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前から奪うのではなく、前に行かせない守備

 ということで、イングランド相手に1-2。
 負けてしまったとはいえ、全体的には希望も見える内容だったのではないでしょうか。
 課題も複数見つかりましたが、それもしっかりと相手に立ち向かったからこそ、ではないでしょうか。



 日本は阿部をアンカーに置いた4-1-4-1。
 この試合の阿部はまずまずでしたね。
 やはりオシム監督が見ている試合だと、違うのかな(笑)


 イングランドは4-4-2でスタートでしたから、阿部の前に置いた遠藤、長谷部を相手のセンター2人にあてて、中盤で前を向かせない守備を展開していきました。
 これがぴたりとはまって、日本は守備からリズムを作っていきます。


 そして、前半7分。
 セットプレーでグラウンダーのボールから闘莉王がゴール。
 本番にとっておけば…とつい思ってしまったのですけど、この時期の練習試合は成功すればそう思うし、韓国戦のように敗れれば叩かれるし、難しいところですね(笑)


 
 それからは徐々にイングランドが前にかかってきます。
 しかし、それに対して日本は冷静に対処。
 こういったときの遠藤の落ち着かせ方は素晴らしいですね。
 相手にボールを持たれる時間が長く、攻めに転じたいと思う場面でもぐっと我慢して、横や後ろにボールを返す。
 あるいは、相手が来るタイミングのギリギリまでボールを持って、パスを散らす。
 それだけ遠藤の調子が戻ってきたということなのでしょうけど、このあたりは工藤も学んでほしいところ。
 パスをつなぐプレーに関しては安心して見ていられる工藤ですけど、ゲーム全体をコントロールする術を身につけてくれれば、よりよい司令塔になるんじゃないでしょうか。
 そこが日本代表レベルへの第一歩なのかもしれません。



 後半、イングランドは一気に5人を交代。
 ジョー・コール、ジェラードなどを起用し、フォーメーションも4-4-1-1のような形にしてきました。


 そこからが厳しかったですね。
 トップ下に入ったジョー・コールが、その位置から阿部を釣るような形で前に動く。
 それによって阿部がDFラインに吸収され始めたのではないかと思います。
 中盤の数が同数になり、そこで押し込まれたという部分も大きいのでしょうけど。
 相手のボランチ1人が低く構えることも増え、そこからゲームを作られてしまいました。
(まぁ、ということは、4-3-3が予想されるオランダ相手には、その辺りで苦労する可能性があるのかもしれませんが。)


 PKのシーンはまず、長谷部の横パスのミスからだったと思います。
 その後なんとかカウンターを遅らせましたが、最終的に長谷部がゴール前でFKを与え、壁になった本田が手を使ってPK。
 なんとか川島が止めてくれましたけど、ミスからの形は本番では絶対にやってほしくないところです。


 そして、その後サイドの深い位置からのクロスに対してオウンゴール2発で逆転されてしまいます。
 決して派手に崩されてしまったわけではないのだけれど、2失点目などはボールを奪われたところからすぐにサイドの深い位置をとられてしまいました。
 やはりラインの下がり過ぎが1つの原因だと思いますし、ラインがもう少し頑張れれば、サイドで相手を遅らせ、数的優位も作ることもできたのではないかと…。 




 総じて、昨年のオランダ戦に近いサッカーが出来ていたと思うのですが、あの試合に比べるとプレスからボールを取りに行く意識は強くなかったと思います。
 オランダ戦ほど高い位置でハイプレスをかける機会はありませんでしたけど、あの試合でも高い位置でボールを奪えない場合は、早めに戻ってボックスを作る意識が強い守備をしてたと思います。
 しかし、そのボックスの形から数人が出ていって奪いに行くイメージが強かったのですが、イングランド戦ではそこを無理に行かずじっくりと守っていた印象です。
 その分イングランド戦では前にボールを出させない、守備のバランスを大切にするとったところを念頭に置いたのではないでしょうか。


