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スタイルの徹底に明確な差が出て栃木に0-1の敗戦

 ある程度予想できた通り、ジェフ対栃木戦はロングボールとセカンドボールの潰し合いが続く試合となりました。
 どちらも攻撃はロングボールが多く、ショートパスを繋いで攻撃を作れるチームではない。

 しかし、そこで差が出たのが、スタイルの徹底ではないでしょうか。
 特にここ数戦のジェフは後方でスペースを消して、攻撃は相手の隙というかミスを待つのが基本。
 ロングボールも苦し紛れといった印象がぬぐえない状況だと思います。


 けれども、栃木はロングボールを蹴るだけでなく、その直後もボールを奪い返しハーフカウンターを狙ってくる。
 浮き球が多くなることによって増える中盤での潰し合いも織り込み済みで、チームを作っている。
 そこから中盤のせめぎ合いに勝ってロングカウンターも狙ってくるということで、明らかにスタイルの徹底という部分に差が出てしまった試合だと思います。

 チームのスタイルというのは、あくまでも勝つためのものだと思いますが、ジェフは前節などもともかく試合をクローズすることにいっぱいいっぱいで、攻撃は作れなかった。
 攻撃を作れなければ点は取れないし、点を取れなければ勝てもしないわけですから、攻撃がまったく狙えないとなると、ただスペースを消して守っているだけといった印象にもなってしまう。
 それに対して栃木は同じフィジカル系のチームではありますが、勝つためのサッカーをしている印象で、そこの違いというのは大きなものではないかと思います。

■ロングボールと潰し合いが続く前半

 田口が出場停止となったジェフですが、12月1日(火)に新型コロナウイルス感染者が明らかになってから2週間が経ち、一部メンバーが戻ってきました。
 試合から離れていたゲリア、小島、矢田、工藤がスタメンに選ばれ、高橋、為田、川又もスタメン復帰。
 ベンチに熊谷、アランが回って、寿人も入り、増嶋、堀米、クレーベが外れました。

 栃木は溝渕がジェフとの契約で出場できず、元ジェフ佐藤祥が累積警告で出場停止。
 代わりに左SBで大島が入り、契約満了の決まったボランチの岩間、右SHの山本がスタメン。
 西谷優希が控えスタートで、前線で起用されていた明本がボランチでスタートし、前線にエスクデロが入りました。


 4分、ジェフの攻撃。
 中盤の右に上がった新井から、ロングパス。
 川又が落として、相手DFがクリアミスしたところを工藤が拾ってミドルシュートを放ちますが、力なくGK塩田がキャッチ。

 18分にもジェフの攻撃。
 高橋が中盤でボールを奪ったところから、為田が工藤とパス交換で持ち上がり中央へ。
 矢田がミドルシュートを放ち、川又がボールに触りますが、枠をとらえきれず。


 予想通りどちらも長めのボールが多く、セカンドボールの競り合いが続く展開。
 24分、高橋の後ろからのタックルでエスクデロが負傷し、西谷が投入。 
 矢野とエスクデロの2トップだったため、いつもよりはプレスが弱めだった栃木ですが、この交代から前に出てきます。

 28分には栃木のチャンス。
 岩間からのロングパスを森が受けてミドルシュートを放つと、明本が受けて抜け出す形でシュート。
 これをGK新井がセーブしますが、明本が拾ってクロスを上げ、柳が飛び込むものの合わせきれず。


 この直後にも栃木の攻撃。
 山本が中盤右でボックスの間で仕掛けて明本が受けてシュートを放ちますが、ジェフのDFにあたります。
 このこぼれを大島が拾ってミドルシュートを狙いますが、枠の外。

 その後、一度はジェフが巻き返しますが、再び栃木のプレスに苦しみます。
 45分にも栃木のチャンス。
 低い位置で高橋が岩間と明本に囲まれボールを奪われ、矢野が受けてフリーでミドルシュートを放ちますが、枠をとらえきれず0-0で折り返します。

■栃木の勢いが加速し0-1でジェフの敗戦

 前半途中からの流れから変わらず、栃木ペース。
 50分、栃木のチャンス。
 GK塩田からのロングキック、矢野が競り勝ち明本がシュートを放ちますが、ポストの上を叩きます。

 53分には、セットプレーからジェフのチャンス。
 後方右からのFK。
 矢田が蹴ってGK塩田が飛び出し、為田が受けてロングループシュートを狙いますが枠の外。


 その直後には栃木のチャンス。
 右サイドから山本が仕掛けていくと、一度はジェフがブロックしますが、山本が奪い返します。
 そこから矢野が明本と1-2で抜け出しシュートを放ちますが、GK塩田がセーブ。

 この時間帯は栃木の猛攻が続き、58分にも栃木の攻撃。
 矢野がロングパスを落としたところから、明本、山本と繋いで逆サイドへクロス。
 森が折り返しますが、新井一耀が何とかクリア。


