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東京Vにハーフスペースを攻略されて失点

 タイトルにハーフスペースと書いておけば、注目が集まるでしょうか(笑)
 ハーフスペースとはピッチの横幅を5つに分けて、中央とサイドの間のスペースのこと。
 この辺りは西部謙司氏による、こちらのコラムなどに詳しく書かれています。


 ただ、5レーンにせよポジショナルサッカーにせよ、最先端のサッカーと言われることが多いと思いますが、コラムにもあるように昔からあった発想だと思います。

例えば、「ハーフスペース」(=ピッチを縦に5分割した際の2番目と4番目のレーン)を使ったビルドアップはヴェルディ川崎の定番でした。
(中略)
ハーフスペース、ポジショナルプレーという言葉はありませんでしたが、90年代初期の日本サッカーにもすでにフィールド上には存在していた。

 例えばハーススペースを使うために、SBがボランチ付近でプレーしてビルドアップの起点となるアラバロール(偽SB)。
 これも考え方自体はオシム監督がジェフ時代にやった、2バック+トリプルボランチの左右ボランチにも近いところがあると思います。
 守備時には相手SHに付いてSBに近い仕事をしていたし、攻撃時にはサイド寄りの中央からビルドアップするということで、意図は似たところがあったのではないでしょうか。


 トレンドを追うことはもちろん重要でしょうが、細かな狙いはチームごとに異なるはずですから、ざっくりと知っておけばそれでいいのではないかと思います。
 逆にトレンドの戦術を追うことばかりを優先すると、ピッチ上で起こっている本質的な部分を見失ってしまうのではないかとも思います。
 話しは逸れましたが、東京V戦では1失点目にそのハーフスペースを突かれて、やられてしまった印象です。



 1失点目を図にすると、このような感じに。

 東京Vの選手の動きを見ると、左ウイングの泉澤が中央寄りのハーフスペースへ。
 それによって出来たサイドのスペースに、左SB奈良輪が前進していきます。


 そして、左CB平が奈良輪にパス。
 奈良輪は泉澤に繋ぐと、泉澤に溝渕が寄せていきます。
 しかし、そこで前を向かれて走り込んだ奈良輪がスルーパスを受けてワンタッチでクロスを上げ、佐藤優平が飛び込んでゴールという流れでした。



 泉澤がハーフスペースに入ってくることによって、ジェフの右サイドの選手たちが中央に寄ってしまって、奈良輪が空いてしまった。
 奈良輪のパスを泉澤がハーフスペースで受けることによって、さらに中央へと引き付けられてしまった。
 そこからジェフの右サイドを、攻略されてしまったことになります。


 さらにジェフのDFラインを見ると、左CBの近藤がドウグラスを見ています。
 逆サイドの下平ももっと絞って佐藤優平の飛び出しを警戒したいところだと思うのですが、藤本がサイドライン際で張っていたため、そこが気になって遅れてしまったのでしょう。
 ならば、為田が戻って下平の外を見ていれば…と思うのですが、基本的に為田は攻め残るため、高い位置に張ったままやられてしまったことになります。


 
 この失点に至るまでにはその前にも流れがあって、20分の東京Vの攻撃を図で振り返ると。

 同じように左CB平から縦パスを通されて攻撃を作られていますが、ここでは船山と勇人の間を通されています。
 そこから泉澤が奈良輪に繋いで、奈良輪がドウグラスを走らせる裏へのパスを供給。
 最後は泉澤がシュートを放ちますが、溝渕がブロックして終わっています。


 この場面で船山と勇人の間を通されたため、船山はハーフスペースのコースが気になって、28分の失点シーンでは中央寄りに絞って、コースを閉じたのではないかと思います。
 しかし、中央を閉じたため、今度は平から奈良輪へのパスコースが空いてしまった。
 チーム全体で左右にスライドするでもないし、中央へ絞っても外が空くだけだし…ということで、船山の対応だけではどうしようもない状況だったと言えるのでしょう。



 こういった守備の問題もあって、ダブルボランチが機能していないのだと思います。
 4-1-2-3でも確かに守備は安定していませんが、中盤が5枚になるため縦パスのコースは比較的消しやすい状況になっているのではないでしょうか。

 このようにインサイドがハースペースのコースを消せれば、ウイングがサイドを守ることが出来る。
 その分、インサイドの裏(1ボランチ脇)を、どう消すのかという問題はあるわけですが。
 しかし、現状だとダブルボランチでもボランチ裏にスペースが出来ているような状況ですから、そこは大きく変わらないでしょう。


 また、もう1つの大きな問題は、20分の東京Vの攻撃でも28分の失点シーンでも、2トップが守備に絡めていないということ。
 20分には指宿が遅れて平らにチェイスに行きますが、間に合わずに縦パスを出されています。
 2トップの機動力がない分、ファーストディフェンスがかけきれずに、残りの8人が無防備な状況で守るような状態だったと思います。


 試合序盤こそ攻撃面の勢いで押し込み続けていたものの、前からのプレスが効かないためそれを長時間継続することはできず、20分の東京Vの攻撃から流れが変わっていったように思います。
 かといって、セットして守るという術も持っていないため失点し、逆転負けを喫してしまった試合だったと言えるのではないでしょうか。
 いずれにせよ、守備で簡単にやられ過ぎていた印象で、そこが改善しない限りは厳しい状況が続くのではないかと思います。