江尻監督「思った以上の守備ができた」

 昨日、江尻監督の今年限りでの解任が発表になりました。
 大方の予想通りではありますし、もうすぐ今シーズンも終わるので、すべてが終わった後にまとめて話したいと思います。
 ただ、Twitterでも話しましたが、フロントの監督起用方法と監督の手腕は別問題だし、江尻監督がクラブのレジェンドであることもまた別問題だと思いますので、それぞれ分けて考えるべき案件ではないかとだけは話しておきます。


 さて、その江尻監督の東京V戦後のコメントです。

江尻篤彦監督「船山(貴之)とクレーベが良い形でコースを限定しながら、為田(大貴)とアラン ピニェイロのところでボールを奪いたかった。さらに連動しながら、アンカーに対して、ボランチが縦にスライドした。(中略)思った以上の守備ができたし、立ち上がりの何度かのチャンスをモノにできていれば、という思いはある」(Jリーグ

 他にもDFラインを上げてコンパクトにしたという話や、後半途中からDFとMFが下がりすぎてそのスペースを使われたという話をしています。
 いずれも納得できる話ではないでしょうか。

 ただ、「立ち上がりのチャンスをものにできていれば」と話していますが、それは相手も同じ状況で初めは殴り合いの試合展開だったと思います。
 試合序盤はプレスがハマり切らず中盤を取られていたジェフと、パスミスをしてカウンターを受ける東京Vと。
 どちらも不安定な状況で、お互いにチャンスを作っていた印象でした。


 5分にはこんなシーンが。

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 クレーベの強引なミドルシュートが相手選手に当たってカウンターを受けたところから、中盤で梶川とレアンドロがパス交換。
 レアンドロに対して工藤と熊谷が激しくいけず、梶川が前を向いて浮き球のパス。
 小池が下平の裏を完全に取りますが、シュートではなくパスを選択し、中央のレアンドロとファーの山本に合わず攻撃が終わっています。

 今季二桁得点をあげている元ジェフの小池としては、シュートを選択しても良い場面だったと思います。
 しかし、ここでパスを選択してしまうところが、2連敗中のチームの勢いのなさでもあるのでしょうか。
 パスサッカーのチームということでパスを選択してしまったとも言えるのでしょうが、いずれにせよ決定的なシーンと言えると思います。


 このように試合序盤のジェフは梶川を捕まえきれず、そこからボールを配給されていた印象でした。
 DFラインも押し上げられず、ボランチも低くなりがちで、梶川を誰が見るのかわからなかった。
 これは後半に入って運動量が落ちてからも同様で、それによって後半は東京Vが持ち込む時間が長くなっていったように思います。

 しかし、前半途中からはジェフが何度か攻め込めたこともあって、全体を押し上げられるようになった。
 そこから江尻監督も言うように、守備がうまくいったのではないでしょうか。
 レアンドロが下がって来てくれることも、最終ラインを押し上げやすい要因だったと思いますが、19歳のMF森田を前線で起用していたこともありますし、発想としては基本0トップということではあるのでしょうね。

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 ジェフはDFラインを押し上げることにより、MFラインとの関係がコンパクトに。
 これによって、1トップのレアンドロインサイドの森田、佐藤優平をボックス内に吸収する。
 特に東京Vのインサイドは90分通して、効果的な動きがほとんどできませんでしたね。

 ジェフはその状況からボランチの片方が前に出ていくことで、梶川に前を向かせない。
 今までの試合ではボランチを誰が見るのかはっきりせずに苦戦していたところがあったジェフですが、これによってボランチを消すことが出来た。
 相手が1ボランチでプレスの的がはっきりしていたことも、ジェフとしては守りやすくなった要因だったように思います。


 ボランチを中盤が見てくれれば、2トップはDFを追うことに集中できる。
 しかも、この日の東京Vは基本的に2CBでボールを回すので、白円の通り数的同数でプレスをかけることが出来る。
 こうなればクレーベでも、楽に守備に加わることが出来るという状況だったと思います。

 また、両SHは中に絞りつつ、外に出てく守備をしていきました。
 これは江尻監督が話しているように、福岡や横浜FCを参考にしたということなのでしょう。
 試合前にも話しましたが、東京VはインサイドやSBが中を取ろうとする中で、福岡や横浜FCはまず中を絞ってそこから外に出ていく動きを効果的に実施していた印象でした。


