ジェフが山口DF前貴之の獲得を発表しました。
意外なポジション、意外な選手の補強だったと思います。
前貴之といえば弟の前寛之とともに、札幌アカデミーからトップチームに昇格した選手として有名ですね。
2種時代からトップに昇格されるなど期待の高かった前貴之は、2012年にトップ昇格。
初年度からJ1でリーグ戦15試合に出場するなど活躍しますが、翌年チームがJ2に降格してからは出場機会が伸びず富山への武者修行なども経験します。
大きな転機となったのはJ2山口にレンタル移籍した2017年で、ここで24試合出場。
2018年、2019年は完全移籍に移行し、レギュラー選手として飛躍を遂げます。
この活躍をもって2020年に横浜FMへ個人昇格するも出場機会は得られず、半年でJ2松本へ移籍。
翌年、松本に完全移籍するも、この年の松本は苦戦してJ3降格。
J3降格後も前はチームに残留しましたが、2022年夏に山口へ復帰。
2023年、2024年は山口の主力として戦っていました。
攻守に貢献できるオールマイティなタイプで、札幌では2つ下の弟である前寛之と共に様々なポジションでプレーしていたため、間違えてしまうこともあるほどでした。
しかし、それが結果的に器用貧乏となってしまい、主力には定着しきれないところがあったのではないかと思います。
それが解決したのが山口への移籍で、特に2018年からは右SBにほぼ固定化されて、大きな活躍を遂げていきます。
ちょうど2018年には前寛之も水戸に移籍し、長谷部監督の下でボランチに固定化されて大ブレイク。
2020年に長谷部監督が福岡に移籍すると、そのまま福岡についていきJ1昇格に貢献。
そこからJ1でも4年間主軸選手として活躍し、今オフには町田への移籍が決まっています。
一方、前貴之は2020年に横浜FMを経て松本に移籍すると、再びオールマイティーな選手としてプレーしていきます。
2021年のボランチでのプレーには可能性も感じましたが、左右WBやシャドー、CBでの出場もあって、落ち着きのない印象を受けました。
そして、2022年途中からは山口に戻り、2023年からまた右SBで腰を据えてプレーできるようになって、チームを引っ張る存在になっていったように思います。
特に今季の山口は左SB新保が積極的に攻撃参加する分、右SB前が守備に残ってビルドアップに貢献する形でバランスをとっていました。
新保の活躍も前の存在が大きかったのではないかと思いますし、ベテランらしい安定感を見せていました。
個人的にはチームの活躍もあって、Youtubeで話したシーズン前半のベストイレブン候補にもあげていました。
ただ、ジェフの獲得は意外でした。
ジェフの右SBは不動のレギュラー高橋がいる。
高橋は2023年途中に右SBへコンバートされてからは、出場停止などがなければほぼ全試合で、右SBのスタメン出場を果たしています。
タフで怪我も少ない上、何より守備面などで課題が見えて交代させてもいいのではと思う試合でも使い続けるなど、小林監督が極めて高く評価しているイメージです。
かといって、控え選手がいないかといえばそうでもなく、松田陸も似たタイプの右SB。
松田も来季はまだどうなるか読めませんが、今季終盤はCBでも活躍しただけに、残留するのではないかと思っていました。
そうなると、高橋の移籍もありえるのでしょうか。
あるいは、前貴之をオールマイティな選手として期待しているのか。
ただ、左SBもこなせますが現在のジェフは左SB日高が主力で、左SBに右利きの松田や小川を起用してもうまくいかなかった経緯があり、控えにも左利きのSBが欲しいところでしょう。
また、CBでもプレーできるとはいっても、3バックの左右CBが基本で4バックでは厳しいと思います。
2021年の松本でもプレーした、ボランチでのプレーもありえるでしょうか。
今年のジェフはボランチが定着しなかった印象ですし、前ならアンカーなどもできるかもしれない。
ただ、2021年の松本でも後半戦はボランチを外されて、空いた左右WBの穴埋めなどをさせられていた印象が強いですが。
