長崎戦直後、Twitterの方で「相手の行為がどうのとか審判がどうのとか、言ってる場合じゃないと思う」とつぶやきました。
1-4というスコアはもちろん、戦術がはまらず対策を取られた試合内容においても、大敗したタイミングにおいても、ショックの大きい試合だったのではないかと私は思います。
江尻監督に就任してからのジェフを振り返ると、就任直後はうまくいっていた印象を受けていました。
それまでにはない楔のパスからの攻撃も狙えて、相手の強みを消す守備も上手くいっていた。
就任から3戦負けなしと、結果も上々でした。
しかし、琉球戦で1トップに寿人を起用してから、チームに迷いが生じてしまった印象です。
楔のパスも狙えなくなり、前線にターゲットがいないため起点を作れず、アタッキングサードにボールを持ち込めなくなった。
かといって寿人を活かすような攻撃も作れなかったですし、現在寿人を1トップで起用していないことから考えても、あれは失敗だったと言えるのではないでしょうか。
迷走を脱するきっかけとなったのが、山形戦のハイプレス・ハイラインということになるでしょう。
山形戦は1-3で敗れたものの、寿人の起用もあってチームとしての方向性に迷いが生じた中で、やることがはっきりしたことが大きかった。
戦い方が明確に提示されたことによって、選手たちにも迷いがなくなったことが重要で、岐阜戦では5-1と大勝し、東京V戦では1-1の引き分けに終わっています。
けれども、長崎戦ではハイプレス・ハイラインの欠陥を突かれて、1‐4で大敗してしまった。
これによって、本当にこの戦い方で良いのかという迷いが再び生じてしまうかもしれない。
しかも、この戦い方はエスナイデル監督体制で失敗しているスタイルなだけに、なおさら懐疑心が生まれかねないと思います。
さらに、気になるのが、エスナイデル監督時代と同じような傾向のチームになりつつあるということだと思います。
軽くまとめると。
・大勝もするが大敗もしやすい
・パスサッカーには強いがカウンターに弱い
・サイドの裏を狙われると脆い
・ビハインドになると焦って裏を取られる
・90分持たず後半の失点が多い
・走力で上回るのが前提で走り勝てないと成立しない
・相手に引かれてボールを持つと苦戦する
・為田頼りの攻撃になる
他にもいろいろと言える気がしますが、主に悪い意味で似た傾向のチームになりつつあるように思います。
監督を交代したにもかかわらず、同じ戦術に戻して同じような課題が出ているわけですから、客観的に見れば非常におかしな状況と言えるのではないでしょうか。
ただ、高橋GMも江尻監督も戦い方は継続するという話で一致しているわけですから、良くない方向でこうなるのも必然なのかもしれません。
成功したサッカーを引き継ぐというのならまだしも、失敗したサッカーを継続して同じ問題に直面しているのですから、不思議な話ではないかと思います。
もちろん戦い方を継続しつつ、諸問題を解決することが理想ということなのかもしれません。
しかし、2年以上戦ったものの右肩下がりで低迷したスタイルですし、そもそもの戦術に欠陥があるようにも思えます。
そのサッカーに無理をしてこだわる意味というかメリットが、私には見えてこない印象です。
個人的にはジェフを長く見てきた江尻監督だからこそ、長年のクラブ状況を踏まえた上で、江尻監督が考える理想のジェフを目指してほしかった。
にもかかわらず、それが直近で失敗したエスナイデル監督のサッカーのコピーでは、さすがに支持しきれないようにも思います。
江尻監督は前回就任時もオシム監督の名前を多く出していましたし、自分のサッカーを持てないということなのでしょうか…。
高橋GMも江尻監督も同じように継続する方向で話していることから考えると、江尻監督はフロント寄りの色に染まっているということなのでしょうか。
もちろんフロントと監督の意見が一致することは本来悪いことではないはずですが、現状だとフロントの考えに疑問点が多いと思いますし、クラブの成績を見てもそのやり方で低迷しているのが実情です。
フロントからの指示も大事ではあるのでしょうが、監督が現場の人間として強い意思を持つことも同じくらい重要なことだと思います。
