お声をかけていただき、ジェフ千葉AdventCalendar2019に参加することとなりました。
企画の詳細はリンク先を見ていただくとして、2年前には湘南のアドベントカレンダーに参加し、「オシム信者から見るキジェサッカー」を書かせていただきました。
いろんな意味で、あの時に書けて良かったです。
今回は何を取り上げようか迷ったですが、以前から書きたかった「サッカーの見方」に関して考えていきたいと思います。
きっかけは今年久々に現地でサッカー観戦をするという友人をフクアリに連れていったら、「解説がないとどうやって見ていいのかわからないね」と言われてしまったこと。
私としてはわかっているつもりではあったのですが、意外と言葉するのは難しくその場では説明できませんでした。
ネット上でも最新の戦術や専門用語の説明は話題になるものの、基礎的な話は意外と目にしません。
そこであくまでも私なりの「サッカーの見方」を、考えていきたいと思います。
ただ、普段は「こうやって試合を見よう!」と意識していないだけに、文章にするのはなかなか難しかったです…。
■攻守においての見るべきポイント
基礎的な話としてサッカーとは、相手ゴールにより多くボールを入れたチームが勝つスポーツ。だから、まずは攻撃側のチームが、どう『ボールを運んでいくのか』を考えていきます。
しかし、サッカーには同じピッチに同じ人数、相手選手がいることになります。
そして、その相手選手たちは当然、ゴールにボールを入れる動きを邪魔してくる。
ようするに、守備をしてくるわけですから、それをかわさなければいけません。
そのため、ただ単純にボールを運べばいいわけではなく、ゴールに近い・狙いやすい位置でシュートを放つ、ラストパスを出す、ドリブルなどで相手をかわしチャンスを作る必要がある。
すなわち、どうやって良い状態でシュート、パス、ドリブルなどを「仕掛ける状況を作るのか」。
または、どうやってボールを持って「良い位置で前を向くのか」を見ていきます。
例えば、CBからロングボールを蹴って、FWがヘディングで落とし、MFが拾って前を向き仕掛ける。
シンプルではありますが、これも立派な攻撃の形でしょう。
しかし、これを成功させるには技術力のあるCBも、相手に競り勝てる長身FWも必要だし…と、ここで選手の能力や相手との駆け引きが生まれてくるはずです。
さらに守備側は攻撃側の邪魔をしてくるわけで、簡単にはやらせてもらえないかもしれない。
例えばとしてパスを出すCBに対して、相手FWが厳しくマークする場合もあるでしょう。
だから、いかにそれをかいくぐり、ロングボールやショートパスを前に送ることが出来るのか。
ようするに、どのように「良い位置で前を向くのか」の前に、どのように後方から前に「縦パスを供給するのか」が重要となる。
それが"ビルドアップ"と呼ばれる攻撃のスタートであり、良い状況での縦パスが"攻撃のスイッチ"と言えるでしょう。
そのためには、後方でフリーな選手を作り、そこから縦パスを出すという形作りが必要となるはずです。
一方で守備側はそれらを邪魔するわけですから、逆に考えていかに「縦パスを出させないか」、ゴール前など「危険なエリアを埋められるか」が焦点となるはずです。
さらに、守るだけでなく自分たちが攻め返すためにも、「どこでどうやってボールを奪うのか」が重要でしょう。
攻守において、上記のような狙いを持って意思疎通できているチームが、良いチームと言えるのではないかと私は見てます。
■攻守における具体例
具体的な例をあげていきたいと思います。まず攻撃ではMFがDFラインまで下がって、ビルドアップに加わる動きが主流になっていますね。
特に相手が2トップの場合は4バックのままだと、2CBと2トップで同数になってしまうので、そこにボランチなどが加わって数的優位を作る展開が多いと思います。
しかし、それだけではうまくいかないことも多い。
白い四角で示したように、ボランチが下がることで数的優位になりますが、それだけでは相手に隙が生まれずパスを出しにくい。
そのため、左右CBは斜め前方に開いて、そこで素早くパスを繋ぐことで、相手の守備を揺さぶりたい。
左右に相手を揺さぶることで、パスコースなどが生まれて「縦パスを出す」チャンスが生まれていく。
また、この図では左右SBを押し上げることによって、さらに相手の中盤を外に広げて、中央に隙を作りそこにSHが位置してボールを受ける。
これは京都などが、得意としていた展開です。