 ちなみに、東京Vはサイドから攻め込むと、主に逆サイドのSBが中央寄りのボランチエリアに入ってくるのが特徴の1つとなっているように思います。

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 いわゆる偽SB的な動きで、片方のSBが中に入ってくることによって、1ボランチを助ける役割を担うことになる。
 しかし、図の黒円のように、サイドを持ち込まれたときのジェフは、FW2人が前に出ず相手の1ボランチと偽SBを見ていました。 
 これによって、今度はジェフのボランチが相手ボランチを見ずにスライドに専念することができ、その分SHは前にプレスをかけやすくなる。


 しかし、そうなると東京VのCBは空くことになるし、白い四角で示した通りジェフのFW付近は相手が4人なのに対して、ジェフは2トップのみとなります。
 東京Vはここをサイドチェンジなどでうまく使えばいいのでは…と思っていたのですが、東京Vは後方でサイドチェンジすると、偽SBが外に出ていってしまう。
 基本的に同サイドのSBは外に開くという約束事なのかもしれませんが、逆サイドのSBが中に入る動きを有効に使い切れていないようにも見えました。

 基本的には逆サイドのSBが中に入ることによって、1ボランチがボールサイドに流れてパスワークに絡む。
 あるいは攻め込んだ後に、偽SBが中央で攻撃に絡むという狙いなのかもしれません。
 ただ、東京Vの過去数試合も観ましたが、ジェフ戦も含めてビルドアップの時点でボールを失うことが多かっただけに、もう少し後方で孤立しがちな1ボランチを誰かがフォローしなければいけないのでは…と感じました。


 ジェフ戦に関しては、クレビーニョの出場停止も響いていたのかもしれません。
 福岡戦では右SBだったクレビーニョも、かわりに左SBに入った山本もボランチでプレーできる選手。
 それだけビルドアップに期待しているのでしょうし、17歳の山本も良いパスを出せる選手ではありますが、クレビーニョほど積極的にボールに絡んで自分で攻撃を作ろうというプレーはまだできていないのかもしれません。
 もっともクレビーニョも21歳とまだ若い選手なのですが。

 一方のジェフはうまく中央を閉じながら、外に出ていく守備が実施できていたと思います。
 試合序盤や後半に入ってからは攻め込まれる時間帯も長く、中盤を相手に取られてしまいましたが、これまでは中盤中央でパスを通されることが多かっただけに非常に重要なポイントではないでしょうか。
 東京Vが中央を狙ったパスワークを実施してくるからこそ、そこを警戒したことで実現できたのではないかと思いますが、これをキッカケにそういった守備がモノにできれば…と言いたいところですが、すでにもう残り2試合。
 正直、そこに関してはボックス守備おいて基礎的な要素だと思うだけに、今さら感が強いようにも感じてしまいますね。

カウンターからゴールが奪えず0-0の引き分け

 ジェフ戦より先に始まっていた栃木が大宮戦で引き分けた時点で、来季のJ2残留が決まったそうです。
 降格の可能性は低い状況だったとは思いますが、それでも残り2試合の段階での残留決定というのはやはり遅すぎますね。
 素直には喜べない残留決定だと思います。

 東京V戦はスコアレスドローとなりました。
 東京Vはボールを回すことはできても、攻撃に怖さを感じず。
 自然とジェフのカウンター展開となりました。

 しかし、今季のジェフの大きな課題の1つとして、カウンターでゴールが奪えないところがあると思います。
 そのため、相手のパスミスも多くカウンター展開は多く作れたものの、無得点で終わってしまった試合だったのではないでしょうか。
 守備は頑張っていたとも言えるのでしょうが、お互いの現在の順位を象徴するように、どちらも決め手に欠く試合になってしまったように思います。

■序盤はお互いに攻め込むもスコアは動かず

 先週金沢に勝利したジェフはスタメンを継続。
 ベンチからは矢田が外れて、勇人が入りました。

 東京Vは前節は右SBで出場していたクレビーニョが出場停止で、17歳の山本理仁が左SBに入り奈良輪が右SBに。
 前節までスタメン出場し、元ジェフの若狭とCBコンビを組んでいた元ジェフ近藤がサブに回って、平がスタメンに復帰。
 元ジェフの小池が右SHに回って、左SHにパライバが移りました。


