偽サイドバックとして途中出場した井出

 徳島と対戦した東京Vは4-1-2-3でスタートしましたが、50分には左SB奈良輪をCBに下げた3バックに変更。
 しかし、71分には奈良輪に変えて井出を投入し、4バックに戻しました。

 DAZNの実況がしっかりシステムを確認しないまま、そのまま井出がCBに入ったと話したこともあったことで、一部ではCBで井出がプレーしたといわれているようです。
 しかし、守備時には右SBのクレビーニョ、あるいは途中投入された右SB山下が戻って4枚で守っていましたし、4バックないしは2バックと言える布陣で戦っており、明らかに3バックではなかったですから、井出をCBと呼ぶのはさすがに無理があると思います。
 ちなみに井出はG大阪でのデビュー戦が右SBでしたし、ジェフでも若い頃に少しSBをやっていたことがありますから、SBでの出場はこれが初めではないということになります。


 ただし、東京Vがポジショナルサッカーを目指していることもあって、普通のSBではなく偽SBとしてプレーしていた印象です。
 偽SBとは何度か取り上げてきた5レーンのハーフスペース後方にSBが位置取りをして、ビルドアップに参加するという発想が基本でしょう。
 その分、ウイングなどが大外に開いたり、インサイドが高い位置や間を狙って、パスの受け手になるということが多いと思います。

 図にすると、例えば87分のシーン。

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 ボールを持った左SBの井出が、アンカーの先に上がってきたCB山本にパスを出します。
 山本はハーフスペースで高い位置を取っていた右SB山下を通り越して、ワイドに張っていた大久保を狙ってスルーパス
 大久保は斜め前方へ走り込みますが、パスには間に合わず攻撃が終わっています。

 ちなみに、この場面ではアンカーの佐藤優平が左サイドに開いて、インサイドの藤田がアンカーの位置に移っています。
 東京Vがボールを持つ時間が長かったこともあって、攻撃時の井出はほとんどの時間帯においてハーフスペースの中盤後方に位置取りをしていましたし、CBとは呼び難く偽SBと見るのが自然でしょう。
 ただ、チーム全体が停滞していたこともありますが、井出は効果的に攻撃に絡めたことはなかったと思います。


 白い四角で示しましたが、このシーンでは小池、河野、レアンドロ、山下、大久保と5人も前線に横並びして、5トップのような状況となっていました。
 しかし、5トップとなると中盤から後方に人数が少なくなりますから、相手は中盤から前方に人数をかけなくて良い状況となり、後方に人数を割くことが出来る。
 結果、味方も相手も前方に選手が密集し、東京Vの前線は渋滞状態に陥っています。

 そのため、この場面でも山本は狭いコースを狙って、スルーパスを供給せざるを得なくなってしまったように、窮屈な攻撃になりがちだった。
 後半の東京Vは、こういった状況に陥ることが多かった印象です。
 また、井出も足元の技術はあるとは思いますが、視野が広くて展開力があるタイプではないだけに、偽SBとして適しているのかに関して、疑問を感じなくもありません。


 ただ、この試合では本来中盤の選手である18歳の山本が、4バックのCBとしてスタメン出場しています。
 山本は昨年もCBでプレーしていますが、その時は3バックだったはずですし、小柄な山本を4バックのCBで起用したことの方が驚きだったようにも思います。
 また、大卒新人で本来はFWの山下や2列目が主戦場だった澤井も、右SBで途中投入されています。

 昨年から攻撃的な選手を後方で使う傾向は見られただけに、井出のSB起用もそこまで驚くべきことではないのかなと思います。
 さらに今季はユース代表監督時代に、8人のボランチを起用しようとしていた吉武コーチが入閣しています。
 当時の記事を振り返ってみると。

U-17日本代表のメンバー争いが注目される中、吉武博文監督はそのメンバーが8割ほど決まってきていることを明言した。ピッチに立つ11人の構成は独特なもの。2年前のチーム発足時、「2人のセンターバックに8人のボランチ」のような構成案をコーチングスタッフの中で話していたというが、飛び抜けた選手が不在で、全員で戦うことをコンセプトに準備を進められている現状のメンバーは2年前に「そんな馬鹿な」と言っていたという構成案に近いものになってきている。

 全体的な選手構成で言えば、当時のU-17の方が奇抜だったようにも思います。
 当時の吉武監督は2ウイングが外で高い位置に張る「ワイドトップ」、ワントップが自由に動き回る「フリーマン」、インサイドもパスを繋いでゲームを作る「フロントボランチ」など、斬新な発想で選手を配置していました。
 特徴的なパスサッカーで2013年にU-17ワールドカップではグループリーグ全勝でベスト16に終わっているわけですから、結果も残したといえるでしょう。


 それに比べると東京Vはまだ極端ではないようにも思いますが、クラブチームということもあって選手を選定しにくいところもあるのでしょうか。
 あるいは永井監督は吉武コーチと通ずるところもあるように思いますが、より現在流行っているポジショナルサッカーへの志向が強いということなのか。
 ちなみに吉武コーチは元中学教師で、永井監督とはその時の教え子という関係だったそうです。

 奇抜なサッカーをやれば勝てるというわけでもないわけで、どこをチームの軸として考えるのか。
 あるいは、どこで勝てるチームを作るのか。
 永井監督と吉武コーチが、最終的にどういったチームを目指していくのか気になるところですね。