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スポーツとは“夢”である

 私は正直に言って、当初はさほどスーパーアグリには期待していなかったし、愛着もあまり沸かなかった。
 佐藤琢磨BARホンダ(現ホンダ)を首になって、ホンダが日本人ファンからのバッシングから逃れるためにに作ったチーム…。
(現在もホンダが佐藤琢磨の給料を支払っているといわれている。)
 だけど、新興チームだから競争力はまったく期待できなかった。
 少なくとも“当時”のBARホンダほどのチームには、ならないだろうと思ってた。
 それよりも琢磨がBARホンダを解雇されたことの方が、残念で…。
 もっとも2005年の琢磨のパフォーマンスは非常に不安定だったので、解雇されても止むなしの状況だったのだけど。
(とはいえバトンのわがままを鵜呑みにして、何十億円もの違約金を払ってウイリアムズから契約を買い取るなど、ホンダのご都合主義には非常に呆れてしまうけど。)


 しかも、新チームの代表はあの鈴木亜久里
 この人は解説などでも適当なことばかり言って、F1ファン仲間の中でも評判がよろしくなかった(笑)
 ドライバー時代もF1で「前線予備予選落ち」という不名誉な記録などもあり、実力派ドライバーというイメージはなかったし。






 だけど亜久里氏は代表としてはまったく違っていた。
 最後の会見でファンに感謝していると話しているけど、私の方こそ感謝しなければいけない。
 ARTAのチーム監督としてアメリカのトップカテゴリーの1つであるインディにも参戦していた亜久里代表は、“日本のチームが世界で戦う”意味の重要性とその術を理解していたんだと思う。
(加えて、亜久里氏の明るさが日々苦しい状況に立たされるこのチームにはピッタリだったんだと思う。)


 現在F1に参戦しているホンダもトヨタも、日本のチームって雰囲気はほとんどない。  
 ドライバーはもちろん多くのスタッフ、幹部も欧州人。
 欧州のチームに、バッジだけ日本のメーカーが付けているようなものであって。


 スーパーアグリはそういった中で、日本人ファンの夢をかなえる「オールジャパンチーム」を作ろうとしていた…。



 しかし、2年目からはそのスーパーアグリからも“日本色”が薄くなる。
 セカンドドライバーもアンソニー・デビットソンになり、イギリス人スタッフが増えたようにも感じた。
 加えてスポンサーも日本企業が激減した。
(これは、電通との決別があったのではないかともいわれている。)




 これでまた私はスーパーアグリへの興味は薄くなる(笑)


 しかし、スーパーアグリは“日本色”こそ薄くなったけど、“レースに対するひたむきさ”というのが非常に際立ってくる。
 ホンダから譲り受けた1年落ちのマシンを限られた予算の中で懸命に開発を行い、ときに中位グループと対等に渡り歩く勇姿に、私はもう「オールジャパン」なんてどうでも良くなっていた。
 期待していた“日本のチーム”とは違ったけれど、「純粋にレースを見る楽しさ」を思い出させてもらったんだと思う。



 そして、2007年6月10日…。

 前年度チャンピオンで名門マクラーレンに所属するフェルナンド・アロンソを、創立2年目のスーパーアグリ佐藤琢磨がぶち抜くという驚くべき快挙をやってのけたのである。
 この頃からスーパーアグリは「ひたむきに頑張る愛すべきチーム」として、世界のF1ファンからも一目置かれるようになっていった。
 
 

 しかし、このあとはさらなる財政難もありチームは低迷。
 買収の噂もいくつか浮上し、2008年初頭には「このままでは開幕戦に出場できないのではないか?」と言われ始める。


 その後はホンダのサポートもあって何とかここまで参戦にこぎつけるも、予算不足によるマシン開発の遅れは隠すことが出来ず…。


 そして、ついに2008年5月6日。
 スーパアグリのF1挑戦終了が発表になった。









 このような「ひたむきなチーム」が、F1から消えるというのは非常に残念。
 これが現実なのかもしれないし、100億円とも言われていた投資額に見合う価値はなかったのかもしれない。
 けれども、理屈抜きにこういったチームがF1のパドックに残れない悲しさというか、悔しさが残る結末だったと思う。
 あのような「世界と戦えるチーム」に対し、日本企業がどこも手を差し伸べてあげなかったというのも情けない話しである…。









 確かにホンダは良くやってくれたのかもしれない。
 エンジンだけでなく途中からはマシンも貸し出して、80億円ともいわれる費用を出してくれたのだし(まぁ1500億円も申告漏れしてるような会社だからこれくらい大したことないんだろうけど)。


 けれども、ホンダはもっとうまくやたんじゃないかとも思ってしまう。
 レッドブルトロロッソを上手くサポートできているように。


 考えてみれば、初めからホンダはそこまで乗る気はなかったんだと思う。 
 なかなか参戦金が見付からない時もホンダが払うつもりはまったくなかったようだし(多額の参戦金だが参戦できれば返却される)、政治的な根回しに関してもサポートはあまりなかったように思う。



 今回のF1撤退もヴァイグルとの話しはあったのにもかかわらず、ホンダがタイムリミットを作ってしまったようだ。
 また、イスタンブールで締め出しをしたのも、結局誰かはわからずじまいだけどホンダが関係していないとは思えない。
亜久里代表は最後までホンダをかばっていたけれど…。)



 結局、ホンダはてきとうなサポートしか行わずスーパーアグリは孤立無援だった。
 ホンダはスーパーアグリに対して中途半端で無責任な態度しか取れなかった。


 まるで子供を産むだけ産んで、“育児放棄”したかのうように見えてしまう。


 これでホンダはF1で気兼ねなく戦っていけるのかもしれない。
 けれど、ホンダがこのような行為をしたことを、F1ファンは忘れないだろう。
 今のホンダには、レーシングスピリッツもファンを思う気持ちも感じられない。
 それはホンダ創設者である、本田宗一郎とはまったく逆の姿勢である!





 今さらだけど、ようやくフリューゲルスサポの気持ちが少しだけわかったような気がする…。
 スポーツとは“夢”である。
 一般企業はただの広告媒体としか思っていないのかもしれないけれど、ファンからすれば夢であり希望でもある。
 その分、スポーツをサポートしている企業も相乗効果を受けられるわけだ。


 しかし、それを理解できていないのにもかかわらず、闇雲にスポーツにかかわるのなら逆効果につながるだろう。
 今すぐに辞めた方がマシだ。


 ホンダに関して言えば、F1で失敗したのはこれで2度目である。
 一度目はオールホンダで参戦しようとして、土壇場で参戦撤廃を表明し世界中のF1関係者を唖然とさせた1999年。
 その頃からホンダはまったく成長しておらず、ファンを軽視し、モータースポーツ界も無視して自分の都合ばかり考えて戦っている。
 ホンダのファンだったからこそ、私はこれが残念でならない。

 
 






 最後に鈴木亜久里代表以下、イギリス人スタッフも含めて、スーパーアグリに携わったお疲れ様でした。
 また、会見の行われた青山本社ビル前に集まったファンの皆さんもお疲れ様でした。
 自分も行きたかったな…。


 とにかく、“夢”をありがとう。


鈴木亜久里代表「レースのできないF1には戻らない」スーパーアグリF1撤退発表会見スポナビ
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