ジェフ経営情報'19 J1との経営格差が大幅に拡大

 今年もJクラブの経営データが発表になりました(PDF)。
 こちらのJリーグのページの下部から確認できるのですが、過去数年のデータしかリンクが張られていません。
 より過去のデータを遡りたければ、PDFではなかった平成28年度のページ下部から飛ばなければいけないのが、少しややこしいところですね。


 さて、今年もジェフのデータを見ていきましょう。


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 ご覧のように、前年のデータと比較して、3億円程『営業収益』が増えています。  
 内訳は「スポンサー料」が約2億9000万円ほど増えていますので、ほぼここで稼いだと言っていいでしょう。
 「スポンサー料」は約20億円にも上りますが、これはジェフにとって過去最高額となります。


 「スポンサー料」が増えたということで営業努力なのかもしれませんが、次に話す通り『営業費用』が増えたため、親会社が補填した可能性も否定できないと思います。
 これまでにも夏の緊急補強に合わせて露骨にスポンサーが増えたこともありますし、以前と比べてジェフの大口スポンサーが増えたようにも感じません。
 さらに他クラブでは収支が綺麗に同額になるところもあり、親会社の補填を受けているのではないかと思われるデータもあるわけで、ジェフもそれに近いことが行われているのかもしれません。

 また、今季からJリーグは前年まで「広告料収入」としていた項目を、「スポンサー収入」に変更しました。
 こちらの資料(PDF)によると「純粋な広告対価ではない事例もあるため」変更したとのことで、補填が行われているクラブを認めたことになると思います。
 変更になった直接のキッカケは神戸が大物外国人選手を補強するため、親会社かオーナーから大金を受け取ったことだったのかもしれませんが、他クラブでも似たようなことは起こっている可能性は十分にあると思います。



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 『営業費用』も1億8000万円ほど増えています。
 中でも「チーム人件費」が約1億円近く増加しており、「チーム人件費」が公表されてからは過去最多額となっています。
 加えて、「トップチーム運営経費」も約6000万円ほど増えておりますが、これは昨年も話した通り、「代理人手数料」による変動である可能性があります。

 一方で、「販売費および一般管理費」が約1億円減少しています。
 これはフロントなどで使用した金額となると思われ、コストカットに成功したのかもしれません。
 しかし、以前のデータを見返すと、過去3年間はそれまでより約1億円程増えていたわけで、元に戻ったとも言えるでしょう。



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 続いて、『当別損益』を見ると、ここで約3700万円の費用が出ています。
 過去の事例や他チームの情報からすると、ここで「移籍金」を計上してる可能性もあります。
 昨年はシーズン中に工藤や下平といった選手を補強していますが、ジェフはシーズン中の監督交代を行った年に「特別損失」が出ていますし、開幕前の「移籍金」は別で計上し、シーズン中における「移籍金」をここに計上したのかもしれません。



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 最終的に、昨年度は赤字を免れたことになります。
 基本的にはいわゆる「強化費」が増えたものの、「スポンサー収入」で賄ったという形になるのではないでしょうか。
 『総費用』が増えても『総収入』が増せば、クラブの規模は大きくなったことになりますし、経営データだけを見れば悪いことではないと思います。


 しかし、チームの状況にも目を向けると、昨年の順位はクラブ史上最低だったわけで、「強化費」が増えたにもかかわらず、結果が残せなかったことになります。
 「スポンサー収入」が増加して「強化費」にあてても結果が出なかったでは、スポンサーが離れてしまう恐れもあるわけですから、手放しには喜べないところがあると思います。
 予算が減ったから結果が出なかったというならまだしも、コストパフォーマンスでも最低の年だったと言えるのではないかと思いますから、強化部の責任は重くなってくるのではないでしょうか。

 あるいは、将来を見据えた投資の時期であるため、「強化費」をそれにあてたというのであればわかります。
 しかし、実際にはむしろここ数年で主力選手の年齢層は上がっている印象もあり、将来を見据えたクラブ作りができているようには感じ取れません。
 むしろエスナイデル監督体制でともかく結果が欲しいというイメージでしたし、フロントがクラブの将来的なビジョンを語ることもほぼなかったですから、投資の時期とは考えにくいと思います。


