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水戸の横パスとジェフのSHのタスク設定

 5連戦ともなると、連戦が終わった後に連戦初戦の記憶が薄れてしまいますが、今回の連戦は1-5で水戸に敗れた試合からスタートしました。
 水戸戦のショックもあってその後は守備意識が高まり失点が減っていきますが、思い返しても水戸の攻撃は見事だったと思います。

 特に印象的だったのが、26分にあびた2失点目。

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 中盤での浮き球のボールを水戸が拾ったところから、左SB前嶋が左SH山口に横パス。
 そこから鋭いミドルシュートを放たれると、雨でスリッピーな状況もあってGK新井が前にこぼし、村田が走り込んでゴールを決めています。
 村田の体面にいた安田の反応も遅く、前を取られてしまったのが残念でした。

 ただ、それよりも、左ボランチ田口の山口への寄せが甘く、フリーでミドルシュートを放たれてしまったことが問題ではないでしょうか。
 田口は中央へのパスを警戒したのかもしれませんが、もう少しボールホルダーに近づいていきたかったところだと思います。
 また、このシーンではチーム全体としてスライドと押し上げが遅く、足を止めてしまったことも課題で、こういった細かな部分で守備の甘さを感じるところがあります。


 一方で水戸の攻撃でいうと、この横パスこそが水戸の特徴といえると思います。
 サイドなどでボールを持つと、上記のように中へ横パスを出すことが多く、それによって角度を変えて選択肢を増やすと。
 サイドだけでつないでいては窮屈な攻撃になってしまうわけで、この小さな横パスが大きな意味を持つのだと思います。

 逆にジェフの課題はサイドでボールを持つと、サイドを縦へという展開ばかりになってしまうこと。
 あるいは、展開するにしても逆サイドへというパターンが多く、結局は中からの攻撃ではなくサイドからのクロスで終わることが多い状況です。
 そこが攻撃の質やバリエーションを増やせない、大きな要因となっているのではないでしょうか。


 1つには、選手個々の課題もあるでしょう。
 為田は縦に鋭く仕掛けられ、調子も戻ってきたのかなとも思うのですが、中に入ってパスを繋ぐというような選択肢が少ない。
 それゆえに相手は左サイドなら縦へ来るだろうという予測が立ちやすく、対応しやすい状況になっているように思います。

 しかし、右サイドの矢田も、本来は純粋なサイドアタッカーではないにもかかわらず、縦に仕掛ける展開が少なくない。
 そうなると、選手個人の問題もあるとは思いますが、チームとしてもバリエーション不足に陥っているのではないかと感じます。
 それがこの5試合で3得点しか上げられなかった、得点力不足の問題にもつながってくるのではないでしょうか。


 もともと尹監督は攻撃を作れるタイプではないにしても、SHなどそれぞれのポジションに何を求めているのか、あるいはSHのチョイスと組み合わせでどうやって攻撃を作ろうとしているのか。
 例えば途中投入で左SHにアランを投入した試合もあり、アランはゴール前に飛び込もうとしてはいましたが、逆サイドにはクロッサタイプの選手がいなかったり。
 右SHに左利きの矢田や堀米を使っているけれども、SHには外からのクロスを期待している印象ですし、SHが中に入ってSBが仕掛けるにしても、SBには攻撃力のあるタイプを置いていなかったり。

 もちろん矢田の起用は守備を期待したものであり、それは理解できるところでもあります。
 しかし、攻撃面において、どういったタスクを求めているのか。
 狙いがあった上でそれがうまくいかないのであれば仕方がないですが、明確な狙いが見えてこないところが残念なところではないかなと思います。


 水戸が外だけでなく中も使ってうまく攻撃しているという点においては、ジェフはボランチが中央でゴール前へ飛び込む展開を期待しているのかなとも思います。
 金沢戦のジェフの2点目などはまさにそれで、左SH見木がサイドを仕掛けていって、ボランチ高橋がシュートを決めています。
 ただ、あくまでもアシストしたのはSHの選手であり、チャンスメイクにおいてはSHが重要な立ち位置にあるサッカーををしているはずです。

 だからこそ、SHにどんな役割を期待するのかがまず大事だと思うのですが、そこのタスク設定がうまく整理できているのか。
 ボランチはビルドアップやゲームメイク、守備時のバランス管理などさまざまなタスクを求められている状況だと思いますし、いかにSHで攻撃を作るのか。
 そこが攻撃の質という意味では、大事なところになってくるのかもしれません。