千葉ダービー、ジェフは苦労するかなとは思っていましたが、スコア以上にいいところがなく大敗となってしまいました。
確かに前半は選手のミスも多く、球際への反応でも後手を取り、運動量でも劣っていたと思います。
ただ、選手の動きだけで敗れた試合ではなかったと思います。
前節こそ2-0で勝利できたわけですが、前々節山形戦は1-4の完敗だったわけで、やはり前節は長崎の状態が悪すぎたのではないでしょうか。
単純に長崎戦ではフリーでクロスを上げられていた下平が、この試合ではほとんどクロスを上げられなかった。
それだけ長崎はジェフを甘く見ていたのか対策を取ってこなかった一方で、柏はしっかりと準備してきたと言えると思います。
やはり結果ではなく、相手の内容も含めてしっかりと試合を見ていかなければいけない。
特にこの時期はモチベーションを下げているチームも少なくないわけですから、そこも含めた上で分析・評価をしていかなければいけなと思います。
■ジェフはいいところなく0-2で折り返し
ジェフは出場停止明けのアランがスタメン復帰して右SHに入り、矢田がメンバー外に。ベラスケスがメンバーから外れて、控えには乾が入りました。
柏はU-22日本代表から戻ってきた古賀が左SBに入って、高橋が右SBに移り、瀬川が2列目に戻ってサヴィオがサブに。
ジュニオール・サントスがメンバー外、ケニア代表に選出されていたオルンガが復帰。
また、大谷がベンチに回って、ヒシャルジソンが久々にスタメンとなっています。
2分、柏の攻撃。
中盤の左、距離のある位置で得たFKをクリスティアーノが直接狙います。
枠は捉えていましたが、GK優也がセーブ。
柏は三原を1ボランチに置いた4-1-4-1で、ヒシャルジソンと江坂を中心にプレスをかけてきます。
13分にも柏の攻撃。
下平のパスミスをオルンガが拾って、ミドルシュートを放ちますが、GK優也が戻って対応。
17分にも柏の攻撃。
中盤で江坂がボールを拾い、右サイドに展開。
高橋からのパスをオルンガが受けて、新井に競り勝ってシュートを放ちますが、GK優也がセーブ。
これで得たCKで柏が先制。
クリスティアーノからのCKを、新井に競り勝ったオルンガが折り返します。
これによってジェフの足が止まってしまい、三原がフリーで受けてシュートを決めて0-1。
続いて21分。
鳥海のパスミスから相手がボールを拾い、江坂が中盤でボールを持ちます。
ここへの熊谷の寄せが甘く、ミドルシュートを決められて0-2に。
34分にも柏の攻撃。
古賀の楔のパスをオルンガが落とし、三原が右サイドへ大きく展開。
クリスティアーノからのアーリークロスをオルンガが頭で合わせますが、枠を捉えきれず。
その後もジェフは、ほとんどゴールに迫ることが出来ず。
左サイドから持ち上がるものの、クロスを上げさせてもらえず攻撃が停滞。
2点ビハインドで折り返します。
■後半も柏ペースが続き0-3の完敗
ジェフは後半から、鳥海を下げて堀米を投入。工藤をボランチに下げて、堀米はトップ下に入りました。
工藤はボランチに移ってからも積極的に前に出て、プレスをかけていきました。
しかし、54分、柏のチャンス。
右サイドからのCKをクリスティアーノが蹴ると、ニアで起動が変わってゴール前で江坂の足元に入ります。
江坂がダイレクトで合わせますが、GK優也がセーブ。
55分、ジェフはアランを下げて船山を投入すると、堀米が右SHに周り、船山が中央に入りました。
その直後にも柏のカウンター。
ヒシャルジソンからのパスを受けたクリスティアーノが、長い距離を持ちあがりシュートを放ちますが、ゴールの左を逸れます。
61分、柏の追加点。
柏のCKからセカンドボールを拾われると、ゴール前で混戦状態に。
三原が船山の前を取って、シュートを放ち0-3に。
65分、クリスティアーノが足を痛めてサヴィオが投入され、そのまま右SHに。
68分にはジェフの攻撃。
中盤で得たFKを船山が直接狙いますが、GK中村がキャッチ。
75分には柏の決定機。
古賀からの縦パスを中盤の間で瀬川が引き出し、オルンガへスルーパス。
江坂がパスを受けてクロスを上げると、高橋が飛び込みますがGK優也がセーブ。
クリスティアーノが交代となった柏は、3点リードもあって無理をしない展開になっていきます。
82分、柏は山下を下げて鎌田を起用。
87分、工藤を下げて寿人を投入し、船山がトップ下に入るダイヤのような布陣に。
その後はゆっくりと柏がボールを回し、時間を使っていきました。
しかし、それでも柏はチャンスを作れそうな気配で、ジェフは何とか対応する状況に。
良いところなく0-3で完敗となってしまいました。
■柏の4-1-4-1がハマった展開
冒頭で話した通り、特に前半は選手の動きが悪かったと思います。単純に寄せが甘い、パスミスが多い、運動量も少ないといった印象で、課題ばかりが目立ってしまいました。
モチベーションも下がっているのか、選手に甘さ・緩さを感じてしまいます。
ただ、戦術的にもジェフは柏に後手を取っていた印象でした。
柏はこの日、4-1-4-1に変更して戦ってきました。
