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勇人「ボールをいつ奪いにいくかの判断」

 江尻監督の2度目の初陣となった京都戦でも、スタメンフル出場を果たしたキャプテンの勇人。
 ジェフの中では、MVP級の活躍だったのではないでしょうか。
 広範囲に守備に絡み、ボール奪取の回数も多く、攻撃時にも多方面に顔を出していました。


 第一期江尻監督時代の2010年にも、ジェフに降格したジェフに復帰しプレーしてします。
 当時も江尻監督への熱い気持ちを感じましたが、今回も思うところがあるのでしょうか。
 戦術の変更も大きかったのでしょうが、まさかここまで勇人が目立つ試合をまた見られるとは思っていませんでした。

 特に前へのプレッシングにおいて、貢献度が非常に高かったと思います。
 前半はある程度京都に持たせてプレスを控えていた印象もありますが、それでも攻撃から守備に移った時のプレスは激しかったと思います。
 それをリードしていたのが勇人と言えるでしょうし、ジェフは守備的なボランチが他にいないですから、勇人がバテた時にどう対処するのか不安も残りますね。


 近年、サッカーは「攻撃から守備への切り替え」、「相手チームの遅攻時」、「守備から攻撃への切り替え」、「自チームの遅攻時」の4パターンに、シチュエーションが分かれているという考え方をすることがあります。
 その発想で考えると、前半は「相手チームの遅攻時」には無理にプレスをかけず、「攻撃から守備への切り替え」の時には激しくいこうという意図だったのかなと思います。
 そして、そこからのハーフカウンターで、攻撃を作れていたところがあった印象です。

 その一方で「相手チームの遅攻時」においては、ボールを持たせ過ぎていた印象もありました。
 DAZNの解説だった三浦泰年氏も京都に比べてジェフはプレスの寄せが甘いと話していましたが、特にクレーベと為田は前に追いかけられている時はまだしも、セットして守る状態での守備は甘すぎた印象です。
 それによって後方で自由に回させ過ぎていた印象で、それが勇人も言う「もう少し前からいきたかった」という話にも繋がっていくのではないでしょうか。


 後半途中からはアランを投入したこともあって、勇人も「それができた」と話してます。
 ただし、前半からあれをやって90分間やり通せたかと言えば、厳しかったのではないかとも思います。
 かなり激しくプレスにいっていた印象でしたし、フルタイムは持たなかったと思いますから、結果的には後半途中からペースを上げるという策は間違いではなかったようにも思います。

 しかし、それにしても前半は苦しかった印象がありますから、「相手チームの遅攻時」にもプレスをうまくかけられるか。
 勇人も「ボールをいつ奪いにいくかの判断」の話をしていますが、激しく前からプレスをかけ続けてボール奪取を狙うまではいかないにしても、ある程度の高さまでボールを持ち運んできたらプレスをかけて相手の攻撃を限定する。
 そういった点ではクレーベと為田の守備はやはり物足りないと感じるところが強くあると思いますし、2人も守備で課題がある選手を抱えるというのは負担が大きいようにも思います。


 江尻監督は2010年も、プレッシングサッカーで戦っていくつもりなのかなと感じる部分もありました。
 ただし、序盤以降はそれがうまくいかなくなった印象で、11月に残り試合を残した状況で退任が発表されます。
 なお、この時の発表のタイミングに関してもフロントへの批判の声は多かった印象で、結果が出なかった責任をおわされていたようにも見えました。

 江尻監督は退任が発表されてから、再びプレッシングサッカーにチャレンジしたように見えました。
 その時も気持ちを込めて戦っていたのが勇人で、京都戦はそれに重なって見えたところもあります。
 ただし、その時もシーズン序盤同様にプレッシングが90分間持たず、前半だけでスタミナ切れを起こす展開で、決してうまくいっていたようには見えませんでした。

 それだけに、今回もプレスを重視していくとしてもゲームプランというものが非常に大事だと思いますし、ある程度ボールを持たせる時間も重要かもしれない。
 さらに勇人の言うように、ボールを持たせている状況でも「ボールをいつ奪いにいくかの判断」 を明確にして、「相手チームの遅攻時」にもプレスをかけて自由にさせない守備を作り出したいところではないでしょうか。
 いずれにせよ、エスナイデル監督体制ではどんな状況でも個人判断で追える時は追う、ダメなときは諦める…といった傾向が強かったですから、チームとしてプレスの判断を作っていこうという意識を持てたことは大事なところなのではないかと思います。


 ちなみに2010年の江尻監督のサッカーに関しては狙いが曖昧な印象があり、はっきりと「これだ」というものを確立できなかった印象があります。
 シーズン序盤は山口慶をアンカーにし、その1列前に工藤と勇人を置いた4-1-4-1を採用し、前からのプレスも強めだったと思います。
 しかし、夏前には早くもそのプレスの運用が厳しくなり、中途半端なサッカーになっていった記憶があります。

 そして、5月末に水戸に敗れたところで、応急処置的に巻と米倉を2トップに置く形にシフトして、またガツガツと前からプレスをかける戦い方にして、愛媛戦に勝利、甲府戦には引き分けという結果を納めました。
 この結果で何とか昇格争いに生き残れた印象もあったのですが、江尻監督は甲府戦後半に巻と米倉を下げた後の戦い方に対して、「自分たちのいい部分はしっかりとパスつないでいくことだと後半残り20分で感じた」とコメント
 私にはチーム作りに苦しむ中で、巻と米倉に助けられていた印象もあっただけに、この言いぐさには違和感を覚えました。


 結局、巻はJ2に降格してから結果を残せておらず、一部サポーターからも批判の声が上がっていたこともあって、その夏にロシアへの移籍を決めます。
 一方で江尻監督は上記の話からしてもパスサッカーを追及していくのかと思いきや、巻移籍決定直後の大分戦ではネットが相手のミスからボールを奪って決めたゴールに関して「我々が狙いとしている点の取り方」とコメント
 パスワークから決めたゴールもあった試合なだけに、どこか腑に落ちない印象がありました。

 今思えば江尻監督自身の中でも、やりたいサッカーを整理しきれていなかったところがあったのではないでしょうか。
 そういった第一期江尻監督時代の記憶もあって、監督としての手腕に関しては正直信用しきれない部分もありました。
 しかし、今回はあれから長い月日が経っており、ユース監督時代の経験もあるわけで、それを活かしたチーム作りが出来るのでしょうか。

 日本人監督は真面目ですし、いろいろな知識もあるのだろうと思います。
 その中からやりたいサッカーを整理して、納得のいくところに落とし込めるのかが大事なのかなと思います。
 前回の江尻監督はそこに苦労したのではないかと思う部分もありますし、最終的にはいかに実戦の中で戦えるチームを作れるかどうかが問われるところなのかもしれません。