当ブログはプロモーションを含みます

2019シーズンを振り返る クレーベ&船山貴之編

 今日からFW部門に移ります。
 クレーベと船山は共に二桁得点をあげ、数字を残したコンビということになりますね。

jefunited.co.jp

 昨年ジェフにレンタルで加入したクレーベは、初年度に38試合に出場し17ゴール。
 出場数もゴール数も、チーム内トップの成績となりました。
 そして、今オフに完全移籍を果たしています。


 J2に降格してからのジェフ選手の得点数を、まとめてみました。

f:id:aratasuzuki:20200203174551p:plain

 クレーベは17ゴールなので、J2得点王になった2013年のケンペスの22ゴール、2017年のラリベイの19ゴール、2018年の船山の19ゴールには及びません。
 しかし、2019年はチーム全体の得点数が46ゴールで、試合数が少なかった2011年に並んでJ2降格後クラブ最低得点数となっていただけに、クレーベは貴重な存在となっていました。
 クレーベと船山で29ゴールも上げていますので、二人でチームの半数以上、ゴールを上げたことになります。

 最終的には見事な活躍を見せたクレーベですが、2019年の開幕スタメンからは漏れ、シーズン序盤は活躍できませんでした。
 これはコンディション調整が遅れていたこともあったのかもしれませんが、その後もあまり運動量が変わらなかったことを考えると、そこまで遅れていたわけではないのかもしれません。
 また、日本のサッカーになれていない部分もあったと思います。

 ただ、それ以上に問題だったのは、ハイプレスを目指すエスナイデル監督と相性が悪かったことではないでしょうか。
 空中戦に強く足技もあるクレーベですが、守備面の課題は非常に大きく、ハイプレスのサッカーとは全くあいませんでした。
 エスナイデル監督のハイプレスはラリベイや町田など走れる前線の選手が引っ張っていただけに、フロントはクレーベをどうはめ込むつもりだったのか疑問が残ります。


 それでも指揮官が江尻監督に代わったこともあって、徐々に存在感を増していきます。
 特に夏頃は左サイドからの攻撃が好調だったこともあり、ゴールを量産していきます。
 一時は下平からのシンプルなアーリークロスとクレーベのヘディングだけで、相手の脅威になっていた印象でした。

 米倉の振り返りでも書きましたが、クレーベは相手の前を取れるFWではないものの、跳躍力が高いのでふわっとしたボールを頭上にあげれば相手に競り勝てる強さがある。
 さらにヘディングでのミートも上手いため、ファーでもゴールを狙える選手ですね。
 加えて左右でのシュートも上手く、相手が寄せていても遠い方の足でシュートを放ち、逆サイドに決めるパターンも目立っていました。


 ただ、徐々に相手も警戒してきて、必ず長身CBをクレーベにあてる対策を取られていきました。
 クレーベはドリブル突破や裏抜け、スピード勝負などはないだけに、エアバトルにさえ勝てれば怖さが半減するという意図もあったのでしょう。
 今年も同じような対策を取られてくるのではないでしょうか。

 さらにクレーベは体も強く足元の技術もあるため、ポストプレーのターゲットにもなっていました。
 しかし、ラリベイのように器用で展開力があるタイプではないだけに、周りのサポートがないとズルズルとゴールから遠のいてしまう。
 これも相手に研究されて、終盤戦はゴールから離れてしまう場面が目立ちました。


 それでもゴールに離れたところから再び飛び込めればよいのでしょうが、そういった機動力はない選手。
 さらにチーム全体として小柄な選手が多かったこともあって、クレーベがゴール前にいないとサイドでルックアップしてもターゲットがいない…という展開になることもありました。
 こういった状況もあって終盤はゴール数が伸び悩み、クレーベ自身も消える時間が目立っていった印象でした。

 また、クレーベはスピードがなく個人での打開が出来るタイプではないだけに、カウンターが狙いにくいという課題も生まれてしまったように思います。
 尹監督がカウンターサッカーを狙うのであれば、そこもネックとなる可能性もあるのではないでしょうか。
 クレーベはラリベイのようなオールマイティなFWではなく、やれることがはっきりしているFWですから、どうしてもサイドアタックメインになってしまう傾向もあるかもしれません。