これが様々な点で、ハマった試合でもあったのではないでしょうか。
まず、1ボランチにすることで、三原が工藤をケアすることが出来る。
工藤は前節も中盤の間を動き回ってリズムを作っていましたし、そこを警戒したのかもしれません。
三原の動きもあって、この日のジェフは柏のボックス内で、ほぼボールを持てない展開となってしまいました。
さらに4-1-4-1にすることによって、中盤が5枚になるためサイドをケアしやすい状況となる。
前節のジェフは下平のクロスが決め手となった試合だったと思いますが、そこをクリスティアーノが対応しフリーにさせなかった。
4-4-2だとどうしてもスライドする分、サイドへの守備で遅れが生じがちですが、4-5-1で戦うことによってサイドのスペースを簡単には明け渡さなかったことになります。
もちろんクリスティアーノはそこまで守備的な選手ではないはずですが、近くにヒシャルジソンを置くことによって守備面でフォローすることが出来た。
また、右SBも瀬川から高橋に変えたことによって、為田に仕事をさせなかった。
さらに中盤中央では三原がバランスを取り、逆サイドの江坂と瀬川も運動量豊富に守備をすることによって、ジェフに攻撃を作らせませんでした。
加えて、4-1-4-1にすることで、特に前半はインサイドの江坂とヒシャルジソンが、前へとプレスをかけてきた。
2人が前へチェイスをかけることによって、オルンガが守備でさぼっても問題なくプレスがかかっていたと思います。
ジェフもクレーベに対して工藤がフォローする形で走り回ってはいますが、工藤1人のサポートだけではそこをかわされると弱いわけで、2人がサポートする柏の4-1-4-1は効果的に機能していたと思います。
対するジェフの攻撃は、工藤が間で動き回ってリズムを作る試合もあるとはいえ、そこから攻撃を作り出すことはできていない状況。
基本的にはやはりサイド攻撃、特に下平のクロスからクレーベのヘディングというのが武器となっているわけですが、先週も話した通りやはり下平は自分でマークをはがせないので、警戒されると弱い。
さらにクレーベも高さのあるCB相手には苦戦する傾向があり、機動力などはオルンガのほうが上だと思います。
下平以外からの攻撃が作れていないこと。
延いては、個人技ではなくチームとして攻撃が作れないことが大きな問題であり、攻撃にバリエーションもないので対策を取られると攻撃が作れなくなってしまう。
単純に柏相手だとこれまで頼ってきた個人技での勝負でも勝てないということもあって、完敗となってしまったのかもしれません。
守備においても単純な寄せだとか運動量の問題も大きいでしょうが、工藤がプレスにいってクレーベがついていっても、その先がついて来ないので2人が孤立してしまう。
そもそも工藤のチェックだけがプレスのスタートになっているため、そこをかわされると脆さが出てしまう。
この日の柏のように江坂や瀬川、ヒシャルジソンなど複数の選手がプレスのキッカケになることで、全方位にプレスをかけられるという状況と比べると、ジェフのプレスは局所的で不安定な印象を受けてしまいました。
2点ビハインドもあって、後半からはボランチに下げた工藤から積極的にプレスへと行かせていました。
しかし、その裏を取られて攻撃を作られるなど、リスクマネジメントが出来ていない問題は変わらず。
被カウンター時の対応もそうだし、プレスがはまらない状況での守備も含めて、全体的に緩さを強く感じた試合となってしまいました。
プレスに不安があるのなら、ジェフもこの日の柏のような4-1-4-1にして、クレーベの守備の負担を軽くし、全方位にプレスをかける形を取ればいい…とも考えられるかもしれない。
しかし、ジェフには江坂や瀬川のように守備もしっかりとして攻撃面でも鋭く仕掛けられる選手がいないし、ヒシャルジソンのように運動量豊富に強度なプレスをかけられる選手も、三原のように中盤の底でバランスを取れる選手もいない。
そこは選手の課題も大きいし、選手構成にもやはり問題があると思います。
為田や堀米や寿人や矢田や船山は魅力的なアタッカーではあるかかもしれませんが、小柄で球際で激しく戦えるタイプとは言い難いでしょう。
熊谷も守備センスがある選手ではないし、工藤や勇人はベテランで90分持たないことも多い。
改めて、なぜこんなバランスの悪い選手構成になってしまったのか…と思ってしまいます。
ここまでひどい試合を経験すると、残り試合で大幅にスタメンを入れ替える可能性も考えてしまいます。
しかし、代わりに出場できる選手を考えると、佐藤兄弟や増嶋、安田などベテラン選手が中心。
若手で可能性を感じる選手も少ない状況ですし、いろんな意味で将来が期待しづらい状況ではないでしょうか。
それに比べると柏はこの日もU-18の細谷がサブに入り、シーズン中にも20歳前後の上島、杉井、田中、宮本などが出場し可能性を見せていました。
古賀、手塚、中村などもまだ間和若いですし、その全員がアカデミー出身です。
それらを考えるとチーム単位だけでなく、クラブ単位で大きく水をあけられてしまっているように感じますし、非常に心に残る痛い大敗だったように思います。