先日、オシムさんがお亡くなりになったことが、明らかになりました。
未だに私は信じられない思いですし、オシムさんの偉大な功績を考えると、何を言っても軽い言葉になってしまう。
そして、何よりも簡単な言葉ではオシムさんに怒られてしまいそうで、うまく言葉をまとめられずにいます。
こんなことは、20年近くブログをやっていても珍しいことです。
オシムさんは常に周囲の動向に目を光らせていて、選手であってもスタッフであってもメディアであっても、気を抜いたらすぐにお叱りを受けてしまう。
その姿勢はサポーターに対しても同じでしたが、亡くなった今でもそれを感じてしまうことは、嬉しくもあり悲しくもあります。
今回もメディアはオシム監督に関して、奇抜な発言や「走ること」を選手に強く求めたことを紹介することが多いようですが、そう単純な方ではありませんでした。
走ること、頭を使ってプレーすること、球際で勇気をもって戦うこと、個人技に走らないこと、アイデアを持つこと、基礎技術を大事にすること……。
それらを普段の練習や独特な言葉使いで伝えることで、多くの関係者に影響を与えていきました。
よくよく考えていけば、それらは非常に基礎的なもの。
サッカーの基礎を大事にせよという話に、いきつくものだったと思います。
しかし、だからこそ多くの人に響き、多くの方たちのサッカー観を変えたとすら言われるのでしょう。
オシム監督は選手だけでなく、サポーターの意識改革も求めており、サポーターを成長させてくれた方でもあったと思います。
以下の言葉は私にとっても強く響き、その後のブログの方向性も決めていきました。
オシム「サポーターをはじめ、見る側のレベルをいかに上げるか。それがないと、裾野が広がっていかない。そして観客が理解を深めれば、サッカーそのものも良くなっていく」
それまでだらだらと更新していた私のブログもオシム監督との出会いによって大きく変わり、より深くサッカーを見ていかなければいけないと考えるようになりました。
今でも悩んだ時には、オシム監督ならどうしていただろうと思うことがあります。
オシム監督に出会えたことは本当に幸せだったと思いますし、その経験を少しでも他の方に繋げられればと思うのですが、なかなかそう簡単なものではありませんね。
また、オシム監督の発言はサッカーのみならず、多くの示唆に富んだものでした。
現在だけでなく将来の話をすることが多く、選手の引退後に関しても気にかけていました。
サッカーだけでなく、より広い視野を持つことを周囲に求めていたことも記憶に残っています。
それだけオシム監督は人として成長してほしいと願っていたのだと思いますし、常に厳しく時に優しくもあった。
その姿は単なるサッカー指導者ではなく、人生の教師だったのだと思います。
オシムさん自身も、こんな話をしていたことがあります。
「わたしの国の言葉では監督をトレーネル(英語のトレーナー)と言うが、もともとの意味は調教師だ。サーカスなどで馬に芸を教える仕事のことだ。私は調教師ではない。言うならば教師だ。サッカーの基本だけでなく、人生の基本を、選手たちには教えているつもりだ」
サッカーの基本だけでなく、人生の基本を教える。
言葉にするのは簡単だと思いますが、実際に実施することは非常に難しいことだと思います。
指導者側がそれだけの知識と指導力を持ち合わせなければいけないはずですが、それを実際に行うことが出来ていたのがオシム監督だったのだと思います。
オシム監督は今年3月下旬にもインタビューに答え、日本代表のW杯出場を祝福してくれていました。
それだけに今回の訃報に驚いたのですが、このインタビューもとてもオシム監督らしいものでした。
というよりも、オシム監督は常にぶれず、変わらない方でしたので、いつも発言の1つ1つが勉強になっていました。
日本代表や日本サッカーのことを心配し、お金で選手を買うことを否定し、組織的に戦うことの重要性を説き……。
そして、世界の平和を強く訴える。
また、要所要所で、記者や日本での関係者の体調を心配していました。
厳しくもあり、優しくもある。
だから、サポーターやメディアを含む当時の関係者は皆、オシム監督に崇拝していったのでしょう。
個人的には以下が印象に乗っています。
「よくなかったらハッキリとそう言うべきだ。常に褒めるばかりでは、進歩はあり得ない。」
オシムさんはサポーターやメディアにも厳しさを求めた。
特にジェフは現状に満足していまう「中位のメンタリティ」からの脱却が必要であるとし、「勝者のメンタリティ」が足りていないと話していました。
そこはJ1からJ2に落ちても絶対的に足りていない部分だと思いますし、以前よりも施設整備などが整った今こそ必要なものなのかもしれません。
こういったオシムさんの姿勢が、今の私のブログにも大きく影響を与えているのだと思います。
しかし、今回もインタビューの最後には、とても前向きな話をされています。
「日本は最高の環境で最高のサッカーを実現できる条件が整っている。スタンドは観衆で溢れピッチコンディションは素晴らしい。若く才能に溢れた選手たちがそこで躍動する。日本サッカーには豊かな未来が開けている
(中略)
輝かしい未来だ。私はそうであることを願っている」
私も何度もブログを書くのを諦めかけ、今回もまたつまらない文章になってしまいました。
あのオシム監督の訃報にあっても良い言葉が出てこないのですから、本当に情けないことです。
これで終わりにしようかとも思ってしまうわけですが、オシムさんならそんな姿勢を許さないかもしれない。
常にチャレンジしろと話していたオシムさんですし、そういったオシムさんの言動を少しでも次に繋げたい。
そういった思いでやってきたわけで、ここでそれをやめてしまうのはオシムさんの意思に反するようにも思います。
オシムさんはジェフや日本サッカー界に希望を抱いていて、その上で厳しい言葉を投げかけていた。
その遺志を引き継いで、オシムさんを知っている者たちが引っ張っていかなければいけないのではないかと思います。
今でもオシムさんはどこかで見ているのではないかと思うし、今回の訃報を受けても気を抜いたら怒られるでしょう。
最後までオシムさんはサッカーのことを考え、指導者復帰を目指す強い意志を見せていた。
常に真剣に向き合って学んでいくこと、チャンレンジすることを周囲に求めるだけでなく、オシムさん自身も身を持って見せていたことになると思います。
そんなオシムさんですから、今はゆっくりとしてほしいと思います。
しかし、オシムさんのことなので今でもサッカーのことを考え、我々を厳しい目で見守っているのかもしれません。