!」の方が好まれる印象がある。
 サッカーに関しても地味な戦い方をするくらいなら、穴が出来ても攻撃的に前へと出て行くスタイルの方が好かれるのではないかと思います。

 それが堅実なチーム作りをしていた長谷部監督や鈴木監督などが好まれず、結果が出なくなるまで関塚監督やエスナイデル監督が支持された要因ではないでしょうか。
 今のジェフはクラブ全体として、派手なエンタメ志向を求められる。 
 その点で長谷部監督ではダメで、エスナイデル監督が評価された部分もあるのではないかと思います。


 前田社長は「主役になるチームを目指す」と言う話をしていますが、以前も少し話した通り個人的には疑問も感じます。
 そもそもとして、ボールを持って攻撃的に戦えば主役と呼べるのか。
 ボールを相手に持たせてカウンターで突き、下剋上を狙う展開こそ主役であるという捉え方も出来るかもしれない。

 日本には『GIANT KILLING』という作品もある上、判官贔屓的な思想も強いと思いますし、チャレンジャー精神で戦う方が主役に近いという発想もあると思います。
 ただ、ジェフサポをマーケティングした結果、攻撃的なサッカーを目指すことになったというのであれば、それも否定できないことだと思います。
 そして、サッカーのスタイルはともかくとして、「主役を目指す」という方向性に関しても、決して一概に間違いとは言えないでしょう。


 ただ一方でフロントも話しているように、今のジェフは「変わらなければいけない」という危機感があることもまた事実。
 私はJ2降格当初から何度も話しているように、現在のジェフにはチームのベースとなる部分が感じられないし、若手も育っていない。
 そこを作り上げるためにも短期的な結果ではなく、じっくりとチームを育成してから結果を残す、長期的ビジョンを重視すべきではないかと話してきました。

 また、「予算が豊富」といってもあくまでJ2レベルであり、"札束で殴って昇格"出来るほどの規模ではない。
 実際、昨年公表のデータによると、ジェフの総予算は25億円程度ですが、J1の平均総予算は40億円にも上ります。
 戦力に関しても、ジェフがJ2に降格してから昇格したFC東京G大阪C大阪などような、圧倒的な戦力差はない印象です。


 ようするに、現在のジェフは中途半端な状況になっているということ。
 それならばいっそ、派手なサッカーで目先の結果を望むよりも、地味でも1つ1つチームを作り上げるべきではないのか…と個人的には思います。
 しかし、一方で長谷部監督代行や鈴木監督の頃のように地味なチーム運営をして負けでもすると、どこかスタジアム全体に悲壮感が漂ってしまう…という非常に難しいクラブの体質があるのかもしれません。

 結局はクラブのどこかに妙なプライドだったり、歯車さえ合えば一気に昇格できるはずだという勘違いが残っているということなのでしょうか。
 だから、ちまちまとしたサッカーやチーム運営は許し難いし、むしろ遠回りになるであろうと判断されてしまうのかもしれない。
 ただ、先ほども言ったようにあくまでも予算的にはJ2の中での富豪となっているだけに、予算で圧倒してJ1に昇格できるほどではない。


 監督選定の傾向をあえてフロント目線で前向きに考えるとすると、一喜一憂しやすく負のオーラが蔓延りやすいジェフだからこそ、前向きで派手な監督を優先しているということなのかもしれません。
 ネームバリューのある監督の方がサポーターだけでなく、親会社も納得させやすいというのもあるのでしょう。
 ただ、もしそうだとしたらジェフというクラブのサッカーの捉え方や向き合い方に大きな問題があるのかもしれませんし、それこそ少しずつでも変えていかなければいけないのかもしれません。

 見方を変えれば早期に結果が出せるはずだという理想と、そこまでの"クラブ力"はないという現実のギャップに悩んでいるということなのかもしれません。
 中途半端なクラブになっているのなら、いっそのこと貧乏なクラブになってしまった方がまだやることははっきりするのかもしれない。
 今から大富豪になるよりは、そちらの方が現実的ではあると思います。


 いずれにせよ、簡単な問題ではないのだろうと思います。
 「長谷部監督を続投しておけばよかったのでは」というほど単純なものではないと私は思いますし、水戸のサッカーを今のジェフでやったからといって受け入れられないかもしれない。
 荒治療はありますが、現体制で苦しむだけ苦しむことによって、現実を見るということも必要なのでしょうか。

 ただ、はたしてそれで、クラブの体質やメンタリティまで変わるのか。
 関塚監督であれほど苦戦した後もクラブは変わらなかっただけに、やはり難しい問題だと思います。
 ハッキリ言って糸口の見えない状況で、フロントもそれに対して諦めている部分があって、エスナイデル監督を続投したのでしょうか。
 あるいは、内心では現状維持でも構わないと考えているのか…。


 しかし、難しい状況にあるとは言え、どのクラブも大なり小なり悩みを抱えた上で、努力や工夫をしているはずです。
 問題を明確にして、解決策を模索することが重要であり、何もしていなければ今のジェフのように右肩下がりで落ちていくのも当然でしょう。
 もしかしたらそれこそが今のジェフに欠けている部分で、鉄道会社のようにただ問題なく安全運転で運行していけばいいというものではなく、問題を解決する努力をしていかなければいけないのではないかと思います。

 水戸戦のプレビューにはならない文章となってしまいましたが、ともかく目先の問題だけではない状況となっているように思います。
 今は苦戦しているとは言ってもJ2レベルではそれなりのタレントがいるはずですから、さくっと勝てる試合も出てくるかもしれません。
 しかし、それが根本的な問題を解決したことにはつながらないはずです。

 現状でのチーム崩壊を不安視するのであれば、やはり選手の気持ちが完全に切れた時なのではないかと思いますし、短期的にはそこを脱することが大事なのかもしれません。
 しかし、本当の問題はそこを脱した先に、いったい何があるのか。
 中長期的に見てクラブに希望を見出せるのかが、何よりも大事なことではないでしょうか。