チームとしては、前のような選手がサブにいて、複数ポジションの穴埋めをしてくれれば心強いとは思います。
しかし、一方で前の経歴を見ると、やはり1つのポジションに固定化したほうが、本人にとっては良いのではないかと思います。
ポジションが安定しないと連携面なども深まりにくいでしょうし、細かな動きの面でも問題が生じがちで、それが器用貧乏という症状なのではないでしょうか。
それだけに再び山口で仕事が固まったことは良いことなのではないかとみていたのですが、ジェフはどういった構想で補強したのでしょう。
ジェフとしても本来は1つのポジションに固定化して、本人の良さを発揮しやすい状況を作ったほうがいいとも思います。
あるいは、今季はDFやボランチに怪我人が多かったため、ともかくオールマイティな選手を補強したということなのであれば、小林監督の運営能力が問われる部分となるかもしれませんね。
続いて、秋田から河野が加入しました。
河野は秋田で活躍し、今オフの去就が注目された選手の1人ではないかと思います。
河野は鵬翔高、関西大を経て、2019年にJ3北九州に加入。
1年目のシーズン後半から18試合に出場しJ2昇格にも貢献しますが、2020年は村松の加入や怪我にも苦しみ10試合出場にとどまります。
2021年も12試合出場に終わり、チームはJ3に降格。
しかし、2022年はJ3で30試合に出場と活躍すると、2023年にはJ2秋田に引き抜かれ40試合出場。
そして、今年も37試合に出場と、チームに大きく貢献します。
ちなみに、河野のJ2初ゴールは2023年第4節のジェフ戦で、ロングスローからのバックヘッドでのシュートでした。
186cmと非常に高さのある選手で、質の高いロングフィードも蹴ることのできるCBだと思います。
左足でのキックも多かったので、初めは左利きの選手かと思ったのですが、秋田のHPには右利きと書かれていますし、本来は右利きの選手なのかもしれません。
J2での北九州時代からもっと試合に出てもよいのではと思っていたのですが、あの頃はまだ守備での安定感が足りなかった印象もありました。
空中戦の強さとロングフィードが武器といえる選手だと思いますので、秋田ではそれがぴったりとはまったといえるでしょう。
ジェフもCBからの大きな展開が多いですし、今年は後半から守備時の空中戦に苦しんだ印象もありますから、そこに期待したのではないかと思います。
今季前半はメンデスを愛用していましたし、小林監督は本来身長あるCBが好みなのでしょうか。
ただ、河野もアジリティなど、細かな動きには若干の不安があるイメージもあります。
また、秋田でプレーしていたこともあって、ラインの押上げなどに関して未知数なところもあるのではないでしょうか。
ハイプレスをより強化していくのであれば、ラインの押上げというのは極めて重要なところだと思います。
とはいえ、これで鳥海、前、河野と、実績あるDFを積極的に補強していることになります。
今年は鈴木大輔、久保庭、日高など怪我人が続いたこともあって、DFラインのやりくりに苦労しました。
そのため、DFを強化したいという発想なのであれば、そこは理解できる話ですね。
しかし、一方で来年で鳥海は30歳、前は32歳、河野も29歳になります。
来年25歳の佐々木が抜けたことも考えると、DFラインの年齢層が若干気になるところです。
有望な若手を引き抜かれて、それをベテラン補強で穴埋めすることが続けば、チームにもジリ貧感が出てきてしまいますし、今後のオフの動向にも注目ですね。
また、小森の移籍が噂される前線補強も、石川だけでは心もとないと思いますし、DF重視ばかりでは厳しくなるとも思います。
とはいえ、CBはこれで鳥海と鈴木大輔か、鳥海と河野かになるのではないかと思いますが、昨年よりは守備での安定感の期待できる顔ぶれとなるのかもしれませんね。
その分、フィード力やパワーは減少してしまうのかもしれませんが、その点を埋めるという意味でも期待したいところなのではないかと思います。