増嶋「鹿児島がアーリークロスを入れてきた」

増嶋竜也「最初は(鹿児島が)クサビをシャドーに入れてくるイメージだったけど、真逆でサイドに当てて、アーリークロスを入れてきたのが分かった」
Jリーグ

 鹿児島に関して、増嶋は楔のパスではなくアーリークロスを入れてきたという印象だったようです。

 ただ、実際には楔のパスも多かったのではないでしょうか。
 特に序盤は韓への縦パスが多く、増嶋が競り負けて相手ボールになることも多かったと思います。
 その後は増嶋も落ち着いて対応していましたが、67分に増嶋がスライディングを空振りして決定機を作られた場面も、砂森から韓への斜めの楔のパスへだったと言えるでしょう。


 しかし、一方でサイドからのアーリークロスが多かったのも事実だと思います。
 ジェフは相変わらずサイドチェンジに弱い印象があり、ボールサイドに選手が寄りがちになる上、サイドチェンジを遅らせる守備もできていないように思います。
 そこを狙って鹿児島がうまく左右にボールを散らして、ジェフのプレスの的を絞らせず、中央からもサイドからも攻撃を作ってきた印象でした。

 特にジェフの右サイドは、堀米の戻りが遅いことが多く、茶島も寄せが甘い。
 一方でジェフアカデミー出身で鹿児島の左SB砂森は、ボールの受け方や持ち方も上手く、多彩なボールを蹴ってきました。
 これによって、鹿児島の左サイドからチャンスが生まれることが多かった印象です。


 18分には鹿児島の右サイドでのスローインから左サイドに展開され、砂森のクロスでもう一度逆サイドに振られて、決定機を作られてしまいました。

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 先日も話した通り、ジェフは鹿児島のボランチをフリーにしがちで、図のようにスローインを受けたボランチ中原から大きく左サイドに展開。
 左サイドの砂森から逆サイドの五領が受けてフリーでシュートを放ちますが、GK鈴木がファインセーブで失点を止めています。
 この時、五領に対面していた為田はオフサイドのセルフジャッジで完全に足を止めてしまいましたが、大外の五領は後方から飛び出しているのでオンサイドでした。


 「アーリークロス」と言われると、完全には崩せずにラフにボールを放り込む攻撃のようにも思えます。
 完全には崩せていないため、ゴールの確率の低いアバウトな攻撃というイメージもあるでしょう。
 なぜ「アーリークロス」だと確率が低くなるのかを考えると、ボールが斜め後方から飛んでくるため、それを前方のゴールにシュートするのは難しいからということになるのではないでしょうか。

 前方や真横から来たボールを、前方向にヘディングするのは、比較的簡単だと思います。
 しかし、後方から来たボールを前方にヘディングするのは難しいため、アーリークロスでゴールを決めるのは難易度が高いと考えられると思います。
 一方で逆方向に攻めて後方のゴールを守らなければいけないDFからすれば、斜め前方向から来るアーリークロスを相手ゴール方向にクリアするのは、比較的楽なので守りやすい状況と言えるのではないでしょうか。


 しかし、ジェフの場合は、ハイラインを維持することが多い。
 そのため、本来で言えば「アーリークロス」と呼ばれる位置からクロスを上げられたとしても、相手FWやジェフのDFからすれば真横に近い角度からボールが飛んでくることが多い。
 しかも、そこはGKの守備範囲外であることが多いため、むしろ早目にクロスを上げられた方がピンチになる恐れがある。

 さらに、18分のシーンでは図の矢印で示したように、砂森のクロスは味方選手を直接狙っているわけではなく、ハイライン裏のスペースを狙ってボールを蹴っていた印象でした。
 そのため、アーリークロスではあるのだけれど、ジェフのスペースを狙ったスルーパスにも近いようなボールだったということになるのではないでしょうか。
 その分、五領は前方向の勢いを維持したまま、ボールを受けてシュートを放てたわけで、確実な決定機となっていた印象です。

 砂森はキックの種類や精度だけでなく、視野も広くしっかりと状況を見定めてボールを蹴りチャンスを演出していました。
 前節の東京V戦でも2ゴールに絡んでいましたし、鹿児島にとって極めて重要な選手になっていると言えるのではないでしょうか。
 ジェフとしては、こういった選手が自前で育てきれないことが大きな課題ですね…。


 ジェフはハイラインを維持するということになると、後方には広大なスペースがあり、GKなどのサポートも少ない状況で守り続けるということになります。
 その状況で守備を安定させるためには、パスの出所を抑えることが必須となるでしょう。
 18分の場面でも失点シーンでも砂森をフリーにさせてしまっていますし、さらに言えばその前の中原もフリーにしたため、有効なサイドチェンジを出されていることになります。

 ハイラインの手前で相手をフリーな状況にして、クロスやスルーパスなどを出されてしまっては、相手のタイミングで攻撃を作られることになる。
 そうなればもはや攻撃の練習と同じようなものですから、その状況で例えオフサイドが取れたとしても、それはあくまでも相手のミスであると考えるべきではないかと私は思います。
 その時は相手のミスで助かったとしても次はやられる危険性があるでしょうし、相手のミスを待つ守備が続くようでは、チームとしての進歩は期待できないでしょう。


 失点シーンや18分の場面では、
・相手のボランチをどう抑えるのか
・サイドチェンジをされた後にサイドでどう対応するのか
・そもそもサイドチェンジをされないようにするためにどう対処すべきなのか
・前方へプレスにもいければいけないシャドーの後方をどう埋めるのか
・素早く攻め込まれた時に後方でどう守るのか
 などなど、多くの課題が感じられたように思います。
 それらの問題を1つ1つ洗い出して、解決していく必要があるのかもしれませんね。

