当ブログはプロモーションを含みます

江尻監督「戦術的な部分よりもメンタル的な部分」

江尻 篤彦監督「前半立ち上がりの消極的な戦いが、すべて結果につながってしまったかなという感想です。」
(中略)
試合に消極的に入ってしまった原因は。
「戦術的な部分よりも、メンタル的な部分。勇気のなさ。強く行くところ。本当にサッカーの基本的なベースが、立ち上がりはできなかったと思います。」(Jリーグ公式サイト

 新潟戦の前半はあえてセーブして戦っているのかなと思ったジェフですが、このコメントを読むとそうでもないのでしょうか。
 あるいはセーブするつもりはあったけれど、あそこまでやられるつもりはなかったのか。

 江尻監督は、戦術的な問題よりもメンタル的な部分という話もしています。
 確かに気持ちの部分で消極的になってしまった印象もありますが、その要因は何なのか。
 単純に勝てていないからとも考えることが出来るのかもしれませんが、やりたいことがはっきりしないから…ようするに戦術が定まっていないから、メンタル面にも影響を及ぼしたという可能性もあるのではないでしょうか。


 試合後にも話しましたが、ジェフは守備の整備が出来ておらず、特に相手ボランチを誰が掴むのか曖昧なところがある印象です。
 わかりやすいのが40分のシーン。

f:id:aratasuzuki:20190908025503p:plain

 新潟は後方で、右サイドから左サイドへとパスを繋いでいきました。
 そして、左SB堀米が中央のボランチ戸嶋に繋ぐと、フリーでボールを持ててしまいます。

 慌てて勇人はレオナルドのマークを捨てて前に出ますが、交わされて縦に繋がれてしまいます。
 そこからレオナルドが受けて、シルビーニョに繋がれたところで熊谷も交わされる結果に。
 最後はシルビーニョと両SH、パスを出して走り込んでいった戸嶋の4人が攻め、後方で残ったジェフの3人が守る数的不利な展開となりましたが、シルビーニョが外してくれたため失点は免れました。


 この場面でも見られたように、ジェフは相手ボランチをフリーにしてしまうことが多い印象です。
 ジェフのボランチが前に出て対応すれば、バイタルエリアを狙われてしまう。
 特にレオナルドとシルビーニョは足元で受けるのが好きな選手で、バイタルエリアを狙ってくるため、簡単にそこを空けてはまずい試合だったと思います。

 それを40分間戦って感じ取ったこともあり、この場面での勇人はまずレオナルドを見ていたのでしょうか。
 しかし、そうなると今度は相手ボランチが空いてしまうので、結局前に出ていかざるを得なくなった。
 ただ、遅れて出ていったため、簡単に交わされてしまった展開ということになると思います。


 単純にここでは船山の戻りが遅かったともいえるのでしょうが、そもそも船山がはっきりとボランチを見るという約束事にもなっていないように感じます。
 さらにここでの問題は、相手がサイドチェンジしたところで、堀米と米倉が前にプレスに行っている。
 相手にサイドチェンジされたところで、逆サイドの選手が前に出ていってプレスをかけるという動きは、3バック時代から江尻監督が実施している動きではあります。

 しかし、堀米と米倉のプレスも中途半端なので、楽にボランチに繋がれてしまう。
 そして、後方の選手が前に出ていってもプレスがはまらないとなれば、困るのは後方の選手ということになります。
 この場面では鳥海がサイドに開いて対応せざるを得なくなっていますが、そうなれば中央が薄くなってしまいます。


 さらに中央でも勇人も前に出ざるを得なかったため、最終的には3人で守らなければいけなくなってしまった。
 この場面以外でも勇人が前に出ていくも交わされて、その裏を取られるという展開が多い試合となってしまいました。
 そうなってくると、劣勢に立たされるのも当然だと思います。

 勇人としては自らが積極的に前に出ていくことで、他の選手もついてきてほしいという発想だったのかもしれません。
 しかし、新潟戦前半のジェフは運動量が足りていなかったし、前に出ていこうという姿勢が感じられなかった。
 さらに堀米、小島、為田と守備が得意ではない選手が中盤に並んでいるだけに、中途半端な守備に終始していた印象です。


 それならばボランチは引いて守ってスペースを埋めればいいのか…という考えもできるでしょうが、そうなると上記の図のように相手ボランチをフリーにしてしまうかもしれない。
 だから、引いて守るのであればFWも下がって守備をする状況を作りたいはずですが、そこの約束事がはっきりとしないため簡単にフリーな相手選手が生まれる状況になってしまっている。
 かといって、前から追いかけるプレスをかけるには、クレーベも左右SHも守備に意欲的ではないだけに実現が難しい…という状況になっているのではないでしょうか。

 新潟はその点で割り切っていて、レオナルドが無理に追うことがないですが、低い位置でジェフのボランチにボールが入れば、必ずFWが見るようにという約束事だったのではないかと思います。
 ジェフの場合は2トップが相手ボランチを見つつ、状況に応じて相手CBも追いかけるということになっているのではないでしょうか。
 そこでもし2トップのプレスが交わされ、相手ボランチにボールが入ったら、ジェフのボランチが前に出ていけ…という指示なのかなと思います。


 結果的にFWが相手ボランチも相手CBも見るという発想で、うまくいくのであればそれが理想なのかもしれません。
 しかし、クレーベが1トップにいる以上はプレスをかけ続けるのは難しいし、プレスがはまらないと船山も諦めてしまうところがある印象です。
 そう考えていくと、理想的なプレスばかりを追い求めるのではなく、現実を見る必要もあるのではないでしょうか。

 江尻監督はそうやって理想を追い求めつつも、あまりハードワーカーは好きではない印象で、FWには巻やアランではなくネットやクレーベといった一発を持った選手が好きなところがある印象です。
 理想的なサッカーというのは言い方を変えれば、オーソドックスなサッカーともいえるのかもしれません。
 しかし、ネットやクレーベのようにプレスをかけられないCFを起用するためには、どうしてもオーソドックスなやり方だけではなく現実を見据えて変化や工夫を施すことも必要になるのではないかと思います。

 その現実を加味したサッカーを作れないことが、大きな問題になっているのかもしれません。
 いずれにせよ、プレスをはめきれない、マークの担当がはっきりしないという状況なのであれば、そこはメンタルではなく戦術的な問題も大きいと言わざるを得ないと思います。
  中盤も含めて守備的な選手が少ない問題も大きいとは思いますが、そういった部分も踏めて今いる選手の中でうまくチームをまとめ上げることが監督に求められる資質なのではないかと思います。