両チームにとって、良い面も悪い面も出た試合だったのではないでしょうか。
試合前にも話した通り、清水は1点を失うと急に流れが悪くなり中途半端な戦い方になった。
粘り弱さを感じたのですが、試合終盤に入ると今度はジェフが簡単に失点し、清水以上の粘り弱さを露呈してしまった。
ただ、試合終盤の失点は精神的な弱さだけでなく、これまでにも見られた守備の課題が出た部分もあったと思います。
ジェフからすれば、0-2から巻き返して逆転した状況。
さらに清水は1人少ない状況からの逆転負けで、ショックの大きい試合でしたね。
■先に2点を失い1-2で折り返し
ジェフはアランダがメンバー外で、勇人が今季初スタメン出場。
エウトンもメンバーから外れており、船山がスタメン復帰。
山本がベンチに回って井出がスタメンとなり、ベンチには比嘉と岡野が入りました。
大前、本田、鎌田、西部など怪我人が多い清水ですが、この試合では犬飼も不在で角田がスタメンに復帰。
前節スタメン出場した左SBキム・ボムヨンに代わって松原が、六平に代わって竹内がスタメン。
大前の離脱後FWとして出場していた金子がベンチとなり、石毛がFWに入りました。
ジェフはまた若干システムに変化がありました。
4バックの右サイド外に北爪が位置して4.5バックのような状況になるのは変わらないものの、前線は船山と町田の2トップに。
中盤は左サイドの井出が絞り長澤、勇人との3ボランチのように見えましたが、北爪が前に出ていく場合もあり変則的な布陣だったと思います。
7分、ジェフの攻撃。
井出からのクロスのこぼれ球を、勇人が拾ってダイレクトでミドルシュート。
しかし、GK杉山の正面で終ります。
16分には清水の攻撃。
清水のFKからの流れで、再び清水がボールを奪い返し、右サイド枝村がクロス。
白崎がファーでヘディングシュートを放ちますが、枠の外。
18分、清水が先制。
松原からのボールを受けた石毛が若狭に競り勝ち中央を持ち上がると、丹羽が後方から潰しに行きますが、こぼれたボールはチョン・テセへ。
テセが頭で流し込んで、1-0となります。
変則的なシステムを取っているジェフは、この試合でもサイド前方のスペースを潰し切れず、そこから攻撃を作られていました。
このシーンでも松原がスルスルと上がっていったものの、誰がマークを見るのかはっきりしなかった。
そこから前にパスを出され、失点という流れでした。
20分にはジェフのチャンス。
中盤でこぼれ球を拾った井出が、前方へスルーパス。
船山が受けてシュートを放ちますが、GK杉山がセーブ。
ここ2試合と違い早い時間にリードを許したジェフは、ここから前への姿勢を強めていきます。
しかし、全体の押上げや攻撃の連動性が足りず、前方の数人だけでの攻撃が目立つ展開に。
一方の清水も運動量が少なく、パスワークにも鋭さを感じませんでした。
しかし、ジェフの守備は後方に引いているだけで、無理をせずともスペースが出来るような状態だったため、縦パスさえ通れば崩れそうな展開だったと思います。
そして、27分に清水の追加点。
清水が右サイドでボールを奪ったところから、川口が中央の白崎とワンツーで裏を抜け出しシュート。
これが決まって2-0となります。
31分にも清水のチャンス。
右サイド後方の川口から斜め方向へ楔のパスをテセがスルーして、石毛がゴール前で受け完全に抜けかけますが、何とかジェフのDFがストップ。
しかし、ジェフはここでも相手SBをフリーにさせてしまいました。
劣勢が続くジェフは、4-4-2に変更。
その直後の36分。
井出からの浮き球のパスを、町田がワンタッチで落とすと、船山が抜け出してゴール。
難しい体勢でしたが、町田のワンタッチでの落としが見事でした。
38分には、清水のチャンス。
勇人が相手ボランチにかわされ、河井からテセへスルーパス。
テセが抜け出してシュートを放ちますが、枠の外で終ります。
ジェフの前への姿勢を高めた結果、裏を突かれた危ない展開でした。
■一度は逆転するも終盤に2点失い敗戦
前半終盤はジェフがボールを持つ時間帯が長くなり、後半に入ってからもジェフがボールを持ち清水が守る展開に。
ジェフは船山が積極的に裏を狙い、そこへ長いボールを出して攻め込む展開。
ただ、アタッキングサードで崩すまでは至らず、シュート数は増えていかない状況が続きます。
清水は受けに回りすぎていた印象で、後半入っても運動量が上がらずセカンドボールも拾えないため耐える時間になります。
58分には、ようやくジェフの攻撃。
右サイドからのパスを受けた井出が中央で、丹羽にスルーパス。
ボールを受けた丹羽がクロスを上げますが、町田には合わず。
なかなか決定的なチャンスが作れない状況が続きましたが、61分に同点ゴール。
右サイドで北爪がクロスを上げると、井出がダイレクトでシュート。
これを一度はGK杉山がキャッチしましたが、船山が奪って2-2に。
同点になって、清水が前に出てくるようになります。
63分、清水は枝村に代えて北川を投入。
68分には左サイドの河井からクロスを上げ、石毛が頭で合わせますが枠には飛ばず。
その直後には町田が左サイド奥でボールを奪い、シュートを放ちますがサイドネットの外。
