当ブログはプロモーションを含みます

4-4-2で「変わる」ことが出来ずエスナイデル監督の終焉

 江尻監督就任決定もあってすっかりエスナイデル監督は過去の人になりかけている気もしますが、しっかりと振り返ることによって今度こそ失敗を繰り返さないことが大事ではないかと思います。
 今季のエスナイデル監督は短い期間で終ってしまいましたが、テーマは「変わる」だったのではないでしょうか。

 エスナイデル監督の最終戦となった水戸戦後には、アランを起用した4-4-2を確立できず、4-1-2-3に戻した試合だったという話をしました
 これは4-4-2でチームを「変える」ことに、失敗したとも言えるのではないかと思います。
 もちろん本質的な変化はシステム上の問題だけではなく、より根本的な部分を変えなければいけない状況だったと思いますが。


 その水戸戦では従来の4-1-2-3に戻したものの勝ち切れず。
 これによって「変わる」ことにも失敗し、「戻す」ことをしても勝ち切れないと判断されて、解任となってしまった可能性もあるのでしょうか。
 少なくとも4-4-2が失敗したことは、今季序盤に結果が出なかった要因の1つではあると思います。

 では、なぜエスナイデル監督による4-4-2は、失敗に終わったのか。
 これまでの基本スタイルも振り返りながら考えていきたいと思います。
 まずはプレスに関して。


 基本的にエスナイデル監督のハイプレスは1トップが前線にいて、インサイドが飛び出して前に出て行く動きがスタート。
 水戸戦でも小島や真希が、相手CBまでプレスに行っていた場面が目立っていたと思います。
 インサイドによるチェイスでプレスがはまれば、そこにウイングなど他の選手たちもついていく。

 ラリベイが動けた時などは片方のCBをラリベイが見て、もう片方のCBに町田などが飛び出していきました。
 しかし、やはりクレーベはそこまで守備での貢献度はなく、水戸戦でもあまり追えていませんでした。
f:id:aratasuzuki:20190318210812p:plain
 黄色の曲線が、プレスをはめる時のファーストディフェンス。
 しかし、1年目途中から他チームのジェフ対策が明確になっていき、黒い円で描かれた1ボランチ脇を狙われることが増えていった。
 前線へのロングボールへの落としで攻略されていただけでなく、中盤でパスコースを消す動きが出来ていなかったため、縦パスからの攻撃も狙われるようになっていきました。

 これによってファーストディフェンス役の町田も言っていたように、インサイドがプレスバックして1ボランチ脇をケアすることも必要になっていき、無理なプレスをかけられなくなっていった。
 この結果2017年終盤は引いて守ってカウンターを選択せざるを得なくなった印象ですが、結果的にそれがうまくはまって7連勝となったのだと思います。
 ただ、この時のサッカーは妥協の産物でしたし、短期間だからこそ成功したのではないかと思います。


 話は戻って、プレスのかけ方ですが、図のようにインサイドが前に出ていき、そこではまればウイングなども飛び出していく。
 ようするに4-2-4気味に人数をかけ、結果的には相手と同数になるような守備だったと言えると思います。
 マンマーク主体のプレスだったと言えるでしょう。

 しかし、今年始めたシステムは中盤をフラットにした4-4-2だったため、より全体でバランスを保ちながら守備に行かなければいけない。
 水戸などのように2トップが同時に動いて、中盤とも連動してパスコースを消しがら追いかけて行く必要があった。
 今までのジェフの守備はむしろ中盤のバランスを崩して前に出て行き、がむしゃらに追いかけてプレスをかけて行く方法でしたから、そもそも異なる理論が必要だったのではないかと思います。

 簡単に言ってしまえば、あのフラットな4-4-2で戦うのであればより組織的な守備が必要になると思うのですが、過去2年間のエスナイデル監督の手腕を見ればそういった守備が構築できないことはわかりきっていたことだと思います。
 結果的に組織的にコンパクトに守る4-4-2は作れず、逆に3ラインを1つでも突破されると一気に脆さが出る課題ばかりが目立ってしまった。
 かといって安定してリトリートで守る手法も作れずに、水戸戦では従来の4-1-2-3に戻して引いて守らざるを得ない状況になってしまったように思います。


 続いて攻撃面に関して。
 これまでのメインだった4-1-2-3でのビルドアップはCBが左右に開き、1ボランチが下がって3バック気味になる。
 さらにインサイドが斜め後方に下がってSBを押し上げたり、サイド前方に流れてサイドでパスを繋ぐ。

 これが基本的な動きだったと思います。
f:id:aratasuzuki:20190318210740p:plain
 インサイドは流動的ではあったとはいえ、結果的にアンカーが最後方、インサイドは外へと流れて、全体でU字に選手が集まる。
 そのため中央に選手は少なくなり、サイドを縦に仕掛ける展開ばかりとなっていた印象です。
 それが遅攻で苦戦していった要因だと思いますが、基本的なパス回しの展開はこの形だったと言えるでしょう。

