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2021シーズンを振り返る 福満隆貴編

 福満は昨年、C大阪からジェフに加入。
 ジェフ1年目にして36試合に出場していますが、これは40試合に出場した2016年山口時代に次ぐ成績で、それまでの4年間は年間30試合未満が続いていました。

 昨年の開幕戦で右SHとして出場した福満は、シーズン序盤レギュラーとして活躍。
 スタートポジションは右SHながら、攻撃時にはふらふらとポジションを浮遊。
 歴史的に運動量豊富な選手やスピードあるアタッカーが多かったジェフにおいて、珍しいタイプのMFとも言えるのではないでしょうか。


 気配を消しながら相手な嫌なポジションでボールを受けたり、極端に逆サイドまで流れてパスワークに絡んだりと、シーズン序盤の攻撃において大事なアクセントになっていました。
 何度も同じ図を紹介することになってしまいますが、福満の動きが左サイドで密集したパスワーク構築に大きく役立っており、福満がいたからこそ生まれたアイディアだったのかもしれません。

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 しかし、そのパスワークも、決定的な攻撃を作るまでには至らず。
 ジェフの成績低迷もあって、3バックへ変更しました。
 変更当初の福満は3‐1‐4‐2の前線なども任されましたが、5月1日の第11節新潟戦からは長らくスタメンを外れて、途中出場がメインとなっていきました。

 福満がスタメン復帰を果たしたのは、東京オリンピック中断明けとなる8月9日の第24節山形戦。
 米倉の負傷や伊東の苦戦に加えて、小田も負傷して安田を右WBから左WBに回したこともあって、福満がまさかの右WB起用。
 初めは穴埋め的な起用なのかなと思いましたが、そのままポジションに定着して、最終節までレギュラーとしてプレーしています。


 福満の右WBは典型的なサイドプレーヤーのように、アップダウンをして、スピードで縦に突破するような形ではなく。
 中盤中央でボールを受けてラストパスを狙ったり、要所要所で縦に走り込んでチャンスメイクを狙うスタイルでした。
 フラフラと浮遊して相手にとっていやらしいポジショニングから攻撃に絡む動きはSHの時から変わらず、それをWBでやっているような状態だったと思います。

 古いサッカーファンには、トルシエ監督時代の日本代表が小野や中村を左WBで起用したことも思い出されます。
 ただ、2人はクラシックなパサータイプの選手でしたから、福満の方が自身の動きで変化をつける選手と言えるでしょう。
 小野や中村のような前例を考えれば、そこまで極端ではないにせよ、意外な起用方法だったと思います。


 ただ、シーズン終盤の福満は、当初に比べて前に出ていく回数が若干減った印象もありました。
 これはチーム全体としての戦い方が少し変わって、左右CBが前に出てSBのような動きをする展開はなくなり、左CB鈴木大輔だけが前に出て、右CB新井一耀は引いて守る役割になったからではないでしょうか。
 これによって福満が右SBに近い役割を果たし、バランスを取るようになっていったのではないかと思います。

 もともと尹監督は保守的で、4バックの時も左右SBが高い位置まで上がるのは好まなかった傾向がある。
 その役割を鈴木大輔と福満が担ったのかなと思わなくもありませんし、右CB岡野は尹監督にとって攻撃的過ぎたのかもしれません。
 その分、鈴木大輔と福満にはビルドアップ面を期待していたのかなとも思います。


 福満はクレーバーな選手だからこそ、この難しい役回りが果たせたのかもしれません。
 守備においても、しっかりとポジションを潰すことで5バックで対応しており、そこでも小野や中村の守備が意外と効いていたトルシエ監督時代の日本代表も思い出します。
 フィジカルがなくともスペースを消せればある程度は対応できるということなのでしょうが、単純なスピード勝負になるとやはり福満も苦戦していましたね。

 ただ、福満のWBが成立したのは、攻守において右シャドー船山の存在が大きかったようにも思います。
 福満はシンプルな縦へのスプリントがない分、船山がサイドに開いて裏へ走り込んだり、福満が後方でスペースを消す分、船山が前でカバーしたり。
 今年はその船山がいなくなっただけに代わりとなる風間などが、どれだけ献身的に動けるのかも序盤の注目ポイントとなるのではないでしょうか。


 実際、昨年最終節で右シャドーとして起用されたサウダーニャと福満のコンビは、一言で言えばチグハグだったと思います。
 福満はパスワークの中で生きる選手ですが、サウダーニャはボールを持ち過ぎてパスが回らないし、個人能力で打開したいサウダーニャを活かすには他の選手が走って犠牲なってほしいのに、福満にはその総力がなかった。
 それでもサウダーニャには一発があるのは事実ですが、攻守の流れとしては課題の方が大きい状況だったと思います。

 また、福満の場合、スタミナがあるタイプではないでしょうから、フルシーズンを任せるという意味では不安があるかもしれません。
 器用なタイプの安田も退団となってしまいましたし、米倉も福満とはかなりタイプは異なるということで、単純な福満の代わりとしては計算しがたい。
 他の右WB候補も少ない状況ですし、今季は福満がどれだけ持つかが重要なシーズンとなってしまうのでしょうか。