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第1節 ジェフ 0-1 岩手 秋田豊監督のジェフ対策と中村太亮のFKに沈む

 今年もJリーグ開幕となりましたが、大分の選手・スタッフにコロナ陽性者が出たため、大分対水戸戦が試合中止となってしまいました。
 報道によると選手の陽性者は2名のみだったようですし、選手が足りなくなったというよりは、クラスター発生による保健所の活動停止指示によって、出場出来なくなったのではないかと思います。
 しかし、他チームにも頻繁に陽性者が出ており、開幕戦でも主力候補を欠いたチームが多かったですから、本来は開幕延期も検討されるべき事態なのではないかと思いますが、今年は過密日程でそれも難しいでしょうか。

 ジェフと対戦した岩手も、1月末から2月にかけて多くの選手陽性判定を受けています。
 それによる影響も少なからずあったのではないかと思いますが、岩手はしっかりと動けていて、終始試合のペースを握っていきました。
 むしろフルメンバーのジェフの方が動きが重かった印象ですが、まさか開幕にコンディションを合わせてこなかったということでしょうか。


 ただ、岩手はコンディションやFK、個々の能力だけではなく、しっかりとジェフを研究してきた印象でした。
 ジェフの左寄せのパスワークとボランチからの展開をしっかり封じて、苦し紛れのソロモンへのロングキックも警戒。
 攻撃時もWBの高さという細かなジェフの弱点を突いて、ポイントを作ってきました。

 とはいえ、開幕前にも話した通り、正常進化のサッカーをする以上は、対策を取られることは当然のこと。
 その上でその対策を上回る強さを身につけなければいけないはずですが、果たしてその準備が開幕前に出来ていたのか。
 昨年終盤の好調からどこかでこのままでいいんだという甘えが生まれていなかったか、そこが大きな疑問ではないかと思います。

中村太亮のFKから岩手が先制

 ジェフはちばぎんカップから、秋山がサブに回って末吉がスタメンに。
 他のメンバーは、控え含めて変わっていません。
 船山と入れ替わりで加入した風間以外は、昨年から在籍する選手によるスタメンとなりました。

 岩手はオスグット病で2020年末から離脱していた、宮市剛が右WBでスタメンに選ばれ、加々美が中野雅臣と共にシャドーへ。
 ボランチには山形からレンタル加入の小松と脇本が入り、佐々木がジェフに移籍したDFには、新加入の甲斐と戸根が牟田と共に並びます。
 1トップのブランネル、左WBの元ジェフ中村太亮は変わりませんが、昨年主力だった色摩や増田、韓勇太などはコロナの影響で不在となりました。


 開始早々、岩手の攻撃。
 左サイドで得たFK。
 中村が蹴ると混戦の中で牟田が合わせますが、福満にあたってゴールならず。

 6分にはジェフの攻撃。
 後方からのロングキックのこぼれを、風間が中盤の右で拾ってロングシュート。
 しかし、GK野澤が正面でキャッチ。


 9分には岩手のチャンス。
 右サイド奥のスローインから、ブレンネルが落として宮市が受け直しクロス。
 中村が福満に競り勝ってヘディングシュートを放ちますが、GK新井がファインセーブ。

 立ち上がりから岩手ペース。
 岩手はブランネルと宮市を起点として、攻撃を作っていきます。
 守備でも前線から組織的に守って最終ラインを上げ、ジェフの攻撃を作らせない状況に。


 その流れのまま、26分に岩手が先制。
 中盤右で得たFKを中村が蹴ると、ライナー性の鋭いボールを供給。
 ラインで守っていたジェフは、ファーの宮市を完全にフリーにしてしまい、ダイレクトで合わせられて0‐1。

 30分にも岩手の攻撃。
 GK野澤からのロングフィードから、宮市、ブランネルと頭で繋いで、裏の加々美へ。
 加々美が仕掛けて、ブランネルがシュートを放ちますが、枠の外。


