昨日話したように、ジェフは4×4のボックス内にパスを入れられてしまうシーンが目立っている印象です。
それを防ぐためにも、ボックスの前でもボールホルダーにプレスをかけて、簡単に前に向かせない守備を構築したいはず。
山下も群馬戦後、高い位置での守備に関して聞かれ、深く守るとボールを奪っても相手ゴールが遠く、そこでパワーを使ってしまうこと。
そして、すべて「前から」というのではなく、コースを限定して前から行こうとしていたことを話しています。
ただ、以前にも書いたように、尹監督の4×4で深く守る守備は非常にシンプルだし、実施するのも比較的簡単なのではないかと思います。
しかし、これが前からプレスをかけていくとなると、どうやって組織的に全体が動いてプレスをはめるのか。
また、どのタイミングでプレスをかけて、どのタイミングでリトリートするのか、チームとして判断する難しさが生まれてくると思います。
現に山形戦あたりから前へプレスをかける回数が増えていったと思うのですが、うまくプレスがハマり切らず、逆に裏を取られてピンチに陥った場面もありました。
例えばDAZN解説の越智にも、プレスの甘さを指摘されてしまった58分のシーン。
3バックの中央CB野田が、右SB熊本にパスを繋いだところで、長い距離を為田が走って寄せに行きます。
しかし、アプローチにいったものの、寄せが甘い上にコースも消せていないため、簡単に前方中央の岡崎にパスを繋がれてしまいます。
元ジェフの深井なども良くやっていましたが、無謀なプレスは逆に守備のあだとなると強く感じるシーンですね。
為田が前に出ていったため、田口とソロモンも遅れて岡崎に寄せに行かざるを得なくなります。
しかし、ソロモンの守備が甘かったこともあって、ここでも反転されてしまいます。
そこから、さらに前方中央の中村駿に繋がれます。
中村駿への熊谷と矢田の寄せも遅くなり、さらにシャドーの南へと繋がれてしまいます。
これで図のように3対3、あるいは4対3の数的不利とも言える状態となりますが、その後に南が前線へ送ったラストパスは合わず。
ここの精度が山形の大きな課題といった印象でしたが、ジェフとしてはそれに救われて失点を免れたことになります。
よく言われているように、単独でのプレスはむしろリスクを増やしてしまう危険性もあるわけで、1人が行くのであれば周りが素早く連動しなければならない。
あるいは、1人でプレスに行くとしても、コースなどをしっかりと消して、前にパスを出させないようにしなければいけない。
上のシーンでは為田が前に出ていったことで、ソロモンや田口、安田などもポジションを捨てて前に出ていかなければいけなくなったわけですが、その結果、図の赤い円のように本来はFWやボランチなどがいなければいけないスペースが、ぽっかりと空いてしまったことになります。
その点でうまかったのが、エイバルでメンディリバル監督に守備を叩きこまれたのではないかと言われた、ロシアW杯での乾だったと思います。
SHの位置からただ猛然と一直線にプレスをかけていくのではなく、複数の選手をにらみながらコースを消すことを前提とした、絶妙なポジショニングを取ってじりじりとつめていく。
乾も決して対人守備などが強いタイプではないでしょうが、クレバーに守備をすることによって穴を作らず、相手を追い詰める効果的な守備をしていったと思います。
プレスのはめ方に関しては、基本的にチーム全体で作り上げなければいけないことであり、監督やコーチの手腕が問われるとこと言えるでしょう。
しかし、一方でそれを実現するためには、選手個々の戦術理解度も求められるところがあると思います。
あるいは、見方を変えると戦術理解度の高い選手が、戦術的に欠けている部分を助けることもあり得るはず。
現在のジェフは戦術理解に課題のある…特に守備面で、そこが足りていない選手が多い印象もあります。
こまめなポジション修正だとか、アプローチに行くタイミングだとか、機器察知能力だとか、単純な対人守備だけではなく、細かな動作に物足りなさも感じます。
そこが全体の選手構成において、守備的な選手が少ないことによって起こりうる問題で、守備的なサッカーをするのであれば、やはり賢く守れる選手がもっと欲しいところではないでしょうか。
現状だと攻撃だけでなく守備にも問題を抱えている状況ですし、FWやSHにより守備的な選手を起用して、まずは守備の構築にすべてを注ぐべきといった案も考えられるのではないかと思います。
しかし、現状だと守備的なFWやSHが少ないだけに、そういった選択もしづらい状況ではないでしょうか。
チームの大黒柱になりつつある田口も守備ではそこまでチームを締められていない印象ですし、誰が守備の主導権を握るのかにも注目なのかもしれません。