パスワークでの打開を目指す山形は、貫禄すら感じました。
ジェフのプレスに対してもそこまで動揺することなく、冷静に自分たちのパスワークを追及して、ジェフの守備を打開していった印象です。
昨年まで木山監督の下で守備的なサッカーを展開していた山形が、ここまでのパスワークを展開できるようになった。
また、昨年下位に低迷していた福岡が、今年はここまで優勝争いをしている。
それらを見ていると、やはり過去のチームの流れというのは、そこまで言い訳にはならないのではないかと思うのですが…。
ジェフに関しては、試合前にも話したように、「相手もあるのがサッカー」だということだと思います。
最下位愛媛を相手に、悪くないサッカーをしたからと喜んでいるようでは未来はない。
勝てていないことには変わりないですし、相手も含めて冷静に試合を見ていかなければいけないと思います。
個人的に疑問なのが、また前掛かりになっていること。
9月の愛媛戦頃から前へプレスにも行くようになった印象のあるジェフですが、水戸戦では前に出すぎてその裏を取られて1-5で敗れ、そこからバランスを取るようになっていったように見えました。
しかし、それでも勝ち星は残せなかったためか、前節あたりからは再び前への姿勢を強めていった印象です。
そして、山形戦では再びその前掛かりになった裏を取られて、1‐5で大敗してしまった。
これでは過去の反省を活かせていないのではないか。
確かに愛媛戦ではプレスで相手を押し込めましたが、それは相手が最下位だったからではないか。
山形レベルの相手ではそれが通用しなかったということだと思いますし、やはり前節思い違いをしたことが大きな間違いだったのではないかと思います。
■ジェフのプレスをかわし山形が2点を先制
ジェフは本村がメンバー外で、田口が復帰し、チャン、下平、為田もスタメン復帰。新井、高橋、アランが控えに回り、ベンチからは堀米が外れて、ゲリアが入りました。
山形も一部メンバーを変更し、GKに元ジェフの藤嶋、CBに出場停止明けの野田、左SBに小野田、SHに末吉、トップ下に前川を起用。
松本がメンバーから外れて、佐藤、半田、南、加藤がベンチスタートになりました。
元ジェフの栗山は、8月に左アキレス腱断裂で全治6カ月の大怪我を負っています。
1分、ジェフの攻撃。
右サイドからのCKを矢田が蹴ると、ニアで下平が合わせます。
しかし、ジャストミートはせず枠の外。
この日もジェフは、立ち上りから積極的に前にプレスをかけていきます。
しかし、左サイドからのクロスは合わず、徐々に山形がパスを繋いで巻き返していきます。
細かくパスを繋いで打開を狙いますが、山形もラストパスは合わず。
しかし、30分、山形が先制。
右サイドを駆け上がった山田に、野田からロングフィード。
こぼれたところをヴィニシウスが拾って、シュートを放ち0‐1。
37分、山形が追加点。
ジェフのボックス内で左から右に山形がパスを繋いでいき、山田が落として中村がミドルシュート。
こぼれたところを前川がつめて0‐2。
44分には、セットプレーからジェフのチャンス。
左サイドからのCK、小さく繋いで矢田がクロス。
ファーで山下が折り返し、小島が右足で合わせますが、バーの上に終わり0-2で折り返します。
■カウンターからも失点し1-5の大敗
追いかけるジェフはHTで為田、矢田を下げてアラン、見木を投入。アランが右SH、見木が左SHに入りました。
47分、山形の追加点。
田口がボールを奪われたところからカウンター。
前川、山田、渡邊とボールを運んでマイナスのクロスを上げると、最後は中村が決めて0‐3。
52分にも追加点。
渡邊の突破を、下平が倒してしまいPK。
ヴィニシウスのシュートはGK新井が止めますが、末吉が詰めて0‐4。
56分にも山形の攻撃。
中盤での競り合いから、渡邊が粘って前川へ。
前川がバイタルエリアからミドルシュートを放ちますが、GK新井の正面。
59分にはジェフの攻撃。
GK藤嶋からのキックをアランが落として、船山が持ち上がり見木へ。
下平が受けてシュート性のクロスを上げますが、小野田がクリア。