 4分、相手のミスからジェフのチャンス。
 左サイド後方で梶川の処理が遅れると、船山が奪って中央へ。
 クレーベが受けてシュートを放ちますが、大きく外してしまいます。

 その直後には東京Vのチャンス。
 中盤の底の梶川から右サイド裏へ浮き球のスルーパスを出すと、小池が完全に裏を取ります。
 中央へボールを供給しますが、レアンドロなどにはあわず。


 10分にもジェフの攻撃。
 為田からのアーリークロスをファーのアランが頭で折り返すと、クレーベが足元でシュート。
 しかし、GK上福元がセーブ。

 その直後には東京Vの攻撃。
 パライバが左サイドで工藤をかわして持ち上がり、中央へパス。
 レアンドロが足元で受けてミドルシュートを放ちますが、GK優也がセーブ。


 立ち上がりはお互いに攻め込む激しい展開でしたが、前半途中はサイドから攻め込んだことをきっかけに、ジェフが押しこんでいきました。
 東京Vは前節に続いて、縦パスのミスが目立つ展開に。
 しかし、ジェフもカウンターが雑で、シュートまで持ち込めない停滞状態になっていきます。

 それでも、徐々に東京Vが高い位置まで持ち込んでいくようになり、34分には東京Vの攻撃。
 レアンドロが工藤と競り合い高い位置でボールを拾うと、左サイドのパライバへ。
 パライバが仕掛けてクロスを上げると小池が飛び込みますが、GK優也がセーブ。


 39分、ジェフはアランが負傷交代し堀米を投入。
 47分にはジェフが中盤の高い位置でボールを奪ったところから、為田が仕掛けてクロス。
 これをGK上福元がはじき、堀米が拾ってシュートを放ちますが、GK上福元がセーブ。

 その直後には東京Vのチャンス。
 中盤左で得たFKを梶川が蹴ると、平が頭で合わせますが、ゴールの右を逸れます。
 このプレーでホイッスルが鳴り、スコアレスで折り返します。

■カウンターからゴールを決められず0-0

 後半開始直後、東京Vのチャンス。
 GK優也からパスを受けた工藤が処理をミスし、東京Vがボールを奪ったところからパライバが米倉に競り勝ち中央へパス。
 梶川がバイタルエリアでフリーになってシュートを放ちますが、ゴールならず。

 49分にはジェフの決定機。
 工藤が梶川からボールを奪ってクレーベへ。
 クレーベからパスを受けた堀米がシュートを放ちますが、GK上福元が何とか対応。


 56分には東京Vの決定機。
 奈良輪の縦パスからレアンドロが拾って、浮き球のスルーパス
 小池が裏を抜け出してシュートを放ちますが、ゴールの左を逸れます。

 その後、試合は均衡状態へ。
 しかし、前半に比べて東京Vがボールを拾う回数が増え、高い位置まで攻め込む時間が続きます。
 ジェフも集中して守りますが、攻撃には持ち込めない状況に。


 しかし、東京Vがチャンスを作れずにいると、71分にジェフの攻撃。
 左サイドからのCK、堀米が蹴ると中央でエベルトが合わせます。
 しかし、GK上福元が正面でキャッチ。

 74分にもジェフの決定機。
 相手のCKを凌いだところから、堀米が船山と1-2で持ち上がり為田へ。
 為田がマイナスのクロスを上げると、堀米がファーに繋いで米倉が頭で合わせますが枠の外。


 その直後、ジェフは工藤を下げて勇人を投入。
 83分には、東京Vが小池を下げて新井瑞希を起用。
 その直後には山本からのパスを受けた新井瑞希が、左サイドから巻いたシュートを狙いますが枠を捉えきれず。

 88分、東京Vはレアンドロに代わって李栄直を投入し、そのまま1トップへ。
 94分にはジェフのチャンス。
 中盤で船山が相手をかわして、クレーベ、船山、為田とつなぐも、為田のラストパスが合わず、そのままスコアレスで引き分けに終わりました。

■カウンターからゴールが奪えない原因

 やはり東京Vのパスサッカーを、ジェフがどう守るのかという展開になったと思います。
 序盤は1ボランチの梶川をジェフが捉えきれず、バタバタした試合展開になっていた印象でした。