72分にはテセがこぼれ球を拾い、GK佐藤の位置を見て長めのシュートを放ちますが、GK佐藤がキャッチ。
両チーム、ゴール前でのプレーが増えていきます。
74分、清水は石毛に代わって村田を投入。
75分にはジェフのチャンス。
高い位置でジェフがボールを奪ったところから、井出、船山とつないで町田がシュート。
しかし、最後は相手DFがブロック。
その直後、ジェフは北爪に代えて小池を、阿部に代えて比嘉を投入。
78分、中盤でのボールの拾い合いで、川口が長澤に足の裏を見せてのスライディング。
これでレッドカードを受けて退場。
清水は右SBに河井が入り、北川が中盤に降りて4-4-1になります。
81分、ジェフが勝ち越しゴール。
左サイドからの攻撃に対し一度は清水がボールを拾いますが、町田のプレスから奪い返して最後は長澤が左足でシュート。
これがゴール右隅に決まり3-2と逆転します。
その直後、ジェフは船山に代えてオナイウを投入。
85分には、清水が河井に代えて、キム・ボムヨンを投入。
キムが右SBに入り、竹内がボランチに戻りました。
88分、清水の攻撃。
キムからのアーリークロスを受けて、テセがヘディングシュート。
しかし、GK佐藤が正面でキャッチ。
このまま勝ち切れるかと思われたジェフですが89分。
清水の北川が左サイドからセンタリング。
これが井出に当たって、オウンゴールとなり同点に。
そして、90分+3分。
清水の北側が再び左サイドでセンタリング。
勇人のクリアが短くテセの足元に入り、テセがミドルシュート。
これが決まって4-3となり、清水の勝利となりました。
■4バックの課題が出て逆転負け
再逆転での敗戦ということで精神的には辛い試合でしたが、1点を奪ってからのジェフは悪くなかったように思います。
前にプレスも行けていたし、チャンスも作れてゴールも奪えた。
巻き返せたのは、4バックに戻したことによる変化が大きかったと思います。
ただ、もともと4バックで3連敗を喫したためにシステムを変更しただけに、「新システムが悪かっただけ」というわけにもいかないでしょう。
一つには1点を取るまでのジェフの状態が、あまりにも酷かったこと。
特にサイドの前からチャンスを作られる展開は前節山形戦から何も改善できていなかったように思いますし、清水はそこをしっかりスカウティングしていたのだろうと思います。
もう一つには解説の水沼氏も指摘していたように、この日の清水は前半から動けておらず相手の状況か悪かったこと。
それらによって、4バックに変更した後のジェフが良く見えた部分があったと思います。
一方で冒頭で話したように、試合終盤の2失点はこれまでのジェフの課題が出てしまったものだと思います。
どちらも、課題である右サイド裏を取られたところから。
特に3失点目は右サイドでボールを奪われたところからやられた形ということもあり、イがサイドに釣り出されてそこからクロスを上げられてしまった。
そして、逆サイドのキムが走り込んできたため、井出が後ろ向きに守備をしなければならず、オウンゴールに結びついてしまいました。
井出の対応も決して良いものではなかったと思いますが、チームとしては逆サイドのスペースをうまく埋められずにやられてしまったことになります。
5バックに変更したのもDFラインのサイドをバランスよく守りきれないため、人数で埋めるしかなかったためだと思います。
5バックにする直前の水戸戦でも左サイドからクロスを上げられ、逆サイドの佐藤祥が走り込んできて井出が何とか止めるシーンがあったわけですが、今回もそれに近い展開でやられてしまった。
4バックに戻して押し返せたことはもちろん良かったと思いますが、結局4バックにして両サイドを取られてやられてしまった。
これは見方によっては、きつい皮肉だったようにも思います。
少なくとも現時点では4バックの方がやりやすくはあるのでしょうが、決して今までの4バックの穴を埋め切れたわけでもなかった。
また清水は小林監督が「冷静に」と言い続けていたようで、その分序盤からギアが上がりきれなかったようにも思います。
全体的に見ても低調で、守備での球際などにも課題を感じました。
ただ、連戦の最終戦でスタミナに不安があるため、じっくりと試合を進めようとしていたのかなとも感じました。
それにしても動けていなかった印象ではありましたが、それでも試合終盤にはもう一頑張りすることが出来た。
1人少ない状況で再逆転できたのも、冷静に戦い続けスタミナ切れを起こさなかったからこそ、最後にやり返せたのではないでしょうか。
一方でジェフは先に2点リードされたこともあって、前に行かざるを得なくなり体力が消耗し最後は集中力が切れてしまったところもあったように思います。
清水は結果的に試合中盤を捨てて巻き返したとも言えるし、逆にジェフはリードした後の戦い方も中途半端だったと思います。
改めて、4バックに変えてからはそれなりに戦えていたわけで、悪いばかりでもなかったと思います。
とはいえ、相手の出来も差し引いて考えなければいけないし、最後は4バック時の課題も出てしまった。
それだけに「4バックに戻せばなんとかなる」とも、言い切れない試合だったのではないかと私は思います。