 この辺りは以前から話していることでもあると思うのですが、もう1つ今回のデータで気になったのがJ1クラブとジェフとの経営規模の差です。
 以下のグラフは、ジェフが降格した年からの『J1平均の収入・費用』と『ジェフの収入・費用』を、年度ごとに比較したものです。
 上記した通り、『総費用』、『総収入』は経営規模を表す指標の1つとなります。

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 ご覧の通り、ここ3年ほどで『J1平均の収入・費用』が大きな上昇カーブを見せており、ジェフとの差が開き始めています。
 去年などは特に神戸の積極補強によってJ1平均が引き上げられ約47億円の経営規模となっていましたが、計算すると神戸を抜いた17クラブの平均でも、収入と費用は約44億円でした。
 昨年のジェフの経営規模は約28億円ですので、J1平均との差は約19億円もあり、神戸を抜いた17チームの平均とも約16億円もの差が開いていることになります。


 これがJ2に降格した初年度の経営データだと、ジェフは収入が23億円で、費用が26億円。
 J1平均は収入も費用も約30億円でしたので、4~7億円しか差がなかったこととなります。
 ここ数年でJ1平均が飛躍したこともありますが、ジェフがJ2にいる間に初年度から10億円以上も差が拡大してしまいました。 

 ちなみに、J1平均の伸びで気になるのがDAZNマネーですが、昨年度の『Jリーグ配分金』のJ1平均は約4億8000万円。
 スカパー!時代も約2億円配分されていましたので、全体を大きく押し上げるほどの金額ではないことになります。
 先ほど紹介したJリーグ資料(PDF)においても、『スポンサー収入』が大きく増加したと書かれていますし、J1クラブの努力によって成長傾向にあるということではないでしょうか。


 結果的にジェフはJ2に落ちても経営規模は縮小していませんが、J1との差は広がっていることになります。
 あくまでも井の中の蛙状態であり、J2ではビッククラブだとしても、J1から見れば小さなクラブとなりつつあるということでしょう。
 J2でも順位が下がって成績面ばかりが苦戦しているように思われがちですが、J1を目指すという意味では経営面でも相対的に苦しくなってきました。

 個人的に今回の件を調べたきっかけとなったのが、札幌の経営に関するニュースを見たことだったのですが、改めて札幌の経営データを見るとここ数年で一気に伸びています。
 J2にいた4年前のデータでは15億程度の経営規模しかなかったにもかかわらず、今回発表されたデータでは収入も費用も約30億円に上っています。
 この4年間で一気に経営規模が倍となり、ジェフも追い越されたことになります。


 札幌は元ジェフの野々村社長が2013年に就任すると、東南アジア路線や電気事業への進出、博報堂とのパートナーシップなど様々な策を投じてきました。
 また、強化面では札幌ユースも結果を出しており、ペトロヴィッチ監督の招聘にも成功してJ1でも活躍しています。
 こうした柔軟な運営・経営ができるのも、大きな親会社がいないからではないかと思います。

 一方でジェフは大きな親会社がいるからこそ、経営が良くも悪くも安定している。
 しかし、その分、博打は打つことができず、毎年のようにJ1昇格を目指さなければいけない状況になっているのかもしれません。
 結果に対して焦っている印象もあり、将来に向けての投資も後回しになっているということなのかなとも思います。

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 こちらは、『ジェフの収入・費用』と『J2平均の収入・費用』を計算したもの。
 ジェフ降格直後はチーム数も少なく、昇・降格したクラブによってJ2平均に大きな変動が見られましたが、それ以降の数値は安定しています。
 ジェフも安定してJ2平均よりは上にいることがわかり、先ほどのグラフとあわせてみれば、ジェフはJ2以上J1未満のクラブということが出来るでしょう。

 チームの選手構成もJ1で活躍できなかった選手や旬の過ぎたベテラン選手を補強して、苦戦しているように思います。
 J1でも出場できない選手はどこかに課題を抱えていることが多いし、頭数は揃えてもチームを引っ張るような圧倒的な選手はいない状況。
 ようするに、チームもJ2以上J1未満な選手が多いように思います。


