徳島対東京V戦では、徳島のスペースの作り方、裏へのパスの出し方が際立っていた印象でした。
リカルド・ロドリゲス監督は就任当初から前へ飛び出す形を作るのがうまく、そこが徳島のパスワークの特徴の1つとなっていた印象です。
ただ、その中でもメンバーやシステムを頻繁に入れ替えることが多く、チームの軸が不安定だったイメージでした。
そこを確立したのが、昨年活躍したヨルディ・バイスや野村などの選手たちなのかなと思っていました。
しかし、大幅にメンバーを入れ替えた今年の開幕戦でも昨年のような軸を感じ、システムやボールの動きも昨年の流れを継続していました。
昨年の成功もあって、リカルド・ロドリゲス監督自身も成長したのか、どこかに手応えを感じぶれないチーム作りが出来るようになったのかもしれません。
基本的にはカウンターでパスを繋ぎつつ、裏を取る展開を作るのが得意な徳島。
そのため、東京V戦では相手にある程度持たせる形となったのでしょう。
いわゆるコレクティブカウンターを鋭く仕掛けるのが、徳島の武器と言えるのではないでしょうか。
「コレクティブ」とは「集団的な」という意味で、組織的なカウンターとも言えるでしょう。
個人能力で打開するカウンターではなく、複数人がボールに絡んでパスを繋ぎつつ、ゴールに迫る展開です。
徳島はカウンター時にかける人数が多いだけでなく、裏を取る動きも上手く・積極的で、素早くパスを繋いでシュートまで持ち込むことが出来ます。
ただ、そういった動きは速攻時だけでなく、遅攻時にもみられる印象です。
要するに速攻・遅攻に関係なく、攻撃における狙いとして、裏を取る動きや複数人が絡んだ攻撃が出来ているということではないでしょうか。
徳島に限らずですが、良い攻撃が作れているチームは、速攻・遅攻に限らずベースとなる攻撃のメソッドが明確にできているように思えます。
例えば、37分のシーン。
徳島が中盤の中央から右サイドへパスを繋いでいって、右WB藤田がバックパス。
梶川、岩尾とボランチでつないで、大きく左サイドに展開。
左WB浜下が受けてシュートを放ちますが、外してしまいます。
このシーンでも、まず右サイドではバックパスを出した藤田が、裏へ走り込んでいきます。
これによって東京Vの守備陣は藤田の動きにつられ、全体的に後方に下がってしまった。
これでできたスペースが図で表示した白い四角のエリアで、藤田の動きによってボランチエリアで楽にボールを展開できたことになります。
さらに左サイドでも、中央にいた左シャドーの西谷が前に飛び出している。
この動きによって、東京Vの右SB澤井はつられて中央後方へと下がってしまった。
これで左WB浜下のスペースがぽっかりと空き、中央寄りの位置でボールを受けられたため、シュートまで持ち込むことが出来たことになります。
こうやって徳島の選手たちは積極的に縦へ動き出しをすることによって、裏を取る動きをする。
そこに相手選手がついて来なければそこを狙ったパスを出せばいいし、相手選手がついて来れば相手の守備陣を引き付けたことになる。
そうやってスペースを作り出したところに他の選手が侵入していき、そこにパスを繋ぐことによってスピーディで流動的な攻撃が作れているのだと思います。
オシム監督時代のジェフも囮になる裏への動きや、それによってできたスペースへ後方選手が飛び出す動きなどが有名でした。
カウンター時の人数の掛け方や、個人に依存しない攻撃なども含めて、どこから近いものを感じる気がします。
ただ、あの頃のジェフの方が、攻守にガツガツと行くチームだったのかなと思います。
そこがオシム監督が理想だけを追い求めず、負けず嫌いを出したところでもあり、魅力的な内容だけではなく結果も残せたところなのでしょう。
攻撃志向でパスサッカーを目指しつつも、CBやCFなどゴール前には高さやサイズを求めた。
要するに、理想だけでなく現実も抑えていた。
攻撃的なサッカーやパスサッカーなどの理想を追い求めるチームや監督は、どこか夢見がちで勝利が二の次になってしまっているようなこともあり得るように思います。
リカルド・ロドリゲス監督の場合は、それが頻繁に選手とシステムを入れ替えたことであり、それによってどこかひ弱な印象も当初は受けていた。
しかし、昨年からは可変システムながらも戦い方が固まってきた印象ですし、今年に入ってもそれは継続されたように見えました。
チームを指揮しながら実験をしていたような印象だったのですが、昨年の成功もあって戦えるチームになってきたのでしょうか。
今後の展開が気になるチームの1つだと思いますが、果たしてJリーグ再開はいつになるのでしょう…。