ひとまずは、無事に開幕戦が迎えられてよかったと思います。
地震に台風にウイルスに、そうでなくても苦労の多い世の中において、スポーツが見れるということは一筋の光となるはず。
あとは応援するチームの内容が良ければいうことはないのでしょうが、そこは相手もあることですから贅沢ばかり言っていられないのでしょう。
開幕戦でのジェフは、前半いいところがなく、昨年の悪い時のようなサッカーだったと思います。
プレスもかわされ、ボールを蹴っては相手に奪われ。
押し返す時間があってもシュートまで持ち込めず、また流れが引き戻されてしまう。
後半にゴールを奪ってからは、ジェフの方が優位に戦えたと思うので、そこは収穫だと思います。
ただ、なぜあの時間帯に優位に立てたのかを考えると、攻守の"動きの質"が変わったわけではないと思うし、単純に運動量で相手を上回り"動きの量"で勝負できたからではないか。
今後、急に走れる選手が増えるとは思えないですし、出来る限り走り勝てるように努力しつつも、毎試合90分間あの状態を期待するのは難しいように思います。
そうなると、それ以外の時間帯をどう戦うのか。
ブワニカは非常に良かったですが、スタメンであそこまでやれたのかには疑問も残りますし、完全に走力で上回れなくてもパスを使ってじっくり攻めたり、粘り強く守ったりといった安定して戦える術を身につけなければいけない。
そう考えると、やはり前半のように相手も走れていた状態で、いかに攻守に優位に立てるかが重要ではないでしょうか。
もともとJ2でのジェフは、勢いがある時は優位に立てることは、長年の経験でわかっていること。
しかし、それだけでは昇格できないこともわかったわけで、良い時間帯だけを見て良かったとは言い難いと思います。
走り勝てない時にどう戦うのかが、今年の課題となるのでしょうか。
■得意とする斜めの展開から甲府が先制
新井章太の負傷を発表しているジェフは、鈴木椋大、鈴木大輔、岡野、米倉、安田、熊谷、小島、福満、岩崎、大槻、船山の11人で開幕。ベンチには松原、チャン、小田、高橋、見木、末吉、ブワニカ。
沖縄でのTGにも不在だった田口、新井一耀だけでなく、川又、伊東、小林あたりも怪我でしょうか。
外国人選手2人が間に合わず泉澤も負傷となった甲府は、昨年の選手が主体で元ジェフ山本英臣がリベロ。
左WBには法政大卒の関口が入り、前線は有田を頂点に三平と元ジェフ金井の1トップ2シャドーに。
ベンチには、新加入の野津田や桐蔭横浜大卒の鳥海などが入りました。
甲府は前年同様、攻撃時にはリベロが前に出て4‐1-2-3になり、ビルドアップをする展開。
しかし、縦パスは長めのボールが多いことも変わらず、そこでミスが生じていました。
それでも守備時は3トップが前に位置取りして、高い位置からプレスをかけリズムを掴んでいきます。
ジェフはそのプレスをかわせず、長いボールを蹴り込む攻撃。
しかし、大槻、船山の2トップは高さがないし、長身CBメンデスなどに跳ね返される形が目立ちました。
セカンドボールでも苦戦し、甲府の方が良い流れで始まった印象です。
12分には甲府のチャンス。
鈴木大輔のバックパスをGK鈴木椋大がボールを受けると、有田がプレスをかけて奪います。
しかし、シュートを決めきれず。
16分にも甲府のチャンス。
FKの流れから、右CB小柳が斜めのクロス。
メンデスが触って、ファーの金井がシュートを放ちますが、バーの上。
19分にはセットプレーからジェフのチャンス。
左サイドからのCK、船山が蹴るとニアで米倉が合わせます。
しかし、GK岡西が正面でキャッチ。
29分には金井が負傷交代し、野津田がシャドーに。
20分頃からはジェフがサイドからボールを持ち込むことで、相手のプレスをかわしていきます。
しかし、クロスからの攻撃しか作れずにいると、再び甲府が息を吹き返していきます。
35分、甲府の決定機。
鈴木大輔のアバウトなロングパスを中盤で拾われたところから、右WBに入れ替わっていた関口が受けて斜めの縦パス。
これを野津田が受けてフリーで持ち込みシュートを放ちますが、ポスト直撃で事なきを得ます。
そして、45分に甲府が先制。
右サイドからの斜めのパスを有田がキープし、逆サイド前方の荒木へ繋ぐと斜めのクロス。
これを中村が受けて、鈴木大輔をかわしゴールを決め、0‐1で前半を終了します。
■ブワニカが同点ゴールもその後はチャンスを作れず
1点ビハインドのジェフは福満、船山を下げ、末吉、ブワニカを投入し、そのまま右SHと前線に。しかし、流れは変わらず、甲府が優位に攻め込んでいきます。
それでも56分、ジェフが同点ゴール。
右サイド前方でブワニカがボールを奪ってクロスを上げると、逆にサイドに流れて安田がクロス。
これをファーでブワニカが合わせて1-1。
