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江尻監督就任への5つの疑問と5つの期待

 一昨日夜にエスナイデル監督解任を発表したジェフですが、昨日昼に後任として江尻監督の就任を発表しました
 エスナイデル監督解任時点で江尻監督は有力候補となるはずですが、後任に関しては「決定次第お知らせします」と書かれていたので、外部からの招聘を考えているのかとも思いました。
 しかし、結局は江尻監督の昇格で決まったということは、エスナイデル監督の解任は意外と突発的なもので、江尻監督の発表も遅れたということなのでしょうか。

 個人的には正直、良くも悪くも複雑な印象です。
 もちろん江尻監督には頑張って欲しいと思いますが、一方でクラブとしてはそれでよいのかと、どこかに引っかかる部分も残るように思います。
 ということで、江尻監督就任に関する疑問点と期待する点をまとめてみました。

1.また火中の栗を拾わせる形に

 江尻監督は2009年途中、ミラー監督体制でJ2降格の危機に陥っている状況で、監督として采配を振るうことになりました。
 しかし、クラブのレジェンドでもあり引退後も貢献してきた江尻監督に、そのような厳しい状況で指揮を取らせていいのかという指摘は当時も強くありました。
 しかも、監督として初采配だったにもかかわらず、就任直後にはJ1残留、翌年も1年でのJ1復帰と、無理難題を押し付けられたことになります。

 そのため次にジェフの監督を任せることがあれば、整った環境でやらせてあげたいという意見も良く聞かれましたが、今回もシーズン中の就任となってしまいました。
 前回も「すべてを江尻監督に背負わせるのか?」という声は多かったのですが、今回もそれに近い状況ではないでしょうか。

2.手近で済ませた印象も

 シーズン中であることなどを考えれば監督候補は少なく、現実的には江尻監督でも仕方がないとは思います。
 しかし、そもそもとしてオフに監督を探せばより多くの候補は考えられたはずで、エスナイデル監督続投を決めたフロントに問題があったはずです。
 であるのであれば、後任も責任を持って探さなければいけないと思うのですが、内部昇格ということで手近で済ませた印象が拭えません。

 江尻監督の性格を考えれば、お願いすれば快く受けてくれるのではないかと思います。
 しかし、一方でクラブとしてそこに甘えてしまっていないのか、前回と同じことを繰り返していないのかという疑問が残ります。 

3.前回監督時の手腕には疑問も

 2009年は仕方ないにせよ、2010年には勇人や茶野など江尻監督の望む選手を多く補強した印象でしたが、内容は乏しいものだったと思います。
 チームとしての方向性もいまいちはっきりせず、監督自身の中でも理想が固まっていないのではないかと感じる部分が多々ありました。
 コメントに関しても突っ込まれることが多かった記憶があります。

 また選手層の厚さを活かし切れなかった印象もあり、若手に関しても我慢して使い切れなかったところがあります。
 レンタル中だった倉田も夏頃からはスタメンを外され、ミラー監督の下でブレイクしかけていた益山も使いこなせず、選手管理の面でも苦労していたと思います。

4.監督と他クラブでの経験が少ない

 ジェフでは長くコーチを務めていますが、他クラブでの経験は少なく、監督経験は2009年・2010年でのジェフと2015年・2016年のジェフU-18のみです。
 2005年からはオシム監督との有名なエピソードで武者修行をし、当時新潟を率いていた反町監督の下でコーチとしてお世話になり、反町監督についていく形でロンドン五輪のコーチ経験も積みますが、それ以外でジェフの外に出たのは2011年・2012年のU-15日本代表コーチのみ。

 それだけジェフ以外での経験が浅いというだけでなく、指導者として外部からの良いオファーが来ていなかったのかもしれません。
 長谷部監督のように良い指導者にはすぐ声がかかると思いますが、そこまでの評価を得られていないということなのでしょうか。

5.奥の手を使ったため次の策に不安

 今回は監督代行などではなく、正式な監督就任となっています。
 そのため、基本的には後任監督などはリストアップせず、江尻監督で今年一杯は戦うのでしょう。
 江尻監督という奥の手を使ってしまったということにもなるわけで、もし江尻監督で失敗した場合は次の策がないのではないかという不安もあると思います。


 続いて、期待する面に関して。

1.U-18監督としての実績と経験

 ジェフU-18時代の江尻監督は2015年にプリンスリーグ参入決定戦まで進み、2016年には見事にプリンスリーグへと昇格させるなどしっかり結果を残しています。
 私は試合を見ていないので多くを語れませんが、当時のチームを見ていた方達からの評価も高かった印象です。
 ちなみに当時は辻、岡野、古川、竹嶋などが在籍していたことになります。