 しかし、ジェフはサイド攻撃とクレーベ、アランの高さを使った攻撃で攻め返します。
 東京Vは小柄な選手が多いため、ある程度ラフなロングボールでも攻撃が作れる印象がありました。
 それをキッカケにジェフがプレスをかけて、東京Vが前に持ち込めない時間帯が作れました。


 梶川に対しては、ボランチの片方が前に出てチェックに行く。
 すると、ジェフの2トップは相手2CBだけを見ればいい状況になるので、これで簡単にプレスをはめ込むことが出来た印象です。
 これが出来たのも一度攻撃で相手を押し込んだからこそ、全体的に前へと押し上げられたのではないでしょうか。

 ただ、前半途中からは、東京Vもサイドを大きく広げたパスワークを展開。
 為田の後ろに佐藤優平が入ってきたり、パライバがワイドに開いて受けたり。
 そして、最後尾も奈良輪を含めた3バック気味にすることで、徐々にジェフのプレスをかわして高い位置まで持ち込めるようになりました。


 後半からは全体的な運動量も落ちて、より東京Vがボールを持ち、ジェフがカウンターを狙う展開に。
 東京Vはサイドに大きく展開したり、SBなどが中でボールを触ったりと、攻撃に工夫を感じました。
 しかし、正直東京Vの攻撃には怖さを感じませんでしたね。

 ゴール前に人数が明らかに足りない状況があったり、パスが1つ多くシュートまで持ち込めなかったり…とパスワークにこだわるチームらしい課題が見受けられました。
 さらに攻撃時の運動量ももう1つで、単純なパスのずれも多かった。
 若い選手が多くこれからのチームと言えば聞こえがいいのでしょうが、あれだけパスミスが多ければどうやってもパスサッカーは成立しないと思います。


 一方のジェフは、思ったよりも守備では頑張れたと思います。
 ただ、試合序盤と後半途中からは梶川を空けてしまう場面が目立ちましたし、相手の攻撃に迫力が足りず救われた部分も大きかったのではないでしょうか。
 また、前半途中など守備が安定している時間ほど、攻撃が作れない印象も残りました。

 それだけ、守備に力を注ぐと攻撃に移れないという問題もあるのかもしれません。
 それと以前からこのチームを見ていて感じていたのですが、カウンターからゴールが奪えませんね。
 あまり大きく取り上げてはきませんでしたが、これが今季の大きな課題の1つではないかと思います。


 カウンターからゴールが奪えない原因は、チームとして形が作れていないことが大きな要因の1つなのでしょう。
 誰が起点になって、誰が走り込んで、ゴールを狙うのか。
 例えば甲府ならボールを奪ったらまずはウタカを見て、ウタカがキープして2列目が飛び出すという形がはっきりしていますが、そういったカウンターの型が出来ていない。

 もう1つには、選手構成の問題もあるのではないかと思います。
 縦に仕掛けるアタッカーばかりで、攻撃に変化を作れる選手が少ない。
 さらにゴール前に飛び込む選手も、足りていないと思います。


 それに加えて、クレーベは高さがあってキープは出来ても、前への機動力や個人での打開力はない選手。
 そのためカウンター時には低い位置でボールを受けてシンプルに繋ぐしかなく、自分で仕掛けられないし、ゴール前に飛び出せないことが多い。
 しかし、クレーベがゴール前にいない状況だと、このチームは2列目に小柄な選手が多いためどうしても迫力を欠いてしまう…。

 そこがクレーベの大きな課題なのではないかと思います。
 守備が出来ない上に、カウンター時に存在感を発揮できないというのは、戦術的にもちょっと辛いところがありますね。
 その分、サイドからの攻撃においては、大きな貢献をしているとは思いますが。


 ただ、クレーベがカウンターで機能しなくても、他の選手がカウンターの軸になってくれればいいわけですが、そこがいないことも大きな問題なのではないでしょうか。
 やはりこのアタッカー過多の歪んだ選手構成に、大きな問題があるように思います。
 もっと変化を付けられる選手、体を張って飛び込める選手、守備ができる選手などまんべんなく必要で、それこそがバランスの良い選手構成と言えるのではないでしょうか。

 そこも来季に向けて、大きな課題となるのではないかと思います。
 ひとまず残留は決まったものの、クラブやチームにおける問題点が改善されたわけではない。
 今後どうやって運営していくのかが、大事なところですね。