岐阜戦、1失点目の直後にあった川西がバイタルエリアを独走してミドルシュートを放った場面や、68分にゲリアがブロックするものの山岸がシュートを打った場面はどちらも相手のロングパスからの展開でした。
しかも、ジェフのDFライン裏を狙ったロングパスではなく、どちらも前方の選手の頭を狙った浮き球のパスが起点となっています。
北野監督はそこを狙っていた可能性もあるのかもしれません。
川西のシュートの場面を振り返ると、中盤で為田がボールを奪われたため、船山がプレスに行くと岐阜はGKヤン・オレ・ジーバースまで戻します。
ドイツ人GKヤン・オレ・ジーバースは足元の技術もあるため、ロングパスで左前方のライアン・デ・フリーズへ展開。
ライアン・デ・フリーズが頭で落とすと、川西が中盤でボールを拾って、そのままミドルシュートを放っています。
この場面で気になるのは、中盤の守備ということになるのではないでしょうか。
川西には熊谷が対応していましたが、ポジショニングが悪く後手を踏んだことで、あっさりと前を取られて独走されてしまいました。
球際の競り合いに敗れただけなら仕方がないとも言えなくもないですが、ボランチ二人は相手がロングパスを蹴ったときに歩いて下がっており、バイタルエリアを埋める意識が薄すぎる印象を受けました。
しかも、為田がボールをロストする1つ前の場面でも、熊谷と矢田のダブルボランチはその後ろを相手のパスワークで取られかけていました。
それを考えれば、その直後もバイタルエリアを警戒すべき状況だったはずですが、2人は危機管理能力に欠けている部分があるのではないでしょうか。
結果的に失点には結びつかなかったものの、中盤の守備の緩さが目立つ状況だったと思います。
さらに68分にもゲリアが右サイド奥まで攻め込みクロスをブロックされたところから、逆サイドに繋がれて左SB藤谷が前方へロングパス。
これを左前方のフレデリックが受けたところから中央の前田に繋いで、逆サイドの山岸へ展開。
山岸がシュートを放つも、ゲリアがブロックするという場面がありました。
このシーンでは藤谷に下平と見木が遅れて対応に行きますが、寄せが甘く下平の裏を熊谷が対応していました。
しかし、そこから縦に展開されますが、DAZNの画面上では矢田が遅れて戻っている以外は戻ってくる選手が見えず。
結局、熊谷を含めた4バックで、相手の前4枚に対応する数的同数の状況となっていました。
どちらの場面でも、中盤の守備意識の甘さが感じ取れます。
ここ数戦出場していた勇人も決して好調といった印象はなかったですが、守備的なボランチということで要所要所は埋めていたと思いますし、やはり守備的ボランチが少なすぎる問題というのもここにきて効いてると思います。
さらにボランチだけでなく守備で貢献できる中盤から前の選手が少ないこともあって、守備で締まりのない状況が続いているのではないでしょうか。
また、DFラインの設定の問題といったものもあったのかもしれません。
両場面ではプレスがはまり切っていなかったものの、いつもならプレスがかからなくてもDFラインを強引に上げて対応していましたが、この日はそこまで積極的ではなかったと思います。
ハイラインなら中盤が高い位置にいてもDFラインとMFラインの間にスペースはできませんが、岐阜戦ではラインがそこまで高くなかったため、結果的に中盤の裏を取られたところもあったのかなと思います。
そうなるとチームとしての意思疎通が図れているのかといった問題で、柏戦に敗れてからのジェフはハイプレス・ハイラインを諦めていた印象でしたが、この日は相手が最下位の岐阜だったことや早々にビハインドになったこともあって、全体的に前掛かりになっていたように思います。
しかし、かとってプレスはそこまで激しくはなく中途半端で、ラインの押し上げも極端ではなかった。
結果的に中途半端なハイプレス・ハイラインとなってしまった印象で、その裏を取られかける場面が多かった印象です。
江尻監督はインタビューで攻撃に力を入れると失点が増え、守備を改善すると攻撃のいいところがなくなってしまうと話しています。
ただ、より具体的に言えば攻撃に力を入れるというよりは、攻撃時に人数をかけているだけではないかとも思います。
点を取りたいという展開になってもなかなか攻撃の打開策が見えないため、結果的に前のめりになって守備に戻る意識が甘くなり、そこから裏を取られてしまう。
守備に関しても同様で、人数をかけて後方で守っているだけで、守備組織が改善したというところまではいっていないと思います。
攻撃的に戦うと得点も増えて失点も増えた、あるいはその逆だったというのならまだいいのでしょうが、実際には攻撃的に戦っても点が取れなかったり、守備的に戦っても守り切れなかったりというのが実情ではないでしょうか。
岐阜戦ではまだ2点取れただけましだったと言えるでしょうが、相手の守備も差し引かなければいけませんし、何よりジェフが一度もリードできなかったという点は大きいと思います。
岐阜戦では中途半端なハイプレス・ハイラインとなった結果、その裏をロングボールで突かれると守備の甘さが目立つ展開になってしまったと思います。
結局のところ柏戦からの2試合はあくまでもその場しのぎの守備的な戦い方だっただけに、ビハインドになると途端にどう戦えばいいのかわからなくなる…ということだったのかもしれません。
ようするに、決定的に守備を改善できた、守備のメンタリティを植え付けられたというような状況ではなかった。
そう考えていくと、岐阜戦前にも話した通り、柏戦を経てハイプレス・ハイラインを諦めたとして、どう戦うのかといった問題に突き当たるのではないでしょうか。
インタビューを改めて読んでも、岐阜戦での戦い方などを見ても、江尻監督はエスナイデル監督のサッカーをベースにどういった処方箋を出すのかを考えているようにも感じますが、江尻監督自身はどういったサッカーがしたいのか。
そういった監督の意思というのが色濃く出るのがサッカーというスポーツではないかと思いますし、そこが確立されることがまずは大事なのではないでしょうか。