前節長崎に敗れたジェフは、複数のスタメンを入れ替えて挑みました。
しかし、ホームにも関わらず、雨もあってか選手の動きの重い印象だったと思います。
相手の違いもあってシュートまで持ち込める回数は増えましたが、試合の流れというか"試合の質"もあまり変わらず、どんよりとした内容だったと思います。
試合の序盤は相手のハイプレスに苦しみ、パスミスも目立つ展開に。
これによって山口はジェフの出鼻をくじいて、ペースを掴んでいきました。
立ち上がりのハイプレスは長崎も仕掛けてきた形で、過去の試合でも苦しんできましたが、これに対する対応策を未だ打ち出せていないことになります。
ボールを持って攻め込んでいく状況でも、サイド攻撃を封じられてゴール前まで侵入できませんでした。
相手の違いもあって、長崎戦よりはクロスを上げられたものの、サイドで攻撃を遅らせられることが多かったですし、ゴール前の守備は崩しきれなかった。
山口は必ず2人以上でジェフのサイド攻撃に対応してきましたが、結局サイドのスペースを消されるとゴールが奪えないといった問題は、変わらなかったことになります。
この日のジェフは随分とミドルシュートが多く、ハーフタイムの指示も「前が空いたら積極的にシュート打っていこう」という指示だったそうですから、試合前から意識付けしていたのではないでしょうか。
#5月31日#第18節#レノファ山口FC
— ジェフユナイテッド市原・千葉【公式X】 (@jef_united) 2025年5月31日
小林監督HTコメント
後半の入りから全力で行くこと。
前が空いたら積極的にシュート打っていこう。
絶対に勝って終わろう。#jefunited #ジェフ千葉
しかし、ゴールを奪えない、相手を崩せず、ゴール前まで侵入できないことへの解決策が「積極的なシュート」メインではさすがに不安が残る。
後半からは早いタイミングでのクロスも狙っていった印象でしたが、いずれもアバウトな攻撃といった印象はぬぐえず、攻撃面での課題解決には至りませんでした。
その結果が0-0ということで、妥当な結果だったと思います。
■前半途中までは山口のハイプレスに苦しむ
ジェフは鳥海が不在、前、品田、林、石川が控えに回り、河野、日高、田口、カルリーニョス、風間がスタメンに。控えからは小林、吉田が外れ、松田、エドゥアルド、米倉が入りました。
池上が5月上旬に離脱した山口は、前節に三沢も負傷し、山本駿亮もメンバー外に。
元ジェフのキム・ボムヨンがボランチで、末永が左SHでスタメン。
控えには元ジェフ古川に加え、宮良、成岡なども入りました。
開始早々、山口の攻撃。
高橋の中盤へのパスがずれたところから、山口がボール奪取。
田邉がフリーでミドルシュートを放ちますが、GKスアレスが対応。
5分にはジェフの攻撃。
椿が持ち上がりますが、縦を切られて逆サイドへ。
高橋がアーリークロスを上げて、風間が頭で合わせますが、大きくそれます。
序盤は山口のハイプレスに苦しみ、ジェフのパスミスが目立つ状況に。
ただ、ジェフも徐々にサイドから、攻め上がっていきます。
前半中頃からは山口のプレスも落ち着き、一進一退といった展開。
22分、ジェフの攻撃。
河野からのロングパスを、亀川が空中で空振りして日高へ。
日高、風間、田中とつないでミドルシュートに行きますが、大きく外してしまいます。
26分にもジェフの攻撃。
鈴木大輔のロングパスのこぼれを椿がクロス。
このこぼれをミドルで田口が狙いますが、GKマルスマンの正面。
31分、山口の決定機。
喜岡の縦パスを山本がキープして前方へ。
野寄が間で受けてスルーパスを出すと、末永が鈴木大輔の前を取ってシュートに行きますが、GKスアレスがファインセーブ。
39分、ジェフの決定機。
クロスのこぼれ球を田口が相手から奪い返すと、右足で浮かして相手を交わし、左足でミドルシュート。
これがポストに当たりこぼれ球を横山が狙いますが、GKマルスマンが倒れながら足を延ばしてセーブ。
42分、山口のチャンス。
田邉が裏へ浮き球のパスを出すと、山本がスピードで鈴木大輔を抜き去りグラウンダーのクロス。
末永が触れば1点といった展開でしたが逆サイドに流れ、0-0で折り返します。
■後半も流れは変わらず0-0のスコアレスドロー
山口は後半開始から、末永に代えて横山塁を投入し、右SHに横山、左に野寄に。しかし、ファーストプレーで横山塁が倒れ込み、48分に交代。
代わりに有田が入り、前線に有田、右SHが山本に。
それでも、52分、山口の攻撃。
左サイドで入れ替わった岡庭が、ゴール前まで侵入してラストパス。
ファーで山本がフリーで受けますが、シュートを打ちきれず。
後半から山口が再びプレスをかけていきペースを握っていきますが、60分にはジェフの攻撃。
セカンドボールの奪い合いから、田中が落として高橋へ。
高橋が左足でミドルシュートを放ちますが、ゴールの右。
その直後、ジェフは風間を下げて品田を投入し、横山が前へ。
64分、山口のチャンス。
ジェフゴール前で混戦状態から抜け出した、田邉が有田とのワンツーでシュートに行きますが、ゴールの左。
その直後、ジェフの攻撃。
田口からのパスを受けたカルリーニョスが、キープしてミドルシュート。
しかし、GKマルスマンが正面でキャッチ。
68分、山口はキム・ボムヨンを下げて、成岡を投入。
