試合後にも話したように、岩手はジェフの左サイドに寄るパスワークと、ボランチからの展開に対して、しっかりと対策を取ってきた印象でした。
今回はそれを図も使って、具体的に説明していきたいと思います。
昨年からジェフは左サイドに左WB、左シャドー、左CB、左ボランチが寄って、四角形を作ってパスワークを展開しています。
大外に2人、ハーフスペースに2人が陣取る形で、人を密集させてパスを繋ぎ、相手を押し込んでいく。
しかし、それに対して、岩手は加々美を右シャドーで使って対応。
加々美は昨年右WBでもプレーしており、献身的な守備が出来る選手だと思います。
その加々美を1列前において、左CB鈴木大輔をケアすることによって、パスワークのスタートを封じようという策だったのではないかと思います。
さらに右ボランチ脇本、右CB牟田もサイド寄りで守備をする。
これによって、右WB宮市と合わせて4枚でサイドを守ることができ、数的同数で無理なく対応していった。
守備側は数的優位である方が安全ではありますが、ジェフはもともとサイドの狭いエリアでパスを回そうとするわけで、そこに敵味方8人も集まれば、窮屈なパスワークになりロストが増えてしまう。
さらに中盤中央では左ボランチ小松が前寄りの守備をして、前線のブランネルなども引き気味で対応。
これによって岩手の前線とボランチとでジェフのボランチを挟み込み、ボランチからの展開もケアしていた印象です。
岩手のボランチが前掛かりになる分、バイタルエリアは空きがちでしたが、岩手はDFラインを高くすることで対処していたし、そもそもジェフはバイタルエリアを突く攻撃が得意ではないので、大きな問題なくやれたということでしょう。
例として、30分からの展開を図にしました。
岩手の攻撃をジェフが防いだところからスタートし、ジェフが後方で右から左に展開していきますが、加々美が長い距離を走って鈴木大輔の前をブロック。
これによって、鈴木大輔は一度田口に戻します。
田口にボールを戻した鈴木大輔は、点線のように前に出て加々美の裏を取ろうとします。
加々美はボールを持った田口を見るため、鈴木大輔にはついていきませんでしたが、白い点線の通り鈴木大輔は宮市が前に出てチェック。
宮市がマークを捨てた末吉には牟田がチェックに行くなど、マークをしっかりと受け渡して対応し、フリーな選手を作らせませんでした。
結局、田口は他に出し所がないこともあって、鈴木大輔につなぎますが、そこへは宮市がいます。
鈴木大輔は仕方なく、アバウトなボールを蹴り込みますが、精度を欠いて相手がクリア。
ジェフの攻撃はそこで終わってしまいます。
岩手の加々美が鈴木大輔をケアしていたことは、試合開始のホイッスルが鳴った直後に、長い距離を走って鈴木大輔へとチェイスにいったことからも明白でした。
鈴木大輔はそのチェックに戸惑いロングボールを蹴ってしまいますが、岩手にクリアされて相手ボールになっています。
そこからすでに岩手に主導権を握られていたと言えるかもしれませんし、それだけ岩手はジェフ対策を入念に講じてきたのではないでしょうか。
岩手のサイドへの対応は柏にも似通ったものを感じましたし、ちばぎんカップを参考にした部分もあったのではないでしょうか。
柏戦でジェフが失点に繋がるカウンターを受ける前にも、柏は4人でサイドの対応をしジェフの左寄せのパスワークを封じていたことになります。
マンマークと言えばそこまでですし、後方が5枚だからこそ、同サイドに4枚を割けるとも言えるでしょう。
4バックでDFから2枚も外に出てしまえば、残りのDFは2枚となってしまい、中央が薄くなってしまう。
いわゆる、CBが釣りだされた状況にもなりかねません。
そもそもハーフレーンを使った5レーンの攻撃は、4バックのゾーンディフェンスを攻略することが主眼だったのではないかとも思います。
これが5バック相手だと、5レーンに人を置いても1レーンずつ1人で対応されてしまう。
あるいは、そこまで単純ではないとしても、5バックは横に人数が多い分、幅を使った攻撃に対応しやすいはずです。
そのため相手が4バックならまだ左寄りのパスワークが通用する可能性はあるかもしれませんが、そうはいっても今年のJ2チームの約3分の1が3バックベース。
4バックでも柔軟に対応してくるところもあるでしょうし、うまくスライドできれば問題なくやれるかもしれない。
正常進化で戦う以上は、その対策以上のパスワークを発揮しなければいけないはずです。
そもそも5レーン理論は選手が等間隔で良いポジショニングを取って、左右に幅を使った攻撃をするから、相手が捕まえにくくなるという発想なはず。
ジェフは厳密に5レーン理論を実施するわけではないかもしれませんが、左サイドに攻撃の比重が寄っているから相手もそこに人数をかけられると苦労する傾向にある。
それではハーフスペースを使っても意味がないとすらいえるわけで、そこから中央へ展開したり右サイドからも攻撃を作ったりと、さらに攻撃を深く追求していく必要があるのではないかと思います。