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「山岸を理解する」ということは「オシムサッカーの基本を知る」こと

 村井、阿部と同様に本来は扱いたくない選手です。
 特に移籍の時に行った「競争を求めて」という理由は今でも非常に残念に思います。
 何度も言ってますけど、坂本を放出したのは山岸を育てるためだったと読んでいます。
 それなのに、そんな理由で育てられた方の選手が出て行ってしまっては…。
 まぁ、もうどうでもいいことですけど。





 山岸は日本では異色のウインガーで、そう簡単には活かしきれない。
 アマル監督や岡田監督も使い方を悩んだ選手を、関塚監督がどう使うのか楽しみだと言ってきたけど、今のところまだ川崎でも苦戦しているようですね。


サイドを生かし切れず孤立したMF山岸は「あれだけフリーだったのに何で出してくれないのか」と連係のない内容に悔しさをあらわにしていた。 (スポニチ
 まぁ、山岸の能力を否定するわけでも関塚監督の腕をどうこう言うつもりも全くないけど、時間がかかるのは目に見えていました。




 ポテンシャルはある。
 フィジカルは強いしスピードも高さもあるし、ああ見えて足元も悪くない。特に右足でのクロスはなかなかのものがあります(左足も悪くないけど)。
 そのため、“右の山岸”はクロス、“左の山岸”はゴール前の飛び出し…といった感じで左右で特徴が違う選手だったりもします。
 加えてスタミナもあるし、オフザボールの飛び出しも素晴らしい。攻守の切り替えも早い。
 フィジカルが強いから集中すれば守備もできなくもない…かもしれない(笑)


 けれど、サイドプレーヤーなんだけど、サイドでの一対一に強いというわけではない(笑)
 サイドでの一対一だけを考えれば、日本でももっといい選手が他にたくさんいるはずです。




 それならばいっそ中で使うべきではないのか?とも思ってしまう。
 ここが、山岸を語る上での醍醐味の1つでしょう(笑)
 実際、昨シーズンはFWやトップ下で使われても可能性を感じさせていました。
 前線でターゲットとしても結構相手DFに競り勝っていたし、トップ下で使われたときは意外と前方へのショートパスも上手かった。
 Jユースカップ得点王は伊達じゃなかったわけです。


 だから、たぶんFWやトップ下で育てられてもいい選手にはなったんじゃないかと思います。
 けれど、サイドでの育成が決まった。
 それを最終的に決めたのが、イビチャ・オシム監督だったんんじゃないでしょうか。
(ジェフでは若いFWにサイドでプレーさせて守備を覚えさせる育成方法が以前からあったから、コンバートの発案者はオシム監督ないはずです。けれど、山岸はそのままサイドで使うことを最終的に決定付けたのは、オシム監督の意思ではなかったかと思います。)





 山岸はサイドで使われているけど、ただ単純にサイドだけでプレーさせていたら普通以下の選手でしょう。
 だから、サイドの選手がゴール前に入ってくるプレーを活かせるような戦術を作ってあげないといけません。
 それって、まさにオシム監督の目差すトータルサッカーの理想の1つなわけです。


 オシム・サッカーの特徴の1つとして、言わずと知れた「リスクを伴う走るサッカー」があります。
 その中でも重要なのが片方のサイドがクロスを上げようとしているような状況で、トップ下やボランチの選手だけでなく、逆サイドの選手までゴール前まで突っ込んでくることでしょう。
 その時に活きてくるのが、山岸のようなフィジカルも強く高さもあるサイドアタッカーというわけです。




 特にわかりやすいのが3バックの場合。
 右サイドの選手がバイタルエリア付近でクロスを上げようとしている時に左サイドの選手がゴール前に入っていったら、両サイドが高い位置をとるという危険な状況になるわけですが、それもオシム監督の中では理論上はOKだったわけです。


 その基本となる発想が「自分が押し込めば対面する選手は下がるだろ?だからカウンターは気にせずどんどん攻めていいんだよ(あとは切り替えの勝負だ)」という、言葉にすれば非常に単純で実際にやるとなるととても難しいロジックだったのです。


 この基本ロジックがあるためオシム監督は足元の技術以上に「攻守の切り替え」、「判断スピード」、「運動量」などを、とても重要視していたわけです。
 そしてそれに当てはまった1人が山岸だったということですね。
 まぁ、どうも日本代表での4バックの時も、逆サイドのサイドバックにゴール前に飛び込むような指示を出していたようなので、3バックじゃなくてもわかるかもしれませんけどね(笑)





 ようするに、「山岸を理解する」ということは「オシムサッカーの基本を知る」ということになるはずです。
 それがわかっていなければ山岸という選手は評価しにくいだろうし、現場レベルで言えば例え理論的にはわかっていたとしても、実際には使いこなせないケースも出てくるはずです。
 オシム監督のサッカーというのは理論的には非常に単純ですが、実際に実施しようと思うととても難解で複雑なサッカーですからね。



 ちなみに、アマル監督もこの山岸を活かそうと懸命に悩んでいたはずです。
 無策のように見えて決して無策だったわけじゃない(笑)
 山岸をどんどん中央に走らせて活かすためには、逆サイドで質の高いクロスを上げる選手が必要だったわけです。
 それが水野だったわけですね。 
 だから山岸がタメを作って、サイドチェンジをして、右サイドで勝負。
 その間に山岸はゴール前に斜めに入ってくる…という狙いのサッカーをしていたはずです。
 その分、ボランチ2人は中でバランスをとることになったわけですね。


 まぁ、結局上手くはいきませんでしたけどね(笑)
 でも狙いははっきりしていたはずです。
 昨シーズンジェフが苦戦した理由の1つに、その山岸ら代表組のコンディション不良というのがあったわけですけど…。
 日本代表に選ばれて、体力的に厳しかったんでしょうけど。





 もっとも今の山岸は「イビチャ・オシム監督しか使いこなせない」選手。
 それは一選手としては、決して褒められたものじゃないはずです。
 もっともっとプレーの幅を広げなければいけないでしょう。


 例えば昨シーズンはバックパスばかりで不評でしたけど、あれも狙いがあったんだから場合によっては悪くなかったはずです。
 山岸を中心として左サイドの奥までパスワークで持っていって、そこで相手選手をひきつけてバックパスを出して素早くボランチやDF経由で右サイドにサイドチェンジして水野で攻める、山岸が飛び込む…。
 けれど、そのサイドチェンジがチームとして出来ていないと山岸は活きてこない。
 それを本人もわかっているから、タメの後のサイドチェンジが上手くいかなかった試合では「サイドチェンジが上手くいかないかったのが敗因」というようなことを言っていました。
 オシム戦術の元であれば、戦術理解度も素晴らしい選手だったということになるでしょう。


 けれど、今年は移籍をして戦術がまた違うはずです。
 自分自身も仕掛けたり、ゴール前に飛び出すだけでなくチャンスメイクも求められているのではないかと思います。
 そんな中でバックパスばかりしていたら本当に“ただの逃げ”になってしまうし、消極的な選手と言われても仕方がないでしょう。
 けれど、ここ数年の山岸は若干バックパス癖がついてしまったようにも思います。





 単純に言えば、“使われる選手”から“使う選手”に脱皮していかなければいけないのではないかということです。
 それが川崎で活躍するためにも、監督の代わった日本代表で生き残るためにも、必要不可欠になってくるのではないでしょうか。


 ただ、私は「山岸を使いこなせるのはオシム監督だけ」と思う一方で、「山岸を育てられるのもオシム監督だけ」なのではないか…とも思っているんですけどね(笑)