鹿児島戦で右WBに復帰した茶島がアシスト

 鹿児島戦では右WBに復帰した形となる茶島が、先制ゴールをアシストしました。
 アシストはメディアによって計測方法が異なりますが、Football LABのデータではこれが茶島の今季初アシストとなるそうです。

 鹿児島戦の52分。
 鹿児島の攻撃をジェフが跳ね返した後に、堀米がドリブルで中央を持ちあがり茶島へ繋ぎます。
 茶島がクロスを上げると、ニアでクレーベが合わせてへディングでゴールを決めています。

 鹿児島は攻撃から守備への切り替えが遅い印象があり堀米をフリーにして攻撃を遅らせられず、その後も余裕をもってクロスからシュートまで持ち込むことができた印象でした。
 相手守備陣が準備を整える前に、攻め込めたのが大きかったと思います。
 とはいえ、クレーベはニアに入ってファーにヘディングでゴールを決めていますし、茶島もピンポイントでクレーベにクロスボールを供給しています。


 江尻監督が就任した当初の茶島は途中出場がメインでしたが、4月14日の岡山戦ではシャドーの位置でスタメン出場しています。
 ただ、シャドーでのプレーは、思ったよりもはまらなかったという印象でした。
 昨年末にも話しましたが、茶島の動きは縦へのスプリントが1つの特徴となっている印象です。

 しかし、3-6-1のシャドーだと相手の間で起点となる動きが重要となるため、縦へ動く茶島ではフィットしなかったところがあるのではないでしょうか。
 これは縦に仕掛ける為田や日本代表の中島がシャドーでは合いにくいのと、似通ったところがあるのではないかと思います。
 そのため、その後のシャドーは工藤や堀米がプレーしていくことになります。


 シャドーでフィットしなかった茶島は、5月5日の岡山戦から右WBでプレー。
 前々節の栃木戦ではゲリアが右WBとして復帰し、茶島はスタメンを外されるものの、再び鹿児島戦で茶島が復帰することになりました。
 ゲリアは鹿児島戦でメンバー外となったのでアクシデントでもあったのかと思ったのですが、練習試合には出場していますので、単純に一度スタメンに戻してみたものの思ったよりもうまくいかなかったということでしょうか。

 鹿児島戦では左サイドの為田が何度か仕掛けるものの、クロスの精度を欠く場面も目立ち、チャンスを作りきれなかった印象です。
 栃木戦でも相手のマークが厳しく苦戦しただけでなく、フリーな状況でもクロスのミスが多かったですし、疲れなどもあるのでしょうか。
 為田はスペースを消されると苦戦する傾向がありますし、左サイドだけでなく右サイドでもチャンスを作れるようになることがチームとしても重要だと思いますから、右WBのポジション争いも注目だと思います。


 ただ、先制ゴールをアシストした場面は良かったですが、その他では単発での仕掛けが多くなってしまっていました。
 試合序盤に茶島がポスト直撃のミドルシュートを放ったのも、単純に他選手のサポートの動きが少なく、シュートを選択せざるを得なかったというのが実情でしょう。
 解説の永井も「サポートがなくドリブルに任せている」という話をしていたように、チームとして全体的に攻撃がドリブル頼りになっている感は否めないと思います。

 これはもちろん茶島だけではなく、チーム全体としての大きな課題だと思います。
 現状だと為田、船山、堀米、茶島とアタッカーを並べており、ドリブルが通用すれば攻撃が作れるけれど、そうではないと苦戦してしまう。
 要するに個の能力に頼った攻撃になってしまっている。

 鹿児島戦では相手の守備が甘かったので、ドリブルだけでチャンスを作れたところがあると思います。
 しかし、ここから先の順位を目指していくことを考えると、それだけでは通用しないと思います。
 工藤なども練習試合には出ているようですし、小島も復帰したようですから、そういったパスの出し手や黒子になる選手も起用しつつ、力業以外の攻撃も目指さなければいけないのではないでしょうか。 


 鹿児島戦での茶島は攻撃面で結果を残したものの、守備では苦戦していた印象です。
 右シャドーに入った前方の堀米は、CBへのプレスも考えなければいけないことや守備の戻りの遅さもあって、右サイドを茶島1人で守らなければいけない場面も多かった。
 さらに茶島の前には鹿児島のSH牛之濱がいて、中央で受けようとする動きも見せるため茶島が釣られて、左SB砂森が空きがちだったという面もあるでしょう。

 しかし、それにしても局面での寄せが甘く、特に失点シーンでは茶島が一歩前に出られずにクロスを上げられてしまった印象でした。
 真横へのクロスを警戒してコースを消して、マイナスのクロスを想定しなかったのでしょうが、それでも一歩寄せられれば浄教寺は違ったはずです。
 その後、茶島は足を釣って交代となっていますので、ベストな状況ではなかったのかもしれませんが、前半から砂森にやられすぎていた印象です。


 現状だとゲリアもチームに合わず、茶島も完全にはフィットしていない印象があります。
 そのため、安田を補強したのではないかと思うのですが、その安田も最近はベンチにも入っていません。
 真希も候補となるはずですが、スタメンでは起用されていませんし、誰を軸とするのか悩ましい状況ですね。

 その前に、チームとしてどういった攻撃をピッチ全体でデザインしていくかが重要なのでしょう。
 今回の試合のように相手が自由に仕掛けさせてくれるのであれば、アタッカーを並べても上手くいくかもしれませんが、堅守のチームにはそうはいかないこともわかっているはずです。
 ドリブルだけではない攻撃を作り上げなければいけないと思いますし、そのためにどういったサッカーをして、どういった選手起用を選んでいくのかが重要なのではないでしょうか。