66分、甲府は有田を下げて鳥海を投入し、三平がCFに回り鳥海がシャドーに。
70分、ジェフは熊谷、大槻を下げて、見木、高橋を投入。
見木が前線、高橋がボランチに入りました。
1点を取ってからジェフの勢いが増し、運動量で優位に立っていきます。
しかし、ここでもサイド攻撃ばかりでチャンスは作れず。
甲府は運動量が落ち、守りの時間が長くなり、ミスも増えていました。
81分、ジェフの攻撃。
左サイドで小島の浮き球のパスをブワニカが頭ですらし、再び小島が受けグラウンダーのクロスをあげると、見木が粘ってシュートを放ちますが、GK岡西の正面。
その直後、甲府は三平、野澤を下げて、宮崎、山田陸を投入し宮崎がCFに。
甲府も徐々に巻き返し、終盤は一進一退といった印象でしたが、90分に甲府がPKを獲得。
左サイドからのCKで、小柳がシュートを放つと岡野がハンド。
野津田がキッカーになりますが、GK鈴木がPKストップ。
93分にも甲府の攻撃。
甲府がパワープレーで攻めて行き、関口のクロスから頭で押し合いに。
最後は野津田が狙いますが、これも決まらず1‐1で痛み分けとなりました。
■勢いと運動量で攻守の課題をカバー
似たようなサッカーでしたが、チームとしてやりたいことが明確だったのは甲府だったと思います。昨年からやっていることですが、ビルドアップではリベロが前に出て、アンカーのような位置取りをする。
これ自体は大きな変化ではないようにも思えますが、2バック+アンカーになることで、ボール運び方にギャップが生まれる。
3バックが横一列だと横パスだけになりかねないですが、凹凸を作ることでボールの動きも変わり、相手のプレスもかけにくくなる。
さらにGKもここに加わることで、横にも縦にも深みのあるビルドアップを実行していくということではないでしょうか。
また、甲府はミドルサードからアタッキングサードにおいても、斜めのパスを使おうという意図を感じます。
これも前から見られた傾向ですが、縦だけだと警戒され、横だけだと前に進めないので、斜めを狙うというのは近代サッカーのトレンドの1つですね。
だから、2バック+アンカーなのかなとも思うし、前線も1トップ2シャドーの関係をうまく使っていたと思います。
ゴールシーンも右WBから斜め中央のCFへ、CFが斜め左のWBにつなぎ、最後のクロスも斜め前方へ。
ボックス守備で縦横への守備意識はあるジェフですが、斜めに攻め込まれると弱さが生まれかねない。
さらに、その前の野津田の決定的なシーンも、右サイドからの斜めのパスから決定機を作られています。
それに比べるとジェフは大外からのクロスばかりで、押せ押せの展開だった後半も攻撃の形は変わらなかっただけにチャンスは作れなかった。
斜めの展開が絶対ではないにせよ、チームとして狙いのあるなしが大きな差として表れていた印象で、甲府は狙いが明確だから苦しい最後の時間帯も攻め返せたのではないでしょうか。
結果的に甲府は得点シーン、野津田の決定機、PKとあった上、シュート数も13本でジェフが5本と、全体的に言えば甲府優勢の試合だったと思います。
また甲府は守備でも5‐2‐3のような状況で、3トップが後ろをケアしながらDFを睨みつつ、チャンスがあれば3人が連動してプレスをかけてきた。
ジェフはビルドアップの変化がなく、2CBで回すのが基本なため、そこで苦戦しロングボールが増えてしまった。
さらにジェフのプレスはFWが追いかけてSHが付いていくも、そこから3人目、4人目が連動してプレスをかけるような動きは少なかったと思います。
それらすべてをカバーしたのが勢いと運動量で、勢いがあって走り勝てていれば全体がどんどん前に行けるから、組織的なプレスなど必要なく押し込むことができる。
さらに中盤で素早く囲って、セカンドボールを拾えようになって優位に立った。
そして、中盤でのボール奪取から攻め込めるようになったから、細かなビルドアップも必要がなくなった。
一方でチームとしての戦い方という意味では、新体制発表会で尹監督が「攻撃的な守備を目指す」と言ったので、今年のジェフは高い位置からプレスをかけるサッカーを目指すとマスコミなどが報じていました。
しかし、以前にも話したように、これに近い話は前年の新体制発表会でもしていたわけです。
実際、蓋を開けてみれば、そう大きくは変わっていない印象でした。
それでもブワニカなどを起用したのは、前からのプレスを重視するというつもりなのか。
それとも、単純にビハインドになってフレッシュで勢いのある選手を使いたかったのか。
いずれにしても、まだまだ攻守にやりたいことを明確にして、細部を詰めという状況は作れていない印象です。
やらなければいけないことはたくさんあると思いますし、ここからどれだけのスピードで、どれだけ進歩していけるのか。
監督2年目ですし、なかなか苦しいスタートだと思います。