千葉ダービーで「変化」のキッカケを掴めるか

 先月に続いて、台風で大きな被害が出てしまいましたね。
 しかも、予想以上に広範囲に影響が出ており、多いな爪痕を残しています。
 被害にあわれた皆様にお見舞いするとともに、一日も早い復旧をお祈りいたします。

 さて、2-0で久々の快勝を遂げた長崎戦。
 試合の後にも、これを続けられるのか、次が大事ではないかという話をしましたが、その次相手は首位柏です。
 千葉ダービーということにもなり、ジェフにとっては重要な試合となりますね。

 ただ、柏も現在は2連敗中。
 一時は11連勝を遂げていましたが、8月末の新潟戦で引き分けると、そこからは2勝2分3敗と元気がありません。
 首位はキープしているものの、2位横浜FCとの勝点差も5まで縮まってきました。


 柏は前節ホームで水戸を迎え撃ち、2-3で敗戦となっています。
 ただ、両チームとも球際に激しく、レベルの高い試合となっていた印象です。
 攻守の切り替えも早く、お互いに鋭いカウンターを仕掛けていました。

 ここ数戦、柏が苦戦しているのは、相手の研究も進んできたのかもしれません。
 そもそも11連勝の初戦はジェフだったわけですが、それまでの柏はスタイルもどこか曖昧なところがあり、成績もパッとしませんでした。
 しかし、ジェフ戦は千葉ダービーということもあって局面で激しく戦い、シンプルに縦へという意識が強まってその後の方向性も固まっていったところがあるのではないでしょうか。


 要するにジェフ戦から縦へのカウンターサッカーが確立していったのではないかと思うのですが、そこから11連勝を遂げたことで他チームはカウンターのスペースを与えずしっかり守る対策を取ってきた。
 そうなると、柏がボールを持たされる時間が長くなり、そこから苦戦していったところもあるのではないかと思います。
 前回降格時にもネルシーニョ監督が指揮をして似たようなサッカーになっていましたが、当時はレアンドロ・ドミンゲスが在籍していた。

 それによって遅攻時にも変化を付けられるところがあったのではないかと思うのですが、現在はそういった選手がいない。
 今の柏もビルドアップ時にはボランチも使って素早くサイドに展開し縦へ持ち込めるチームだとは思うのですが、アタッキングサードにおける変化においては物足りなさがあるのかもしれません。
 そこでマテウス・サヴィオを起用しているのかなとも思うのですが、レアンドロ・ドミンゲスほどトリッキーな選手ではないように思います。

 また、前節はケニア代表に選出されたオルンガが不在でしたが、ジェフ戦では間に合うのではないかと思いますし、それによってどういった変化が生まれるのか。
 オルンガはクレーベのように守備はしないため、その分水戸戦ではチーム全体として守備で激しくいていた部分もあったと思います。
 しかし、オルンガはバネがあって空中戦に強いだけでなく、クレーベとは違って前を取れるタイプではないかと思いますので、ジェフDFはしっかりと警戒しなければいけない相手だと思います。


 ジェフとしては、前節の長崎戦では相手がある程度ボールを繋いできてくれたので、助かったところもあったのではないかと思います。
 しかし、柏は強力なカウンターがメインとなるチームだと思うので、リスクマネジメントに不安があるジェフとしては、柏のカウンターをいかに止めるのかが重要となるのではないでしょうか。 
 なお、長崎に関しては、江尻監督もこのような話をしています。

「長崎さんもスタイルが少しずつ変わって、ボールを握るという戦い方をしてきて、昨年度はJ1でやっていた」

 長崎戦前にも話しましたが、長崎は今年途中からパスを繋ぐ傾向が強くなっている印象で、ジェフ戦でも間を狙ったパスワークが多かったと思います。
 ただ、パスサッカーに移行している過程なのかもしれませんが、サイドを揺さぶれなかったり、最後のプレーがアバウトだったり、中途半端な面も目立ったと思います。

 ジェフはそれに助けられた印象もあったわけですが、手倉森監督自身も本来は堅守速攻が得意な監督ではないかと思います。
 長崎の現状での戦力などを考えると、より上を目指すためにパスサッカーを確立しなければいけないという発想なのかもしれません。
 けれども、それと監督自身がやれるサッカーは別だと思います。