しかし、その直後にも失点。
ジェフのCKの流れから、ジェフが拾って後方でアランが田口につなごうとしたところを末吉がカット。
ヴィニシウスが受けて、そのままシュートを放ち5点目。
5点リードの山形はヴィニシウス、渡邊を降ろして、大槻、南を投入。
末吉が右SHに回り、前川が左SHへ。
その直後、ジェフは下平と田口を下げてゲリアと高橋を投入し、安田が左SBへ。
68分、ジェフの攻撃。
右サイドからのカウンターは一度止められますが、安田が1人をかわしてミドルシュート。
しかし、ゴールの右を逸れます。
69分、山形は小野田、中村を下げて、半田、小松を投入し、半田が右SBに入り、山田が左SBへ。
78分、ジェフは山下を下げて寿人を投入。
79分、山形は前川に代えて加藤を起用。
82分、ジェフが1点を返します。
安田が1人をかわして、持ち上がってクロス。
ファーで寿人が頭で合わせて1‐5。
85分、山形のチャンス。
岡崎が右サイドからのCKを蹴ると、ファーで熊本が折り返します。
ゴール前で大槻が合わせますが、枠の外。
試合終盤の山形は、さすがに無理をしなくなっていった印象ですが、それでもプレスは厳しくペースを掴んでいました。
ジェフは選手の足も止まり、ボールを前にすら持ち込めない展開が目立ちます。
ラストプレーになったCKからのゲリアのヘディングシュートも決まらず、1‐5で大敗となりました。
■具体的な"守備の型"は作れているのか
初めに話した通り、山形のパスワークは冷静だったと思います。山形は右SH渡邊が内寄りに入ってくることが多いのですが、それに釣られて為田が中央後方に下がると、その前で空いたスペースからビルドアップを展開したり。
あるいは、ジェフがFWとMFで前にプレスに行くと、1つ飛ばしたパスでDFラインとMFラインの間を狙ったり。
結局、1点目、2点目は同じように、MFラインを飛ばしたボールから打開されています。
ジェフの守備は、DFラインとMFラインの間でボールを持たれると弱いところがある。
岡山戦で上門にやられた失点も、前線に当ててて2列が飛び出してやられた展開でしたし、2列目の動きに誰がついていくのかはっきりしない印象があります。
また、ここ数戦のジェフは、立ち上りから積極的にプレスをかけていきます。
そうすることで、相手を押し込み自分たちのペースにしようという狙いもあるのでしょう。
しかし、そういったキックオフ直後からトップギアで押し込んでいくゲームプランは、立ち上がりこそ良いものの勢い任せであるため、途中からは落ち込んでしまうことが多い。
キックオフ直後からハイプレスをかけていくとして、勢いが落ちた時にどう戦うのか。
結局は引いて守るのか、前に出ていくのか、バランス重視なのか。
チームとしてのやりたいサッカー、チームとしてのベースがどこにあるのか、はっきりとしないところがあるのではないでしょうか。
今期のジェフはうまくいかなくなると「原点に戻る」というような話をする選手が多いですが、果たして原点とはどこなのか。
「守備を大事にする」というのは確かなのでしょうが、「守備重視」と一口に言ってもやり方は無数にあるはずで。
"攻撃の型"があるように、"守備の型"もあるはずですが、そこまでかっちりと作れていないような気がします。
だから、前掛かりになり過ぎて裏を取られたり、逆に前に出て行けずにペースを握れなかったりといった異なる課題が、試合ごとに起こるのではないかと思います。
もちろん、その試合その試合で、相手との相性や、相手との力関係でうまくいくこともある。
しかし、チームとしての基盤がふわふわとしているので、一度の成功や失敗で戦い方が変わってしまうのではないでしょうか。
または、今回は攻撃が作れないから、あるいは勝てないから、前掛かりになり過ぎたところもあるのかもしれない。
しかし、その攻撃面の課題によって守備の方法も変わってしまうのであれば、それほど"守備の型"が作れないということ。
改めて「守備重視」は良いとしても、具体的にどういった守備を作りたいのか、どういったサッカーで勝ちたいのかを明確にすることが、求められるところではないでしょうか。