磐田戦の94分、チャンがDF裏に抜け出そうとした大森を後ろから倒したことで、レッドカードを提示され退場となりました。
これを最近では「DOGSO」などと言います。
「DOGSO」とは「Denying Obviously Goal Scoring Opportunity」の略で、単に「決定的得点機会の阻止」のことです。
「DOGSO」という言葉が日本で流行ったのは、ルール変更があった2016年の頃からでしょうか。
この年の夏から、ペナルティエリア内で「DOGSO」を犯した場合に起こる「PK、退場、出場停止」の三重罰は厳しすぎるということで、イエローカードに変更されることになりました。
ただし、危険なプレーで止めた場合は、過去のルールと変わっていません。
この辺りは、こちらなどで詳しく掲載されています。
ただ、今回の場合、チャンが倒したエリアはペナルティエリアの外だったため、上記のルール変更とは関係なく、「DOSGO」で一発退場となっています。
「DOSGO」の判定には相手選手がゴールを向いているかなど、どういった状況でファールを犯したのか基準が定まっています。
得点に直接結びつかないような状況では「DOGSO」の判定にはならないわけですが、今回の場合は明らかにゴール正面でチャンが止めなければGKと1対1になってしまうような状況でしたから、レッドカードの判定は妥当でしょう。
チャン本人もプレー後に諦めたかのような様子でしたので、覚悟の上で大森を止めたのではないかと思います。
状況からすると、あそこで大森に抜け出されて失点してしまえば0‐2になってしまう。
1点差ならまだラストプレーで何が起こるかわからないということで、レッドカード覚悟で止めたのかもしれません。
そう考えると、チャンの判断は理解できると思います。
それよりも大森に抜け出された状況が問題で、まずGK新井のキックミスが致命的でしたね。
前方に蹴り込もうと思ったのではないかと思いますが、この日は風が強く押し戻されたボールは、フリーな中盤の相手選手に向かってしまいます。
そこからヘディングでDFライン裏へ供給され、大森が抜け出す形となってしまいました。
GK新井は昨年からキック精度に課題を感じていましたが、今季はさらにミスが増えている印象があります。
GKとしては今年も安定したプレーを見せていますが、キックを失敗すれば相手ボールになり、そこから守備機会も増えてしまいます。
それが何度も続いていればチームとしても苦しくなるし、いくらGKとして安定していたとしても、評価は下がってしまうかもしれませんね。
また、磐田は小川航基がオフサイドの位置から戻ろうとしている状況で、大森が後方から飛び出す形となりました。
その分、一瞬チャンの対応が遅れて、背後を取られています。
チャンに問題があったとするのであれば倒したプレーではなく、裏を取られた対応に関してということになるのかもしれません。
ただ、それよりも磐田戦でのチャンは前半ATの失点シーン前に、クロスに対して空振りしてしまったシーンの方が課題と言えるのではないでしょうか。
ここまでレギュラーCBとしてクレバーな対応を見せているチャンではありますが、空中戦やフィジカル面ではもう1つ強さを発揮できていない印象があります。
CBとしてここから上を目指すためにはクロスボールなどに対して、しっかりと跳ね返せる強さを身につけていかないといけないのかもしれませんね。
一方で磐田とすれば、大森が裏を抜けたシーンは偶然生まれたわけではないと思います。
磐田は中盤や前線でボールを奪うと、素早く裏を狙うボールを出し、前線の選手も裏へと橋込む動きを90分通して見せていました。
これを普段の試合から狙っており、チームとして徹底していたからこそ、大森が抜け出すシーンを作れたのではないかと思います。
そのパスを出す遠藤などが今年はもう1つで、この日もパスが通らないことが多かったですが、チームとしての意思は明確だったと言えるでしょう。
このシーンでも前半何度も裏を狙っていたルキアンや途中出場で1トップに入った小川航基ではなく、シャドーの大森が抜け出そうとしていたことからも、個人の動きに頼っていないことがわかります。
ジェフとしてもそういったチームとしての攻撃の狙いがほしいところで、そこが作れていないため安定した得点力を生み出せていないところがあるのではないでしょうか。