 クレーベの大きな課題は何よりも守備でしょう。
 別の選手がチェイスを仕掛ければそれに合わせて追うことはあるものの、自身がファーストディフェンダーになることは難しい。
 さらに、一度は追っても、2度追い3度追いは期待できない選手だと思います。

 昨年もクレーベが相手にかわされて、相手にチャンスが生まれることも多かった。
 例えその流れからゴールが生まれなくとも、そこから相手の攻撃が作られてしまえば、それによって相手のリズムになってしまう可能性もある。
 それも含めて考えれば、弊害も少なくないストライカーだと思います。

 尹監督が堅守のチームを目指すのであれば、悩みの種となる可能性もあるでしょう。
 オシム監督が「走らない選手は本当に走らない」と言っていたように、監督が変わったからといってクレーベが走れるようになるとも思いません。
 どちらに転んでも、今年の大きな注目選手となりそうですね。


jefunited.co.jp

 船山は2019年、合計で35試合に出場し12ゴール。
 2018年も19ゴール上げており、2年連続で二桁ゴールを上げています。
 近年のジェフにおいて、中心選手の1人と言えるでしょう。

 昨年の船山は江尻監督就任後に負傷して、一時離脱していました。
 しかし、復帰直後から見事な活躍を見せ、特に第14節岐阜戦から第16戦長崎戦までの3試合では4ゴール1アシスト。
 当初はシャドーの位置で主力として戦い、7月に4バックへ変更となってからもFWとしてプレーしていました。


 しかし、シーズン後半は出場機会が失われていきます。
 第26節鹿児島戦から第31節新潟戦までの6試合で1分5敗と低迷したこともあって、第32節水戸戦でスタメンを外されます。
 その時、前線でスタメン起用されたのが工藤でした。

 外された要因には、やはりクレーベの守備力があったのではないかと思います。
 クレーベが守備をしないので、どうしても相棒には懸命に走れて守備のできるFWが欲しい。
 船山も決して守備をしないタイプではないですが、工藤ほど我武者羅に追いかけるわけではない。


 さらに、この頃は船山自身もコンディションが悪かったのか、モチベーションが低かったのではないかと思います。
 考えられるのは、第28節大宮戦で4-1-4-1のSHで起用されたこと。
 チーム自体がうまくいっていなかったこともあって悩んでいたのかもしれませんが、船山自身の起用法にも疑問を感じていたのかもしれません。

 ジェフ加入から2年間は決定力不足に悩まされた船山ですが、2018年に得点を量産した試合は中央で起用された場面が多かったですし、だからこそ、エスナイデル監督を支持していた数少ない選手だったのではないかとも思います。
 そんな中でSHとして起用されたことが気になったのかもしれませんし、SH起用された大宮戦では運動量の少なさが気になりました。
 本来はそれなりに守備もできる選手であるはずだし、SHとしても戦えるポテンシャルはあると思いますが、本人は中央の方があっていると考えているのかもしれません。


 船山の場合、チャンスメイクもできるし、ボールも引き出す動きもできて、ある程度パスも回せて、守備もそこそこできる。
 中盤も前線もできるオールマイティな選手だからこそ、起用法も含めて悩んでしまうところがあるのかもしれません。
 実際、昨年後半からのジェフは左サイドに選手を集める展開を狙っていましたが、その中でもうまく中央寄りの位置で飛び出してサポートできていたのが船山だったように思います。

 ただ、熊谷にも感じましたが、モチベーションに波があるのであれば、プロとして大きな問題でしょう。
 主軸選手が安定して戦えないとなれば、どうしてもチーム全体にも余波が生じてしまいます。
 特に現在のジェフはジェフ加入まで主軸になった経験の少ない選手が多いですから、船山のような選手にぶれずに戦ってもらわないと、チームとしての軸が定まらないことになると思います。

 その船山も今年で33歳ですから、本人も「いつ辞めてもおかしくない」と話していたように、引退も見えてくる年齢でしょう。
 そういった状況下で、ベテランらしくチームをまとめ上げる存在となれるのか。
 船山の場合は自ら声をかけてまとめるようなタイプではないでしょうが、プレーで周りを引っ張っていってほしいところですね。