水戸の角度を付けたバックパスからの展開

 先日取り上げた松本のダイレクトパスからの攻撃に続いて、今日は水戸の攻撃の形を取り上げていきたいと思います。
 水戸も攻撃面において、非常に面白い狙いを持っていた印象です。

 昨日も少しお話ししましたが、秋葉監督新体制となった水戸は角度を付けたバックパスからの展開が特徴的だったと思います。
 後方の選手がボールを持ったら、多少無理な体制でも近くの前方選手の足元にパスを付ける。
 その前方選手にマークがついていようとも、狭いエリアになっていようとも、前を向けなくとも、まずは近くの前方選手に繋ぐことを第一に考える。


 そして、その前方選手は足元でパスを受けたら、パスを出した選手にではなく、角度を変えて別の選手にバックパスを戻す。
 もちろん前方の選手が前を向ける展開が理想なのでしょうが、マークがついていたり、狭いエリアで受けている状態が多いので、そこはバックパスになりがちでした。
 けれども、角度を変えたことによって、相手チームの守備の目先を変えて、ボールを動かすことが出来る。

 これがパスを出した選手に戻しただけだと、ボールを展開したことにはならないし、相手の守備もボールに合わせて同じ方向に動くだけなので、対処しやすい。
 しかし、角度を変えたことによって、ボールは違ったベクトルに進むことになり、相手の守備をかわしやすくなる。
 あるいは、相手の守備組織を動かすことになり、そこから隙が生まれる可能性が出てきます。


 例えば、水戸対大宮の14分の場面。

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 3バックの中央ンドカからパスを受けた右WB前嶋は、中盤の右にいた近くの村田にパスを繋ぎます。
 図で言うと、黒い四角で示したのが村田の位置です。
 村田には相手ボランチがつこうとしていた上に、左シャドーも戻って対応していたし、前嶋にマッチアップしていた左WBも近く位置にいた。

 ようするに、大宮の選手に囲まれるような状況で、村田自身は前を向ける可能性は低かったと思います。
 しかし、前嶋はその村田にあえてパスを付けると、村田はすぐに右CB岸田へバックパス。
 その岸田が白い丸で示した中盤中央の山田に繋ぐと、フリーで山田は受けることができ、そこから村田を走らせる攻撃を作ることが出来ました。


 村田は窮屈な状況でボールを受けたことになりますし、前嶋は後方の岸田に戻すことも出来たはずです。
 しかし、そのまま岸田に戻しただけでは、岸田の前にいた相手の左シャドーがマークについていたでしょう。
 さらに、山田に対しても、相手の左ボランチが対応できていたかもしれません。

 また、村田もすぐに前嶋に戻す方が、パスは出しやすかったかもしれません。
 角度を付けたバックパスを出すためには、新たにパスコースを探さなければいけないわけだし、そのまま戻す方が簡単だと思います。
 しかし、前嶋に繋いでも窮屈な状況で受けることになるし、相手の守備は目線が変わらないので対応しやすかったはずです。


 一度、窮屈なエリアでも村田の足元にパスを付けたことによって、図のように複数の相手選手を引き付けたと言えるでしょう。
 さらにそこから角度を付けたバックパスを落とすことによって、ボールを展開し相手の守備をかわすことが出来た。
 それによって岸田、山田も余裕をもってボールを受けられたし、相手の守備バランスを崩すことが出来たとも言えると思います。

 秋葉監督新体制になった水戸は、こういった展開を常に狙っていた印象でした。
 これを実行するためには、後方で他選手がボールを持った時に、パスを受けるために前方選手が近づかなければいけないし、3人目の選手が受けるポジショニングも取らなければいけない。
 それだけチームとして狙いを持ってやっていたといえるのでしょうし、個々の判断だけでやれるものではないと思います。

 
 当然ジェフからレンタルで加入している乾もこれを狙っていて、近くの選手の足元にパスを繋いでいました。
 そこに関しては、鋭いミドルパスをしっかりと入れられていましたし、判断も良かったと思います。
 それを丁寧にやり続けることが大事ですね。

 今年のジェフもちばぎんカップではSHやSB、ボランチなどがサイドで繋いで、FWなどがサイドの外で縦に走り込む狙いを見せていた印象でした。
 しかし、開幕戦ではメンバーも一部かわってそういった展開があまり見られず、アバウトな攻撃が増えてしまった印象です。
 もちろん開始早々にゴールが決まったということも大きいでしょうが、カウンター展開も少なかったですし、はたして攻撃面をどう考えていくのか。

 もっと言えば、攻撃におけるポリシーが見えてくるのか。
 北九州は中と外を使ったパスワーク、松本はダイレクトパス、水戸は角度を付けたバックパスなど、開幕戦で攻撃がうまくいっていたチームは、攻撃面におけるこだわりを感じました。
 松本、水戸は監督が変わった直後の開幕戦でも攻守に完成度の高いチームを作ってきましたし、ジェフも尹監督体制下で攻撃にこだわりが感じられるチームになるのか注目ですね。