 しかし、その守備でも90分持たなかった。
 オランダ戦で持たなかったのは、前半から積極的に前に出て奪うサッカーをした結果ではないかと思っていたのですが、問題はそこではなかったということでしょうか。


 「ボールを繋いで落ち着かせる」、「プレスに行かずリトリートする」、そのあたりで休む時間を作ることによって、スタミナを温存する策をとれば…と思っていたけれど、この試合を見るとそう簡単な問題でもないのかもしれない…と感じてしまいました。
 この試合でも先に先制点を奪ったため、なんとか試合を落ち着かせようとしていたとは思うのですけど、相手も本気で来る状況ではそんな余裕もないというのが実情なのかもしれません。


 …難しい問題ですね。
 長期的に見れば、どうにか90分持つサッカーをしたいところですけど、今はともかくW杯の直前。
 コンディションの問題や選手交代などによって、どこまで良い時間帯を延ばすことが出来るのか。
 けれど、現実問題として考えると長く持たせることよりも、ラインが下がってしまっても守りきる術を考えた方がいいのかな?なんて思ったりもします。




 攻撃に関しては遠藤を中心に中盤の底でパスをつないでいる間に、SHの選手などが相手のMFラインとDFラインの間に入っていき、そこにスッとボールを出すことで、チャンスを作る形が何度か出来ていたと思います。
 これは昨年のオランダ戦でもみられた攻撃パターンでした。
 前半には大久保。
 後半途中からは本田(本田がそのままミドルシュート。その形でボールを受けた展開から森本に長めのパス、シュートという展開も)。
 終盤には長谷部(玉田が長谷部からのスルーパスで抜け出してシュート)。


 この回数と質を増やしていくことが、今後求められるのでしょうね。
 それと攻撃のバリエーションをもう少し増やしたいところなのかなと。
 …と言っても、そのあたりはなかなか簡単なことではないとは思うのですが。
 あとはセットプレーですか。
 今回は早いうちにそれが決まっていい方向に行ったけれど、最近の代表はあまりセットプレーからの得点は多くなかかったはずです。
 そう考えていくと、やはり攻撃の最後の部分は、大きな課題となるのでしょうね。



 単純に気になるのは、オランダ戦ではこのサッカーやるということにはなるのだろうけど、カメルーン戦、デンマーク戦はどう戦うのか。
 同じやり方で行くのか、また違ったやり方なのか。
 強国相手のサッカーとしては良かったと思うのですが、点を獲りに行く試合、勝ちに行く試合になると、また状況が違うのかなとも思います。



 あとは、コンディションが心配な選手達がどう影響を及ぼすのかですね。
 特に俊輔と内田。


 この日、右SHに入った本田は何度か可能性も見せてくれたけれど、守備の時に少しずつ遅れることもあったと思います。
 コンディションが整えば、その点では俊輔の方が粘り強く対応してくれるかもしれません(単純なボール奪取力なら本田でしょうけど)。
 そのあたりの守備が心配だから、後ろに今野を起用したのではないかと思いますし。
(本田はFWではボールを受ける動きに課題が見られたし、ボランチの位置では守備が心配だし、SHかフォーメーションを変えてトップ下しかなさそうですね。しかし、現在の戦術だとトップ下も守備意識が強く問われることになり、SHだと俊輔と完全に被ることになるわけですが…。)


 ただ、俊輔が入るとまたリズムが変わる可能性もある。
 それと内田が入れば攻撃の幅が広がるかもしれませんけど、守備に不安点が出てくるかもしれない。


 相性のいい2人だと思うので、もしかしたらセットで考えているのかもしれません。
 1つの課題となっている攻撃でのバリエーションを増やすという意味では2人は大いに期待できると思うのですが、全体のバランスも考えるとどう作用するのか…。
 こればかりは実際に見てみるしかないのかもしれません。



 ともかく、徐々に戦い方は固まりつつあると思うので、攻撃、守備、コンディションにおいて最後の調整をしっかりと頑張ってほしいともいます。