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初スタメンの安田とジェフのビルドアップ

 千葉ダービーでの敗戦を受けて町田戦でのジェフはスタメンを入れ替え、鳥海、ゲリア、安田、勇人、寿人を起用。
 試合前は佐藤兄弟が話題に上がりましたが、敗れたこともあってそれどころではなくなりましたね。
 4月末に加入した安田は、これがジェフでの初出場初スタメンとなりました。

 安田のプレーは、イメージ通りだったと思います。
 と言っても、G大阪時代など若い頃のプレーではなく、昨年プレーした新潟でのイメージということになりますが。
 若い頃は運動量豊富にアップダウンしアグレッシブにプレーするタイプでしたが、年を重ねたことでバランスを取れるようになり賢い判断が出来るようになったのではないかと思います。


 DAZNの解説などには安田がもっと高い位置をとってもいいのではないかと言われていましたが、基本的には守備的に戦うことが求めれたのでしょう。
 江尻監督も、試合後にこのような発言をしています。

江尻篤彦監督「前節の内容を考えると、シンプルに背後を突くこととサイドを変えることを徹底した。その中でシュート数やそこに関わる部分の数字はそうかもしれないが、安田 理大や佐藤 寿人を入れた意図に対し、チームで統一感をもってやれた部分もある。自分はそう悲観はしていない。」(Jリーグ

 安田や寿人を入れた「意図」と話していることからも、安田は守備的に戦うことを求められ、寿人は裏を取ることを期待されたのでしょう。
 柏戦で惨敗したこともあって安田を使って守備から入ろうということと、町田の特徴でもあるサイド攻撃を警戒しようということ。
 また、町田のコンパクトなラインの裏を、寿人で狙おうという意図もあったのではないでしょうか。


 安田を起用して守備的にプレーしたことによって、ぽっかりとサイドのスペースが空くことは少なかったと思います。
 ただ、試合勘などの問題もあってか局面での寄せや連携した守備などには甘さも感じ、決して盤石な守備とまではいきませんでした。
 それでも確実に守備には参加してくれていましたし、守備的なサイドの選手が非常に少ないだけに、選択肢は増える可能性が見えたのではないでしょうか。

 また、ジェフの一点目も、安田のパスが起点となっていました。
 乾からのパスを受けた安田がダイレクトで斜め前方のクレーベに供給し、クレーベがキープしてゲリア、船山とつないでゴールが決まっています。
 ああいったビルドアップは為田では期待しにくいと思いますし、チームとしても縦に繋げない現状があるだけに貴重な展開だったと思います。


 しかし、アタッキングサードなどでは、どのように安田を使っていくのかはっきりしないところがあったと思います。
 前半途中、強引に安田が仕掛けたシーンもありましたが、為田ではないわけですから、ああいったプレーを安田に求めるのは違うと思います。
 また、寿人に関してもあまり攻撃に絡めませんでしたし、単純な前線の動きだけでは攻撃の改善は厳しいでしょう。

 かといって為田を起用しても個人技での仕掛けがメインとなるだけで、うまくいっているとは感じにくいところがあります。
 熊谷や船山が為田の近くに寄る動きも増えていますが、為田は周囲の選手を活かせるタイプではないため、味方選手も置き去りにすることが多い印象です。
 相手チームにも為田が縦に仕掛けてクロスを上げる展開は読まれていますし、それだけでは攻撃の発展は厳しいと思います。


 このあたりはチーム全体としてどう攻撃を作るのか、ビルドアップをどう実施していくのかに関しても絡んでくるでしょう。
 例えばオシム監督は水野や村井といった攻撃的WBを活かすために、逆サイドには守備が出来てパスを繋げてゴール前に飛び込める山岸や坂本を置いていました。
 山岸のサイドには味方選手を密集させてパスを繋ぐことで、相手選手を引き寄せておいて、そこから大きく逆サイドの水野に展開する。

 結果的に山岸は仕掛けるプレーが少なくなり批判されることも多かったですが、オシム監督としては狙い通りのプレーだったと思います。
 そのため「サイドでつまったらバックパスもOK」という発想でしたし、一度サイドの奥で密集させておいてサイドチェンジをすることによって、相手を揺さぶり薄くなった逆サイドを水野がつくという攻撃だったはずです。
 これは2013年の鈴木監督も似たような展開を狙っており、もともとはMFでパスを繋げる高橋峻希を左SBにおいてサイドでタメを作っておいて、逆サイドの米倉を走らせるサッカーでした。