 さらに平均年齢も高く伸びしろの少ない選手たちが若手の蓋となってしまい、チーム全体が成長できない状況になっている印象があります。
 一方で近年ジェフを巣立って他チームで活躍している選手をあげると、大岩、オナイウ、北爪、戸島、栗山、井出、伊藤槙人など、ジェフ生え抜きの選手が多いと思います。
 良い若手選手を獲得してもジェフでは育てきれないケースが多い印象もあるわけで、クラブの将来性を考えてそういった選手たちをもっと大事に育てていく姿勢が必要なのではないでしょうか。

 実際、J1では大分、J2でも水戸や金沢などが、昨年のデータで言えばジェフの半分以下の経営規模にもかかわらず、ジェフより上位で活躍していることになります。
 どのチームもじっくりチームを作り上げてきた印象で、そこがジェフに足りないところと言えるのではないでしょうか。
 現状だと目先の成績ばかりを考えた補強が多いためチームが伸び切れず、さらにベテランが退団するとその穴をベテラン補強で埋めようとする悪いスパイラルにはまっている印象もあります。


 いずれにせよ、J1とJ2の格差が広がりジェフもJ1との差が開いている状況ですから、今までのように中途半端な買うクラブという状況が続ければ、さらにJ1は遠のいてしまうかもしれません。
 J1の経営規模が拡大すれば優秀な選手の単価は上がっていくでしょうし、それなりの選手をそれなりの予算を使って獲得したとしても、J1の戦力には及ばない可能性が高くなっている。
 それで例え何とかJ2は突破できたとしても、J1ですぐに返り討ちにあっては大きな成功は成せないはずです。

 改めて、経営的にも成績面でも厳しい状況となってしまったから今だからこそ、クラブの方針見直しが求められてくるのではないでしょうか。
 しかし、フロントならこういった状況は把握できているはずですが、にもかかわらず今年もエスナイデル監督を続投して寿人や田坂、米倉などのベテランを獲得し、目先の勝点ばかりを優先している印象があります。
 残念ながらクラブを大きく変えるという意思は感じないだけに、このままいけば今後も低迷は続くと考えるべきなのかもしれません。

江尻篤彦監督「右サイドの攻撃も表現が出始めた」

江尻篤彦監督「左サイドだけでなく、右サイドの攻撃も表現が出始めて、点を取れたのは良かったが、耐えないといけない時間帯の中で失点をしてしまうことが繰り返されているので、しっかりと修正しないといけない。
Jリーグ

 こちらは愛媛戦でのコメント。
 愛媛戦から、ジェフは米倉と工藤を右サイドで起用しています。

 ただ、江尻監督は「左サイドだけでなく」と話していますが、個人的には右サイドからの攻撃が増えた分、左サイドでの攻撃は失われてしまった印象でした。
 愛媛戦後にも話しましたが、工藤が右サイドで攻撃の起点となったことにより、ここ数戦やってきた左サイドで選手が密集する動きはほぼ見られなかったと思います。
 右サイドの攻撃が新たにプラスされたというよりも、左サイドに偏っていた攻撃が右サイドに移ったという印象でした。


 個人的には左サイドに密集する攻撃に関しても、当初はこのような感想を述べていました。

サイドに人数をかける展開というのは、これまでにも見られた動きだったはずです。
個人的な認識で言えば、江尻監督就任当初はそういった傾向は見られず。
4月21日の横浜FC戦から為田が左WBとしてスタメン起用されると、その数試合後から船山や熊谷などが左サイドに寄る動きをするようになっていった印象です。
そのため、江尻監督が初めから意図的にやりたかった展開というよりは、為田を使うことで個人技での打開がメインになって、そこにサポートを増やすことになったのではないかと思います。

 具体的にはリンク先を読んでいただきたいのですが、要約すると左サイドに選手が流れる動きは、為田を起用し始めた頃からすでに見られていた。
 4バックにしてサイドが2枚になったり、左に流れる傾向のある堀米を右SHで起用したりといった変化があったため、その傾向がより強まっただけではないかと思っていました。