ジェフも椿、横山、田口を下げて、杉山、林、エドゥアルドを投入。
田中が左に回り、杉山が右に。
73分には、FKでジェフのチャンス。
河野のロングパスから、田中が飛び出し、PAの目の前で得たFK。
日高が左足で巻いたボールでシュートを狙いますが、ゴールの右。
76分、ジェフの攻撃。
右サイドの杉山が、左足に持ち替えてアーリークロス。
角度のないところから、エドゥアルドが頭で合わせますが、枠の外。
80分、山口の攻撃。
右サイドのCKの流れから、山口が拾い直して成岡がクロス。
こぼれ球を野寄が狙いますが、ゴールの左。
このプレーで得た連続CKから、山口が決定機。
左サイドからのCK。
亀川が短くつなぐと、岡庭がフリーでシュートを放ちますが、ポスト直撃。
82分にはジェフの攻撃。
高橋が右サイドからアーリークロス。
こぼれたところを林が狙いますが、力なくGKマルスマンがキャッチ。
その直後、ジェフは田中を下げて米倉を投入し、米倉が前線に入り林が左SHに。
88分、中盤で林が1人を交わして、カルリーニョスが繋いで、林がシュートを放つも、相手DFがブロック。
こぼれ球を米倉がオーバーヘッドで狙いますが、GKマルスマンがセーブ。
試合終盤はジェフが前線に人数をかけていき、ラストプレーもジェフの攻撃。
右サイドの奥で得たFKを日高が直接狙いますが、枠を外して0-0で終了となりました。
■遅らせたサイド攻撃と悩みを感じる前線の組み合わせ
試合前にもお話しした通り、今季の山口は可変システムでスタートしました。SB岡庭がワイド前方に開き、SB亀川はボランチに入って、ダブルボランチは1人が引いて3バックに。
岡庭の前方のSHはトップ下に入り、亀川の前方の選手はWBのように開くことで、守備時の4-4-2から攻撃時は3-4-1-2になる。
亀川がボランチに入る動きはなくなりましたが、現在でも岡庭は高い位置を取って、亀川は低めに位置取ることが多い。
また、ボランチの一角も攻撃時にDFラインまで下がる。
さらに、岡庭の前方のSHは中寄りに入ることが多いことも、変わっていないと思います。
その部分で対応に苦労したのが、今回のジェフの守備だったのではないでしょうか。
左SB岡庭が前に出て、左SH末永が中央に入ることで、中央は2トップと3枚になる。
特に2トップは少し下がって攻撃作りに加勢し、末永を裏へ走らせる展開に、ジェフは手を焼いていきました。
SH末永も2トップの山本、奥山も足が速い選手なのに対し、ジェフの鈴木大輔と河野はスピードには課題がある。
山口はそこをうまく仕掛けて、特に前半は幾度となくチャンスを作っていきました。
後半はその点でうまくいかなかったのは、横山塁のアクシデントによる交代も大きかったのかもしれません。
守備面でも山口の狙いはうまくはまっていて、前節の長崎のように前半と後半の立ち上がりに、積極的なプレスを仕掛けていきました。
そこで流れをつかんでおいて、攻め込まれた時には必ずサイドを2枚以上で守ってスペースを消す。
これによって、ジェフのサイド攻撃を自由にさせませんでした。
ジェフはサイド攻撃といっても、サイド裏のスペースを取って素早くクロスを上げて、ゴールを奪う展開が基本。
この日は長崎戦よりはクロスを上げられたかもしれませんが、サイド裏は取れず攻撃を後らされて、クロスを上げる状況が多かったと思います。
サイド攻撃を遅らせてさえしまえば、ゴール前にいるのはカルリーニョスに風間と0トップのような顔ぶれですから、高さのある松田と喜岡を中心に跳ね返せばいい。
それだけに、クロスは上がっている、あるいはミドルシュートは打ててる状況ではありましたが、そこまでジェフはチャンスを作れず、山口の守備陣を慌てさせるまでには至らなかった試合だったと思います。
完全に山口のゴール前を崩せたシーンはほとんどなく、むしろクロスなどは上げさせてもいいといった発想だったのかもしれません。
山口の方がやりたかった試合展開を、構築できていたのではないでしょうか。
確かに風間の流動的な動きや、ワンタッチのパスは効果的で、今までにないスムーズなパスワークの流れを作っていきました。
ジェフの攻撃陣は自分で仕掛けるといった意欲が強すぎて、攻撃のスピードが遅れがちでしたので、風間起用にはメリットも感じました。
ただ、風間を中心にうまく前を向けたとしても、前方のカルリーニョスも引いたりサイドに流れたりとしがちですので、誰がゴール前にいるのかといった問題も生まれていたと思います。
これもこの日に限らない課題で、完全に崩すサッカーを展開するのであれば、0トップ気味にあえて前線中央を空けて、そこからパスワークで侵入していってもいいのかもしれない。
しかし、パスワークで崩すようなチームではないわけですから、前線中央の薄さ・弱さが目立つ傾向もあると思います。
単純に考えても、サイド攻撃がメインなのに前線がカルリーニョスと風間というのは、ちょっと違和感も覚えますね。
確かに1ピースごとに考えていけば、今日の組み合わせなどにも理解はできるのですが、全体的な構想で考えるとそれが効果的に作用しているのか。
そのあたりも含めて、今のジェフは悩みを抱えているチームといった印象を受けます。
天皇杯もあるのものの、ここから1週間はリーグ戦が空きますので、有効に使って正しい答えを見つけ出してほしいですね。