 後方やサイドといった相手の守備が緩い位置に選手が流れてパスを繋ぐため、結果としてボール支配率の高い試合が増えていきました。
 しかし、これが4-4-2だと前線が2枚になるため、中盤の枚数が減ってサイドや後方に人数を集めることが出来ない。
 2トップがサイドに流れて裏へと走る動きはありましたが、パスワークに絡める選手は少なくなったため、今までのような戦い方が出来なかったのだと思います。


 これはアランを左ウイング、堀米をインサイドに使った新潟戦での4-1-2-3も現象としては同じだったと思います。
 アランはパスワークに絡める選手ではないため、左ウイングで起用しても中盤を構成する枚数は減ってしまう。
 また堀米もDFライン付近まで戻ってパスを回していましたが、本来は繋ぎより仕掛けの選手でしょうから、相性の悪い起用法だったように見えました。

 アラン獲得時にも話しましたが、アランの良さを活かすためには左ウイングか2トップにおいて、前に飛び出す形を作らなければいけない。
 しかし、エスナイデル監督にはその形を作りきれずに、出遅れてしまったところがあるように思います。
 やはりエスナイデル監督のサッカーには、合いにくいタイプだったのではないでしょうか。


 チームを「変える」ために、今までにない選手を補強するのもありだとは思います。
 しかし、2列目からゴールを狙う選手という意味では清武などもいたわけですし、こうなる予想は出来ていたと思います。
 さらにアランも悪い選手ではないとはいえ、チームを大きく「変える」ほどのスペシャルな選手ではないと思うので、何とか組み込めたとしてもその負担の方が大きかったのではないでしょうか。

 それだけの問題ではないとはいえ、結果的に4-4-2にチャレンジしたことでさらに迷走入りしたところもあったのではないかと思います。
 果たして、誰がアラン獲得を望んで、4-4-2へ変更となったのか。
 監督続投のメリットとして監督と強化部の意思疎通が図りやすく、補強などが円滑に進めやすいというものがあると思うのですが、やはりどこか補強のポイントが全体的にずれていたように感じます。


 高橋GMが監督続投の理由を「変わる」選択をしたからであると話している以上、エスナイデル監督が変われたのか否かがテーマとなるのが自然でしょう。
 そして、個人的には予想通り変われなかったというのが正直な感想で、早期解任となってしまったことを考えても、「変わる」可能性があると判断したことに大きな問題があるという話になってしまうと思います。
 そもそもとして上記のインタビューでは「変わる」という抽象的な話に留まっており、どこが「変わる」ことを期待したのかに関しては深く述べられていません。

 個人的には、やはり基礎的な約束事などの構築が出来ていないことが根本的な問題といった印象で、そこが変わらない以上は厳しい状況が続くと思っていました。
 エスナイデル監督は昨年も頻繁にシステムや起用法を変えて戦っていましたが、どれにしても基礎的な部分は構築できず熟成が進まなかった。
 高橋GMは「多くの引き出しを持とうと考えるようになった」と分析していますが、個人的にはメインの4-1-2-3が熟成できなかったため試行錯誤していただけであり、「引き出しが増えた」というようなプラス要素にはなっていなかったと思います。

 それは今季の4-4-2も同じで、昨年様々なシステムを試しては失敗を続けていた延長線だったのではないかと思います。
 そして、その4-4-2もまた失敗をしたということで、結果的には何ら変わっていないと言えるのではないでしょうか。
 やはり根本的な問題はシステムなどではなく、よりベーシックな部分にあったように思います。

 
 改めて今年のエスナイデル監督に、いったい何を期待したのか。
 個人的には1年目から監督の手腕には疑問を感じており2年目も変わらなかった印象ですから、急に3年目になって「変わる」と期待するのは希望的観測に過ぎず、プロのクラブ運営というものを考えればやっていいものではなかったように思います。
 その上で短期間で監督を解任する状況に陥ってしまったわけですから、江尻監督で挽回したとしても「良かったね」と美談で済ませてはいけないのではないでしょうか。

 さらに言えば、今年のジェフの目標や今後のビジョンはどうなっているのか。
 エスナイデル監督で若手も少なくなってしまったように思いますし、ここを土台とした長期ビジョンなどは期待しづらい。
 ならば今年は結果を求めるシーズンだったということなのでしょうが、昨年クラブ史上最低順位のチーム体制を続投しておいて、結果を求めることは本当に妥当な判断だったのか。


 そのあたりがハッキリしないまま、江尻監督にバトンを渡したとしても、何を持って成功としていいのかもわかりません。
 監督が変わったことで目標設定を微調整する必要性も出てくるかもしれませんが、そもそもの目標がハッキリしていない。
 結局はチーム強化も若手育成もクラブの人気なども、すべてを江尻監督に丸投げしているようにすら見えてしまいます。

 なんとなく続投して、なんとなくスタートしてしまったようにも見える今季のジェフ。
 それは目標やビジョンがないクラブともいえ、そういった状況でサポに応援を期待し、チームに結果などを望むというのは、無理難題とも言えるのではないでしょうか。
 江尻監督というジェフ最後の切り札にチームを託した今だからこそ、クラブとしての明確な方向性が求められるのではないでしょうか。