 ようするに、為田という攻撃のストロングポイントをサポートするという発想で始まったものであり、そこに強い計画性や意思・意欲といったものはなかったのではないかということです。
 もちろん、経緯はどうあれ良いチームが作れればそれで問題ありません。
 しかし、しっかりとした計画性や意思・意欲がなければ、その戦い方は続かないし発展もしていかない可能性があるのではないかと思います。


 そして、一部の番記者にはやたらと持て囃された印象のあった左サイドでの密集ですが、右サイドの選手を入れ替えただけであっさりと消え失せようとしている印象です。
 そうやってコロコロと戦い方が変わってしまっては、チームの成長は期待できない。
 なぜそういった疑いの目で見ていたかというと、何度も話している通り江尻監督は前回も今回もチーム作りに一貫性がないように感じるところがあるからです。

 左サイドに密集する展開においても、結局はサイドを縦に突破してクロスを上げるか、密集の前でボランチなどがアーリークロスを展開するかといったアバウトな攻撃が多かったと思います。
 密集の中で選手が間で受ける動きを見せたり、素早くパスを繋いでゴールに迫ったりといった攻撃は少なかった。
 それももともとは左サイドに選手が集まるだけ、為田をサポートすることだけを考えた形だっただけに、密集した後に具体的に何をするかを詰められなかったということなのでしょうか。


 その左サイドで密集する攻撃も、相手チームに対策を取られてからはうまくいっていなかったように思います。
 また、為田自身も一時期の好調から調子を落としている印象もあり、ここ最近はストロングポイントになり切れていない印象です。
 そういった意味では早くも限界だったのかもしれませんが、それですぐに終わってしまうようなことでは、少なくともチームのスタイルとは言えないでしょう。

 愛媛戦に続き大宮戦でも右サイドからの攻撃が多く、DAZNの試合後の集計データによると、右サイドからの攻撃は56%と多く、中央からは21%、左サイドからは26%にとどまっていたそうです。
 特に多かったのは後半からの攻撃で、安田が右SHに入ってからではないでしょうか。
 試合終盤のチャンスは、ほとんどが安田の仕掛けによるものでした。


 ジェフに復帰した米倉は、確かに鋭いクロスを供給していますが、それ以外のプレーではあまりぱっとせず、プレーが単調のようにも見えます。
 鋭いクロスを活かすためにも、逆サイドから展開し米倉を走らせて、相手のDFとGKの間にクロスを供給させるプレーを期待する…と考えると、やはり鈴木監督時代の使い方は正しかったように感じます。
 現状だと比較的選手が米倉の近くでプレーしていますが、それだと持ち味は出しきれないのかもしれません。

 一方で右SHに入った安田は、相手の間でうまく受ける動きも見せ、切り返しからのクロスも見せ、優しいボールでピンポイントのクロスを供給するなど活躍していました。
 米倉に比べると、器用なプレーが目立ったのではないでしょうか。
 これだけのプレーができるわけですし、もっとスタメンで起用していいのではと以前から思っていたのですが、90分間だと活躍できないと判断されているのか、身長の問題などもあるのでしょうか。


 ちなみに安田の方が若くから活躍し経験豊富なためベテランなイメージもありますが、安田は米倉の1学年上ということで2人はほぼ同年代です。
 安田の方が経験をうまく活かして、賢いプレーができているということでしょうか。
 もちろん、フィジカル面などにおいては、米倉のほうが期待できるのでしょうが。

 安田に今後もこのプレーを期待したいという意見もあるとは思うのですが、一方でこれだけ2列目に攻撃的なアタッカーを補強しておいて、本来はSBである安田の仕掛けに期待せざるを得ない状況になっているというのはいかがなものでしょう。
 それだけ選手たちにも不甲斐ないところがあると言えるでしょうし、選手の起用法においても選手構成などにおいても疑問の残る状況になっているような気がします。
 左サイドの密集攻撃もこのまま終息に向かうのかなと思いますが、右サイドの攻撃においても個人に依存している印象ですから、どこで攻めるにせよ攻撃の意図をより明確にしていく必要があるのではないかと思います。