 34分、岩手のチャンス。
 左サイドからの中村のCK。
 戸根がファーで合わせますが、バーの上へ。

 41分、ジェフが久々の攻撃。
 こぼれ球を拾った田口から、見木が受けてミドルシュート
 しかし、枠を捉えきれず、0‐1で折り返します。

■岩手の足が止まるもジェフが攻撃を加速できず0-1で敗戦

 後半早々、岩手のチャンス。
 後方からのロングパス。
 ブレンネルが競ると、小松がこぼれ球を拾って強力なロングシュートを放ちますが、GK新井がセーブ。

 47分、ジェフの攻撃。
 左サイドで田口のパスに反応した見木が抜け出し、グラウンダーのクロス。
 しかし、ソロモンが合わせきれず。


 後半から岩手の運動量が落ちてラインが下がり、ジェフがボールを持てるようになってきました。
 しかし、58分には岩手の攻撃。
 左サイド奥でのパスワークからのクロスをジェフがクリアしますが、ブレンメルが拾い直してミドルシュートを放ちますが、GK新井がセーブ。

 62分、ジェフは風間を下げてサウダーニャを投入。
 その直後、セットプレーからジェフがチャンス。
 左サイドからのCKを田口が蹴ると、新井一耀が合わせますが、中村がクリア。


 その後はジェフの勢いも落ちて、停滞状態に。
 67分、岩手は中野を下げて和田を投入、76分にも加々美に代えて中村充孝を起用。
 77分、小林、福満を下げて米倉、高木を投入し、ソロモンとサウダーニャが前線、高木と見木が2シャドーになる3‐5‐2に。

 その直後にはジェフの攻撃。
 ソロモンのキープから、田口が受けて右サイドに展開。
 米倉がクロスを上げ、ソロモンが合わせますが、大きく外れます。

 その後も、ジェフは勢いを上げることが出来ず、むしろ試合終盤には岩手のチャンス。
 95分、中村充孝チェイスを受けたGK新井のパスミスから、和田が受けるとチャンをかわしてミドルシュートを放ちますが、枠の外。
 その直後に高木が中盤からロングシュートを放ちますが、GK野澤の正面で0‐1の敗戦となりました。

■起こるべくして起こった苦戦

 岩手はブランネルが非常に良かったですね。
 単純に高さや強さがあるだけではなく、ヘディングでのコントロールもうまいから頭で繋ぐことが出来る上、キープ力もあって周りを活かすパスを出せる。
 さらに献身的な守備も出来るし、後半に攻撃の人数不足と感じたら無理せず遅らせるなど賢いプレーも出来ていました。

 ジェフはそのブランネルを止められなかった印象でしたが、岩手はそれだけではなかった。
 攻撃ではブランネルだけでなく、右WB宮市を高いエリアまで上げて、フィジカルに劣る末吉にぶつけて起点にしていた。
 GKにもフィード力の高い19歳の野澤大志ブランドンを起用するなど、クラブとしても狙いが明確だったと思います。
 
 これで岩手はロングフィードのターゲットが2つになって、ジェフの守備が分散することになる。
 3バック対策としてWBの高さ狙いは有効な策の1つだと思いますし、宮市亮の弟である宮市剛はもともとFWで186cmと長身。
 そこで圧力をかけて攻撃を作れれば、末吉を押し下げジェフの左サイド攻撃を抑えることにもつながります。


 守備でもジェフのCBからの展開は少ないと見たか、後方に残るチャンと新井一耀にはある程度持たせる。
 その分、左CB鈴木大輔が上がってくるので、ここに対しては加々美が見続ける。
 この日は右シャドーでプレーした加々美でしたが、昨年は右WBでのプレーも多く、サイドでの守備も出来る選手を鈴木大輔とマッチアップさせたことになります。

 右シャドーが鈴木大輔を見ることで対応する動きは、柏も参考にしたのかもしれません。
 2CBを無理に追わない分、ブランネルと中野はパスコースを消しながら前方を睨み、さらに2ボランチも前に出がちな守備をすることで、前2枚と後方2枚でジェフのボランチを挟んで展開させない守備をしてきました。
 そうなると岩手のバイタルエリアが空き、前半終盤はそこでジェフが何度か攻撃を作りましたが、バイタルエリアを消すためにもなるべくDFラインを上げる守備をしてきたのだと思います。


