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「ジェフのエース」船山が契約満了で退団に

 シーズンのまとめを書いているうちに、来季への動きも出ていましたので、少しずつ取り上げてきます。
 まずは契約満了の発表が、いくつか出ていますね。
 その中でも船山は長年ジェフに貢献してくれていたし、何より今季も主力選手の1人でしたから、驚きの発表でした。

jefunited.co.jp

 船山は2016年からジェフに加入。
 ジェフはこのオフに大幅な選手の入れ替えを行っており、佐藤優也、近藤、若狭などと同時に移籍していますが、今となっては船山しか残っていませんでした。
 そのことからもあの時の入れ替えは失敗で、クラブにとって大きなダメージだったと思いますが、関塚監督続投が先に決まっていたため、他の何かを変えなければと選手を入れ替えるしかなかったのでしょうか。

 ジェフ加入初年度から前線や2列目でレギュラーとしてプレーした船山は、その後も主力選手として戦い続けました。 
 大きな成果を収めたのがエスナイデル監督体制2年目の2018年で、この年だけで19ゴールもマーク。
 船山のキャリアハイが2014年松本時代の19ゴールですから、それに並ぶ成績を上げています。


 エスナイデル監督は攻撃特化のスタイルだったため、失点も多かったですが得点数も増えたため、船山のゴール数も増えた部分があったと思います。
 また、SHではなく中央でのプレーが多かったこともことも、船山がゴールに専念しやすい環境になったのだと思います。
 結果が残せたこともあって、船山はエスナイデル監督を好んでいたというコメントもしていました。

 ただ、それだけでなく、単純にあの年は船山のコンディションが良かったように思います。
 それまでは決定力不足に問題を抱えていましたが、運動量も足りていなかった印象で、特にジェフ加入1年目の終盤は全く守備で走れず、関塚監督の後を継いだ長谷部監督も悩んでいたように見えました。
 また、エスナイデル監督が途中解任した2019年終盤も動きが落ちた印象でしたし、監督交代などがあると気持ちが切れてしまう傾向もあるのでしょうか。


 それでも2019年にも12ゴールを決めていますし、翌年尹監督体制になってからも主力としてプレー。
 結果的にジェフに所属した6年間、すべてのシーズンで35試合以上出場していることになります。
 そして、今年も見木に次ぐ8ゴールを上げており、ジェフ通算でも54ゴールを決め、崔竜洙のクラブ歴代得点王に並ぶ成績を上げました。

 特に今季のプレーは安定していた印象で、目立たないながらも重要な役割をこなしていたと思います。
 3‐4‐2‐1の右シャドーに入って、守備に、パスワークに、プレースキックに、裏への飛び出しにと、さまざまなタスクをこなしていました。
 松本時代もシャドーに入って大きな活躍を見せていましたし、このポジションが一番船山に合っているのではないでしょうか。


 もともと何でも出来るアタッカータイプだと思いますから、中盤の特性も前線の特性も求められるシャドーは船山の持ち味を出しやすいポジションなのではないかと思います。
 さらに周囲と連携して攻撃を作るのがうまい選手ですから、トライアングルの作りやすい3‐4‐2-1があっているのではないでしょうか。
 尹監督もジェフも3バックシステムの経験は少なかったですし、その点でも経験豊富で自分でゲームを作れる船山は重宝したのではないかと思います。

 実際、船山をスタメンから外した最終節は、ボールを持ち過ぎるサウダーニャが代わりに入ったことで、苦労した面もあったと思います。
 確かにサウダーニャの個人技からゴールが生まれましたが、その他の流れではサウダーニャのところで攻撃が止まってしまうことが多かった。
 船山が流動的に動いてボールを捌くからこそスムーズにできていたところもあると思うのですが、その船山がいなくなったことで福満などもうまく攻撃に絡めない状況になっていたと思います。


