当ブログはプロモーションを含みます

中盤中央をパスで繋がれるリトリート守備

 山口戦では中盤の中央で、相手のパスワークを許してしまう展開が目立っていたと思います。
 リトリートしている状況で簡単に間を通されてしまうシーンは、これまでの試合でも目立っており大きな課題となっているのではないでしょうか。
 特に中盤の中央というのは本来一番パスを繋がれたくないエリアではないかと思うのですが、そこの守備が整備されていな印象を受けてしまいます。

 41分には、以下のようなシーンが。

f:id:aratasuzuki:20191028163211p:plain

 山口の左CB菊池から、ボランチ高にパスを繋がれると、横に叩かれます。
 パスを受けた健太郎はダイレクトで鋭い縦パスを通すと、宮代が下がりながらボールを受けます。
 そこにトップ下の三好も絡みながら、宮代がうまくキープして新井などを振り切ると、バイタルエリア右寄りの位置まで流れてフリーでシュート放ちますが、枠を外れています。


 宮代のドリブルにもセンスを感じましたが、まずは健太郎に縦パスを出されたところがジェフの課題でしょう。
 以前から話していますが、ジェフのリトリート守備で相手ボランチを誰が見るのかはっきりとしない。
 基本的にクレーベが守備にあまり関与しないこともあって、FWがボランチを見るということが出来ません。

 クレーベの守備はもはや言っても仕方のないところがあるのでしょうから、クレーベ抜きでどう守るのかを考えなければいけない。
 この場面では、高にパスが出たところで、鳥海が前に出てチェックに行った。
 しかし、健太郎への熊谷のチェックが少し遅れたことによって、縦にパスを出されてしまった印象です。


 鳥海が前に出ないで、宮代へのパスコースを消すべきだったという意見もあるかもしれません。
 しかし、市船で背番号10を付けていた高はパスも出せる守備的なボランチですし、あの位置で高にフリーで前を向かれては分が悪い上に、前方のクレーベは守備に戻ってはくれないでしょう。
 実際、鳥海が素早くチェックに行ったことにより高は横パスしか出せなかったわけで、鳥海のアプローチが失敗だったとは言い難いと思います。

 そう考えると鳥海のチェックに周りが反応しなかったことが問題ではないかと思いますし、熊谷がもう少し早くアプローチしてほしかったのではないでしょうか。
 あるいは、健太郎にプレッシャーをかけないにしても、パスコースを消したかった。
 健太郎は以前からワンタッチでの縦パスが得意な選手ですし、宮代が下がって受ける動きをしてくることも、それまでのプレーでわかっていたことではないかと思います。


 また、DFラインに関しても、宮代には新井が前へ出てチェックに行き、エベルトもトップ下の三好をケアするため、少しずつ前進していました。
 熊谷が健太郎に遅れながらも寄せに行ったため三好が浮く形となり、エベルトがそこを気にしたのでしょう。
 その辺りのポジショニングは、悪くなかったのではないかと思います。

 しかし、そのCB2人の動きに対して、両SBは前に出ていかなかったため、DFラインが凸凹になっていました。
 下平と米倉にとっては、対面の池上と高井も気にしたのかもしれません。
 しかし、それによって結局エベルトは凸凹を気にして下がらなければいけなくなったし、バイタルエリアが空いてしまったことでそこで宮代に前を向かれてシュートを放たれています。


 気になるのは、リトリート時に全体的に前に出ていって相手を潰すのか、後ろに構えて跳ね返すのかではないでしょうか。
 FWが相手ボランチに対して守備をしないのであれば、ジェフのボランチが相手ボランチを見るしかない。
 そうなるとDFラインも前への意識を持たなければ、今回のようにバイタルエリアが空いてしまうし、ボランチのアプローチを支援できなくなってしまう。

 もちろん、かといって常にハイラインを敷けばいいという単純な話にはならないでしょう。
 そもそもプレスが安定してかかっていないのだから、その状況で簡単にラインを上げてしまえば、最終ラインの裏を取られるリスクが高まる。
 だから、状況に応じてこまめにポジション修正をする、誰かがアプローチしたらそれに連動して全体が前に出ていくといった守備組織が必要ではないかと思うのですが、それが出来ていない印象です。

 あるいは、言い方を変えるとリトリート守備の状態でどこまではボールを持たせて良くて、どこに入ってきたら守備のスイッチを入れるのか。
 現状だと相手ボランチより前にFWが位置取りすることも多いですが、その状況で簡単にボランチにボールを入れられてしまっては、そこから攻撃を作られるリスクが生じてしまう。
 そうであるのならボランチにパスを入れられないことを重視するのか、無駄にボールを追いかけてばかりではダメなはずで、ボールを入れさせていいところとダメなところも、はっきりとしなければいけないのではないでしょうか。


 対するこの場面での山口の攻撃は、健太郎の縦パスが攻撃のスイッチになっており、そこへの高の繋ぎも宮代の受け方も上手かったですね。
 山口は近くの選手に横パスを繋いで相手の守備を少しずらしておいて、そこから縦にダイレクトで展開という形をいくつか作っており、チームとして狙っていたのではないでしょうか。
 それが攻撃のスイッチであるとはっきりしていれば、パスの受け手も反応しやすくなるだけでなく、周囲の選手も迷わず攻撃参加することが出来る。

 対してジェフは攻撃のスイッチがはっきりしないところがあるだけに、1つの攻撃に連動して選手が絡んでいくという場面が少ない印象を受けます。
 山口もアタッキングサードに関してはプレーが雑で、ミスも非常に多かったと思います。
 ただ、アタッキングサードまでうまく持ち込めていたのは山口の方だったと思いますし、2-3での敗戦は順当だったと言えるのではないでしょうか。