 しかし、徐々に運動量が落ちてきて、最終ラインが下がってきてしまった。
 そこで後半途中からは5‐4‐1でスペースを消す守備にシフトし、ジェフの攻撃の勢いを止めに行った。
 選手が動けなくなった時、状況が悪い時に次の策を持っているチームは、しっかりと試合への準備をしてきたんだなと感じます。

 岩手は決して選手層が厚くはなく、コロナによる欠場者も出た中で、選手のやりくりもうまく機能させた。
 特に宮市でポイントを作り、加々美で鈴木大輔対策をするという発想は、少ない選手の入れ替えで2,3のメリットをもたらしたわけで、こういった采配を見ると本当にうまく工夫したなぁと感じます。
 認めるのも悔しいですが、ここまで苦労してきた秋田監督もその苦労が身になりつつあるのでしょうか。


 一方のジェフは特に前半、岩手による左寄せ対策に屈し、左サイドからのパスワークがほぼできずにいました。
 その分、右サイド後方から裏を狙うキックが増え、相手DFラインを押し下げようという意図も感じました。
 しかし、単発の動きで、チームとしては機能していなかった印象です。

 後半開始と同時に左から攻め込んだことからも、柏戦で右サイドの風間が機能しなかったことから、前半は右から攻めようという意識が強く出すぎたのかもしれません。
 しかし、肝心の右からどう攻めるのかに関しては見えてこず、ほとんど攻撃は作れない展開に。
 後半もビハインドな状況でもっと攻め込みたかったわけですが、加速は出来ず仕舞いで、これも試合前に話した通りになってしまいました。

yukkuriikou.hatenablog.com

ちばぎんカップでもあっさり負けた印象がありますし、点が欲しい状況での巻き返しは、戦術的にもメンタル面においても昨年からの課題の1つだと思います。

 特に前半は「堅守からセットプレー」を中心に何度もゴールに迫られてしまい、岩手にジェフのやりたいことをやられた印象もありました
 ただ、厳密に言えば「堅守からセットプレー」はジェフもやりたいことではありましたが、流れの中での攻撃に関してはどうなのか。


 岩手はブランメルのポストワークと、宮市の高さ。
 そこにボールを供給できるGK野澤と、セカンドボールを拾えてブランネルからのスルーパスも引き出せる加々美、中野をシャドーに置くなど、チームとして狙いがはっきりしていたと思います。
 守備に関しても組織的に動けていたのは、岩手の方だったと思います。

 それに対して、ジェフはどういった形で、流れの中での攻撃を作りたかったのか。
 左サイドでのパスワークも今のところ中途半端だし、かといってロングキックからの展開を徹底しているわけでもない。
 そして、一部では勘違いされていましたが、カウンターが得意かというと、決してそんなこともないと思います。


 昨年のFootball LABのデータによると、ロングカウンターショートカウンターともに数値はJ2平均以下だったそうですし、カウンターがうまく作れている印象はない。
 そうなってくると、セットプレー以外でいかにゴールを奪うのか明確になっていないことが、今年も大きな課題となるのではないでしょうか。
 セットプレーに頼っていては、この日のように高さのある相手に苦労するのは当然だと思います。

 そう冷静に見ていくと、起こるべくして起こった苦戦という印象すら受けますが、果たして今年はどう挽回するのか。
 昨年序盤も苦戦して急遽4バックから3バックに変更して何とか立て直しましたが、チーム作りという意味では行き当たりばったり感が否めなかった。
 それが2度も成功すると期待するのはどうかと思いますし、何とか成功したとしても後れを取る可能性が高いわけで、早期に打開策を期待したいところなのではないでしょうか。
 なお、これでジェフは公式戦無敗記録が途絶えたことになりますが、今年は練習試合で1試合も勝てないまま開幕を迎えたことにもなるわけで、厳しく見ればそういった観点でも当然の結果なのかなとも思います。