 今年の船山はシャドーの位置で、ゴールやアシストなど目立った仕事だけではなく、ボールを回したり、パスを引き出したりと、攻撃作りに貢献していた印象で、水を運ぶ選手として機能していたのではないかと思います。
 船山がいた方こそ、前線で体を張ってターゲットになるソロモンと、逆サイドからゴールを狙う見木が、機能していたところがあったのではないでしょうか。
 これが左右シャドーにゴールを狙うタイプを置いてしまうとスムーズな攻撃は作りにくいし、見木の活躍の裏に船山のゲームメイクがあったとも言えるのかもしれません。

 それだけに、年齢は気になるものの、船山は残留となるだろうと思っていました。
 ジェフには他にも試合に出場できていないベテランは多いですし、まずはそちらから判断されるだろうと思っていたのですが、契約の切れ目などもあったのでしょうか。
 お金の問題だけなのであれば、移籍金を払ってまで主力ではないサウダーニャを補強すべきではないと思いますし、予算だけではないだろうと思います。


 世代交代自体は大歓迎だと思っていますが、ベテランでもレギュラー選手を簡単に放出してしまうと、他選手からクラブへの不信感を与えかねないと思います。
 バッサリとベテラン主力選手を切ったことで、残った選手のモチベーションに悪影響を及ぼしたなんて話も聞きます。
 世代交代をするためにも、しっかりと今後のビジョンを明確にして、納得のいく説明をすることが大事なのではないでしょうか。

 それとどうしても選手が入れ替わり過ぎると、内外からのクラブへの愛着というものも失われてしまう可能性もあるでしょう。
 そこに関しては今回の件だけでなく、育成がうまくいっていないこと、大幅入れ替え時のように補強がうまくいかず、早々に退団するケースが増えてしまうことなども問題だと思います。
 チーム運営の改善がチームの成績だけでなく、経営面や人気などにも影響を及ぼすはずですし、賢い運営が求められますね。


 最後に、船山に関してはクールなイメージもあっただけに、当初ここまで長くプレーしてくれるとは思っていませんでした。
 ただ、徐々に胸に熱いものを秘めた選手だとわかってきましたし、ここ数年はジェフで昇格したいというコメントも残してくれていました。
 時に発していた厳しいコメントもチームを強くしたいからこそだと思うし、今回「こんな形でチームを去るとは思っていなかった」と話していることからも、自分のチームとしてジェフに愛着を持ってくれていたのではないでしょうか。

 選手の退団は皆寂しいものではありますが、船山とは長く苦楽を共にしていただけに、一層思うところがありますね。
 船山に限らずですが、チームが不甲斐ないからこそ、多くの選手やサポ、関係者を悲しませているところがある。
 もちろんそこは選手にも責任はありますが、クラブにも課題はあるはずですから、それを改めて認識した上で、より強い意志を持ってクラブ運営を進めてほしいと思います。


 最後に船山を表現する話として、寿人のこの言葉を思い出しました。
www.soccerdigestweb.com

千葉に戻って、久々にゴールを決めた時、メディアにエースって書いてもらったんですよ。でも『違うんじゃないかな』という感覚で。個人的にはジェフのエースはリスペクトを含めて(所属5年目の)船山(貴之)ですよ。そういう意味でエースという言葉の使い方が軽くなっているのかなと。

 エースという言葉も捉え方次第ではありますが、戦争などで使うエースは5機以上撃墜したパイロットに言われるなど、本来は明確に成績を残した人物に使われます。
 船山もシーズンによっては決定力不足が目立ち本人にも課題を感じましたが、それでも最終的にジェフ最多ゴールを残したわけですから、十分にエースと名乗れるはずです。
 ジェフはそのエースと別れを自ら決めたわけですから、その大きな決断が正しかったと証明するためにも、まずは今後の補強動向が重要となるのではないでしょうか。

 改めて、お疲れさまでした。
 船山なら次が見つかるはずですし、来季はライバルとなるかもしれませんね。
 敵になったら嫌な相手になりそうですが、新しいクラブでも頑張ってほしいと思います。