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 オシム監督「走らない選手は本当に走らないのだよ、これが(笑)」

 日経で連載されたオシム監督のインタビューの全文がアップされました。


代表諸君、うまくなれ(上)
代表諸君、うまくなれ(中)
代表諸君、うまくなれ(下)



「どんなに厳しいプレッシャーをかけられても動きながらボールを正確に操り、状況に応じて左右どちらのキックでも高低や強弱、長短を自在にけり分けられるような、本当に試合で使える基本技術のことだ」
「日本選手のうまさはまだまだ“敵が近くにいないとき”に限られている。ワンタッチパスにしてもその本質は、自分がタッチ数を節約することで次に受ける選手に時間的な余裕を与えることなのに、格上の相手と戦うと苦し紛れに次の受け手にツケを回すようなパス回しになってしまう。磨くべきは、素早く次のプレーに移るという判断を伴った技術だ。その点で日本は、カメルーンのレベルに残念ながらまだ届いていない」
 アジアカップを総括したコメントで、オシム監督は「個の部分が課題」と分析していました。
 それによってマスコミはますます決定力不足だとか、ドリブル突破などの個人での打開力が足りないんだと騒ぎ始めてしまいましたけど、実際にオシム監督が足りない「個の部分」と指摘していたのは、もっと基本的な足元の技術だとかいつも言っている判断能力の部分だったようです。
 


「しかし、日本選手に本当に足りなかったのはフィジカルではなく基本技術の方だろう。カメルーンの左SBのアトゥバはあの日、日本の誰と比べてもうまかったと思う」
 岡田監督もマリノス時代に「韓国の選手はテクニックがしっかりしている」と言っていました。
 当時は「日本人のテクニック、韓国人のフィジカル」という印象が強かったのでピンと来なかったのですが、たぶん今回オシム監督が言ったことと同じことなんでしょう。


 プレッシャーが来ていないときのロングパスやスルーパスだとかプレースキックとか、そういう部分では日本は高いレベルにあるのかもしれませんけど、そういった部分を重視しすぎているせいで基礎技術を疎かにしている部分があるのかもしれません。



 そういう見方だと、武智幸徳氏のこの文章もちょっとズレがあるような気もします。


面白いのは、技術不足を嘆きながらも、日本代表のイビチャ・オシム監督の選考はテクニシャンより“ランナー”を優遇する傾向があることだ。究極の技術の習得は1日にしてならず、当座の不足分はまずは走力で補って、という発想だろうか。
 例えばプレシャーが来ていた時のトラップとかワンタッチでのパスなどは、巻や山岸も経たではないし、むしろ足元が上手いといわれている選手の方が下手だったりします。
 そのあたりの根本な見方が、もしかしたらズレているのかもしれません。
 まぁ、わざとこのような書き方をしたのかもしれませんけどね。



「日本で最上のテクニックを持った選手でも、カメルーンと対峙(たいじ)すると足りていないことが分かる。世界の強豪と戦う時は現状では誰を選んでも足りていないのだから、それなら走れる選手の方が役に立つ。多少のテクニックがあっても走れない選手を抱えて戦うことは、10人対11人で試合をするようなものだ」
 オシム監督が目差すのは11人で12人分かそれ以上のサッカーをすることでしょう。
 GKがビルドアップに参加するのも、それを狙ったもの。
 「スローインを取って喜ぶな」と怒ったのもそのあたりでしょう。ピッチには10人しかいないということですからね。
 このあたりを読んでも、非常に数学者らしい発想ですね。



「テクニックがある選手を走れるようにするのと、走れる選手にテクニックをつけるのと、どちらが効率的か。一般的には前者の方が簡単に思われがちだが、走らない選手は本当に走らないのだよ、これが(笑い)」
 これは多くの幻想を抱いている方(特にマスコミ)に、特に聞いてほしい言葉ですね。



「恐らく日本ではテクニックのある選手は、ほかの選手よりうまい分だけ、走らなくてもいい自由を与えられてきたのだろう。プロになってもそれで大過ないのは、そんな日本人同士で戦うJリーグでは問題がないからだ。その結果、日本代表に優秀な選手を集めると中盤は走れない選手の集まりになってしまう」
「ところが日本代表は日本で唯一、日本人と試合ができないチームだ。自分たちよりうまい上に走れる外国のチームと遭遇すると、途端にボロが出る。W杯など国際大会の度にこの失敗を繰り返しているのに、メディアもサポーターも“テクニシャンを選べ”という合唱をやめない。世界レベルでは走ることなしにモダンサッカーはできないのに」
 確かにこういうところはサポーターにもありますね。
 サポーターも見方を変えていかなければ、サッカーの発展はないということでしょう。



 こういった話しを聞いても思うのですが、やはりJリーグのクラブも世界レベルのチームともっと戦いたいですよね。
 地理的な問題があるのは仕方がないのですが、「井の中の蛙」をなかなか抜け出せない状況にいます。
 オシム監督が花試合とわかっていてレアル・マドリード戦の開催を好意的に見ていたのは、ジェフが世界を知る素晴らしいチャンスだったからではないでしょうか。


 …ということで、A3の有効活用を願いたいですね(笑)
 欧州のチームをゲストとして呼ぶのでもいいですし、オーストラリアのチームでもいいですし、学ぶべきところはそこにあると思うのですが。




「少し活躍しただけでメディアがスターのようにもてはやし、ある程度のカネが入る。選手をやめても別の仕事がある。これらはその選手の真の価値によってというよりも、世界に冠たる経済力のおかげの部分が大きい。裏返せば、この恵まれた環境の中で、技を磨き続けるには並外れた精神力がいるともいえる」
 アジアカップではオシム監督自身もマスコミのプレッシャーを大きく感じて、消極的になっていたように見えました。
 日本のマスコミのプレッシャーは、様々な経験をしているオシム監督にとっても、大きいものだったといえるのではないでしょうか。


 選手にもかなりのプレッシャーが圧し掛かっているということでしょう。逆にスターシステムにも気をつけなければいけません。
 代表だけはなく、Jリーグにおいても。
 そのあたりも、もう少し真剣に考えるべきじゃないでしょうか。
 オシム監督は「少し活躍しただけでメディアがスターのようにもてはやす」と言っているけど、そこはメディアだけでもないような気がします。
 ある意味で、マスコミではなく日本の国民性なのかもしれません。



 まとめですね。


「落ち込むような話ではない。非難ではなく、具体的な指摘こそがチームや選手を強くするし、直ると思うから私も指摘するわけで。要は自分は代表選手だと思い上がらず練習することだ」
 最後は強引な感じですけどね(笑)