 それに比べると、現状だとどこでパスを繋いで、どう揺さぶるのかがはっきりとしない。
 最終的にどこで仕掛けるのかというところだけ、為田や堀米などが担っている印象ですが、そこまでの揺さぶりや展開においてチームとしての意識の共有が出来ていないように思います。
 ビルドアップの意図がはっきりしないため、ボールを持っても迷いが生じ、後方で各駅停車のパス回しになってしまって、相手のプレスに苦しむという展開が多いですね。

 実際、町田戦での前半ATにあった中島のフリーなヘディングシュートも、後方でパスを回していたところで左サイドに流れた熊谷がパスを受けて、相手に囲まれボールを失ったところからでした。
 また、右サイドで鳥海がボールを持っても、そこからどのように繋ぐのかはっきりしないため、孤立してしまうことが非常に多いですね。
 周りの選手が受けに来るのか、外に飛び出すのかとった狙いが出来ておらず、ボールを失う場面が目立っています。


 これは町田戦に限らずここ数戦に渡ってみられる現象で、ジェフからすればそれを改善できていないことになります。
 町田はしっかりとそこを研究して、鳥海の縦のコースをSHで消し、増嶋に戻す横のコースをFWが消すことで、鳥海を囲っていった印象でした。
 鳥海も足元の技術はある程度ある選手だと思うだけに、ちょっとかわいそうな状況となっているように思います。


 ジェフはCBが左右に開いて、ビルドアップするのが基本となっています。
 これはエスナイデル監督時代も同様で、当時は4バックで2CBが左右に開いて、アンカーが下がって真ん中に入ることが多かったと思います。
 その頃にもブログで話しましたが、CBが左右に開いて低い位置でボールを触れば、相手の追う距離が長くなる。

 相手の追う距離が長くなれば、理論上は相手を走らせて疲れさせることが出来るし、相手のプレスを分散してかわしやすくもなるはずです。
 しかし、ビルドアップ時にCBが左右に開くということは、パス回しの選手の距離感も開くことになってしまう。
 選手の距離感が開いてしまえば、プレスをかけられた時に孤立してボールを失う可能性も高まってしまう。


 これがエスナイデル監督時代にハイプレス返しをされると苦戦する要因だったわけですが、現在のジェフも同じような状況に立たされています。
 簡単なものですが、図にすると以下の通りに。
 本来はここに中盤の選手なども絡んでくるわけですが、あえてわかりやすいくジェフのCBと相手2トップだけで説明しています。

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 この時にジェフがサイドに繋ぐと、相手はFWとSHでプレスをかけてくることによって、孤立した左右CBが潰されてしまうことが多いといった印象です。


 これに対して、ジェフは素早く左右にボールを回してプレスをかわす。
 そして、サイドを起点とするのであれば、サイドに素早く中盤のサポートを入れることで、そこで数的優位を作るといった展開が考えられると思います。
 しかし、現状ではパス回しも遅く、味方のサポートより相手のプレスのほうが速いことが多いため、逆に数的不利になっている印象です。

 要するに人もボールも動きが足りない、停滞状態のビルドアップとなっているように思います。
 そうなれば当然、相手のプレスの的になってしまう。
 それならばCBを左右に開く意味もない気がするのですが、形だけはこだわりを持ってやっているということなのでしょうか。


 ビルドアップを作るためには、個々の判断だけでは厳しいと思います。
 例えば右CBにボールが入ったときに、WBが受けに来るのか、ボランチがサポートに入るのか。
 WBが受けに回ったとしたら、誰が前を向いてプレーする展開を作りたいのか。 

 ビルドアップというのは、パスを繋いで、展開して、仕掛けて、シュートに持ち込む形まで逆算して、構築していかなければいけないものだと思います。
 そのためチーム全体として築き上げる必要があると思いますので、監督の手腕が問われる要素の1つと言えるでしょう。
 しかし、現状だと江尻監督就任以降もビルドアップの改善がなかなか見られないだけに、もどかしい状況が続いている印象です。