オシム監督がジェフに就任した際、長く在籍してきた江尻コーチに「なぜ勝てないのか」を聞いたエピソードはとても有名ですね。
そして、「このチームが勝てないのかわからないお前がいること自体が、ジェフが勝てない理由なんだ」とオシム監督は言ったといいます。
このままの流れだと、その時のオシム監督の発言が核心を突いていたのではないかと思うような状況になりつつある気がします。
岐阜戦、東京V戦と、2試合連続で試合後にエスナイデル監督の名前を出していた江尻監督ですが、大敗した長崎戦後も「これが我々のスタイルである」と話しています。
このコメントから考えれば、今後も同じ方向性で行くのでしょう。
エスナイデル監督のサッカーをベースとしたハイプレス・ハイラインで戦うという時点でマイナススタートにも近いようにも感じてしまいますが、これを修正・改善することが江尻監督の使命となるのでしょう。
長崎戦のように、縦に速い攻撃でサイドを突かれた時にどのように守るのか、相手に引かれた時にどう攻めるのか。
そもそも、ハイラインを持続して、セットした守備に移らない守り方は現実的なのか。
昨年初めに書いたように同じハイプレス・ハイラインでもナポリなどは、プレスがはまらなければすっと下がってボックス守備に移っていましたし、例え継続を選んだとしても大幅な修正がなければ成立しないのではないかとも私は思います。
さて、ここまで長くなってしまいましたが、今週末にはアウェイで栃木と対戦します。
栃木は現在3勝7分6敗で、勝点16の18位。
ジェフは現在15位ですが、4勝6分6敗の勝点18ですので、負ければ順位で下回ることになります。
今季から栃木には、田坂監督が就任。
田坂監督と言えば大分で指揮を執り、2012年には木山監督率いるジェフをPO決勝で破ってJ1に導いています。
また、ジェフがオシム監督時代にはよく練習見学に来ていたという目撃証言もあり、意外とジェフにつながりのある監督でもあります。
今年の栃木は4バックと3バックを、相手や環境に合わせて使い分けています。
ハードワークで守備をしている印象で、後方に下がってスペースを消すのを前提に、そこから前へ出ていく守備が特徴なのかなと思います。
そこからボールを奪って大黒がポストプレーをし2列目の選手を活かしつつ、大黒自らもゴール前へと侵入していくサッカーとなっていたと思います。
しかし、前々節岡山戦のウォームアップで大黒が負傷し、前節町田戦も欠場。
また、枝村は怪我から復帰したものの、岩間も5月に全治7~8か月の大怪我を負っています。
もともと戦力的には厳しいチームだと思いますし、やりくりの難しい状況となっているのではないでしょうか。
それでも5月12日に甲府戦で1‐0の勝利をあげると、大宮、岡山、町田と3試合連続で引き分けとなっています。
それだけ勝ち切れていないともいえるのでしょうが、甲府戦前までは7試合勝ち星なしでその間の成績は3分4敗となっていました。
順位も一時は最下位にまで落ちていましたが、この4試合で何とか降格圏を脱出したということになります。
ジェフとしては山形戦、長崎戦のような展開にはならず、岐阜戦のような試合になることが理想と言えるのでしょう。
ハイプレスをかけて相手を押し込み、セカンドボールを拾って、相手の守備が整う前に攻撃を仕掛ける。
そこから攻撃を畳みかけるサッカーができるかどうか。
しかし、そのためにはどうしても走力で相手を上回ることが基本となるため、走れなくなった時にどう戦うのか。
また、相手が速い攻撃で、ハイプレスをかいくぐってきた場合は。
加えて、相手が堅守速攻スタイルで戦ってきた場合に、為田を封じられたらどうするのか。
田坂監督も当然長崎戦はチェックしてくるでしょうし、ジェフ対策を取ってくるでしょう。
その時にジェフとして変化をつけるのか。
それとも対策をとっても、それを上回るだけのサッカーを築いていけるのか。
エスナイデル監督のハイプレス・ハイラインは極端な戦い方で、対策を取られてから一気に崩れていった印象でした。
それだけにそのサッカーをベースとして戦っていくのであれば、ここからが本番ともいえるのかもしれません。
アウェイで順位的には近い相手とは言え勝ちたい相手と言えるでしょうし、長崎戦で見えた課題に対しての対策も見たいところではないかと思います。