 だからこそ、まずはクラブが何をしたいのかを考えた上で、監督選びをしなければいけないのでしょう
 監督がクラブの状況に合わせたサッカーをすることは難しいわけで、クラブが状況に合わせて監督を選ばなければいけない。
 例えば南アフリカW杯時の岡田監督も最初はパスサッカーを目指したものの実現は出来ず、自身の特徴にあった堅守速攻にシフトして成功を遂げたことになります。 

 だからこそ、江尻監督就任時には継続などは考えず、自分のやりたいサッカーをやってほしいと話しました。
 しかし、江尻監督は自分のやれるサッカーとは何か…という点で、まだ迷走している段階ということでしょうか。
 あるいは1つの形を追求するという点において、課題が生じているのかもしれません。


 前節長崎戦で勝利したとはいえ、そういった点ではまだまだ課題が残ると思います。
 その点ネルシーニョ監督はやはり百戦錬磨で、まだチームに甘さは残るし確固たる強さも確立しきれていないとは思いますが、それでもネルシーニョ監督らしいチームになっていると思います。
 そういった江尻監督らしさ、ジェフらしさを見出せるかがまずは大事だと思うのですが、それを見出す前に終わる監督も少なくはないのでしょう。

 ともかく、ジェフとしては前節の2-0がまぐれではなかったと証明するためにも、良いサッカーをしてほしいと思います。
 千葉ダービーは激しい展開になることが多いですから、そこから目を覚まして可能性を見出してほしいところです。
 勇人も引退会見で「なにか変化が必要だと思っていた」と話していますし、その意思を無駄にせずクラブとして変わらなければいけない時にきているのではないかと思います。

勇人「引退する意味を残った選手に感じてほしかった」

 昨日、勇人の引退会見が行われました。
 昨日のエントリーで勇人の引退に関してはひとまずお終いと思っていたのですが、興味深い話をしていたので取り上げたいと思います。

 特に気になったのは、日刊も取り上げているこの部分。

「成績がよくなくて、なにか変化が必要だと思っていた。試合にでたら誰よりも走れている。毎日の練習でも誰より走って誰より戦えてる。その状態で引退するという意味を、残った選手に感じてほしかった」

 「走ること」にこだわりを持ってプレーしていたようですが、その点において現在の選手たちに対して、ふがいなく思っているところもあるのではないかと感じました。
 献身的に走ること、球際で激しく戦うことが、一時はジェフのスタイルとなっていたはずですが、なぜそれを継続できず、今ではむしろ真逆なチームになってしまったのか。
 選手構成もそうだし、クラブのメンタリティなども含めて、そこが大きな問題となっているように思います。


 また、アカデミーの重要性に関しても話していました。

「自分の背中を見てアカデミーの子どもたちが将来のジェフのために『俺らがトップを強くしてやるんだ』という思いを少しでも持ってくれたら。1人でも多く昇格できる選手が出てきたときに、自分のサッカーキャリアは後悔から喜びに変わるかもしれません」

 アカデミーに関してもジェフの強みとなっていたわけですが、それに関してもJ2に降格してからは正反対となっている印象で、他から補強するクラブになってしまっている。
 チームのスタイルも180度変わってしまい、運営面でも全く違うクラブになって、新たなスタイルや強みが見い出せていないと考えれば、苦戦するのも当然のこと。
 現在のジェフの低迷の要因が、改めて感じられた会見だったようにも思います。

 勇人に関しては、会見の模様を見ても意志の強さを感じました。
 決して器用な選手ではないと思うのですが、その意志の強さでこれだけ長く選手としてプレーできたのかなとも思います。
 引退後もジェフのために力になりたいという話を聞けたのは嬉しいものの、指導者を目指すわけではないそうなのでどうなるのかは読めませんが、今後は内部からチームを変えていってほしいですね。


 さて、長崎戦に関しても、すで少し書いていたので取り上げておきたいと思います。
 勇人の引退発表直前に行われた長崎戦は、工藤や鳥海といったアカデミー出身の選手が活躍した試合だと思います。
 それも運動量や周りのために黒子になって貢献するといった、勇人などが得意とする、現在のジェフには欠けている要素だったと言えるのではないでしょうか。

 江尻監督も工藤に関して、「最近のほとんどの試合で彼がディフェンスのスイッチをやってくれている」と話しています
 ほとんどというか、工藤がトップ下に入ってからは全試合で工藤がその役割を果たしていると思います。
 工藤がキックオフ直後から激しく走り回って、チェックをすることによって、ジェフの守備が成立していると言えるでしょう。


