ここ数戦のジェフは、右サイドに選手が集まって、パスワークを展開するパターンが増えています。
これは昨年、左サイドに選手が集まってパスを繋ぐ攻撃と、左右が違うだけで同じ狙いですね。
運動量豊富でパスワークを活性化できる高木が右シャドーで固定化されつつあることもあって、左ではなく右で繋ぐ展開を狙おうということになったのかもしれません。
開幕から新井一耀が好調だっただけに、前々節岡山戦で新井一耀を控えに回して、佐々木を起用した判断は意外でした。
しかし、これも新井一耀より佐々木を選んだというよりは、鈴木大輔を右CBに回すことによって、右サイドのパスワークに参加させたいという意図があったのではないでしょうか。
実際、48分には以下のようなシーンが。
中盤右サイドでボールを持った鈴木大輔は、小林にボールを預けると思い切って前線へとフリーラン。
小林は近くに寄ってきた見木にパスを繋ぐと、見木はワンタッチで走り込んでいった前方の鈴木大輔へパス。
このパスが中央よりになってしまい相手にクリアされると、末吉が拾ってミドルを狙いますが、シュートはGK田中の正面で終わっています。
その直後の50分にも、同じように右サイドに複数選手が集まってパスを繋いだところから、福満が逆サイドから寄ってきた見木に横パスを繋ぐと、ワンツーで受け直してシュートを放っています。
しかし、福満は相手選手にコースを限定されており、角度のない難しいシュートになって、枠を外れてしまいました。
とはいえ、どちらも惜しい展開ではあったと思います。
同サイドにCB、WB、シャドー、ボランチなど多くの選手が集まって、大外に2人、ハーフスペースに2人が位置取りし、四角形でパスを繋いでいく。
これは昨年左サイドで実施していたパスワークと、同じ動きと言えるでしょう。
さらにそこへ逆サイドのシャドーやボランチのもう片方が近づいていく傾向も、昨年から見られた部分だと思います。
だた、こうなってくると白い円で示したように、同サイドには多くのジェフ選手が集まりますが、黒い円の通りゴール前はレオンソ1人になってしまう。
見木が鈴木大輔に縦パスを出した瞬間も、ペナルティエリア内にはレオンソと鈴木大輔しかいなかった。
それに対して、秋田の選手はゴール前に3人いた上に、サイドの2人もペナルティエリア内に入って5人もいたわけですから、完全に数的不利の状況となっています。
これは50分に福満が走り込み見木がパスを出した瞬間もちょうど同じで、ジェフ選手でペナルティエリア内に侵入していたのはレオンソと福満の2人のみ。
対する秋田はゴール前の3人がしっかりと待ち構え、同サイドの選手も含めれば5人も入っていた状況でした。
ゴール前の3人はポジションが崩れておらず、数的有利だったことを考えれば、秋田としてはそこまで危険な状況ではなかったと言えるのかもしれません。
結果的にジェフはサイドに人数を集める分、ゴール前から選手がいなくなってしまっている。
これも昨年の左寄せのパスワークから見られた課題で、その時の課題を克服できず、進歩も出来ていないと言えるのかもしれません。
「サイドに選手が集まってパスワークを展開する」というと聞こえはいいですが、多くの人数を集めてパスを繋ぐより、少ない人数でもパスを繋げる方が他にリソースを割けるわけですから、燃費の悪いパスワークとも捉えることが出来るのでしょう。
それでも確実にゴール前まで侵入して、良い状況でシュートを打てるところまで持ち込めればいいのでしょうが、48分も50分もそこまで決定的なチャンスは作れていないわけで、質も量も足りていないことなります。
結果的にゴール前では勝負出来ず、岡山戦でゴールが決まったマイナスのグラウンダークロスから、ボランチがシュートを放つような展開が増えてしまう傾向にあります。
しかし、前にも取り上げたようにミドルシュート狙いの攻撃も、見方を変えればゴール前から逃げているように思えます。
岡山戦でのゴールは、高橋の前が空いたからこそ、ゴールが決まった形。
本来、攻撃側のボランチの前には守備側のボランチがいるはずですが、あの瞬間は岡山の中盤後方がぽっかりと空いていたため、ゴールが決まった。
だからこそ、「岡山の足が止まった」と形容したわけですが、そうそうあのエリアが空くものではないと思います。
実際、この試合でも秋田の選手はボランチからのミドルシュートをかなり警戒していて、上記シーンでも輪笠は高橋の位置をこまめにチェックしていたように見えました。
昨年も高橋はシーズン途中にチームが得点力不足に陥って起用され、見事にミドルシュートで結果を残しましたが、その後ミドルを警戒されると失速して出番もなくなってしまった経緯があります。
やはりミドルシュート狙いというのは二の矢、三の矢であるべきで、本来はゴール前で勝負できる一の矢が必要ではないかと思います
尹監督は試合後に「クロスに対して中の枚数が足りない」と話していますが、あれだけ同サイドに選手が集まればそうなるも必然でしょう。
このコメントからも同サイドに選手を密集させて、そこからのパスワークで崩しきる攻撃に強いこだわりは感じない。
しかし、一方で実際の試合を見るとグラウンダーのクロスが非常に多く、シンプルなクロスからの展開は少ないことに違和感を覚える部分があります。
やはりこの同サイドに寄るパスワークは小林コーチ主導で、尹監督は自分のモノにし切れていない部分があるのではないか。
だから、どこかで噛み合ってない部分があるのかなとも思います。
しかし、かといって尹監督の中に軸となりうる攻撃のポリシーがないことが、根本的な悩みとなっているのではないでしょうか。