 栃木の流れが若干落ち着きますが、66分に栃木が先制。
 後方からのFK。
 こぼれたところを栃木が拾い、西谷がクロスを上げると柳がファーで合わせて0-1。

 71分、矢田、為田、工藤を下げて、米倉、アラン、山下を投入。
 77分、ジェフは川又を下げて寿人を起用。
 80分、栃木は大島、山本を下げて、瀬川、高杉を投入し、高杉をCBに起用した3バックに変更しました。


 83分にも栃木の攻撃。
 左サイド奥でのFK。
 瀬川が意表をついてグラウンダーでつなぐと、ニアで1人スルーして森がシュートを放ちますが、ジェフのDFにあたります。

 92分、矢野、明本と有馬と2種登録の小堀が入りました。
 試合終盤はジェフがボールを持つも、栃木に跳ね返されシュートすら打てず。
 0-1で敗戦となりました。 

■クラブ単位でもチーム単位でもスタイルを徹底できず

 立ち上がりの栃木は、若干控えめだった印象でした。
 佐藤祥の出場停止もあって、明本をボランチに下げた栃木は、エスクデロを前線でスタメン出場させます。
 スタートは無理をしないというゲームプランだったのか、ジェフは細かなビルドアップから攻撃を作れないので、矢野と左右SHによるプレスだけでOKと判断したのでしょうか。

 しかし、矢野とエスクデロの起用によって前からのプレスが弱くなり、高い位置でボールを奪ってカウンターといういつもの展開があまり狙えなくなっていました。
 そのエスクデロが26分に高橋のファールで負傷し、明本を前線に戻して西谷をボランチで起用したことによって、いつものような前からのプレスが実施できるようになっていった印象です。
 そこからは、ほぼ栃木ペースだったと言っていい試合だったと言えるのではないでしょうか。


 栃木はジェフが後方でゆっくりと横パスやバックパスを出すと、必ず対面の選手が長い距離を走って追いかけてきた。
 運動量も素晴らしいですし、単純にプレスをかけるだけなく、体を入れてボールを奪う動きを全員がやってきましたね。
 ボールへの執着心も含めて、意図が明確なチーム作りをしているのだと思います。

 ただ、単純に走る、体をぶつけるというだけでなく、しっかりと組織的に戦っているチームだと思います。
 例えばプレスに行かない時にはしっかりとラインコントロールをしてコンパクトに守っているし、前線も無暗に追うのではなくボランチへのコースをケアしてから前に出ていっていた。
 また、ボール際で混戦状態になった時には、1人がいわゆる"スクリーンプレー"をして相手選手を押し止め、もう1人がボールを狩るなど、細部にこだわっているように見えました。


 今年の栃木はクラブ単位で意図が明確になっていた印象で、前線にはターゲットとなる矢野や有馬を補強し、2列目には走れて仕掛けられる明本、森などの新人選手を獲得。
 その前4枚でプレスをかけて、中盤では運動量豊富な岩間や佐藤がバランスを取りボールを拾う。
 そして、プレスを回避されてロングボールを蹴られたら田代や柳など長身CBが跳ね返すなど、確固たる志を感じる選手構成と起用方法になっているように思います。

 もちろん、状況次第でもっとパスを繋げた方が落ち着いた時間を作れるだろうし、選手も休めて相手に流れを奪い返されないのではないかとも思います。
 しかし、栃木は資金力がないからこそ全てを叶えるのは不可能で、だからこそ割り切ったスタイルを目指しているのではないでしょうか。
 それを考えるとジェフはやはり中途半端な資金があるからこそ、あっちもこっちもやりたくなって、結果的にスタイルも選手構成も中途半端になりがちなところがある気がします。

 その栃木を率いたのが、元ジェフで昨夏から強化部長代行を務め、今年正式に強化部長になった山口慶ということなりますね。
 上記の通り割り切れたからこそ、スタイルを確立できたところも大きく、そうでなかったら山口も迷った部分があったのかもしれませんが、それでも素晴らしい手腕だと思います。
 ジェフも外部からGMを招聘するくらいなら、いっそ若いOBを起用した方が案外うまくいくのではないかと思うのですが、そう簡単ではないのでしょうか。


 栃木などに比べると、ジェフはクラブ単位でも、尹監督の好みの選手を集めきれなかった印象です。
 そして、チーム単位でも堅守は目指したものの速攻は作り切れず、結果的に中途半端なサッカーとなった1年だったのではないでしょうか。
 いくら尹監督好みの選手たちではないにしても、そこそこの選手はいたはずで、カウンターなどの攻撃を作れなかったことへの言い訳にはなり切れないように思います。

 まだ1試合ありますが、クラブ単位でもチーム単位でもスタイルを徹底しきれなかったと言えるのではないでしょうか。
 それを反省した上で、来季のチーム作りを目指してほしいところではないかと思います。
 まだホーム最終戦が残されているので、最後はすべてを出し切って終わってほしいところですね。