 また2009年・2010年はまだ経験の浅さが目立っていた印象ですが、あれから単純に10年近くの年月が経っています。
 様々な経験を積んでおり、当時よりも落ち着いた采配が見られるかもしれません。

2.チームの内情を知っている

 内部昇格ということでチームの内情を知っているため、スムーズにスタートを切れるのではないかと思います。
 ただ、今回の場合は残留争いで切羽詰った緊急事態というわけでもないですし、ともかく早期に結果がほしいという状況ではありません。
 本当に優秀な監督であれば、チーム状況に詳しくなくとも良い指揮がとれるのではないかとも思います。

 とはいえ、チームをしっかりと把握していることは、江尻監督にとって追い風になるでしょう。
 それを活かした運営に期待したいところだと思います。

3.マイナススタートから始められる

 エスナイデル監督は結果も内容も厳しい状況でしたから、江尻監督に求められるハードルは低いものとなるのではないでしょうか。
 もちろんここから立て直さなければいけないデメリットもありますが、現状を考えれば何もないところから作り直せる可能性もあり、江尻監督にとってやりやすい状況となるかもしれません。
 エスナイデル監督が基礎的な部分を構築できなかったことを考えると、まずは基本を大切にしたシンプルなサッカーで良いのではないかと思います。

 難しいことをやるのではなく、堅実に戦う真面目なチームを作る。
 それが多くの日本人監督に向いている方向性なのではないかとも思いますし、今クラブに求められているものに適したチームを期待できるのかもしれません。

4.内部昇格で費用も安く

 外部から招聘すればその分の年俸が必要になりますが、内部昇格ということでさほど費用は嵩まないかもしれません。
 エスナイデル監督への違約金は特別損失として年俸分が発生するかもしれませんが、江尻監督に関しては若干のプラスで済むのではないでしょうか。
 リストアップにかかる費用なども抑えたことになるかもしれません。

 一時のジェフは監督の途中解任が多く、それによって発生した特別損失が経営を圧迫していましたから、重要な部分だと思います。
 ただ、そもそもとしてオフに監督を交代しておけば、エスナイデル監督への違約金も必要なかったかもしれませんが…。

5.ジェフサポからの人気が高い

 前回は監督として失敗も経験している江尻監督なので、他サポからはネタにされることも少なくない印象です。
 しかし、温厚で真面目な人柄もあって、ジェフサポからは依然として人気のある人物だと思います。
 それだけに今回も江尻監督を応援する声は大きいのではないでしょうか。
 
 昨日も話した通り、ジェフサポは監督のキャラクターを重視する印象もありますので、サポの支持を受ける基盤は整っていると言えるのかもしれません。
 あとはしっかりと監督としての手腕を発揮することではないでしょうか。


 最後にジェフサポからの人気に関して話しましたが、一方で人気のある監督を就任させたことによって、ここまでの様々な問題や不手際を有耶無耶にしてしまうのであれば、それこそ大きな問題ではないかと思います。
 結局エスナイデル監督とは何で、フロントとしては何を求めたのか。
 そこからどうしてうまくいかず、それを踏まえて江尻監督に何を期待するのか。

 そこがハッキリしなければ疑問点1でも書いた通り、また「すべてを江尻監督に背負わせるのか?」ということにもなりかねません。
 今のところフロントからのコメントがないことも気になりますし、すべてをクリアにした上で次のステップに進んでほしいところではないでしょうか。
 そうでなければ、また同じことを繰り返すことになってしまうと思います。


 個人的にはエスナイデル監督は基礎的な部分を作れなかった監督だったと思うからこそ、江尻監督には地味でも着実に基本的な部分を大事にしたチーム作りをしてほしいと思っています。
 このあたりの希望は水戸戦前にも話しましたが、そういった点においてはU-18での監督経験などが活きる部分もあるのではないでしょうか。
 言い方を考えればまずは「普通のチーム」を作って、それを土台にして将来的にステップアップできれば…と思います。

 逆に言えば、その普通の基礎的な部分が出来ていなかった2年間とちょっととも言えるのではないでしょうか。
 普通にやるというのが意外と難しいのかもしれませんが、江尻監督としてもそこを乗り越えてしっかりとしたチームを作ってこそ、前回の汚名を返上できるとも言えるのかもしれません。
 基礎構築の面で期待できたのが長谷部監督で、この1年はなんとか耐えて来年長谷部監督を招聘できないかなとも思っていたのですが、江尻監督にもそれを超えるようなチーム作りが出来ることを期待したいと思います。