 その分、工藤の足が止まると全体的に苦戦してしまう傾向があり、長崎戦でも前半の30分以降や後半も一時的に苦戦していた時間があったと思います。
 ただ、長崎戦は18時キックオフでしたし、公式記録でも気温は22度と低くなっていた。
 それによって工藤はもちろん、クレーベなどその他の選手もいつもより動けて、戦えた試合となったのではないでしょうか。

 さらに長崎戦では、勇人に代わってボランチに入った鳥海も守備で効いていたと思います。
 56分には、こんな場面が。

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 為田がいなされて亀川から秋野にパスを繋がれたところで、秋野への下平の詰めが遅く中盤の間で前を向かれてしまいます。
 秋野が前を向いた状況で、翁長が白円で示したハーフスペースに走り込みます。
 これに対して鳥海が反応して翁長についていくことによってフリーな状況を作らせず、選択肢の減った秋野は玉田へのパスを選んだものの精度を欠いて新井がクリアしています。

 鳥海はこの前の場面でも、カイオがジェフの左サイドのハーフスペースを走り込んでいったのに対して、右ボランチの位置から走って行ってカバーしています。
 ボールを奪ったわけでもクロスを跳ね返したわけでもないわけですが、こういったプレーが守備を構築する上で大事になってくるはずです。
 鳥海のカバーリングに関しては先日も取り上げていますが、ジェフはSBなどが外に出ても全体がスライドする意識が薄いだけに、その間を埋める動きが重要となっている印象です。


 さらに現在のジェフは、ボランチ二人が棒立ちになって横関係のまま守ることが多い。
 しかし、それだけではバイタルエリアを埋めきれないし、ボランチボランチの間のパスコースを消すことも出来ない。
 だから、先週も取り上げた山形ように、全体で動いてパスコースを消しつつ、1人がカバーに下がってもう1人が前に出て寄せに行くというような関係が1つの理想なのだと思います。

 図のシーンでも、ピッチ全体で言えば、甘さも残る守備ではないかと思います。
 熊谷は前に出ていって戻りが遅いし、為田と下平は外に出て守備をしているのに、寄せが甘く突破されてしまっている。
 しかし、鳥海がその裏を埋めるカバーリングをしたことによって、大きく波状せずに済んだと言えるのではないかと思います。

 
 現在のジェフは攻守において局面局面で強い選手はいるものの、こういった地味でも気の利いた動きが出来る選手は非常に少ない印象です。
 だから、今年も勇人のようなベテランが必要となったのでしょう。
 しかし、今年の勇人はさすがに大ベテランの域に達して衰えを感じる部分があり、カバーリングでの反応などm遅く、スペースを埋めきれない試合も多かった印象です。

 それだけに勇人の後輩にあたる、鳥海の良さが感じ取れた試合だったようにも思います。
 ただ、鳥海の活躍には可能性を感じる一方で、改めてこういった地味でも真面目にプレーする選手の少なさが、大きな問題となっているようにも感じます。
 直接的にはやはり2列目のアタッカーばかりを補強した、選手構成の問題が大きいのでしょう。

 一方で先週も話したように、クラブのメンタリティとして地味な選手やプレーを評価できていない。
 それもあって、一発芸が得意な選手ばかりが集まっている部分もあるのではないでしょうか。 
 以前にも話しましたが、現在のチーム運営とは別の流れにある、工藤や勇人といったジェフ復帰組が貴重な存在になっているのも偶然ではないように思います。


 勇人の引退で改めて、クラブの問題を感じた部分があるように思います。
 強かった頃のジェフの特徴を考えると、「献身的に走ること」、「球際で激しく戦うこと」など、すぐに当時のサッカーを表現する言葉が出てくると思います。
 しかし、今のジェフにはそれが全く浮かんでこない。

 「走ることがジェフのスタイルである」と巻き戻すには、あまりにもあれから時間が経ちすぎましたし、問題なのはどんなスタイルにせよ強みを築けていないことではないでしょうか。
 ただ目の前を試合に勝利する、短期的な結果を期待するというだけでなく、チームとしての強みをいかに作っていくのかが、今のジェフに足りないことだと思います。
 その辺りをしっかりと踏まえて、来季以降に向けての運営を考えていかなければいけないように思います。