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ホンダF1撤退とホンダスピリッツの終了

 撤退発表から時間が経つと実感も沸き、寂しい気持ちになってきました。
 個人的には第3期ホンダF1には非常に期待していたのです。
 なにせ、第1期以来となるシャシーの開発も含めたオールホンダ!
 純白のプロトタイプマシンRA099(当時はRA99と呼ぶ記事もあった)は、F1チームの参加する合同テストでも素晴らしいタイムを出していて、日本メディアの盛り上がりもこのまま勝てるんじゃないか?という勢いだった(後に規定重量以下だったんじゃないかとか騒がれたけど)。
 しかも、当時ホンダガサポートする無限ホンダエンジンはF1で好調。
 パワーだけならトップクラスのエンジンで、それに加えてホンダ本社が本気を出すっていうんだから期待は高まる。
 シャシー開発も当時低迷していたフェラーリを復活させるきっかけを作り、後にX-ウイングなど奇抜な発想を生み出したハーベイ・ポスルスウェイト博士(テクニカルディレクターの元祖とも言われている)がいるっていうんだからね。


 もうまさに万全な体制での準備。
 おもちゃみたいなプロトタイプマシンを作ったトヨタと比べると、準備段階では月とすっぽんの差。
 というかはっきりプロとアマチュアくらいの差があったはずです。



 しかし、ホンダは直前になってオールホンダでの参戦を取り止め。
 表向きはデザイナーのポスルスウェイト博士が急死したことが原因といわれていますが、実際のところはF1復帰に前向きだった川本信彦氏から吉野浩行氏に社長が交代したところが大きかったのではないかと思います。
 もうこの決定で、ホンダは以前からのホンダではなくなってしまっていたんでしょうね…。
 その後の低迷…と言うか迷走に関しては言わずもがな。 
 
  

 今回の件、「ホンダの今までの運営の拙さを振り返りそれが今回の早期撤退にもつながっている」と見る方と「金融危機の問題でF1村が大混乱に陥っている」という方の2パターンに大きく分かれているように思います。
 そして、それはたぶん2つとも正しいのではないかと。 


 ホンダのチーム運営が酷くって、不景気になったことで真っ先に撤退しなければいけなかったのも間違っていないし、金融危機でF1の今後に大きな不安があるというのも確かなんでしょう。
 でもたぶんアンチ…と言うか、私のように第3期ホンダF1に初めからすごい期待をしていた者にとっては、1つ目のほうの印象の方が強い。


 加えて、私はJリーグの経営もたくさん見ているからますますそう思うのです。
 というのも、ホンダF1チームはホンダ本社に頼りきった運営をしていたわけですから。


 今回、ホンダは年間に500億円もの投資をしていると報じられていましたけど、その全額がそのまんまホンダF1チームの運営費に近い額なんじゃないかと思われます。
 ようするに、収入がほとんどない。
 外部からのスポンサーがまったく付いていないんだから、それも当然です。
 トヨタはF1参戦時からパナソニックやらデンソーなどがデカデカと付いていますし、フェラーリにはマールボロがいるわけだけれど、ホンダはホンダが運営し、ホンダがマシンを開発し、ホンダがスポンサーだったわけです。
 そりゃ、真っ先に潰れるわ…って話しで。


 これは“親会社に依存しているJリーグのクラブ”とも近いところがあるでしょう。
 しかも、ホンダはスポンサー集めに躍起になっている感じもしなかった。
 加えて、成績もダメ。
 バトンという人気ドライバーを連れてきて、それで人気が高まればそれでいいって感じ見えた。


 そこにやってきた金融危機問題。
 もともと砂上の楼閣だったホンダF1チームが真っ先に潰れるのは、当然のことだったのではないかと。




 一方で、金融危機に関する今後のF1への不安。
 これも当然あります。
 こちらに関してはホンダ云々ではなく、単にF1が好きな方達が心配しているのではないかと。


 パドックの裏にわけのわからない巨大建造物をこぞって建てるなど無駄に贅沢三昧をしてきたF1チームが「参戦費用の高騰をどうにかしろ!」といくら騒いでも同情する気には一切なれませんが(FIAにもっと放映権料をよこせとか言ってたけど、それを渡したところで一瞬で使い切るだろ…)、それでも心配なことは多いですね。
 スポンサーからの収入は減るでしょうし、自動車会社からのお金の流れも減って、よりシビアに結果を求められるようになるでしょう。
 もしかしたらホンダの撤退でドミノ倒し的に他のメーカーも撤退する可能性はあるかもしれない。


 ただ、私は正直に言ってそこまで不安視はしていません。
 F1は既に欧州では文化の1つと言えるはずでしょう。
 であるのなら、小規模化することはあったとしても、消えてなくなることはないんじゃないかと。
 そして、F1の小規模化は誰しもがどこかで期待していた部分でもあるでしょう。


 現在の参戦費用の高騰の裏には、湯水のように資金を投入する自動車会社が大量に参加し、ある種の“投資合戦”のようになっているところに一番の問題があるはずで、それがF1の小規模化によってある程度解消されるのであれば、それはもしかしたら本来のF1に戻れるチャンスなのかもしれません。





 個人的に残念なのは、ホンダがエンジン供給の予定もないと発表したこと。


第一期終了時には、第一期も第二期も“休止”という文言でした。今回は、撤退と表現していますが、これには自動車産業が新しい時代がやってきたことにとなって、ホンダのモータースポーツに対する姿勢が変化したからでしょうか?
福井 ホンダのモータースポーツに対する考え方は、大きな変化はないと思いますが、撤退という言葉をあえて使ったのは、それほど現下の環境か、自動車産業が繁栄してきた100年間から、大きく次の100年に向かう新しい時代に入ったのだという認識をしています。したがって、今までF1に注いできた情熱、リソース、人材を新しい時代に振り向けるのだという物凄い強い意思が今回の決定に入っているとご理解いただきたいと思います。(F1キンダーガーデン
 ホンダは第2期終了後も無限エンジンを通して、F1からの技術的なフィードバックを計っていました。
 それはF1活動を休止しても、ホンダがF1というモータースポーツの頂点とも言えるスポーツから完全には離れないんだという強い想いがあったからでしょう。



 そのような強い想い、決意、信念こそが、“ホンダスピリッツ”であり、本田宗一郎の考え方だったのではないかと思います。
 昔のホンダの理念がなくなってしまったことを今回はっきりと感じ寂しくもありますが、一方でなぜ第3期ホンダF1を心から応援できなかったのかがわかりある意味ですっきりした気持ちもあります(笑)
 たぶん私はホンダのファンではなく、ホンダスピリッツのファンだったのでしょう。



 そして、そのホンダスピリッツを近代F1で一番感じられたのが、スーパーアグリだったんじゃないのか、とか思ってしまったりして…。