このあたりは工夫が求められるところで、ただ後方に人を増やすだけでなく、パスの受け手も含めて狙いを持ってやっていく必要があるはずです。
あるいは、3バック同士の戦いだと。
これは大宮の例ですが、WBが後方に下がってボールを受けることで、数的優位を作るだけでなく相手WBを引き出す。
すると黒円で示したサイド前方にスペースが出来るので、そこにシャドーが斜め外へ走っていく。
シャドーが外へ走れば、相手CBもつられるので、中央が薄くなり前線へのパスコースも生まれやすい。
上記2つの図に共通しているのは外と中、2つのパスコースがあるので、相手守備陣は対応しづらくなるということ。
それによって守備側は迷いが生じ、「縦パス」を出しやすい状況が作れるということですね。
「縦パス」がうまく出せれば、そこから「仕掛ける」展開も作りやすくなるはずです。
一方、守備側の対応を考えると、相手ボランチなどが下がる動きに対して、マンマークでそのまま中盤がついていくこともできるでしょう。
あるいはゾーンディフェンスで決められたエリアを守って、来たボールを跳ね返すというやり方もできるはずです。
例えば。
また大宮の例になってしまいますが、大宮は3-4-3で前線の3人が等間隔に守って中央で「縦パス」を出させない、絶妙なポジショニングをしていました。
それによって、サイドへのパスを誘っておいて、そこにパスが出たらシャドーやSHが囲って「ボールを奪う」。
さらに後方でもDFとMFがバランスを崩さず守ることで、「危険な位置に入れさせない」守備をしていた思います。
攻撃においても守備においても、大事なのはチームとして狙いが明確にあること。
個々の判断だけでは限界があるわけですから、チームとして何を狙っているのかを考えることが、まずは「サッカーを見る」上で重要なことではないかと思います。
■チームが一丸となって戦えているか
私が上記のような「サッカーの見方」をするようになったのも、オシム監督の言葉が大きかったと思います。オシム監督が「ゴールを決めた選手以外も評価しなさい」とよく話していたことで、ゴールに関わる選手以外も見るようになりました。
さらに「2つ3つ前のプレーが重要である」という話もしており、それを突き詰めていくと後方からのビルドアップが大事な攻撃のスタートであることが分かってきました。
実際に試合でも後方から縦パスが通った時点で、攻撃側が有利になっていることが多い。
逆に言えば、守備側は前線の選手がさぼったところから、不利になっていることも少なくない。
だから、後方選手の攻撃の関与も前線からの守備も重要で、それがオシム監督が理想でもあるトータルフットボールにも結びつくのでしょう。
もう1つ、サッカーは広いピッチで、11人もの選手が自由に動くスポーツです。
だからこそ、11人が攻守において具体的な狙いを共有し、それを具現化できているのか。
1人ですべてをこなすのは限度があるわけで、いかに組織として戦えるかが重要なスポーツだと思います。
それは一般社会における組織論にも近いものがあるのでしょう。
目標があって、それを成し遂げるためのルールがあり、それを実行できるのかどうか。
そういった組織作りの過程を見ていくのが、サッカーの楽しさの1つではないかと思います。
サッカーは団体競技ですから、いくら相手に優れた選手がいたとしても、チームの団結力で上回れば相手に勝てるかもしれない。
強かった頃のジェフはそこを強く感じられたし、目立った選手はいなかったかもしれないけれど、一生懸命チームのために走って戦ってビックチームを倒していった。
チームとして1つになって戦うことによって内外に強さや魅力を打ち出せていたし、それがファンやサポーターの誇りにもなっていたはずです。
そこをしっかりと理解するためにも、チーム作りの細部を見ていかなければいけないと思います。
ポジショナルプレーだとかストーミングだとか新しい戦術や用語は次々に出てきますが、それらはあくまでも応用なはずでまずは基礎が大事なのではないでしょうか。
オシム監督も話している内容は基礎的なことが多く、その積み重ねで強く優れたチームを作っていた印象です。
改めて文字にすると個人的な「サッカーの見方」のベースは、やはりオシム監督に影響されたところが大きいように思います。
個々の能力はもちろんですが、それを引き出すためにも、どういった狙いを持った組織を作っているのか。
もっと単純に言えば、チームが一丸となって戦えているのかどうか。
ジェフも来年こそは、攻守に具体的な狙いを持ち、一つとなって戦えるチームを作り上げてほしいなと思います。