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山形のボール奪取とジェフのプレスの違い

 山形戦で目立ったのは山形がプレスをかけてジェフがボールを失うシーンと、山形が高い位置でセカンドボールを拾うシーンだったのではないかと思います。
 山形は走れて球際で戦える選手を多く起用していて、いわゆるインテンシティの高さを感じさせる試合内容だったのではないでしょうか。
 逆にジェフは後方からのビルドアップがうまくいっていないことが、改めて浮き彫りになりました。

 さらにジェフはセカンドボールへの反応に関して、前方向へには強さもあるけれど、後ろ方向へのアクションは鈍い印象があります。
 特に中盤が下がって競り合うという場面で、遅れが生じることが多いように思います。
 そのため、山形が前線へ蹴り込みボールがこぼれた場面などで、山形の選手は複数の選手が中盤から飛び出してくるのに対し、ジェフの中盤は守備で後れを取ることが多く、苦戦したのではないかと思います。


 山形のプレスはただ我武者羅に追いまわすのではなく、まずはパスコースを消す。
 それによって、相手の選択肢を消すことで、次のパスを予測しやすくなる。
 そういった状況を作っておいてジェフが遅いパスを出したら、そこで一気に奪いに行くという意思疎通が出来ていたと思います。

 例えば51分。
 左前方でバイアーノのオフサイドになったところから、ジェフは細かくパスを繋いでいこうとしていました。

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 しかし、図のように勇人が新井にスピードの遅いパスを出したところで、山岸が反応してボールを奪取しています。


 このシーンに至る前に、まずバイアーノがしっかりと熊谷を追いまわすことで、自由にさせなかったところが効いていたと思います。
 さらに山形は中盤の4枚が中央に絞ることによって、選手と選手の距離感を狭め、熊谷や勇人から縦へのパスを出させない状況を作っていました。
 それによって、熊谷は近くの勇人にしかパスを繋げず、勇人は後ろ向きにボールを受けて、バックパスをするしかない体勢になってしまいました。

 なお、山形は中盤の4人が中央寄りで守備をする分、ジェフのSBにはWBが後方から走り込んで、チェックに行くことが多かったですね。
 その分、ジェフのSHにはCBがスライドなどをして、対応していました。
 状況によっては山形のシャドーがジェフのSBへ守備に行き、WBは下がって後方を埋めていましたが、どの対応にせよ迷いなく動けていた印象です。


 中盤の4人が密集してジェフのボランチを囲うように守備をしながら、図のように勇人にボールが入った瞬間に、右ボランチの本田が寄せに来ました。
 これによって、勇人はワンタッチでボールを繋がなければならず、パスの精度を欠いて緩いボールを出してしまいます。
 それを見逃さずに左シャドーの山岸が反応して、ボールを奪ったことになります。

 さらにこの時、左ボランチの中村が若干引いたポジショニングを取っています。
 これによって、バイタルエリアの工藤をケアして、本田がチェックに行きやすい状況を作っています。
 寄せに行った本田と、後ろをケアした中村で、チャレンジ&カバーの関係が出来ていたということですね。


 チャレンジ&カバーに関しては守備の基本と言われており、山形はカウンターを受けた時などもその状況が作れていたと思うのですが、ジェフはなかなかそういった守備関係が作れていない印象です。
 さらに、図のシーンではボールカット役の山岸も含めて、3人で連携してボールを奪ったことになります。
 こういったシーンが幾度となく見られた試合で、ジェフとしては相手の台本通りにボールを奪われていた印象でした。

 これに比べると、ジェフのプレスはやはり個人での走力に任せすぎている印象です。
 基本的には工藤が相手DFに対して積極的に追いかけ、それにクレーベや左右SHがついていって、パスの出所をすべて潰すというやり方です。
 しかし、山形のプレスは図のシーンではDFには寄せに行かず、ボランチのところまでボールを呼び込んでおいて、そこで囲ってボールを奪っています。


 相手DFまで追いまわす分、走る距離はジェフの方が長くなるため、時間的なギャップも距離的なギャップもそこで生まれて、プレスを回避される危険性がある。
 さらに、選手の負担も大きくなってしまいます。
 山形もベースはもちろん選手が走ることではあるのでしょうが、組織的にパスコースを限定し、相手を追い込んでカットしているので、リスクマネジメントもできているし、走る距離も短く済んでいるのではないでしょうか。

 一方で図のシーンでも山形のラインは高いわけで、ジェフは相手のプレスをかわすほどのパスワークが出来ないのであれば、長いボールで裏を狙うのもありだったはずです。
 試合終盤には工藤のポジション下げて低い位置からパスを出し、船山と寿人で裏を狙う動きも見せていました。
 ただ、山形が狙って試合序盤から長いボールを蹴ってジェフDFに負荷を与え、ジェフが疲れたところで攻め込んできたのと比べると、ジェフの裏狙いは遅きに失したというか、突発的な狙いといった印象がぬぐえませんでした。

 山形とは相性などもあったのかもしれませんが、それにしてもプレスの掛け方など、チームとしての熟成度の差が出てしまったように思います。
 ジェフも守備においてはプレス主体となっているはずですから、そのプレスの質が上がってこないで、工藤頼りな状況になっているというのは厳しいところがあるのではないでしょうか。
 少しずつでも無理をせずにすべてを追わず、コースを限定してから寄せに行ったり、カバーリングの体制などリスクマネジメントの部分が改善していたりすれば望みも感じるのでしょうが、現状だと船山から工藤に選手を入れ替えただけの変化ではないかと思います。